【新撰組三番隊 番外編2−3】
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■シリーズシナリオ
担当:凪
対応レベル:6〜10lv
難易度:難しい
成功報酬:4 G 83 C
参加人数:7人
サポート参加人数:1人
冒険期間:09月18日〜09月26日
リプレイ公開日:2005年09月26日
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●オープニング
●新撰組三番隊 番外編2−3
深淵の彼方より、辛辣なる試練と呼ぶにふさわしい何かが‥‥異形の何かがその姿を現していた。
それは人ではない。
妖魔でも物の怪でもない。
されどアンデットでも無い。‥‥未知なる存在である。
近江には3つの怪談話がある。
一つは月の無い夜に現れる屋台の蕎麦屋の食い逃げの幽霊の話。
一つは雨の降る夜に船を襲うと言う巨大蟹の話。
そして、最後の一つは蓬莱山に住むと言う伝説の鬼の話である。
現在、蓬莱山に住む近江の豚鬼達は、一人の客を招き入れていた。
黄泉将軍を名乗る一人の不死人である。
彼は近江に派遣され、近江の豚鬼達をそそのかし、悪事をはたらく指令を受けていた。
近江で事件を誘発させ、神楽坂紫苑や、近江武士団が本腰を入れて大和の黄泉人討伐に出向けないようにと言う差し金なのである。
そしてその誘いに乗ったのがオークロード鐵である。
年老いた豚鬼達を豚鬼死人憑きへと変え、街や村を襲わせたり人間達の砦へオークを進軍させたりして近江の状況を悪化させているのである。
そして、先月に置いて神楽坂紫苑に深手を負わせたもう一人の来訪者がその夜蓬莱山に招き入れられていた。
月の綺麗な夜であった。金色に輝く蝶が一匹‥‥月明かりの中でひらひらとオーク達の砦に舞い降りた。
それは静かに光り輝くと、蝶の姿から美しい人間の女性の姿に変身したのである。
月明かりの中で、それは月光天女とでも呼ぶにふさわしい美しい天女かお姫様の様な姿であった。
絶世の美女とはまさに彼女の為に有るような言葉なのだろう。
文字通り『この世の物とは思えない』美しさなのである。
もっともオーク達にそれは理解されてないが。
「こんにちは、オークロード鐵さま。そして黄泉将軍様。近江の食い逃げ幽霊‥‥お呼びによりはせ参じましてございます」
そう言って彼女は静かに頭を下げた。
そば屋の蕎麦を食って琵琶湖へ逃げる食い逃げ幽霊‥‥それが彼女である。
もの凄くスケールの小さな悪事をはたらいているが、彼女の食い逃げは百戦錬磨。どんな手練れにも捕まったこと無いのがご自慢である。
そして、侮る無かれ、先に神楽坂紫苑と一戦し、彼女を血祭りに上げたのも彼女である。
「お前‥‥名前くらい名乗ったらどうなのだ?」
黄泉将軍が食い逃げ幽霊に対して名を名乗れて威圧をかける。
ちなみに黄泉将軍も名を名乗っていない。名無しの方が動きやすいからである。
「‥‥そう言えば、私には名前が有りませんでした。ここ1000年‥‥気にもとめませんでしたが‥‥そうですね‥‥今月は9月ですから‥‥九月鬼とでもおよび下さい」
そう言って彼女は静かにこうべを下げた。
「では、九月鬼殿。先の神楽坂紫苑への攻撃は誠に見事。その腕前を見込んで、もう一つ頼みが有るのですがよろしいか?」
そう言って黄泉将軍は言葉を続けた。
