『メイドインジャパン 放蕩娘の冒険記7』

■シリーズシナリオ


担当:

対応レベル:1〜5lv

難易度:難しい

成功報酬:1 G 75 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:05月25日〜06月02日

リプレイ公開日:2005年06月02日

●オープニング

■メイドインジャパン
 江戸から北東へ4日ほど進んだ山奥の小さな村に西洋風の大きなお屋敷が有りました。
 お屋敷の主人の名前はアルフォンス。当年取って125才のドワーフの元騎士です。
 若い頃に数々の武勲を重ね、今では喰うに困らない程度の蓄えを持ち、この東の国ジャパンの片田舎で、老後の余生を静かに送る為に引っ越してまいりました。
 私有地にはぶどう園を作り、梨園を作り、ワインを作り、果実酒を作り、慎ましくも一人娘(養女)とメイドさん達数名と質素ながらも静かな生活を送っておりました。
「やはり平和が一番じゃ。私が戦場で冒険者として生き残って来れたのも、儂がみんなよりずっと臆病者だったから、生き延びてこれたのかもしれんのぉ。後は娘が、一人娘が元気に育ってくれれば、後は何も言う事はないんじゃがのう」
 夕日の差し込むベランダで、丸テーブルで静かにワインを嗜む初老の老人。それが彼の今の姿である。
 だが、親の心子知らずという奴か、その娘は元気に冒険者を目指していた。年の頃は数え年で15才。戦災孤児で5才の時にアルフォンスの手に引き取られてからはすくすくと元気に成長していった。いや、元気すぎるのが彼女の難点なのである。
 見た目だけなら艶やかな髪と白い肌、絶世の美女と呼んでもおかしくない彼女。アルフォンス曰く『儂があと100才若ければ、娘ではなく妻にするんじゃがのう』と言う彼ご自慢の娘である。
 だが、闘う父親を見て育ったせいか、彼女の感覚は偏っていた。

「私は大きくなったらお父様みたいな立派なドワーフの騎士に成るの」
 それが彼女が物心ついてからの口癖である。
 今では『ドワーフの』は取り除かれてしまったが、それでも騎士に成る夢は捨てきれない様子。毎日剣の修行に励み、オーラの技の修行に励み、日々鍛錬に鍛錬を積んでいるおてんば娘に成ってしまったのだ。
 アルフォンスの胸の内は旗本の冷や飯食いの婿養子でももらって、静かに平穏な生活を送ってもらいたいと言うのが願いでは有るのだが。

●戦うソレイユ
 ソレイユは戦っていた。
 身の丈1.7m程の体格の良い小鬼に似た外見‥‥茶鬼(ホブゴブリン)とである。
 モンスターと人間との戦いでは、非常に珍しい1対1の戦いである。
 木陰からはメイドシフールのクレッセントも見守っている。

 既にお気づきの方も多々おられると思うが、ソレイユの格闘能力は低い。
 おそらく初級の6程度であろう。
 それでも彼女は戦っていた。右手に忍者刀を左手にオーラシールドを構え、ジリジリと対峙していた。
 相手は右手に斧を、左手に木盾を装備している。おそらくはコボルトを遙かに凌ぐ実力者であろう。

 アレは今から一ヶ月ほど前の事、山にすんでいたコボルトが一斉にごっそり居なくなった。
 しかし、空白地が有れば流れ込む水あり。どこからやってきたのか、茶鬼や小鬼が数匹住み着いてしまったのである。
 彼女はそんな一匹と戦っているのだ。
 偶然巡回していて偶然居合わせただけだが。
「ゴブゴブ!!」
 茶鬼の斧がソレイユめがけて振り下ろされる。
 彼女はそれをオーラシールドで受け止める。
 返す刀で今度は彼女の忍者刀がうなる。
 しかし、茶鬼はそれを木盾で受け止めて流す。
「むむ、ごかくか‥‥」
 再びにらみ合いが続く‥‥。

 5分のにらみ合いの末にお互いは痛み分けで別れることに成った‥‥。

 どっと汗をかいて地面にへたり込むソレイユ。
「ホブゴブリン強いね‥‥コボルトなんかとは全然違うね‥‥」
 そう言って手ぬぐいで汗を拭くソレイユに、クレッセントは大きくため息をついた。
「取りあえずお嬢様は個人技で戦うより、パーティの中での役割でがんばる方が良いと思います。どんなに個人戦が優れていようとも、集団戦能力が劣っていては一人前の冒険者とは言えません。お嬢様は集団の中の自分を見つけるべきだと思います」
 クレッセントはそう言って頭を下げた。
「つまり冒険者を家庭教師に雇うって事だね!! 新たな依頼の始まりだね!!」

 そんなわけで彼女に集団戦闘のイロハをちゃんと教えてくれる人を募集。
 一緒にパーティを組んでゴブリンやホブゴブリンを倒しましょう!!

