『オークを従えし魔物 6』

■シリーズシナリオ


担当:

対応レベル:2〜6lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 87 C

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:03月11日〜03月17日

リプレイ公開日:2005年03月20日

●オープニング

●オークを従えし魔物 6

 まだ雪の残る人里離れた雪山に人知れず住まう一匹のバグベアーとジャイアント、そして数匹のオーク達‥‥っと一匹のシフール。その希な存在をオーク村のオーク達も歓迎している。
 猿山の猿が縄張り争いをするが如く続いていた闘いも小休止。オーガ戦士を打ち破る事で今しばらくの猶予が出来た。おそらく、又しばらくは襲われることはないだろう。
 河原に作られた小さなオークの集落では、闘いの勝利を祝って連日どぶろくや生肉片手に宴会が催されていた‥‥‥‥いや、肉は焼け、魚も焼け、頼むから生は止めましょう。

 だが豚鬼も山鬼も鬼である。オーガもオークも戦闘種族である。常に闘いにして闘いをすみかとしている。
 人間(ひと)に流れる血液に種類などない。全て赤い血だ。だがしかし、パンヤにはパンヤの血が流れる様に、職人には職人の血が流れるように、オークにはオークの血が流れる。鬼の血は修羅の血である。安住と安穏を望んだりはしない、日々闘いにして、闘いをすみかとするのである。
 だが、そんな彼らにも一時の休息は必要とする。それがこの宴会である。
「今回の闘いの勝利の半分は冒険者の活躍が大きかっただろう。多かれ少なかれ彼らには何かお礼をしなければ成らないだろう」
 アリサがそう言ってリキロスとララディに話しかける、二人は顔を見合わせて話し合った。
「ではこうしよう。この血のりべったり大鎧をプレゼント‥‥」
 ララディが言いかけて思い切りツッコミを入れられてしまった。毎回鎧をプレゼントして居ても意味がないし、鎧は余り喜ばれないんじゃないだろうかといういちまつの不安がある。
「んじゃアレだ、バーサークをプレゼントするってのはどうだ?」
 一瞬訳が間違っていたのかとララディを見つめるアリサだったが、何も間違っていなかった。いわゆる一つの『狂信的な狩りを』プレゼントしようと言うのだ。
「弓はこちらで用意しよう。矢もこちらで用意する。狩りで捕まえた獲物はその場で調理して食べる事にしよう。温泉もある。酒もある。ただ一つ、オーガ達の残存兵力とぶつかった場合は戦闘は避けられないので、常に武器は携帯しているべきだがな」

 こうして冒険者ギルドにまた不思議な依頼が迷い込んできた。

『オーガの奇襲に備えつつ、季節外れの収穫祭を楽しみましょう』である。

●今回の参加者

 ea0020 月詠 葵(21歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0437 風間 悠姫(32歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea1352 礼月 匡十郎(42歳・♂・浪人・ジャイアント・ジャパン)
 ea3813 黒城 鴉丸(33歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea6717 風月 陽炎(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●静かなる一夜。

 沢山のオークとゴブリン、オーガに寄って血塗られた山。そんな山でも日は昇り、日は沈む。そして月が静かに顔を出す頃、冒険者5人は河原になるたき火の光へと引き寄せられていた。

「今回はお招きありがとうございます。お金を頂いた上に食事にまで招かれて感謝の極みです」
 黒城鴉丸(ea3813)がそう言って静かにアリサに挨拶をする。
「遠いところご苦労さま。この一時の平和はあなた達冒険者の功績が大きい、今日はゆっくり狩りを楽しんでいってください」
 そう言って一人一つの弓を手渡された。

「僕、弓での狩りは初めてなのです。ヨロシクお願いします」
 月詠葵(ea0020) がそう言って挨拶をしたのは一匹のオークである。
 皮鎧に身を包み、鉄弓を持った黒毛和豚(くろげわぶぅと読んでみる)100%オーク。
 対して月詠は渡された短弓と小太刀を一本装備したラフな服装。
 マンツーマンで狩りに出かける事に成った。
 もちろんオークは人間の言葉などしゃべれない。身振り手振りで本当に単純に行為だけを伝えるだけである。それは首を縦に振る。首を横に振ると言った、本当に些細な物であった。
 ‥‥オークが足を止める。それに合わせて月詠葵も足を止める。
 オークが姿勢を低くする。それに合わせて月詠葵も背を低くとる。
 オークが静かに茂みの先を指さす。そこには子鹿が一匹水辺で水を口にしている。
 月詠葵が首を縦に振ると、オークは一本の矢を月詠葵に差し出した。

 月夜の晩の闇の中、全く会話の無い一人と一匹。それでも何とか成り立っている。

 一方そのころ礼月匡十郎(ea1352)と風月陽炎(ea6717)は弓も持たずに夜の森の中を動いていた。
 無論、道案内の為に一匹の茶色毛のオークが着いて来ているが。
「取りあえず大きな獲物を狙おうぜ!! 猪とか熊とかよ!!」
 礼月匡十郎がそう言って風月陽炎に対してにんまり微笑む。
 風月陽炎も首を縦に振った。
「そうですね。私たちは弓の狩りは素人。へたすると食いっぱぐれてしまいますからね。取りあえずは大物ねらいで行きましょう」
 お互いに接近専用の武器を片手に森の中をいそいそと進んでいく。それにオークがついてゆく。
 狩り自体を楽しんで欲しいと言う思考とはチョット離れた所に行ってしまっているが、まぁ楽しんでもらえていればそれでよしである。