「神楽坂紫苑と親密な関係にある新撰組の人間が居る。その者の名は斉藤一。新撰組三番隊組長を任せられている男。出来れば奴を‥‥暗殺して頂きたい」
黄泉将軍はそう言ってニヤリと頬をゆるませた。
「それはそれは大層大きなお仕事で‥‥私などにつとまりましょうか‥‥まずは淀川に船を浮かべ、ゆっくりと監察させて頂きましょう」
そう言って九月鬼は静かに笑みを浮かべた。
●場面変わって
折しも新撰組では、京都の治安の悪化を懸念して、治安維持に力を入れていた。
新撰組三番隊もその例に漏れず。冒険者を雇って定期的に淀川の定期巡回を行っていた。
「っと言うわけで、また冒険者を頼む」
何も知らずに冒険者を雇い、淀川の警備の準備をする斉藤一。
果たして冒険者と彼の運命やいかに‥‥。
●リプレイ本文
●新撰組三番隊 番外編2−3
雨。
秋雨と呼ぶのだろうか、静かにしとしとと降る雨。
近江よりやってきた一人の娘は静かに鴨川へと足を運んでいた。
それは静かに、うごめき、そして京都に至る。
一人の娘が鴨川に船を浮かべる。一見すると普通の船だ。
長さ8mほど、船幅1mほど。江戸ではよく見られる小型の屋形船である。
いや、合えて言おう『この船は』普通の船であると
少女は鴨川に対して静かにつぶやいた。
「『オマエタチ』の出番はまだ後で‥‥まずは私が‥‥新撰組の実力、見てみますからね?」
彼女の名は九月鬼。彼女本人がそう言っているのだから間違いない。
彼女は近江では『食い逃げの幽霊』と噂される謎の女性である。
だが、彼女は本当は幽霊ではない。
そして、妖魔でもアンデットでも‥‥九尾の狐が化けた姿でも無い‥‥。
だが、鬼を名乗るのは、彼女の存在が、当たらずしも遠からずだからである。
冥府より訪れ、この地上に不幸をまき散らす鬼。その存在は彼女に似つかわしい。
九月からやってきた鬼‥‥九月鬼(きゅうけつき)を名乗る彼女‥‥その真の姿は‥‥
●鴨川の見まわり
新撰組三番隊仮隊士達により、斉藤一を筆頭に鴨川の警備が行われていた。
『人切り以蔵』『人切り彦斎』京都を代表する2大人切りが闊歩するご時世である。
特に気を引き締めて警備を行い、京都の治安を揺るぎなき物にしなければ困るのである。
先の黄泉人との戦から、京都の治安は悪化している。
盗み、たかり、強盗、それらの犯罪抑止力に成るためにも、新撰組は正義の存在として、市民に畏怖を与え続けなければ行けないのである。
「今回の見まわりは斉藤さんも一緒なのです」
そう言って斉藤の袖を引くのは月詠葵(ea0020)11才。
江戸より義姉と共に京都に足を運び、蓬莱山に住む豚鬼を倒すために、日夜剣術にいそしむ少年である。
「ん‥‥今日は女性も多いし‥‥、本当に河上彦斎当たりが出たら、俺が居ないとやばそうだし‥‥な」
そう言って葵に引かれる斉藤。彼は左手に傘を差し、静かに一同の後方をついて歩いている。
「それはそうと、紫苑から成功報酬の方の忍者刀を貰った。俺は使う予定が無いから、お前に貸しておいてやろう。無くすなよ?」
そう言って斉藤が月詠葵に一降りの忍者刀を手渡す。
黒塗りの鞘に収まった銘刀‥‥である。
彼はそれを受け取り、大きく笑みを浮かべて飛び回った。
「斉藤‥‥太っ腹だな。」
そう言って斉藤の側にそっと寄る、猛省鬼姫(ea1765)。
身長180cm。21才の女性。男勝りな部分があり、斉藤を軽視している。
彼女が斉藤の隣に立つと、猫背な斉藤が、一回りも二回りも小さく見える。
