猫耳近江屋珍騒動 3

■シリーズシナリオ


担当:

対応レベル:フリーlv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 85 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月24日〜10月30日

リプレイ公開日:2006年11月02日

●オープニング

●猫耳近江屋珍騒動3
 ぶつかり合う刃と刃。
 闇夜に響く鉄と鉄との火花散るぶつかり合い。
 駆け抜けるは電光石火。

 抗う物をなぎ払い、血と血が空を舞い、激しく2つの肉の塊がぶつかり合う。
 かたや、新撰組にこの人ありといわれた。三番隊組長斉藤一。
 かたや、京都人切りにこの人ありといわれた。岡田以蔵である。

 人切り以蔵と鬼神斉藤の激しくも熱い刃のぶつかり合い、そしてその回りには血といくつもの死体が横たわっている。

「岡田さん。そろそろ戻らないと人が来ちゃいますよ」
 ひょいと長屋の上から顔を出す河上彦斎。
「ほたえなや。もちぃっとで倒せるきに」
 斬馬刀を構えて一気に詰め寄ろうとする岡田以蔵と斉藤一の間に、割って入るように数本の矢が突き刺さる。
「近江武士団である! 京都を騒がす不定浪人を取り締まる! 一人も逃がすな! 捕まえろ!」
 真っ赤な武者鎧に身を包んだ女性にいわれ、近江武士団が3人を捕らえに入る。
 捕らえに入るのだが‥‥槍や弓で武装している。‥‥殺る気満々である。

 30分後。怪我人を多数出した結果、結局の所、岡田以蔵と河上彦斎には逃げられた。
 何故か捕まっている斉藤一。

「よし、不定浪人の一人を捕まえたぞ。これで他の仲間の居場所を聞き出して一網打尽に出来る。」
 満面の笑みを浮かべる真っ赤な鎧武者。京極鹿之助。
「いや、俺は不定浪人じゃないんだが‥‥」
 一応弁解する斉藤。
「何? ならば、所属と生命を名乗れ」
 いわれるままに自己紹介をする斉藤一。
「なに!? お前が新撰組三番隊組長斉藤一!? あの鬼の様に強く、修羅の様に人を斬り、妾を10人も囲っており、3人も妊娠させ、女性とあらば見境無く尻を撫でるという‥‥」
 京都では一体どんな噂が広まって居るんだろう。
「当たらずしも遠からずだが‥‥、俺はそんなに悪い噂が流れてるのかい?」
 斉藤はそう言って少し頭をポリポリとかく
「わ‥‥我はダメだぞ。まだおぼこゆえそなたの相手は出来ぬ」
 耳まで真っ赤にしながらそれでも怯まず斉藤に応える京極鹿之助

「牙無い物の牙に成り、悪・即・斬という、己が正義を貫く。ジャパンの治安と民衆の生活を守る‥‥それが俺の‥‥三番隊の信念なんだがねぇ」
 斉藤がそう言ってニヤリと笑う。
 その言葉を聞いて京極鹿之助も胸を張って応える。
「それは近江武士団とて同じじゃ。人と出会えば人を斬り、神と出逢えば神を斬る。正義の為に掲げた刃は、例え誰にも止めることは出来ない」
 そう言って京極鹿之助が斉藤の方をポンっと叩く。
「まぁ飯でも食ってゆけ、今夜は猫耳巫女殿出張で鰻重じゃぞ?」
 そう言って斉藤を連れて鴨川の炊き出し場へ引き連れて行く。

 京都在中の近江武士団の数は減り今は50名。
 それでもいつでも応援にこれるように、大津に100騎ほどの精鋭を待機させている。

「さぁ、美味しい鰻丼が出来ましたよ〜。皆さんドンドン召し上がってください」
 猫耳巫女様がそう言って皆に鰻丼を配る。
「しかし、困りましたねぇ。私も毎度毎度こちらに来られれば良いのですが、お店の方の切り盛りが大変で‥‥どなたか手伝ってくれないかしら‥‥」
 近江武士団に炊き出しというスキルは乏しい。

