新撰組三番隊 番外編3−2
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■シリーズシナリオ
担当:凪
対応レベル:7〜13lv
難易度:難しい
成功報酬:5 G 92 C
参加人数:9人
サポート参加人数:-人
冒険期間:06月21日〜06月29日
リプレイ公開日:2006年07月01日
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●オープニング
●新撰組三番隊 番外編3−2 −小春組長補佐編−
先の5月の戦に寄って京都の治安は乱れている。
本来ならまた京都の町を巡回し、治安維持活動を行わなければ成らないのだが、治安維持活動は表だって戦う依頼では無いから冒険者には受けが悪い。
そんなわけで京都の巡回は正規の三番隊隊士達に任せて、冒険者達には死体が出そうなハードなチャンバラの方を担当して貰おう‥‥っと三番隊組長補佐(現在組長代理)の小春は考えていた。
新撰組三番隊の新たな動きの始まりである。
京都の町を荒らし回る人切りの討伐。それが主な目的だ。
先の任務のおかげで、河上彦斎と岡田以蔵の潜伏して居るであろうアジトを突き止めた。
正面から言ってコレを蹴散らす‥‥これが彼女の考え方だ。
「斉藤さ〜んお勤めご苦労様でした。ケガの具合は良いんですか〜?」
組長室で溜まった書類の整理をしている斉藤一にお茶を差し入れする小春。
「少し白々しいな‥‥ケガの方はとっくに治ってる。敵を油断させるために『治った』っとおおっぴらに公表するのはもう少し後にするが、先の戦では最前線で随分活躍したんだぜ? まぁ活躍しなかったら後ろから局長に斬られそうで必死だったという話も有るが‥‥」
そう言って斉藤一が苦笑する。
「それはそうと‥‥組の活動資金の追加予算はどうやら通らなそうだ。源徳家の財政も難儀しているのかも知れないな。そう言う訳で予算が欲しいときは勘定方の夏草薫組長補佐に申告するように」
夏草薫組長補佐は3番隊に2人存在するもう一人の組長補佐である。
三番隊の予算関係を全て牛耳っており、表の予算帳簿、裏の予算帳簿を美味く使い分けて巧みにお金の都合を付けてくれる偉い人である。
公に局長にばれると斉藤さんがお尻ペンペンされてしまう所業ではあるが。
「わっかりました。この小春に抜かりの文字は有りません!」
そう言って胸をバインと叩く小春。
「それは良いんだが‥‥コレは‥‥キミが支給するんじゃなかったのかね」
斉藤君が指さす木箱には『誠の鉢金』が入っている。
「あ〜新隊士に配るの忘れてた〜!」
抜かりの文字が早くも現れている。
「っと取りあえず冒険者を雇って河上彦斎討伐組みを指揮しますね!」
そう言って小春が鉢金持ってバタバタと部屋を後にした。
そんないきさつもありながら、新撰組三番隊は河上彦斎討伐部隊を募集である。
かの者は不知火抜刀術と言う剣術を習得しているらしい。
腕の実力は斉藤組長と互角程度、忍者刀を使った至近距離からの剣術を得意としているようだ。
アジトに居るかどうかは不明、仲間が居るかどうかも不明、罠かどうかも不明。
そんなわけで命知らずな腕自慢‥‥および三番隊隊士の冒険者募集である。
●リプレイ本文
●暗殺‥‥負けられない戦い。
そこに正義はあるか?
そこに愛はあるか?
そこに悲しみはあるか?
