魔法少女は振り向かない。6

■シリーズシナリオ


担当:

対応レベル:3〜7lv

難易度:難しい

成功報酬:2 G 66 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月15日〜10月23日

リプレイ公開日:2005年10月23日

●オープニング

●魔法少女は振り向かない。6
 とある所に一人の魔法少女に憧れる女の子がおりました。
 彼女の名前はシーマ・グリューネワルト、親しい友人からは由美(ゆみ)ちゃんと呼びます。それは彼女の本名が葉月由美(はづき ゆみ)だからです。
 彼女はとある志士の家に生まれました。彼女の家には嫡男がおらず、女性では有りますが、彼女は家を継ぐことが定められておりました。
 厳格なお父様から剣術と精霊魔術、それに武芸や学問を教わる毎日ですが、それでも魔法少女に成りたいという夢は捨てきれず、日々魔法少女に憧れていました。

 ある日を境に、彼女は魔法少女に成るために家をでて、この江戸近郊で見聞を広めていた。(本当はチョット違うけど)

●鬼退治をしておいで
 今日ものんきにおそばやさんでトロロ蕎麦を啜っていた葉月由美。
 そんな彼女の元に、大津の実家からお手紙が届きました。
『由美へ。鬼退治は進んでいますか? 早く百鬼の鬼退治をして、家に帰ってきて下さい。父より』
 そう言えばすっかり忘れていた‥‥っと言う感じで葉月由美。早く沢山の鬼を倒して、家に報告しなければ‥‥仕送り止められちゃったらとてもピンチです。
 そんな彼女の元に冒険の依頼が舞い込んできました。
 裏山に犬鬼が数匹住み着いて、畑を荒らして困っています。何とかして下さい。

「これだわ。犬鬼だって鬼だもの。倒して実家に報告しましょう♪」
 葉月由美はそう言ってにっこり微笑んだ。
 彼女の右手には革の鞭。そしてその服装は魔法少女のローブで包んだ12才の少女。
葉月由美は今日も今日とて、冒険の旅に出るのである。

「もちろん冒険者のみんなも一緒だよ♪」

 っと言うわけで相変わらずの依頼であるが、コボルト退治のメンバー募集。
今回少々強めのコボルトも混じってるから気を付けて。

●今回の参加者

 ea9916 結城 夕貴(27歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb0062 ケイン・クロード(30歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 eb0084 柳 花蓮(19歳・♀・僧侶・エルフ・華仙教大国)
 eb1987 神哭月 凛(30歳・♀・陰陽師・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●魔法少女は振り向かない6

 雨が降る。
 しとやかに雨が降る。
 10月に降る雨、肌寒い秋雨。
 林にふる雨。
 服を濡らす程度の小雨なれど、木の葉にあつまって落ちる水滴は大粒の雨に勝る。
 林の中では得てして、こういう不思議な雨を体験出来てしまう物だ。

 魔法少女見習いのシーマ・グリューネワルト(葉月由美)と4人は林の中へ足を踏み入れていた。

 教科書通りに依頼を受け、話の内容に寄るとコボルトは約7〜8匹。その中にリーダー格のコボルトも混じっているとか居ないとか。
 そんなコボルト達が、林に住み着き驚異と成っているため、それを退治するか追い払うのが今回の任務‥‥っと言うことになる。

 首輪を付けて、ポトフ役の結城夕貴(ea9916)が先頭を切って前を歩く。
 今回は着ぐるみは着ていない。流石に重量がかさむのであろう。巫女衣装だけである。

「ねぇ、今日は人数少ないけど‥‥大丈夫かなぁ?」
 傘を差し、魔法少女のローブでテクテクとそれに付いていく葉月由美。
 10月の季節にしては少々薄着過ぎるローブである。
「大丈夫だと思うデス。がんばりましょう。ワン」
 ポトフがそう言って、由美に相づちを打つ。

「余り深くには入らず、どこかで宿を取り、山から下りてくるコボルト達と一戦交えましょう」
 ケイン・クロード(eb0062)がそう言って由美に提案する。
 コボルト達が居るであろう山にうかつに入り込むのは危険だと判断したからである。
「そして村人の話では、この先に温泉が湧いている様です。しかもコボルト達は夜な夜なその温泉に入りに来ている様です。そこでコボルトを待ち伏せしましょう」
 ケイン・クロードの言葉に由美がにっこりとうなずく。
 コボルト達が温泉を利用していれば、そこで敵を迎撃することが出来る。

 しかし、見てきたような情報であるが、どっから入手したんだろう?
 忍び装束姿で得意顔なケイン・クロード。
 ダレも行ったことがないけど、幻の滝には伝説の竜が住んでいる。
 っと言うような物に類似している物として話を進めよう。

 星空は見えない。
 月明かりさえない。
 見つかると不味いので明かりも持たず、夜の闇の中を移動する面々。
 このまま迷子に成るのでは無いかとドキドキ移動である。

「たぶん‥‥こっち方向‥‥みたいですわねえ」
 柳花蓮(eb0084)がそう言って指さす。
 彼女は多少夜目が利くようである。
 柳花蓮。巫女衣装に力たすきの彼女は、華国からやってきた僧侶である。
 しかし、ジャパン語もそつなくこなす。語学力を持っている。
 草をかき分け、獣たちが利用する温泉に、何とかたどり着くことが出来た。

「えーと、一応テントを持ってきましたので、チョット狭いけど、みんなで寝ましょう」
 彼女はそう言って4人用テントを二つ用意していた。
 もちろんポトフ係りに持たせていた物であるが。
 1つは男性陣専用。もう一つは女性陣4人用である。