「困ったときは冒険者という言葉がある。冒険者に頼んで美味しい料理を作ってもらうというのはどうだろうか?」

 斉藤一がそう言って鰻丼を口に運びながら応える。

「そうですね。近江も、秋の味覚満載ですし、お米も美味しい物が沢山取れましたし、冒険者さんに頼んで新しいお料理やねぎらいの何かを考えてきて貰いましょう」

 そんなこんなで冒険者に依頼である。
 近江武士団の為に美味しいお料理を考えてきてくれること。(秋の味覚を考えて)
 仕事で疲れている斉藤一と京極鹿之助に疲れをいやすような癒しを提供すること。
 の2つである。

 っというわけでがんばってください。

●今回の参加者

 ea1765 猛省 鬼姫(31歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea8384 井伊 貴政(30歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea8616 百目鬼 女華姫(30歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea9455 カンタータ・ドレッドノート(19歳・♀・バード・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb0494 高町 恭華(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb1647 狭霧 氷冥(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb6553 頴娃 文乃(26歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●それはまるで幻想的な大福の様なもの
 近江屋。
 出資率近江の国100%のこの店は、京都で近江の特産物を売るための重要拠点であり、京都の情報を収集しいち早く近江に届ける為の重要拠点である。
 ここから大津まで早馬を飛ばせば一日かからないのである。
 そして、現在近江屋は京都で活動する近江武士団を全面的にサポートしている。
 おおやけには成っていないが、新撰組三番隊のたまり場としても有名である。
 ゆえにこの2人が顔を合わせたのは偶然と必然の運命の定めであると言えよう。

 新撰組三番隊組長。斉藤一。
 超実戦部隊、諜報と暗殺を最も得意とする新撰組三番隊のリーダー。
 土方や沖田、吉村などと並び称される、新撰組で「鬼」と呼ばれる数少ない人切り。
 常人を逸脱した強さと、胆力を持ち、噂では左利きで一刀流。
 女癖が悪く、女性を見ると尻を投げるのを礼儀としているらしい。
 だが、彼は正面からの人切りもさることながら、嘘や暗殺も得意としている。
 何処までが虚で何処までが本当なのか全く分からない人物である。

 近江武士団百騎隊隊長。京極鹿之助。
 近江現国主、浅井長政に弓を引き、父は打ち首と成っている。
 お家断絶をかろうじて免れた京極家は大津城主兼鋼鉄山猫隊隊長、神楽坂紫苑の配下として近江の為に絶対の忠誠を誓っている。
 京極鹿之助は女性であることを捨て、近江の為に邪魔な者は常に排除し続ける急先鋒の鷹派(攻撃的集団)である。
 近江で一番の無頼漢武士集団150騎を引き連れて京都の治安維持のために乗り出すが、近江にはいまだに京都見廻組や新撰組の様な京都での治安維持活動の為の許可が降りないため、『独断とボランティア精神で』治安維持をしているため、新撰組や他の京都見廻組みとの衝突が絶えず、毎日の様に負傷者を出している。

 その日2人は座敷で向かい合って酒を呑んでいた。
 お互いがお互いの手の内を隠しつつ、相手の手の内を確認するかの様に。

「京都は亡き虎長様の御領地。京都の治安を維持するのは近江武士団の勤め、なのになぜ、いまだに近江の国には見廻組みの許可が下りないのか!」

 お銚子を3本空けた所で京極鹿之助が吼える。

「それは無理ってものだろうよ。春先の戦いで近江武士団の強さは三河に継いでマジマジと見せつけられた。近江の国は京都に近い。軍資金を溜め込んでいると言う噂も聞くし、兵糧も蓄えていると聞く。ましてや38万石なんて石高の国は他に無い。そんな国に京都の見廻り許可なんて出した日にゃ‥‥京都を乗っ取られるんじゃないか‥‥っと諸国の大名達は思うだろうさ。だから京都に圧力をかけ、出来るだけ返事を先延ばしにしてるのさ」

 斉藤がそう言って酒を飲み干す。

「さぁ料理が来ましたぜ」
 猛省鬼姫(ea1765)がお膳を持って部屋に入ってくる。
 今回の料理は井伊貴政(ea8384)の力作である。
 松茸づくしで纏められている。