刃と刃のぶつかり合いに、正義と力を感じる時。
とどろく旋風激しい衝撃、火花散る刃。
見張り‥‥っと思わしき浪人に斥候である島津影虎(ea3210)が飛びつく。
相手の刀の一撃を俊足とも言える巧みな動きで交わし、相手の背後に回るや、忍者刀の峰打ちを相手にたたき込む。
っと同時に神田雄司(ea6476)がもう一人の見張りに斬りかかった。
いや、斬りかかった‥‥のかどうかは分からない。
一気に間合いを詰めた彼から、つばなりの音が鳴り響いた。
キィィィィン。
固い金属と金属‥‥コンコンではなく、キンキンと言う音の最上級系。
それが鳴り響いた。
っが、彼が刀を鞘から抜いたのかどうかは分からない。
見えないのだ。
神速の抜刀術が繰り出され、相手は血しぶきを上げる。
「くそ、連絡を!」
懐から笛を取り出そうとする見張り。
そこに島津影虎の峰打ちの一撃が交差する。
瞬きをする間に2人の浪人ものは意識を失った。
トドメを刺して先に進む2名+2名。
●山寺突撃。
今回の班編制では3つに戦力を分けた。
戦力分散の愚‥‥などと言うなかれ、奇襲は少人数で行う物だ。
先ずは主力討伐の4人が正面に配置するために山道を抜ける。
時は日の出間際と言った所であろうか。
「今日は珍しく他の隊からのお客さんが居るね」
将門司(eb3393)に手渡された鶏蒸籠蕎麦を食べつつ、小春組長補佐が今回のメンツについて回想する。
一人は元11番隊将門司。もう一人は10番隊志願者だった神田雄司。
「元十一番隊隊士やけど、これを使ってええか?まぁ俺は勘当息子やけど新撰組は家族のようなもんやからな」
将門司の言葉に小春は首を縦に振る。
「今このとき、三番隊に誠を誓ってくれるなら、過去は問わないよ」
それが小春の言葉だった。
●突入
予想ではダイブ敵は多いことが分かっている。
もし敵が全て河上彦斎クラスなら、先ず勝ち目は無いだろう。
祈りを込めるようにして4人が正面から、3人が右翼に、2人が左翼に展開する。
「唸れ! 疾風! ストーム!!」
「わき上がれ氷嵐! アイスブリザード!」
サーシャ・クライン(ea5021)とアカベラス・シャルト(ea6572)の術が発動し、敵が居るであろう古寺の雨戸を吹き飛ばし、中に一気にダメージの二重奏が放たれた。
「なっ!? 賊!?」
賊に賊と言われるのも非常に不本意だが、一部負傷を負った賊達が中庭へと飛び出してくる。
術者を守るべく前に出たのは神田雄司と島津影虎。
この辺かなりの適材適所である。
敵の攻撃を受ける‥‥やり方をする物は、敵が雑魚であれ、手数に押されると動けなくなることが多い。
回避を得意とするものは、囲まれて、逃げ場が無くならない限りは動き続けることが出来る。
もちろん体力が尽きたらさよならだ!
中庭に飛び出して来たごろつき崩れは20人弱。その中にめぼしい敵は居ない。
ふっと、銀色の髪、赤い着物を着た浪人風の小男が、裏の竹林の中に走って逃げて行く。
「まて! 逃げるな!」
月詠葵(ea0020)と山崎剱紅狼(ea0585)がそれを追う。
おそらくアレが、河上彦斎と判断したからだ。
‥‥範囲魔法と言うのは仲間を巻き込む時が多々ある。
なぜなら、詠唱開始から終了までの10秒間に、その範囲を変更することは出来ないからだ。
そして魔法は詠唱中に攻撃を喰らう最も不利な状態を相手にさらけ出す。
それをカバーする守り手が範囲魔法の中に入ってしまうのは仕方のない事なのだ。
なので魔法も必然的に最初の一発に力を込め、後は手加減して放つことが多い。
アカベラス・シャルトもその口で、初弾では専門で、後に初級レベルで術を放っている。
サーシャ・クラインのストームもそうなのだが、彼女の術は相手を転ばすというおまけ付きなので、仲間が転ぶと非常に悲惨な事になる。
故に使い方が難しい。そうそうにウィンドスラッシュに切り替える事になる。
4人+3人が取り巻きを相手にし、2人は河上彦斎を追っている。
ごろつき達を相手にする7人を高みから見物する存在があった。
闇に紛れそれがなんなのかは分からない。提灯の明かりも届かない。
屋根の上から見下ろすようにして2人の大きな影が見下ろしていた。
どちらも身の丈は2mを超えるだろう。
「アレが‥‥岡田以蔵か?」
「‥‥話に聞いていたのとはダイブ違いますが‥‥」
風間悠姫(ea0437)と狭霧氷冥(eb1647)が目をこらしながら屋根の上を見上げる。
2人の目線に気がついたのか、大男2人は屋根づたいに奥へと消える。
半信半疑のままに、2人はそれを追いかけた。
「あら、お二人さんはそちらを追いますか‥‥しかし、俺が抜けると戦線が瓦解しそうなんやけど」
将門司がそう言って雑兵ずれの一人を切り伏せる。
現在転がっている死体は5つ。残る雑兵の数は14〜15人
これを魔法使い2人と護衛の2人に任せるのか辛すぎる。
神田雄司の腕はさえ渡り、雑兵との腕の差は歴然だが、多勢に無勢と言う言葉がある。
島津影虎と異なり彼は刀で相手の攻撃を受け流すタイプだからだ。
●河上彦斎?