「取りあえず私は温泉を満喫したいのだが‥‥良いかな?」
 風間悠姫(ea0437)がアリサにそう言うと、アリサは風間を温泉の方へと案内した。
 温泉は河原の真ん中に有った。深さ1m程の深さに掘り下げられて作られていたそれは、河原から桶で水を組んできて、温泉の湧く掘り下げられた穴の中に入れる事で温度調整をするようだ。最初はあつかったお湯が、ざばざばと川の水を足すことでぬるめのお湯になる。
「では、私も入らせてもらおうか、あっ、武器はそっちの木の根本にでも置いておくと言い」
 そう言ってアリサは鎧を脱ぎ捨て木の根本に武器と一緒に置く。

 風間悠姫にはこの温泉は多少抵抗があった。360度河原なので身を隠す術が無いのである。つまり、近くの茂みや、川の向こう側からでさえ丸見えなのである。
 だが、アリサは何の抵抗も無いのか、そのまま湯を浴びて、直系5m程の温泉の中へと入っていった。風間悠姫もやむなく、武器と衣服を木の下に置いて湯に入る。
 ぬるめだが、じんわりと身体の疲れに、そして傷に染みる良い湯であった。
 風間悠姫は一緒に湯に浸かるアリサをジッと見つめた。
 身長210cm 体重は150kgと言ったところか? ジャイアントのやや小振りな女性。バストは130cmは有るだろうか。どっかりとお湯に浸かって手ぬぐいで汗を流す彼女は全身刀や槍の傷痕だらけだ。よほどの闘いの中を潜り抜けてきたのだろう。
「そう言えばリキロスが私に求愛しているようなのだが、申し訳ないが私は誰とも祝言を上げる気は無い。私より、アリサ‥‥貴方の方がお似合いでは無いか?」
 二人きりなのをチャンスとばかりに風間悠姫がアリサにリキロスの話を切り出した。アリサは数秒目を丸くして止まると、森中に響き渡るような大きな高笑いを浮かべた。
「あはははは、私がアレと? それはない、断じてない。それに私は人間としての生活を棄て、オークと共に修羅として生きると決めた身だ。まぁ元々ジャイアントだし人間じゃないけどな。‥‥今更女としての幸せを求めようとは思わないし、欲しいとも思わない。一夜限りの夜の相手を求める事も有るかも知れないが、妻として娶られ、子を為そうなどとは、天地がひっくり返ってもあり得ない事だ」
 そう言ってアリサは笑い続けた。それに釣られて風間悠姫も微笑を浮かべる。
「オークを従えた魔物とおそれられるて居るのは私だ、アイツじゃない。人と出会えば人を斬り、神と出逢えば神を斬る。そんな生き様が私にはお似合いだ。オーク達と共に生き、オーク達と共に死す。私はそうありたいと思っている」
 そう言ってアリサはにんまりと笑みを浮かべた。

「今の笑いからするとこの方向で間違いは無いようですねぇ」
 茂みの中を深く静かに河原に近づいてきたのは黒城鴉丸である。明かりを持たず、月明かりのみを頼りに茂みの中を突き進む。無論河原ではなく、茂みの中を移動しているのは、風間悠姫達に近づき、気づかれない様に覗くためである。
 そして、何故か彼の肩には顔にほおかむりをして、付き従うララディの姿があった。
「‥‥女性がお風呂に入っているのに覗きに行かないのは、その女性に魅力が無いと言う事に当たり、とても失礼な事なのですよ‥‥」
 そう言った黒城鴉丸の言葉をまるっと信じて、二人でコッソリお風呂を覗きに来たのである。無論アリサ達も明かりを持って風呂に入っている訳ではないが、月明かりと川の反射でその姿は艶やかに暗闇の中に映し出されている。
「これ以上近づくのは不味いですね。ココから鑑賞することに致しましょう」
 その言葉にララディも首を縦に振った。

 静かな時間‥‥どれくらい時が流れたであろう。温泉のお湯が熱くなり風間悠姫が桶を片手に川の水を何度か汲み温泉の中につぎ足していたときの事である。
 突然茂みがざわざわと音を立てる。
 とっさに風間悠姫が武器を探すが、刀は木の根本である。アリサも今は丸腰だ。
 ずいっと立ち上がり茂みを見つめている。

「おねぇちゃんただいまです」
 茂みの中から出てきたのは月詠葵。その後ろの着いている黒毛のオークがしとめた獲物、キツネ3匹をもって凱旋する。
「お‥‥おかえりなさい」
 そう言って手桶で前を隠しつつ温泉の中へ戻る風間悠姫。アリサは前も隠さずに、月詠葵の前まで歩み寄ると、彼の頭をぐりぐりと力強く撫でた。
「初めての狩りはどうだった?」
 結局彼の放った矢はまぐれで一発しか当たらなかったが、それでも一匹の狐をしとめるに至っていた。まぁ結果オーライと言う感じである。

「さて、我々は見つからないように引き返しますか‥‥」
 黒城鴉丸とララディがそう言って茂みの中を宴会場へと戻っていく。黒城鴉丸だけならばアースダイブで移動することも出来るが、ララディを連れて居るためにそれは叶わない。

 宴会場に戻ると礼月匡十郎と風月陽炎の姿が有った。
 全身擦り傷切り傷だらけだが、どうにか猪を一頭捕まえてきたようだ。
無論弓など使っていない。接近戦ただ一手だけである。

 リキロスは結局一晩中酒飲んで寝ていた‥‥。

 風呂から上がった2人が合流し、全員で肉を焼いたり焼かなかったりして食べる。倒れるまで喰い、倒れるまでどぶろくを飲み続ける。そんな3日間が過ぎ、5人のウチ4人は目の下にクマを作り、一路山を後にした。目の下にクマを作らずお肌つるつるなのは風間悠姫であった。