 先ずはご飯物。
 栗ご飯と松茸ご飯の2種類が用意されている。
 栗も松茸も近江産である。

 続いて焼き物として秋刀魚の塩焼きと焼き松茸。
 松茸の天ぷら、鴨と水菜の鍋。
 天ぷらは塩で、鍋は尾張の味噌で味付けされている。

 松茸の茶碗蒸しと土瓶蒸し、松茸の吸い物。
 デザートに栗を練り込んで栗蒸し羊羹が用意されている。

「ほう、コイツは豪勢だな。まるで一国の御家老にでも成った気分だ。値が張ったであろうに‥‥斉藤殿は毎度このようなご馳走を食べているのですか?」
 松茸のお吸い物を啜り、松茸ご飯を口に入れる鹿之助。

「まさか‥‥いつもは冷や飯にみそ汁。漬け物少々‥‥干し魚少々だ。酒だって呑まん。酒を呑むと人が斬りたくなるし‥‥女を抱きたく成るからな」

 斉藤はそう言って松茸の天ぷらを口の中に放り込んだ。
「まぁまぁ2人とも飲んで飲んで、外国じゃ、ゆっくりするのを「りらっくす」って言うらしいぜ? 二人とも休んでくれよ」
 そう言って猛省鬼姫がお酌をする。

「久しぶりだな鬼姫」
 酒に寄った斉藤が猛省鬼姫の尻に手を伸ばす。
 尻を撫でられながら猛省鬼姫が静かに斉藤に耳打ちをする。
「斉藤‥‥子供が生まれた‥‥お前の子だ。名を付けて欲しい」
 斉藤はその言葉を聞いて、一瞬顔色を変えた。
「大丈夫、迷惑はかけないようにするからよ。‥‥あ、もう迷惑だったり?」
 猛省鬼姫の言葉に、斉藤一は静かに首を振った。
「いや、逆だ。迷惑をかけるのは俺の方だ‥‥」
 その言葉に猛省鬼姫が首をかしげる。
「俺の子なら、新撰組の敵対組織に報復として命を狙われるかもしれん。へたをすれば人質に取られるかもしれん。俺が父であるために、おまえたちの命を危険にさらさせてしまう。それが俺にとっては非常に辛い」
 斉藤はそう言って猛省鬼姫をぎゅっと抱きしめる。
「そうだな‥‥男なら勉。娘なら龍姫と付けてやってくれ」
 そんな2人のラブラブ模様を見ながら飯を喰い続ける鹿之助。

「さて、それでは風呂をご相伴に預かろうか」
 京極鹿之助がそう言って手ぬぐい片手に湯屋の方に降りて行く。
 それを出迎える百目鬼女華姫(ea8616)。
 人遁の術を用いて、美しい女人に姿を化けている。
「アタシが背中を流してア・ゲ・ル♪」
 百目鬼女華姫に服を脱がされる京極鹿之助。
 男装をしていた服を脱ぎサラシを取ると、身体は日に焼け、身体中にあざなどがあるが、なかなかのプロポーションである。
「女性だったのね」
 そんな百目鬼女華姫の言葉に鹿之助が微笑する。
「それはこちらのセリフだ。先ほどは部下がすまなかった」
 言ってから湯を浴び湯船に身を沈めると、静かに苦笑しながら言葉を続けた。
「我々は近江の剣。人と出会えば人を斬り、神と出逢えば神を斬る。近江に仇為す物を打ち砕くのが我々の使命。故に我々には性別も年齢も関係ない。有るのは近江への忠義と敵を切り裂く刃のみなのだ」
 そう言って京極鹿之助は胸を張った。

「ささ、傷の手当てをしてやろう。服を脱いでそこに並べ?」
 頴娃文乃(eb6553)が先の捕り物で怪我した人とかの治療に当たる。
 しかし、よく見ればどれも軽傷。
 斉藤さんは本気で刀を抜いた様子はない。
「ほら、汚れ物洗ってやるから全部出せ」
 狭霧氷冥(eb1647)がそう言って近江武士団をたたき出す。
 世話焼きの姉さんの様な物言いで、整理整頓を第一として武士団の駐屯地を当たる。
「なんだ、治療する程の物は無かったわね」
 頴娃文乃がそう言って狭霧氷冥の手伝いをする。
 近江武士団150名全ての世話をするわけにはいかないが、それでもお茶を入れ、マッサージの一つもして少しは疲れをいやして欲しいという2人の心遣いだ。