「引っかかったな新撰組!」
河上彦斎らしき影を追っていった2人には待ち伏せが相手をすることになった。
河上彦斎‥‥ではない。黒装束に赤い返り血、銀色の髪‥‥だが、全くの別人‥‥いわゆる影武者である。
奴を含め、3人の忍び装束が2人を相手にする。
「ふふん。新撰組を‥‥それも実戦部隊の三番隊をやったと有れば箔がつく。悪いがここで死んでもらうぜぇぇぇ!!」
両手にナイフを構えた忍び装束の一人が山崎剱紅狼に斬りかかる。
両手からの一撃‥‥ダブルアタックである。
だが、山崎剱紅狼はそれを避けようとしない。その身に刃が食い込もうとも、次の一撃に全てをかける。
彼が忍び装束の男に放って一撃。それもダブルアタックである。
霧刀と霧小太刀が交差し、相手の胴を切り裂く。
ポイントアタックが有れば首をねらえてかも知れない。
血しぶきを上げて忍び装束の男が草むらに倒れ込む。
もう一人の男は槍を握りしめている。
静かに間合いを計ると、一気に月詠葵にその一撃を繰り出した。
だが、月詠葵はサイドステップでその一撃を紙一重に交わす。
っと今度は彼の一撃だ。
「派手に征きますよ、新撰組は三番隊が最強、ってことを世に知らしめるためにもね」
月詠葵のその一撃は著しく命中率を欠く物である。
ゆえに相手が避けなくて当たらない確立が非常に高かった。
それでも今回奇跡的に発動した‥‥その技とは‥‥。
閃光一閃銀色の光が流れる。
流れた部分に亀裂が入る。
槍を握っていた忍び装束の男の左足が一撃で綺麗に切断される。
草むらを真っ赤に血が染める。
振り抜かれた一撃の威力に目を丸くする月詠葵。
「嘘‥‥だろう? 強いにも限度って元が有るだろうよ‥‥」
黒装束の最後の一人の断末魔が竹藪に響き渡る。
「あれ? 私の出番は無さそう?」
やっと2人に追いついた小春組長補佐。
3人は刀についた返り血をぬぐい、古寺へと戻ることにする
●悪の首領その名は‥‥。
「どうだ? お前の見立てでは‥‥新撰組は強いだろう?」
2mを超える一人が、茂みの中で静かに語りかける。
それはジャパンの言葉ではない。聞いたこともないような言葉である。
「問題ない。あの1対1ならな‥‥だが、あれ以上数が増えては‥‥不味い」
もう一人の2mを超える長身の男がそれに言葉を返す。
「そうか? アレは私の手には余るぞ。例え1対1だとしても、私は戦闘は避けて逃げることを選択するね。河上が手こずった‥‥っと言うのがうなずける」
会話の声を聞きつけ、風間悠姫と狭霧氷冥が茂みの中を探索する。
気配は無い‥‥いや、気配を殺しているのか‥‥。
「不味いな儂は逃げる準備をしておく。お前は時間を稼いでくれないか?」
大男その1がその2に話しかける。
「それは良いが‥‥私はこの国の言葉など分からないぞ?」
その2に言われて、その1が頭を抱える。
「分かった。儂が出だしの口上を唱えるから、戦闘はお前がやれ!」
そんな不思議な会話の後にそれは姿を現した。
「あいや待たれよ新撰組の隊士共よ‥‥」
そう言って姿の表したのは、歌舞伎役者さながらの一人の大男‥‥ジャイアントである。
白塗りの顔に真っ赤な赤い隈取りをした姿で、派手な着物に身を包んでいる。
妖しい‥‥目を見張らんばかりに妖しい‥‥。
「何者だ! 名を名乗れ!」
風間悠姫の言葉に、トトンっと舞を踊りながら応える。
「我の名は‥‥天下を騒がす大泥棒‥‥石川五右衛門その人なり‥‥。岡田以蔵‥‥河上彦斎‥‥そしてこの第3の刺客を操る謎の盗賊団の頭目‥‥それがこの俺‥‥石川五右衛門よ‥‥」
グルグル髪の毛を回しながら舞を踊って自己紹介をする。
彼の傍らには同じく身の丈2mのジャイアントらしき人影がある。
だが、この人影‥‥妙である。
革製の外套を着込んでいるが、その下に黒い革鎧‥‥しかもは虫類の皮を使った革鎧を全身に着込んでいる。三度笠を被っているが、どうやら頭の先から足の先まで革鎧を装備しているようだ。