●今回の参加者

 ea0036 リューガ・レッドヒート(42歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea0485 一条 深咲(21歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea3874 三菱 扶桑(50歳・♂・浪人・ジャイアント・ジャパン)
 ea4233 蒼月 惠(24歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea5794 レディス・フォレストロード(25歳・♀・神聖騎士・シフール・ノルマン王国)
 ea6764 山下 剣清(45歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb1164 本多 風漣(30歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 eb2520 又 三郎(43歳・♂・忍者・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●特訓の成果
「今日も今日トテ、特訓続く〜技は力の中にアリ〜」
 その日、ソレイユは元気に修行していた。
別にその日が特別と言うわけではないが、その日もがんばって特訓していた。
 薪割り、水くみから始まる筋力トレーニング。
 ランニングや走り込みによる体力トレーニング。
いわゆる体力を付ける為のトレーニングのオンパレードである。
 午前中の修行が終わると沐浴(水風呂に入る)してから午後の修行。
 座禅を組んで瞑想する。精神集中の修行である。
「よう。ソレイユ。また来たぜ」
 リューガ・レッドヒート(ea0036)がソレイユに挨拶をする。
8人の冒険者達は彼女に挨拶をして、屋敷で取りあえずくつろぐことにした。
「んでどうだい? 修行の成果は?」
 リューガ・レッドヒートがソレイユに質問する。
「うん。かなり身に付いたよ。視て観て」
 そう言って彼女は真っ赤なビキニアーマーに包まれた豊満な胸を突き出した。
 返答に困る。リューガ。
「何を‥‥観るんだ?」
 返答に困っているリューガの手を取り自分の胸の上に乗せるソレイユ。
「あぁ、触ってみれば分かるよ。どう? 前より大きくなったと思わない?」
 さらに返答に困ると言うか言葉を無くすリューガ。
 山下剣清(ea6764)が、それを羨ましそうに見つめる。
「あっ、触ってみる?」
 左胸にリューガの手を右胸に山下の手を乗せる。
「前より8cmも大きくなったんだよ? 腕も足もかなり引き締まってきてるし‥‥」
 どうやら彼女は胸に筋肉が付いたことを自慢したいようだ。
「んで、素振りとかしてるのか?」
 彼は胸から手を離して質問する。
「いや、最近は体力アップとオーラだけだよ」
 彼女はそう言ってにっこり微笑んだ。
「やっと威力上昇させたオーラパワーが、半分くらいの確立で成功出来るようになったから、これから剣術を上げようと思ってるの」
 彼女が言うには、まず体力を、続いてオーラを鍛えているのだそうな。
 体力を上げることにって格闘戦の成功率をあげ。闘気の成功率をあげる。それは他ならぬ父の教えなのだという。彼女はマズそのした準備をしてから剣術を身につけようというのである。
 どうりで今まで武器の命中が悪かった訳である。
「私と剣を交えてみますか?」
 一条深咲(ea0485)がそう言って刀を抜く。実戦の中でしか伝えられない物があるのだろう。
 ソレイユは意を汲んで、静かに忍者刀を構える。
 もちろんお互いに刃を返した峰打ちである。

 先に深咲が仕掛ける。
 刀を振り下ろし、彼女めがけて一撃を放つ。
 ソレイユはそれを忍者刀でかろうじて受け流した。
 今度はソレイユが攻撃をしかける。今度は深咲がそれを刀で受け止める。
 お互いの剣の腕はほぼ互角。いや、ほんのチョットだけソレイユが優性かも知れない。
「大事なのは自分に出来ることを確実に遂行することだよね。出来ないことは、それが得意な仲間にお願いするの。一人でできることなんて結局限界があるんだからね」
 一条深咲がソレイユに語る。
 ソレイユもそれをうんうんとうなずいて聞く。
「私に出来ることは‥‥手数を利用した格闘戦かな。後は盾を利用した受け。ディフェンスには定評が有るんだよ? 本当だよ?」
 そう言ってソレイユは刀を鞘に収めた。
 一体誰に定評が有るのかというツッコミを残しながら。