「やった訳じゃない‥‥貸した‥‥預けただけだ。もらい物だし、売っぱらうと、紫苑の奴後でうるさいし、せっかくの銘刀だから、使わないんじゃもったいない」
そう言ってポリポリと頬をかく斉藤。
「その太っ腹でまた蕎麦でもおごってくれよ。夜回りは腹が減って困るぜ」
猛省鬼姫がそう言って斉藤の肩を抱きポンポンと背中を叩く。
中途半端な距離では斉藤の傘の露を浴びてしまうため、彼の傘に入り込んだ形になっている。
「相変わらず色気より食い気なんだな‥‥。そんなことじゃ直ぐ太っちまうぞ? まぁこっちに肉が付く分には良いと思うが‥‥」
そう言って斉藤の右手が猛省鬼姫の尻を優しく撫でる。
そんな斉藤の右手首を握りしめ。きりきりと握力で締め上げる猛省鬼姫。
「そうだな‥‥今日はけんちんそばでも喰おうか? 美味い店を知ってるんだ」
そう言って引きつった笑顔を浮かべる斉藤。
けんちん蕎麦とは、大根、人参、ゴボウ、油揚げ、ネギ、里芋、こんにゃく、鴨肉、椎茸などが入った具だくさんの蕎麦である。
時折タケノコやら豆腐が入ってる居る場合もある。
斉藤の隠れた好物である。
「斉藤殿の女好きは変わらない‥‥か」
狭霧氷冥(eb1647)がそう言ってぽつりとつぶやく。
彼女は今回、膝枕をしてやる代わりに、斉藤に一緒に見まわりをするように持ちかけた策士である。
左手に提灯を持ち、小雨の降る鴨川を照らすようにして提灯の明かりを照らす。
川には夜鷹の船や渡し船がいくつか浮かんでいるだけである。特にそれという怪しい物は見受けられない。
「斉藤さん‥‥お久しぶりなの〜」
そう言って斉藤のお尻をペタペタ触るリティーラン・オービス(eb2281)
身長120cmに満たない7〜8才に見える少女。
お尻を触るのが斉藤と彼女なりの挨拶だと彼女は認識している。
「お久し‥‥ぶり」
小さな娘のお尻に手を伸ばすのに酷く抵抗を感じながら、軽くぱんぱんとお尻を触れる斉藤。
リティーラン・オービスはそれに喜んで斉藤のお尻をペタペタ触る。
「元気してた?」
彼女の言葉に斉藤が笑みで返す
「元気は元気だが、忙しすぎて過労気味かな。昼も夜も仕事で大変なんだ」
そう言って彼の笑みは苦笑いへと変貌する。
「貴方が斉藤さんです‥‥か、話に聞くように女好きの様ですね。ですが、全ての女性が貴方の行為を容認している訳ではありません。気を付けてください」
本多風露(ea8650)が静かに斉藤をにらみつける。
巫女衣装に力たすきの彼女は、この中ではかなり女っぽいのだが、その冷血な態度が斉藤を遠ざけている。
「やれやれ、手厳しい‥‥な」
そう言って斉藤は乾いた笑いを浮かべていた。
「ん? ‥‥あれは?」
山本佳澄(eb1528)が岸に寄せた夜鷹の船から手招きしている女性を見つける。
それは夜鷹など似つかわしくない、絶世の美女である。
どこかの姫君か、岡場所でも大枚はたいて買う領域の存在である。
「もし‥‥新撰組の皆さん‥‥一献いかがですか? 今日は寒いですし、一口くらい罰は当たりませんやろ?」
そう言って彼女は手招きする。
山本佳澄に続き、乃木坂雷電(eb2704)が様子を見るために土手を降りる。
「どれ‥‥美人のお誘いでは断る訳にもいかないな‥‥」
斉藤がそう言って土手を降りようとするが、それを猛省鬼姫が制する。
「まて、俺が様子を見てくるから、斉藤はしばらく待ってな」
そう言って猛省鬼姫と月詠葵が土手を降りる。
酒に薬でも盛っているのだろうか? それとも考え過ぎか?