「ごきげんよう‥‥お食事をご用意しました」
 カンタータ・ドレッドノート(ea9455)がそう言って鮎の塩焼きが乗った、豆ご飯を筆頭に膳料理をサムライ達に用意した。
 一部井伊さんと料理のめにゅーがだぶった為、出来るだけ簡素に纏めて近従のサムライ達のお膳として作り直した物である。
 焼きなすと鮎の塩焼きを筆頭にした料理に舌打ちをする武士達。
 流石に人数が多いため、品数を少なくして大量に作ることにした。
 150人分のお膳と皿を用意するだけでも一苦労であった。
 信楽焼の職人さん。本当にありがとう(謎)


 深夜。草木も眠る丑三つ時。
 湯屋を共にする二つの影がある。
 一人は斉藤一。もう一人は京極鹿之助である。
 おわかりに成らない方の為に簡単な説明をしよう。
 湯浴み‥‥いわゆる風呂場とは作りがしっかりしており、盗み聞きをされるおそれが極めて少なかった。故に武士達は秘密裏の話を湯浴みの最中にしたりスル者も居た。
 もっともそれは『蒸し風呂』での話であるが。

「お背中流しに参りました」
 高町恭華(eb0494)が京極鹿之助の背中を流すべく、ヘチマ片手に極薄の湯浴み着で湯処に足を運ぶ。
「こんな夜中までご苦労なこったな‥‥まぁ好きにしな」
 斉藤一がそう言って高町恭華の尻をポンっと叩く。
 京極鹿之助は斉藤一に見られていると言うのに物怖じせずに全裸になると、手ぬぐい片手に湯船に入っていった。

「歯に衣を着せるのは苦手だ。先ずは近江の情勢を包み隠さず‥‥話せる範囲で話そう」
 京極鹿之助が声のトーンを一つ下げ、ゆっくりと語る。
「浅井長政さまは先の戦のおりの戦勝として、官位をお求めに成られた。それと同時に近江見廻組みの新設をご希望成された。我々はそれがすぐに事運ぶ物と思い、京都の出てきた。だが、一向に官位が与えられる様子も見廻組みの許可が下りるでもない。浅井様も催促する様子もない。浅井様に取っては、それよりももっと大事な事の為に我々を京都に置いたのだ‥‥そう。その布石として」

 斉藤が静かに語り始める。

「最近屯所が騒がしい。色々と西の影響を受けている者が居る。先だって『局中法度』を作る‥‥っと言った動きも出てきている。もっとも三番隊は隠密裏な任務が多いため、全ての行動を局中法度に照らし合わせる訳にはいかないがな。『呉服問屋に潜伏するから支度金をくれ』なんて要求はおおっぴらに出せないだろう?」

 2人の会話の間もジッと京極鹿之助の身体を見つめる高町恭華。

「新撰組は例の件、邪魔はしないのか? アレが京都に出来れば。新撰組や見廻組みは今以上に近江に警戒の念を強くするのではないか? いや、作って欲しくない‥‥っと思う者も少なからず居るのでは?」

 京極鹿之助が湯から上がる。
 彼女の身体をヘチマで磨く高町恭華。

「作って欲しくない訳じゃない‥‥っと言えば嘘になるが、正直三番隊は邪魔する気は無い。実際の所『アレ』を作られれば、俺達の仕事も増えるし、多少はやりにくく成るだろう。‥‥だが、先の戦いでの教訓から『アレ』は早急に作らなければ成らない物だと誰もが思っている。‥‥必要悪とまでは言わないが‥‥な」

 斉藤がそう言いながら、湯船の中から2人のお尻を見つめている。

「アレとは何ですか?」
 高町恭華が無警戒に質問する。
「あぁ城だ」
 ぽろっと言葉をこぼす京極鹿之助。

 流石にそれには目を丸くする斉藤。

「京都は狙われている。京都を守るには京都に兵を置く必要がある。そのためには兵達を置くための場所‥‥城が必要だ。近江武士団をいつまでも河原に置いて置くわけにもいくまい?」

 斉藤が渋々と本音を打ち明ける。

 かくして、物語は、もの凄く政治色が濃いままに、二条城築城の話へと進むので有りました。