●昼食と言うかお昼ご飯みたいなもの。
 取りあえずおなかもすいたし食事を取ることにした。
 今日の食事は天ぷらっぽい物。
 米粉を付けたソーセージの様な細長い挽肉の塊を、油でからっと上げて塩をかけて頂く。
 既に完全な無国籍料理である。それをバターたっぷりのコッペパンに挟んで食べる。
サンドイッチと呼ぶんだろうか? ホットドックと呼ぶんだろうか?
「はーい、クレッセント特性の『肉棒天ぷらバーガー』が出来ましたよぉ」
 元凶の発案者がエプロンドレスに身を包み、羽をパタ付かせながらお客様に配る。
「ネーミングセンスもすごいな」
 三菱扶桑(ea3874)がそれを受け取り口に運ぶ。さっくりと上がっていて肉汁たっぷりで案外美味いかもしれない。
「そーいえば、ソレイユお嬢ちゃんの役目なんだが、オーラシールドで仲間の盾になって、仲間が大技をかける為の隙を作るなんて良いんじゃないか?」
 相手にダメージを与えるダメージディーラー(攻撃手)より、敵の攻撃を受け引きつけるタンク(壁役)を進める三菱扶桑。
「やっぱり、クレッセントさんのお料理はおいしいですわね」
 レディス・フォレストロード(ea5794)がそう言って肉棒を頬張る。
「‥‥そう言えば、お嬢様の就職のお話、どうなったのでしょう? 面接は受けてみたのでしょうか?」
 レディスがクレッセントに質問する。クレッセントは目線をソレイユに送った。
「私が京都に移動したら、みんな付いてきてくれるの?」
 不意にソレイユが肉棒くわえながら質問する。
 どうやら配属されると、京都近辺でのお仕事になるらしい。
「琵琶湖観光協会従業員募集中っていうのがあるんだよ。一応観光奉行様のしたで同心として扱って貰えるらしいんだよ」
 そう言ってソレイユは微笑んだ。無論試験に受からなければ成らないのだが。
「所でソレイユさん。ゴブリン退治は何時いくのです?」
 本多風漣(eb1164)がソレイユに質問する。ソレイユは肉棒くわえながらそれに応える。
「うん。日没後にしようと思うんだ。チョットくらくて戦いにくいかも知れないけど、こちらの明かりにおびき出されてきてくれるんじゃないかと思って」
 一応考えてるらしい。
 猪突猛進で毎回失敗しているのだから当然ではあろうが。
「その前にフォーメーションとか色々決めておきたいよねぇ。初見の人も一杯いるし♪」
 ソレイユが蒼月惠(ea4233)に対してにっこり微笑む。
 彼女もまた、ソレイユにほほえみを返した。
「では、それまではゆっくり休むとしよう」
 又三郎(eb2520)がそう言って武器の手入れを始めた。

●いざ出陣
 10人ご一行は日没をまってからコボルト達の居た山へと向かった。
 クレッセントが戦闘馬に乗り、提灯を持っているので道中は明るい。
 ソレイユは相変わらず、胸とお尻回りだけを赤い布で覆った露出度バリバリの服装である。
「この季節はこの服装が丁度良いんだけど、蚊に喰われるのが難点だなぁ」
 相変わらず見た目重視で色々苦労しているようだ。
「んで? どうするんだ?」
 リューガ・レッドヒートがソレイユに質問する。
「うん。リューガさんが左翼。三菱さんが右翼って感じで、他がそれをサポートする形で良いんじゃないかな? ホブゴブリンが出たら、私が相手をするよ。秘策が有るんだ♪」
 彼女はそう言って微笑した。
「ホブゴブリンが来たら、30秒だけ、敵を受け止めて欲しいんだ。そしたら後は私が何とかするから」
 ソレイユが蒼月惠にそっと耳打ちする。
 又三郎は魔力が尽きていた。5回に渡り疾走術を唱え、何とか専門レベルでの発動にこぎ着けたが、それも出発前の事、今では術もきれ、魔力も尽きていた。