「そう言えば、シーマさん。魔法少女とは魔法を使う少女の事ですよね? シーマさんは既に魔法を使えるのに、何故魔法少女を『目指して』いるのでしょうか?」
 神哭月凛(eb1987)が静かに‥‥つぶやくようにして、葉月由美に質問する。
 陰陽師であり、占い師でも有る彼女にとって、言霊はとても大事である。
 言葉の言い回し的に気になっているのであろう。

「えーとね。凛さん温かいおそばを食べるとするよね? おそばやさんで。‥‥んで、もしそのお客さんが、ズルズル音がうるさかったり、おつゆを回りにいっぱい飛ばしたり、礼儀作法が良くなかったらどう思う?」
 そう言ってシーマが凛に質問する。
「それは‥‥不快に思うかも知れません」
 神哭月凛が表情一つ変えずにそう答える。
「魔法少女も一緒なんだ。ただ魔法を使えば良いって訳じゃなくてね? 一人前の魔法少女っていうのは、他人が見ても涼やかであり、清楚で可憐で無ければ行けないんだ。それを研究して、一人前になるのが‥‥私の修行なんだよ」
 口から出任せも良く言った者である。っがあながち当たらずしも遠からず。
 何となく神哭月凛は納得することとなる。

 男性用テントで、ケイン・クロードは一人静かに考える。
 男性は今の所彼だけ(?)である。なんとしても自分がみんなを守らなければと言う決意があるのである。

 一方、女性用のテントは賑やかである。
 4人の娘(?)が枕を並べて寝ているのであるから。
「あの‥‥いや‥‥え〜とボクは‥‥向こうのテントに‥‥」
 そう言って抜け出そうとする結城夕貴の裾を、柳花蓮がつかんで離さない。
「何処に行くの? ポトフ。もう寝る時間ですよ?」
 柳花蓮と葉月由美に挟まれる様にして川の字で眠らされる結城夕貴。
 柳花蓮が何を考えているのか、表情を顔に出さない彼女からは読み取れない。
 だが、苦笑をこぼしているのは聞き取れる。
 狭いテントの中で、毛布にくるまって3人は眠る。
 神哭月凛は葉月由美の逆となりに眠る形となった。

 まるで抱き枕を抱くようにして、葉月由美が結城夕貴を抱きしめて眠る。
 ふくらみかけの彼女の胸が、結城夕貴の背中に押し当てられている。
 彼女の両手は結城夕貴の胴にくるりと回っている。
 胸を高鳴らせ、なかなか寝付けない。結城夕貴。
「これ‥‥ポトフ。女性が女性に欲情などしてはいけませんよ?」
 ポトフの正面に位置するのは柳花蓮。
 葉月由美と2人で彼を挟むような形である。
 指遊びなのか、彼女の指が結城夕貴の胸の上でのの字を書いている。

●戦闘
 眠れぬ一人を抜きにして、彼女たちは万全の体勢でコボルトを迎え撃つ事に成功した。
 柳花蓮のバイブレーションセンサーに寄ると敵は6匹。
 そのうち1匹がボスなのであろう。
 そいつを見つけ出し、倒すことが出来れば、臆病なコボルトを追い払う事には成功するだろう。
 結城夕貴とケイン・クロードが頃合いを見計らって温泉に飛び出す。
 コボルト‥‥犬鬼達は不意をつかれた。
 人間は2名。しかし、風呂を楽しんでいた彼らは武器を携帯していなかった。
 それでも人間2人を犬鬼6匹で闘うのは訳はない。4匹が2人に対して2匹づつ襲いかかり、残りの2匹が武器を取るために林へと上がる。
 それを待ち受けていたのは、木の上に登り、颯爽と構える葉月由美。
「邪悪を許さぬ清めの風! シーマ・グリューネワルト! 見参!」
 ケイン・クロードの言葉に少しアドリブを乗せ、登場のセリフを放つシーマ。
「魔法少女・花蓮、人々にあだなす鬼を退治させていただきます‥‥」
 さらに続く柳花蓮。地面にスクロールを用意する。
 スクロールは見て唱えなければ成らないので、予め待ち伏せする必要があったのだ。
 同様に神哭月凛もスクロールを用意している。

「いけ! マグナブロー!」
 地面から炎の柱が上がる。
「ゆけ、グラビティーキャノン!」
 柳花蓮がつきだした拳から重力波動が敵を襲う。
 同時攻撃を受け、一匹の犬鬼が吹き飛ばされる。
「とどろけ疾風! 集え旋風!」
 シーマ・グリューネワルトの身体に風が纏われる。
 槍を手にした別の犬鬼へと突撃するシーマ。
 風が相手の攻撃を多少なりともそらしてくれている。
 彼女の鞭が唸りを上げる。
 残念ながら今回は雷は付与されていない。
 それでも互角以上に闘うシーマ。
 数分後、彼女は何とか犬鬼を倒すことが出来た。

 しかし、それより前に、柳花蓮と神哭月凛の2人はもう一匹のコボルトを倒していた。
「さぁここで気を抜いては行けないわ、シーマ。仲間が私たちを待っているわよ!」
 そう言って三人は温泉へと向かうのであった。

 痛恨なのは犬鬼達である。
 武器を取りに行った仲間が援軍として戻ってきたのかと思えば、帰ってきたのは敵である。
 しかも前後を挟まれるようにして攻撃を受けることになるのである。
 戦術的に戦力を分散した彼らは、各個撃破される運命へと誘われた。

 かくして、静かなる戦いは、シーマ達の勝利で幕を閉じた。
 次回に課題はいくつか残るがそれはそれ、今日の戦いを胸に秘め、温泉でゆっくり疲れをいやしながら、次の冒険を夢見る面々であった。

 どっとはらい。