そんな事を考えながら降りる2人。
2人は美女から杯を受け取り、警戒しながらそれを口にする。
何処という事は無い普通のどぶろくである。
「解き放たれよ! 我が魅力。包め、カリスマの束縛よ♪」
娘は小さな言葉で印を踏み、言葉を紡ぐ。
山本佳澄と乃木坂雷電がその言葉を聞き取れないまでも、見えない空気が解き放たれたのに反応する。
そして、反応が早すぎた乃木坂雷電はその束縛の内側へととらわれてしまう。
月詠葵は言葉に反応して美女に目線を送る。
彼は忘れていた。彼女は‥‥目の前に居る絶世の美女は、彼が想いを寄せる最も親しい友人である。
義兄弟の杯を交わした姉と同様か、それ以上に信頼を寄せる存在である。
「貴方のお名前は?」
絶世の美女は月詠葵に質問する。彼は素直にその質問に答えた。
「月詠葵。聞いて、彼女は貴方と私に害を及ぼそうとしているわ。今すぐに彼女を倒さないと‥‥きっと良くないことが起こるわよ?」
そう言って美女は巫女衣装に身を包んだ、本多風露を指さした。
「げしゅ。おねぃちゃんを虐める人は許さないです」
月詠葵はそう言って刀を抜くと、本多風露に対して切りかかった。
本多風露がティールの剣を使ってそれを受け止める。
「どうした!? 何が有った!?」
山本佳澄がいきなり襲ってきた月詠葵を取り押さえようとする‥‥が、忍者刀を構えた彼を簡単に取り押さえることは出来ない。
剣の腕は本多風露の方が上である。何とか彼の攻撃をさばいて取り押さえる隙を窺う。
乃木坂雷電は提灯で目の前の美女の顔を窺った。
よく見たら、彼女は無二の親友である。向こうは彼に気が付いて居ないようだが
「娘さん‥‥憶えているか? 乃木坂雷電だ」
彼がそう言って夜鷹に話しかけると夜鷹は笑みを浮かべてそれに答える。
「えぇ憶えているわ、乃木坂雷電。私の名前は九月鬼よ。‥‥聞いて頂戴‥‥雷電。彼女は私に良くない事をしようとするの。でも、私は彼女とは争いたくないわ。だから雷電。貴方彼女を押さえつけてくれないかしら? 彼女が私に危害を加えないように‥‥押さえつけてくれるだけで良いのよ?」
九月鬼はそう言って乃木坂雷電に語りかけた。
「貴方の頼みでは断れない‥‥な」
そう言って乃木坂雷電は坂を登ると、いきなり狭霧氷冥を押さえつけた。
「ちょ‥‥まって‥‥いきなり何をするの!?」
狭霧氷冥がそれを抵抗する。
力では彼女の方が上だが、雷電には何か鬼気迫る物を感じる。
「落ち着いて下さい。少しの間だけ、ジッとしていてくれれば良いんです」
そう言って氷冥を押し倒す雷電。
猛省鬼姫は目をぱちくりさせた。
彼女の目の前には彼女が最も信頼を寄せる人物が座っていたからだ。
どうして今まで気が付かなかったのだろう。
「貴方‥‥お名前は? 私が分かる?」
九月鬼はそう言って猛省鬼姫に対して質問する。
「そんな‥‥忘れるわけが無いじゃないですか‥‥私です。猛省鬼姫です!! でも‥‥あれ‥‥名前が出てこない」
彼女は娘の名前を思い出せないことに動揺する。
「九月鬼よ‥‥猛省鬼姫。もう何年も会ってないから忘れてしまったのね? 良い? 今日は貴方に良い話を持ってきたわ。斉藤一‥‥と言うのはあの人?」
そう言って一人土手の上に残った男性を指さす九月鬼
「はい、そうです。アイツが斉藤です」
猛省鬼姫がそう言って九月鬼に説明する。
「よく聞いて‥‥猛省鬼姫。彼は貴方の良き人(夫)に成る運命の人よ。今すぐ彼を押し倒してしまいなさい‥‥」
そう言って九月鬼は猛省鬼姫に対してにっこりと微笑む。
その笑みが猛省鬼姫の心に大きく響いた。
「あんな‥‥男が‥‥俺の夫になるのか!? そんな‥‥信じられねぇ‥‥」