「さて、いよいよお出ましのようですね」
 物前に見えるのは複数の影。おそらくゴブリンかホブゴブリンであろう。
 伏兵が有るかも知れない。
 斧と盾を持ったホブゴブリンが前にでる。
おそらくは敵の切り込み隊長であろう。
 それに対して、蒼月惠が飛びかかる。
 リューガ・レッドヒートと三菱扶桑が前にでる。敵の数を減らすためだ。
 ホブゴブリンが斧を持って攻撃する。
 惠はそれを避け、敵を引きつける。30秒‥‥戦闘では長い時間である。
攻撃力アップのCoと言うのは状況に応じて必要である。特に短時間で雑魚を減らそうと言うときには大量の攻撃回数か攻撃力UPの技が欲しくなるものだ。
 リューガはそれを熟知していた。
 敵の攻撃を喰らいながらも、カウンターの一撃で確実に敵を減らして行く。
 無論三菱も腕はよい。手数の多さで敵を減らして行く。
 一条深咲が蒼月惠のサポートに入る。刀を抜いて一撃を放った。
 ホブゴブリンはそれを盾で受け止めた。
 蒼月惠が後方に飛び退き弓を構える。
 だが、一条のAPは1、攻撃したらしばらくは動けない。
 ホブゴブリンが一条深咲に襲いかかる。
 斧の一撃。だが、その一撃は、カバーに入ったソレイユのオーラシールドに寄って阻まれる。
「お待たせ、準備完了だよ」
 彼女はオーラエリヴェイションと専門レベルのオーラシールドを左手に装備していた。
 これが彼女の必勝の作の一つである。
「チェストー!!」
 ソレイユの攻撃がホブゴブリンの盾に阻まれる。だが、彼女の手数は止まらない。
2発目3発目の攻撃を間髪入れずにたたきつけた。
 流石にそれだけの攻撃は受け止めきれずに、ホブゴブリンの身体が血で染まる。
 さらにそこに一条深咲の追い打ちの一撃がクリーンヒットする。
 そして、蒼月惠の弓矢の一撃が、ホブゴブリンの脇腹に突き刺さる。
ソレイユの戦法は、オーラシールドで確実に敵の攻撃を受け止め、手数の多さで相手を押し切ると言うものであった。人数が多い時には圧倒的に有効な戦略だ。
 そして、人数の少ない回避の低い冒険者が喰らうと圧倒的にピンチになる戦術である。
 数が多い方が圧倒的に有利。これは今も昔も変わりない。
 レディス・フォレストロードとクレッセントサンダーのダブルシフールの空中攻撃も効果的な戦い方である。
 手数の多さと空を飛べるという事で相手を翻弄出来るからだ。
 もっとも、クレッセントは戦闘職ではないので、攻撃力も命中力もレディスには及ばないが。
 決定打の与えられない敵に一発で飛んでくるソニックブーム。
 山下剣清の一撃である。
 シフール2人はその方向にウィンクを飛ばす。
 暗がりの中でのシフールのウィンクが見えるかどうかは分からないが。
「出でよ雷光!! 雷光双刃斬!!」
 ライトニングソードを右手に携え、左手に小太刀を持って本多風漣が斬りかかる。
フェイントアタックとダブルアタックを用いて敵を翻弄させる。無論倒しきれる程の力は無いが相手を困惑させることは出来る。
 そこにまた、山下のソニックブームが飛来した。
「倒した数では俺の方が多かったな」
 リューガ・レッドヒートがにやりと笑う。
 又三郎がゴブリンに対して手裏剣を投げる。
 飛び道具は避けにくい性質を利用した攻撃だ。
 2枚投げた手裏剣の一枚がゴブリンの額に刺さる。
 そこへ間髪入れずにソレイユの膝蹴りが入った。

 乱戦の中では戦術や戦略は殆ど無意味に成ることが多い。
 だからと言って行わないのは愚の骨頂だが。
 そんな中でも必要なのは戦闘能力と役割をしっかり理解していることだ。
 全員が全員命中率と攻撃力のある戦士である必要は無い。
いや、むしろその方が効率の悪い戦いだってあるのである。
 自分の長所を最大限に生かし、他人の短所を補ってやる。
 そんな戦い方が必要なのだ。

 あらかたの敵を倒し、身体を血に染めてソレイユ達はご満悦である。
「さて、それじゃウチのお風呂入っていきなよ。私が背中流して上げるから」
 そう言ってソレイユは勝利の笑みを浮かべていた。