新撰組3番隊 番外編2−2

■シリーズシナリオ


担当:

対応レベル:3〜7lv

難易度:難しい

成功報酬:2 G 66 C

参加人数:12人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月10日〜07月18日

リプレイ公開日:2005年07月18日

●オープニング

●新撰組3番隊 番外編2−2
 初夏の日差しのまぶしい7月。黄泉人との戦いから冷めやらぬ日々の中。
 新撰組屯所、斉藤一の寝所に向かってどかどかと走っていく小粒な影が一つ。
 ご存じ三番隊組長補佐の小春である。
「斉藤さ〜ん。また遊びに行きましょ〜」
 がらりと斉藤の寝所を開けるとそこには斉藤の姿は無く、部屋のど真ん中に堂々と柳の木が一本生えていた‥‥。
「‥‥‥‥は!?」
 言葉を失う小春‥‥一体どんな反応をすれば良いのだろうか‥‥。
「ひらめいた♪」
 何かにひらめいたのか、小春はいそいそと羽織を脱ぎ出す。
 そしてそのまま袴を脱ぎ捨て、着ていた着物を脱ぐ。
「今日は暑いなぁ〜♪ ここで全裸に成って寝ちゃおうかなぁ〜♪」
 棒読みだが、大きな声でそう言うと、小春は着ていた着物を脱ぎ捨て、最後の一枚の黒の股引に手をかけた。
「こら、まて、小春。人前ではしたない」
 柳が突然小春に話しかける。
「やっぱり斉藤さんでしたね。そうじゃないかと思ったんですよ」
 小春は胸のサラシをまき直しつつ、柳に仮装した斉藤を見つめた。

「小春は見せすぎだ。もう少し恥じらいと言う物を憶えなさい」
 斉藤がそう言って頬を赤らめながら、柳の仮装を脱ぐ。
「あーこの間は幼児体型だから見るに値しないとか言ってた癖にぃ〜。それよりまた花見にでも行きませんか? 今なら紫陽花が見頃ですし‥‥」
 小春の言葉に斉藤が静かに苦笑する。

「‥‥残念ながら仕事だ。冒険者連れて鴨川河川敷の巡回をやってもらおうと思っている。
まぁ川底を張って黄泉人が京都に潜入でもするんじゃないか‥‥っと言う事でそれを警戒するのが警備の主旨なんだが‥‥。まぁあの辺は夜鷹も多い。治安も悪い。治安維持に貢献する形でちと夜回りでもしてもらおうかと思っている」
 そう言って斉藤はいそいそと着替えた。
「斉藤さんはどうするんです? 一緒に見まわりですか?」
 着物を着ながら小春が斉藤に質問する。

「いや、俺は橋のたもとで釣りでも楽しむ予定だ。冒険者に治安維持のイロハを教えてやらなきゃならんし、小春が居れば問題なかろう。巡回の休み時間にはおしゃべりにもつきあってやるが、まぁ冒険者の手に余る程の大物がかかるとは思ってないんでな」
 斉藤はそう言って笑みを浮かべた。

「それじゃぁ斉藤さんはアドバイス係りって事で、実際に巡回の方は私と冒険者の方で行いますね」
 そう言って小春は隊の運営費片手に冒険者ギルドの門を叩いた。

『小春ちゃんと一緒に鴨川河川敷の巡回をしてくれる人募集。何も出てこないと思うけど、一応治安維持活動の一環と言うことで。‥‥追伸、斉藤さんが応えられる範囲で一問一答してくれます。』

