『謎の温泉教団の温泉宿9』
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■シリーズシナリオ
担当:凪
対応レベル:2〜6lv
難易度:普通
成功報酬:2 G 65 C
参加人数:12人
サポート参加人数:3人
冒険期間:04月07日〜04月15日
リプレイ公開日:2005年04月15日
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●オープニング
梅は咲いたか、桜はまだかいな‥‥っと言いますが、桜の花の花見が全盛期に成ったのは江戸中期、8代将軍が桜並木を作ってくれ事に由来してたりします。
そんでもってそれ以後、江戸庶民のデザートと言うかベストスイーツに桜餅がランクインしたりしたのはまた別のお話。
そんなわけでジ・アースの世界では花見と言えば梅、桜を愛でる人なんて極少数派なんですが‥‥その少数派に分類される人間が茶の湯なんかやってたりすると、周りの人間もそれに引っ張られる訳でして‥‥。ここ温泉教団でも女将さんが桜を愛でる為、桜の咲くこの季節になると、野点やら花見やら、お団子やらがお茶の席を賑やわせている。
相変わらずの説明で申し訳ないが、謎の温泉教団は、八百万の神を信仰する宗教団体である。
温泉には神が宿り住んでおり、温泉に入ることが神様の恩恵を授かることを教義としている団体である。
温泉に入るための礼儀作法には厳しいがそれ以外はおおむねざっくばらんである。
彼らは温泉寺に住み、檀家の者達おも温泉へといざなう。
温泉寺の裏はもちろん温泉である。温泉に入り身体を癒し、心を癒し、平和に生きていこうと言うのが彼らの考え方である。
石灯籠の明かりの中でのんびりと温泉に入るのが彼ら流のやり方だ。
温泉脇には屋台が数軒並んでいる。甘酒や蜜柑酒、よく冷えた瓜、馬肉のすき焼きや新鮮な果物なども売られている。
春の味覚のタケノコご飯を看板に、甘酒を片手に塩煎餅を楽しむ人達、山の清流で取れた虹鱒を使った鱒寿司に甘美の声を上げる者達、鯨肉のステーキ丼を笑顔で頬張る人達。野生の黒豚の肉で作った焼き豚(串焼きの様な物)を頬張り満面の笑みをあげる物達、謎の温泉教団の温泉宿は温泉を楽しみながら紅葉と食欲の秋を満喫する人達でいっぱいであった。
無論温泉と女体を楽しむ者達も多い。
うら若き乙女によるマッサージのサービスを堪能することも出来るサービスや、真夜中に女性従業員の入浴を覗くことが出来る覗き部屋なども好評で連日連夜客足の絶えない状況が続いている。
竹林の温泉の中では竹のニオイ香しく温泉を満喫することが出来る。温泉宿としては大繁盛を納めていた。連日連夜の満員御礼に嬉しい悲鳴は鳴りやまなかった。
そして順風満帆。遂に温泉宿の専用の宿屋(別館)が建築され、お客の入りも前とは比べ物にならないほどの入りに成っていた。
さらに増築された温泉で楽しむ戸棚風呂(足湯と蒸し風呂の両方が楽しめる湯)も好評で、近くの村々からのお客さんで活気溢れている。
「春と言えば桜、温泉の桜も見頃だし、桜を愛でる花見パーティーと行きましょうか?」
新しくお宿にパテシエ(っと呼んでいるが実は和菓子職人)を招き入れ、料理長も新鮮な食材を仕入れて準備万端。早速と言うか冒険者を招き入れる準備を始めた。
「桜を愛でながらお酒を飲む、ついでに宴会を盛り上げてくれる要員として呼びましょう。これやったら仕事しながらお酒も料理も口にできるやろ」
女将の粋な計らいでその依頼は依頼された。
『花見の宴会の席を盛り上げてください』っと‥‥。
●リプレイ本文
●謎の温泉教団と温泉宿
星々が瞬く夜。月明かりに照らされて、石灯籠の明かりに照らされて、ほんのり桜色に色づいた桜が彩る温泉宿の温泉。お座敷では花見客が静かに寝息を立てている。
尽くすべくを尽くし、宴会はそれなりの盛り上がりを見せ、一同は一時の休息を楽しんでいた。