「コイツは遙か異国の地から連れてきた‥‥西洋の河童だ。ジャパンの河童はキュウリを食うが、西洋河童は肉を食う。いけ、西洋河童壱号! 貴様の強さを見せてやれ!」
歌舞伎なんだが特撮ヒーローの悪役なんだが、よくわからない登場と口上を述べる石川五右衛門。
西洋河童壱号を前に出し、自らは古池に隠して有った小舟を用意する。
「まて、逃がさないぞ!」
狭霧氷冥が一文字を抜いて前にでる。
っと全身革鎧に思えたそれに目線を送る。
違う‥‥全身革鎧などではない。顔と手は露出している。
だが、は虫類顔とは虫類肌で分からなかったのだ。
皿が有るかどうかは分からないが、西洋顔の面長な河童の顔だ。
「うわ、ホントに河童だ!」
2人が息を呑む。
西洋河童壱号は、背中に背負っていた甲羅盾を左手に構え、右手に槍を構えて、ゆっくりと2人をにらみつける。
三度笠を被っているので、頭に皿があるかどうかは分からないが、身の丈2mを超える西洋河童に威圧され、圧倒される。
「キシャァァァァァァァ!」
威嚇する様に金切り声をあげる。
彼は『時間を稼げ』っと言われた事を、忠実に守っているのだ。
「さって、やるときゃやるってところ、見せないとね〜♪」
狭霧氷冥が大脇差「一文字」+1を叩き付けるように振り下ろす。
それを甲羅盾でしっかり受け止める西洋河童壱号。
さらに追撃の霧小太刀の一撃を放つ狭霧氷冥。
二発目の一撃も甲羅盾で受け止める西洋河童壱号。
そして槍による反撃の一撃を放つ。
懸命にそれを避けようとする狭霧氷冥だが、河童の一撃が胸を切り裂く。
串刺しは避けることが出来た。傷は浅い‥‥っが的確な一撃だ。
しかし、フェイントを織り交ぜたその一撃に深手を負わせる事は出来ない。
狭霧氷冥が地を蹴って離れる、一度間合いを取るのだ。
そして代わりに前に出る風間悠姫。
太刀「造天国」を振り上げ、闇を切り裂くブラインドアタックの一撃が放たれる。
それを甲羅盾で受け止める西洋河童壱号。
それはスマッシュを織り交ぜた渾身の一撃だったが、重厚な甲羅盾の前では涼風の様だ。
西洋河童壱号の槍が流れる水の如く切っ先が流れる。
一撃が彼女の胴を切り裂く。
着物の帯が着れ、服が乱れる。
着物とサラシを切り裂かれた狭霧氷冥が身体に絡まる事を避け、服を脱ぎ捨て前に出る。
先ずは右手の一撃‥‥だが、その一撃が盾で受け止められるのと同時に、今度は西洋河童壱号のカウンターの一撃が、彼女の右足に突き刺さった。
「‥‥っ!?」
左手の霧小太刀を槍に放つ。
木製の粗末な槍は音も立てずに切り落とされる。
槍先はまだ彼女の右足に突き刺さったままだ。
一瞬動きが西洋河童壱号の動きが止まる。
風間悠姫が刀の一撃を西洋河童壱号の背中にたたき込んだ。
「くっ‥‥固い‥‥」
革鎧に阻まれ、それでも何とか手傷を負わせる風間悠姫。
「待たせたな、西洋河童壱号! 戻ってこい(謎の言葉)」
古池に浮かんだ船から声がする。
その言葉を聞いて、西洋河童壱号がゆっくりと池の中に歩んで行く、水の中に沈んで行く。
なるほど、河童だから水の中に逃げても平気なのである。
船は既に遠くに逃げている。
「大丈夫ですか?」
上半身裸で、足に槍の先端がささった狭霧氷冥を背負い、風間悠姫が本体に合流する。
既に河上彦斎を追った2人も合流していた。
地に伏したるは20の雑兵ずれのしたいである。
「流石は新撰組三番隊。いや、流石は京都に名を響かせた冒険者達、あっぱれ‥‥実にあっぱれ‥‥」
日が昇り、現場を離れる面々。
京都に知れ渡る名声を持つ物‥‥ジャパンに知れ渡る名声を持つ物‥‥冒険者達の名声のおかげで新撰組の名声も響き渡る。
河上彦斎と岡田以蔵は仕留める事が出来なかったが、それらを裏で操る謎の人物‥‥石川五右衛門にたどり着くことが出来た。
後は奴を倒すだけ‥‥である。
どっとはらい