●今回の参加者

 ea0020 月詠 葵(21歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0585 山崎 剱紅狼(37歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea1057 氷雨 鳳(37歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea1765 猛省 鬼姫(31歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea5480 水葉 さくら(25歳・♀・神聖騎士・人間・ジャパン)
 eb0524 鷹神 紫由莉(38歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb1528 山本 佳澄(31歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb1647 狭霧 氷冥(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb2127 字 冬狐(28歳・♀・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb2137 シィル・セインド(30歳・♀・レンジャー・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb2281 リティーラン・オービス(13歳・♀・クレリック・エルフ・イギリス王国)
 eb2704 乃木坂 雷電(24歳・♂・神聖騎士・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●新撰組三番隊 番外編2−2
 平安京とは碁盤の目のような形に作られている。
その碁盤の右端の縁の部分に当たるのが、東京極大路と呼ばれる大きな道である。
 鴨川とはこの東京極大路にそうような形で、北から南へ真っ直ぐに流れる河である。
 実際の所は少々違うのだが、おおむねこの鴨川の西が平安京、鴨川の東が平安京の外だと思えばよろしい。
 新撰組三番隊では、京都左京区区外地域と呼んだり、外京と呼ばれたりする場所である。
(東京極大路より東は京都の外と言う事になるが、沢山の家や建物が建ち並んでにぎわっている)
 無論川幅もあり、川の両岸には茂みもあれば河原もあり、大きな面積を有している。
大きな川であるから、渡し船で渡るのが良かったりするのだが、一応大きな橋が架けられている。
 二条大路から東、白河に伸びる橋。五条大路、六条大路、七条大路から東に延びる橋が架けられており、交通の要所と成っている。
 それぞれ、二条大橋、五条大橋、六条大橋、七条大橋と呼ばれている。
 今回巡回する場所は、二条大橋から五条大橋まで左右の対岸である。
 これを反時計回りに巡回することになる。

「一周約3〜4km程だ。1時間〜2時間もあれば一周出来るだろう。くれぐれも無用な騒ぎやトラブルを起こさないように。手当たり次第に夜鷹を捕まえたり、酔っぱらいを全て捕まえたりしてたらきりがないからな、犯罪抑制の為に心がけてくれ」
 新撰組三番隊組長斉藤初めがそう言って集まった冒険者達に挨拶をする。

 集まった冒険者は11名、それに小春を含めて12名、6人ずつで巡回予定である。
 黒い着流しを着た普段着姿の斉藤一はいつになく真面目な顔をしている。
 普段は女の尻を触るのが好きな、女好きを装っているが、実は切れ者で剣の腕は達人級、新撰組の中でも1.2を争う程の腕前ともっぱらの噂である。

「さて、俺は釣り糸を垂らしながら、ここにいる。一周する事に報告をするように。っと巡回の前に一問一答を受けてやろう」
 斉藤がそう言って全員に一人づつ質問するようにと話を振り、ごろりと河原に寝そべった。

「え〜と。考えてくるの忘れちゃったです」
 月詠葵(ea0020)がそう言って笑ってごまかす。斉藤一も苦笑いである。

「新撰組にから正式に入隊するには、どうすれば良いんだ?」
 つづいて、山崎剱紅狼(ea0585)が斉藤一に質問する。
「新撰組の正式な平隊士に採用されるには、元徳家康公に忠誠を誓い、近藤局長、芹沢局長の承認を得れば、晴れて正式な隊士に成れる。‥‥っといってもいきなりそうなるのは大変だ、まず現在1番から10番まである各隊の組長に頼み、その隊付きのの仮隊士になる。3番隊仮隊士とかだな。しばらくの間仮隊士として仕事をこなし、組長から正式な隊士に成れるように推薦して貰う。組長クラスの推薦が有れば両局長もイヤとは言わないからな」
 そこで一息ついてさらに説明を続ける。
「正式に隊士に成りたいなら侍や浪人などが好ましい。ジャパン以外の生まれの奴や志士なんかでもかまわないが、ちょいと難易度は高くなる。三番隊ではその辺は気にせずに、腕が立って忠誠心が高い奴は仮隊士、平隊士として採用するようにしている。最近の噂では11番隊発足と言う話しも上がっているし、それにともなって大和の南部にまた黄泉将軍狩りに行くという話しもでている。だから、この時期なら正式に取り立てて貰いやすいぜ? もっとも他の主君の下で働いていると成ると、ちょいと問題だがな」
 そう言って斉藤は苦笑した。

「私は質問では無いのだが‥‥一曲、私の笛を聞いて頂けないだろうか、斉藤さん」
 斉藤の許しを得て、氷雨鳳(ea1057)が笛を吹く。
「感想を頂いてもよろしいかな?」
 彼女の言葉に少し考える斉藤。
「俺は無頼漢なんで、難しいことは分からないが、心地良いとは思う」
 その言葉に氷雨鳳は喜びを見いだしていた。