「今日はお疲れ様でございました。後はごゆるりと夜桜を楽しみながら、湯を堪能してくださいまし」
そう言って彩花が深々と頭を下げた。いつもよりどこか甲斐甲斐しい。
鳳刹那(ea0299)が彩花の杯に酌をする。
彩花が甘酒を口に運びながらほぅっと頬を赤らめる。
「そう言えば彩花さん。名物なんですが、水ようかんってどうでしょう? 清流で冷やして、冷たくしてからお出しすれば受けないかと‥‥それと『従業員艶姿之図』もお勧めです。従業員のHな絵を販売すると言うことで‥‥」
刹那の言葉に彩花が足を開き服の裾を捲り、胸元を開いてみせる。
「こんな感じやろか?」
乱れた彩花の艶姿に生唾を飲む刹那。
「そう‥‥ですねぇ‥‥あとは絡みなんかも良いかも知れませんねぇ」
そう言ってゆっくりと彩花に覆い被さる刹那。
彩花の太ももの間に太ももを滑り込ませ、彼女の胸に胸を預ける。
やがてお互いに近づく顔と顔。
そのままの勢いで無言で唇を重ねる‥‥そのままゆっくりと押し倒されていく彩花。
‥‥数分間の間‥‥。
「何してるんですか?」
如月あおい(ea0697)の言葉ではたと離れる二人。
「いえね。絵双紙用にポーズを考えていた所なんですよ?」
そう言って乱れ髪を整える彩花。
「それなら私も入れて下さいな」
そう言って何事も無かったかのように如月あおいが加わる。
その間にいそいそと着物の乱れを正す鳳刹那。
奉丈遮那(ea0758)が人遁の術で女性に化ける。残念ながらこの術で個人に化けることは出来ないので、彩花に似せた背格好の人物‥‥っと言うことになる。
「あらあら奉丈はん、またそないな格好して‥‥」
乱れ髪を整えながら彩花が温泉へと浸かる。
「マッサージさせてもらって良いですか?」
女性に成った奉丈遮那が彩花にマッサージを強要する。
「えぇよ。しばらく会えんようになるし、ウチの乳‥‥揉ませたげる」
そう言って奉丈遮那の膝の上に座る彩花。彩花を羽交い締めにするようにして遮那は彼女をマッサージする。
「そう言えば‥‥名物は‥‥どんな物が良いんでしょう?」
マッサージを続けながら奉丈遮那が彩花に質問する。
「例えばお饅頭とかでもえんやけど、その品物を見たら温泉教団を思い出す‥‥みたいな物がええとおもうんよ。オリジナルの扇子とか浴衣とか手ぬぐいとか。そう言う路線でなんかえぇもんがないやろか、おもうとるんやけどね」
桜を見たら温泉教団を思い出すでも良いのだろうが、少々難問である。
「それではそれがしはどじょうすくいをやるでござる」
神山明人(ea5209)がどじょうすくいを踊る横でアルル・プロト(ea3560)が歌を歌う。
「思ったのですが温泉饅頭をかぐや姫の形にして、竹に入れて販売と言うのはどうでしょう?」
アルル・プロトが良案を持ち込む。それを彩花が少々改良する。
「ほなら水ようかんでもいけるんじゃ無いですやろか? アレなら型に入れて作れますし」
にっこり微笑む彩花。おいしいおみやげが出来そうである。
「こっちはなにしてるのん?」
するりと温泉からあがると、そう言って巽弥生(ea0028)の肩にそっと手を回す彩花。手は肩に回ってるが、目線は彼女の身体にそそがれている。
「あの‥‥彩花さん?」
にんまりと微笑みながら弥生の耳元にそっと唇を近づける彩花。
「今回はサービスです。彼女連れてその竹やぶの間の路地を抜けてご覧なさい。良い物用意してありますから」
そう言って彩花は微笑を浮かべながら、弥生の背中をぽんっと叩いた。
巽弥生が野村小鳥(ea0547)を誘って竹藪へと入る。
月明かりしか無い細い道をただひたすらに進むと小さな明かりが目に止まった。
そこには桜の木に吊された提灯と、その下に縁台。そして甘酒が用意されていた。
「ふっ‥‥二人切りでこうしてお酒飲むのって‥‥初めてですよね」
震える声で弥生が小鳥に話しかける。
鬼神ノ小柄の影響か、何もないところで転びそうになる小鳥。
そんな小鳥をそっと抱き寄せて、弥生は小鳥に杯を一つ手渡した。
「(くぅ〜彩花さんありがとう)」