猛省鬼姫はそう言って斉藤と九月鬼を交互に見つめた。
「‥‥猛省鬼姫‥‥私の言うことよ? 信じて頂戴。彼と添い遂げれば‥‥彼は貴方に尽くしてくれるわ? そして、貴方にとって、私以上の存在になるわ。‥‥お願い」
そう言って九月鬼は猛省鬼姫に対して、優しく口づけをする。
「そんな‥‥九月鬼さん以上の存在になんて‥‥成るはず有りません。‥‥でも、最も信頼する九月鬼姉さんの言うことなら‥‥従います。」
そう言って猛省鬼姫はズカズカと土手を昇って行く。
「おい、どうしたんだ? 月詠と乃木坂の様子がおかしいみたいだが、一体何が有ったんだ?」
斉藤一がそう言って猛省鬼姫に質問する。
猛省鬼姫はその質問を、斉藤の唇に自らの唇を重ねる事で制した。
力一杯斉藤を抱きしめ、力一杯唇を押しつける猛省鬼姫。
猛省鬼姫はそのまま斉藤を地面に押し倒し、彼の上に馬乗りに成るような形で彼に怒鳴りつける。
「斉藤!! 不本意だが、お前を俺の夫に認めてやる! 九月鬼姉さんの願いじゃ断れないからな。今から既成事実を作るぞ!!」
そう言って、猛省鬼姫が着ていた薄絹の単衣と武闘着を脱ぎ捨てる。
一糸まとわぬ姿で、地面に横たわった斉藤を抱きしめる。
「ほら、触りたいんだろう? 好きなだけ触って良いぞ? 今日から俺はお前の妻に成るんだからな!!」
そう言って斉藤の唇に自らの唇を重ね、斉藤の手を自分の胸へと誘導する。
「ふふ‥‥労せず、事を為し遂げられそうね‥‥後は姫事に夢中になった斉藤の命を取れば‥‥全ては終わる‥‥」
そう言って九月鬼は静かにほくそ笑んだ。
そして、小さいから見落とした、最大の誤算の一撃をもろに食らう事になる。
「ほ〜り〜」
白く淡い光に包まれたリティーラン・オービスの手のひらから光の弾が九月鬼を襲う。
威力はそれほどでもないが、それに『抵抗できない』彼女は、そのダメージをもろに喰らってしまう。
「貴様‥‥白クレリックか!? こんな東の島の辺境にまで白クレリックが!?」
そう言って焦りの色を見せて九月鬼がリティーラン・オービスを指さす。
「あっ!? あ〜‥‥‥‥デビル?」
彼女の判断は正しい。そう、九月鬼‥‥彼女は地獄からやってきたデビルなのである。
そして、そのデビルの最も苦手とする物が‥‥白魔法であり、白クレリックである。
本多風露と山本佳澄が月詠葵を何とか押さえ込み
狭霧氷冥が乃木坂雷電を押さえ込む。
気が付いてみれば、斉藤を襲う鬼姫と、敵を圧倒するリティーラン・オービスと言う、なんともよくわからない状況が展開していた。
「こんな事なら、お前を真っ先に動けなくするべきだったね‥‥見落としていたよ」
九月鬼はそう言って扇子を広げ、パタパタと仰ぎながら、冷静を保とうとする。
「デビル? デビルですか?」
確証が無いのか、九月鬼に何度も質問をするリティーラン・オービス。
「月詠葵! 乃木坂雷電! もう良いわ。ありがとう!」
九月鬼の言葉に、抵抗していた2人がおとなしくなる。
「今回は油断したが‥‥次はこうはいかないわ。次は私も手駒を連れてくる‥‥から」
そう言って笑みを浮かべ、船を蹴る九月鬼。
彼女は鴨川の上を歩いて去って行く。
彼女は彼女を最も信頼してしまう特殊な力を持っている。
彼女の言葉は最も親しい人からの言葉であり、最も信頼出来る情報であり、言葉である。
その領域下に置かれ、術にかかった3人は信頼する人物からの言葉を鵜呑みにしたのである。
何とか修羅場を乗り越えた一同であったが、3人にかかった力は一週間続いた。
そして、斉藤は一週間の間、猛省鬼姫に夜ばいされ続ける事になる。