「美味い蕎麦屋、あれ、どうなったんだ? 触った分きっちり元は取らせてもらわねえとなあ。‥‥後この前の黄泉将軍だっけ? あれ、どうなったか分かるか? 仲間やられた分きちんとやり返してやる‥‥」
 猛省鬼姫(ea1765)の言葉に斉藤は苦笑しながら、指で顔を近づけるように合図する。
 猛省鬼姫が斉藤に近づくと。斉藤の両手が彼女の腰と背中に回り、彼女を自分に覆い被せるようにして抱き寄せる。
「なっ‥‥な!?」
 突然の事に動揺する鬼姫、そんな彼女に耳元にそっと口を近づけ語りかける斉藤。
「一人一つの質問なのに、2つ質問したペナルティだ。‥‥さて、美味い蕎麦屋だが、仕事が終わったら連れて行ってやろう。2人切りでな‥‥。もう一つ、黄泉将軍だが、神楽坂紫苑お嬢様に討伐をお願いした。つい今しがた、討伐には成功したという報告を受けたぜ‥‥」
 そう言って斉藤が鬼姫の耳元に優しく囁きながら、彼女のお尻を優しく撫でる。
「‥‥黄泉人で思い出したが、夏の夜の鴨川は怪談話の宝庫だ。女の幽霊を見たとか人魂を見たなんて話を良く聞く‥‥くれぐれも注意することだな」
 斉藤の言葉に鬼姫が硬直する。実は怪談話は苦手なのである。
「だっ、大丈夫だ。それよりまた触ったんだから、蕎麦はお前のおごりだからな」
 そう言ってぎこちない動きで鬼姫が斉藤の腕の中から逃げて行く。

「‥‥あの‥‥や、やっぱりお好きな食べ物は御蕎麦‥‥なんでしょうか?」
 水葉さくら(ea5480)の何気ない質問に微笑しながら斉藤が応える。
「そうだな、蕎麦は好きだな、ざるそば、もりそば、きつねそば‥‥それにいなり寿司も好きだ。関西のいなり寿司は中に五目ご飯が入っていて美味しいしな。今度一緒に食べに行こうか?」
 斉藤の言葉に頬を赤らめながら、水葉さくらが首を縦に振る。

「治安維持の為に、どの辺りを重点的に見たらよろしいでしょうね? 斉藤様。よろしければお考えをお聞かせ下さいませ」
 鷹神紫由莉(eb0524)が酷く真面目な質問をする。
「うん。鴨川の両岸には屋台や飲み屋も多く見られるし、夜中まで営業している物も多い。酒が入ってハメを外す者が川に飛び込んだり、刀振り回したりしないように、犯罪抑止力としての巡回をお願いしたい。別に捕まえてこいとは言わないよ。定期的に見まわりが歩いていれば少しは彼らも気を引き締めるだろう?」
 斉藤の言葉になるほどっと鷹神紫由莉が手を叩く。
 彼女は斉藤と仕事が出来るというだけでご満悦な部分がある。

「私の質問は先に言われちゃいましたね。特には無いですね」
 山本佳澄(eb1528)がそう言って苦笑する。
 斉藤はそんな彼女の頬を優しく撫でてやる。

「え〜と、私も質問は無いですね。斉藤さんも後で一緒にお茶漬け食べます?」
 狭霧氷冥(eb1647)がそう言ってニパリと微笑む。
「悪いが先約があるんでな。今度ゆっくりご一緒させて貰うことにするよ」
 そう言って斉藤は彼女の背中をポンポンっと叩いた。