心の中で感謝を込めて弥生と小鳥は静かに杯を交わすのであった。
「いつも‥‥お疲れ様です‥‥」
如月妖乱(ea2948)が桜の花の下で野点を催す。
抹茶が注がれた茶器をそっと彩花に差し出す。彩花はそれをすっと受け取り静かに口に運ぶ。
お互い全裸で無ければもの凄く雅な光景である。
「そうだ、妖乱ちゃんには後で大事なお話があるの‥‥戸棚風呂の方で待っててくれるかな?」
そう言ってにっこり微笑む彩花は、どことなく寂しそうだった。
「お勤めご苦労さまです。まぁ一杯どうですか?」
橘命(ea8674)が杯を差し出す。彩花はそれをクイっと一気に飲み干した。
「なんか今日は皆さん気前がえぇどすなぁ」
そう言って彩花がにっこり微笑む。
「そう言う彩花さんも今日はサービスが良いですよ」
橘命が嬉しそうに彩花に寄り添う。
レイナス・フォルスティン(ea9885)が剣での舞踏を行う。
ジャパンには無い作法だが、異国では剣を抜いて舞うのだろう。エジプト出身の彼ならではの発想であるが。
「温泉には武器を持ち込んだらあきません。士農工商差別なく、神様の前では皆平等に分け隔て無くがもっとーです」
そう言ってポンと胸を張る彩花。
そんな彩花の隣で一人静かに酒を空けていくのはレイヴァン・クロスフォード(eb0654)。既に一升は空けただろうか、湯に浮かぶお盆の上の空徳利がそれを物語っている。
「温泉の中でお酒を飲むと良い安いんできーつけたってくださいな」
彩花の言葉にもしどろもどろなレイヴァン。
高町恭華(eb0494)が薄い絹の着物で舞を踊る。どこか先ほどのエジプトの踊りに似た雰囲気を醸し出す。そんな感じの優美な優雅な独特の感じが温泉客の目を惹いている。
無論お湯に濡れた肌のおかげですっかり透けてしまっているのだが。そんなことはお構いなしに踊っている。
「おまっとさんどした」
彩花が戸棚風呂の入り口をくぐる。
如月妖乱と鳳刹那が戸棚風呂の中でにじりにじりと汗を絞り出している。
「お話って何ですか?」
二人が彩花に目線を移して話を聞こうとする。
話しにくい話なのだろう。ほうっと小さなため息をついてからゆっくりと、淡々と語り始める。
「実は‥‥もう小鳥はん当たりは感づいてるみたいなんやけど、ウチ今度しばらく京都の方へ出かける事になりましてん」
そう言って二人を彩花は一枚の板を引っ張りだした。板に掘られた絵図面である。
「これは?」
二人が彩花に質問する。
「私がかんがえとる温泉教団本尊の絵図面なんよ。温泉教団は道々にして温泉を渡り歩いて説法を解いてるんやけどね。やっぱりここの温泉宿みたいに一つの場所に留まった方が、沢山の人達に温泉の良いところを理解して貰えるとおもうんよ。それでね? ここだと流石に狭いから新しい土地をさがしてたんやけど‥‥」
そう言って彩花はにっこり微笑んだ。
元々ここは古寺買い取って宿泊施設を増設して作れた温泉宿である。それほど広いと言うわけでなく。30人も止まれば一杯一杯である。
「それで、今はまだ場所は言えないんやけど。京都方面で安くて広くて山奥で交通の便が良くて隔離されている温泉地を発見したんよ。まぁ多少手は加えないとアカンのやけど」
山奥で交通の便が良くて隔離されてるのはもの凄く矛盾してる気がするが、何とか二人はそれにツッコミを入れるのを思いとどまった。
「それでしばらくの間京都方面に視察に行ってきます。その前に二人に渡しておく物があって今回は呼び出しました」
そう言って彩花は2人に一枚づつ、目録を手渡した。
「2人とも温泉仮定初段認定おめでとう」
突然の事に目を丸くする二人。
「ついて行っては‥‥ダメですか?」
妖乱が静かに口を紡ぐ
「わっ私も‥‥」
刹那もまた声をあらげる。
「出発は今月の下旬‥‥一応船のキップは何枚か予備があるんやけど‥‥もう一度良く考え直して、それでも後悔しないんやったら‥‥ウチはかまわんよ」
そう言って汗にまみれながら彩花はにっこり微笑んだ。
満面の笑みの中に小さな小さな涙を浮かべて