「初めまして、斉藤さん。私も質問を忘れていましたわ‥‥。そうだ、治安維持のイロハをお教えいただけますか?」
 字冬狐(eb2127)がそう言って斉藤に近づく。
「あぁいいとも。治安ってのは要するに規則正しい生活をさせることではなく‥‥、多少ハメを外しても良いが、度を過ぎた事をさせないことだ。例えば‥‥」
 そっと近づいた冬狐の胸を優しく手で触れる斉藤。
「服の上から手が触れた程度なら、酒の上の不埒で済むかも知れない。だが、この先まで進んだら困るだろう?」
 そう言って斉藤が彼女の腰ひもに手をかける。それを引けば腰ひもがほどけ、彼女の袴は脱げてしまうだろう。
「そうならないように、公衆の面前ではほどほどにってのを分かって貰えばいい。自分たちは見られて居るんだぞ‥‥っと言うのを意識して貰うのが大事なんだ」
 そう言って斉藤は腰ひもから手を離す。
「成るほど‥‥おっしゃる事は分かりましたわ」
 冬狐がそう言って優しくうなずく。
「人が見てない場所で‥‥2人きりでなら‥‥問題無いと言うことですね?」
 そう言って冬狐は斉藤をからかうように優しく笑みを見せた。

「種族としてのハーフエルフはどう思いますか?」
 シィル・セインド(eb2137)が率直に質問する。斉藤がそれに少し悩みながら答える。
「ハーフエルフってのが全体的にどんな物か分からないが、おおむね俺の知っているハーフエルフは、小振りで脂肪の少ない身体をしている」
 そう言ってシィルの手を引くとグイと引き寄せ。抱きしめる。
 右手はお尻に、左手は背中に回っている。
 彼女の胸が斉藤の胸に押し当てられるような形になる。
「胸はやや小振り、お尻も小さめだが、俺はそう言うのは好きだぜ?」
 斉藤に好きと言われ、頬を赤らめながら、腕の中から抜け出すシィル。

「最後の質問は私デース。新撰組三番隊に入りたいんですけど、私でも入れますか?」
 リティーラン・オービス(eb2281)に斉藤が少々困っている。
「入れてやりたいが、正規隊員に成るには有る程度の腕前が必要なんだ。三番隊所属の仮隊士になら取り立ててやってもいいが、お嬢ちゃんはちっちゃいからケガしたら大変なんじゃないかな?」
 斉藤の言葉に少々考えるリティーラン・オービス。
「私は抱きしめたり、お尻触ったりしないんですか?」
 彼女の言葉に斉藤は微笑を浮かべる。
「ごめんごめん。お嬢ちゃんもレディだったんだな」
 そう言って優しく抱きしめ。お尻を優しく撫でてあげる。

「さて、斉藤さんの一問一答といつものお触り挨拶も終わったみたいなので、皆さんに提灯と蝋燭と羽織とお弁当のおにぎりを配りま〜す。羽織は後で回収するので汚したり無くしたりしないで下さいねぇ」
 やっと出番の回ってきた小春。浅黄色の段だら模様の羽織を全員に配る。背中には誠の文字が。新撰組の羽織である。
「依頼期間の間は全員三番隊仮隊士って身分に成りますんで、節操の有る行動をお願いしますね」
 そう言って小春が全員に諸注意説明すると、やっとの事で巡回は始まった。

●壱之班
 最初に巡回を始めたのは山崎剱紅狼率いる班である。
 彼以外全員女性と言うのは斉藤に取っては夢のような職場であるが、彼は今回巡回には加わらない。
「結構夜鷹も居るし、酔っぱらいも多いが、それほど治安が悪い訳じゃなさそうだな」
 山崎がそう言って巡回をしながら河原の状況を監察する。
 暗闇と言う訳ではない。あちこちで提灯(ろうそく)の明かりが見える。
「ランタンもってきたけど‥‥不要に成っちゃいましたね」
 小春に貰ったおにぎりをかじりながら、シィル・セインドがつぶやく。
「ねぇねぇ。巡回が終わったら、みんなで飲みに行かない? 勘定は割り勘が嬉しいんだけど」
 シィルがそう言いつつ、2つ目のおにぎりを口にする。
「‥‥お供します」
 水葉さくらが小声で応える。
「(本当に幽霊とかでるんだろうか‥‥)」
 当たりに目を光らせる猛省鬼姫。幽霊嫌いな彼女は心臓の鼓動が異様に早い。緊張しているのだろう。
「‥‥静かなもんだよね〜‥‥このまま何もなければ良いんだけど‥‥」
 狭霧氷冥がそう言ってにっこりほおえむ。本当に何もなければいい。
 活躍しないことが活躍なのである。治安維持とはそう言うものなのだ。
「やっと、ジャパン語が話せるようになりました」
 憶えたてのジャパン語でリティーラン・オービスが語る。まだ難しい言い回しや敬語の類は分からないが、それでも回りが何を言っているのか理解できるのは安心感がある。
「夜のお仕事は疲れます」
 彼女はそう言って笑みを絶やさない。
 新撰組の羽織を着ての巡回である。流石に緊張感があるが、6人そろって新撰組の格好で移動できるのは、なんとも嬉しい限りである。

●弐之班
 小春と葵が指揮を取るのはこちらの班は、おにぎり片手に巡回している。
 流石に小春は組長補佐と言うだけ有って、こういう作業はこなれている。
「小春殿は相変わらず元気じゃの‥‥」
 お弁当のおにぎりを口に押し込んでいる小春を見つめて、幸せそうに笑みを浮かべる氷雨鳳。
 小春はそれに気づくそぶりも見せず、ハムハムとおにぎりを食べている。
「小春さん、お酒を用意しましたので仕事終了後一杯いかがですか?」
 山本佳澄の言葉に小春が首を縦にふる。
「私はお酒が好きと言うよりは、宴会が好きかな。飲むならみんなで飲もう。斉藤さんも誘って」
 小春はそう言って二つ目のおにぎりを飲み込んだ。
「小春さん、実は私前もって、美味しいうどんのお店を見つけておいたんです。後で皆さんで暖まっていきませんか?」
 鷹神紫由莉がそう言って小春を誘う。
「そうだね。たまにはうどんも良いよね。私うどんは平べったいのが好きだな」
 平べったい味噌うどん。それは彼女の食欲をそそるキーワードである。
 もっとも雑食なんで、なんでもよく食べる娘ではあるのだが。
「お久しぶりです、小春さん。その服装は相変わらずなのですね」
 冬狐の言葉に目をぱちくりさせる小春。
小春の今の服装はかなり露出度の高い服装に成っている。
 胸を黒いサラシで包み、下は黒い股引を穿いている。
その上から羽織っている新撰組の羽織が無ければ、お祭り風の服装。
 現代風に観るなら、黒いチューブブラとスパッツと言った感じの服装である。
「あぁおひさしぶりぃ」
 少しして思い出しのか、のんびりと語り出す。
「そう言えば小春さんは志士なのですか?」
 冬狐の言葉に首を縦に振る小春。
「風の志士だよ。三番隊では組長補佐、春風の小春って呼ばれてるよぉ」
 小春は一応組長補佐。新撰組の中では組長の次に偉いのであるが、全然偉そうではない。むしろ気兼ねがない様な感じである。
 おにぎりかじりながら和気藹々と巡回する一行。一周するのにさほど時間はかからない。

●見えぬ所で。
 2つの班が巡回する鴨川の中央に、小さな一艘船が有った。
 長さ4〜5m程の船に三角に屋根をつけ、ゴザが付けてあるだけの船である。
 中の広さは畳1つ分と少々。夜鷹が客を連れ込んで、事を行うのに使われる小さな船である。
 もっとも、普通はそんな船は、橋の下や岸辺に止めてあるもので、川の中央に有るのは珍しい。
 そんな船に一人のうら若き娘が姿を見せる。
 とても安い夜鷹とは思えない、似つかわしくないその姿。
 上等な着物を着た、美しく艶やかな美女、いや絶世の美女。お姫様と呼んでも過言では無いかも知れない。
「ふむ‥‥、粒ぞろいな強者共が今日もおる。今夜も狩りはガマンせねば成らぬかのぅ」
 彼女は自分に言い聞かせるようにしてブツブツと独り言を述べる。
 京都に来てから、色々悪さをたくらんでいる彼女であったが、警備厳しく、悪さをする事が出来ないので、欲求不満が溜まっている。

 そして今夜も、彼女は渋々と悪さを諦めて船の中でふて寝するのであった。