新撰組三番隊 番外編3−3

■シリーズシナリオ


担当:

対応レベル:6〜10lv

難易度:難しい

成功報酬:4 G 83 C

参加人数:4人

サポート参加人数:1人

冒険期間:10月29日〜11月06日

リプレイ公開日:2006年11月06日

●オープニング

●新撰組三番隊 番外編3−3 −小春組長補佐編−

 草木も眠る丑三つ時。
 都内某所の古寺。
 絵地図片手に頭を抱える新撰組三番隊組長補佐の小春の姿があった。

 都内といっても京都だけど。
 古寺もこれで3件目だけど。

「おかしい‥‥あんな風体(ふうてい)の目立つ奴が宿屋に泊まってれば絶対分かるし‥‥長屋に住んでるとか絶対あり得ないし‥‥どこか武家の屋敷にかくまわれる以外で考えられるのは‥‥神社仏閣以外あり得ないと思ったんだけどな〜」

 斉藤さんの傷が癒え、三番隊組長に復帰はしたものの、色々と職務で忙しいため、別働隊を指揮して探索を行う小春の姿が有った。

 彼女の今回の任務は逃げた『謎の西洋河童』を捕まえることになる。
 まぁ一戦刃を交えて生け捕りが無理そうなら切り捨ててもかまわないのだけれど。

「河上彦斎や岡田以蔵は金で雇われていると言っていた‥‥その金の出所が石川五右衛門が盗んで貯めたお金だとするなら‥‥石川五右衛門は2人を雇って私たちと戦わせて‥‥どんな利が有るというのだろう‥‥」

 小春が無い知恵絞って一生懸命考えている。
 お付きの4人の新撰組三番隊平隊士達は次の命令を待っている。

「そもそも西洋から河童を連れてきて、京都で暴れさせるとどんなメリットが‥‥」
 半ば頭から湯気が上がりそうなほど悩みまくっている。

「よし、一度屯所に戻って旅支度だ! こうなったら鴨川を上流に登れるだけ登って、しらみつぶしに探していくぞぉ! あの格好で街道を普通にあるいてるとか考えられないし!」

 そんなわけで今回の依頼は小春ちゃんと一緒に、西洋河童を求めて河原を何処までも一緒に上流に上っていく事にある。

 道中は山道も多いし、敵の襲撃も予想されるので出来るだけ戦闘準備をして同行して来て下さい。

 大活躍をするともれなく新撰組三番隊に取り立てられる事があります。

●今回の参加者

 ea3210 島津 影虎(32歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea6476 神田 雄司(24歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb1422 ベアータ・レジーネス(30歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 eb5475 宿奈 芳純(36歳・♂・陰陽師・ジャイアント・ジャパン)

●サポート参加者

乱 雪華(eb5818

●リプレイ本文

●新撰組三番隊 番外編3−3
 その日、小春の要望に応じて集まった冒険者は4名だった。
 少々人が少ないかもしれない‥‥小春はそう思ったが。
 実際多ければ良いと言う事もない。
 少数精鋭‥‥っと言う事で望んでみることにした。

 日の出と共に川を上っていく。途中Yの字に別れている場所を見つけて、右へ。
 しばらくすすんで其処でお昼と言うことにした。

「最近冷えるねぇ。もう近江の北の方じゃ雪も降ってるらしいよ」
 小春が握り飯片手になんごとなき話をしてみる。
 島津影虎(ea3210)が周囲を警戒してからたき火の準備をする。
 いつ不意打ちをされても良いように、視覚・聴覚・嗅覚を十分に駆使した探索を行っている。

 この寒空に川遊びと言う子供もいないようで、河原に人気は殆ど無い。
 たき火に火が付き、皆がそれを囲むようにして暖まる。
「知っています? 鴨川って橋の中央から見ると綺麗なんですよ。北に行けば行くほど」
 神田雄司(ea6476)がそう言って鍋を火にかける。
 味噌煮込みうどんを作る為である。
 もちろん我々の夕食を兼ねているのだが、食べ物の臭いで誘い出そうというのだ。
 無論、殺気感知を忘れない。
 食べ物に気を取られて敵に襲われる不覚などは無い様子である。

 宿奈芳純(eb5475)が神秘の水晶球を用いて占いを行う。
 占いは占い。当たるも八卦。当たらぬも八卦。
 しかし、陰陽師の占いは何か説得力がある。

「捜し物は北東の方角、火の気のあるところでしょう」
 そう言って神秘の水晶球を見ながら彼は伝える。

「紅葉が綺麗だねぇ〜」
 鍋に味噌を溶かし野菜を放り込む。
 グツグツと鍋から美味しそうな味噌の香りが辺り一面に漂っていく。

 ベアータ・レジーネス(eb1422)がその間に川に目をやる。
 水中に敵が潜んでいるかも知れないからだ。
 だが、それらしい姿は見て取れない。

 5人は鍋を囲んでうどんをついばむ事にした。
 熱い味噌煮込みうどんが五臓六腑に染み渡る。

 毎回ノー天気な小春だが、今回は少し悩んでいるご様子。
 いつもなら5杯は食べるうどんを、3杯で箸を休めている。

「どうしたんですか?」
 島津影虎が質問する。小春が少し考えながら応える。
「新撰組三番隊って結構実戦部隊なんよ。真っ正面からぶつかる事より暗殺とか巡回警備とか暗殺とかメインだけどね。斉藤さんがべらぼうに強いから、ウチら影が薄いけど、それでも結構腕は立つ方だと思っては居るんだけど‥‥」
 そう言っておつゆを啜りながら小春が応える。
「生け捕りは‥‥やったことないんで‥‥どうしたものかと‥‥」
 小春の戦い方は特別な物だ。
 白打と魔法を混合させた小春独特の戦い方である。
 身体に雷を纏い、その状態で殴ることで相手に雷のダメージを与えるのである。
 例え刀で受けられたとしても雷撃は刀を通って相手に伝わる。

「相手が盾や武器で受け止めてくれるタイプなら、私は凄く相性が良いんだ。もし乱戦時になったら、相手に水ぶっかけてくれると、凄くありがたいよ」
 そう言って小春が満面の笑みを浮かべる。

 その日は河原の縁で夜を空かすことにする。

●深夜の来訪者
 寒いといってもテントを貼ることはない。貼れば敵の接近に反応が鈍るからだ。
 毛布にくるまって木の下に丸くなって寝る。
 この季節では少々寒くて身に染みるが、それでもその方が良い。

 相変わらず小春は新撰組の羽織の下は胸にサラシと黒い股引しか穿いて居ないため、超薄着である。

 丑三時。神田雄司が何らかの気配を感じる。
 何かは分からない‥‥っが。何かが河原を上流からやってくる。
 人の気配に似ているが大きい‥‥ジャイアントの類とも受け取れる。
 たたき起こされたベアータ・レジーネスがブレスセンサーで相手の位置を確認する。
 確かに呼吸がある。それが上流からゆっくり降りてきているのだ。

 目をこらしてそれを確認する。
 身の丈2mほどの巨大な何かだ。
 それはたき火の方に近づいて、近くに座って暖を取っている。
 島津影虎が静かに息を殺して、そいつを見つめている。
 緑色の鱗のある皮膚に身体が覆われた、直立歩行するトカゲ‥‥イモリと言った方が良いだろうか? 今風に言えばワニだが。とにかくは虫類の類である。
 背中には大きな亀の甲羅の様な物を背負っている。
 その右手には槍を握りしめているが‥‥殺気のかけらも感じさせない。
「西洋河童!」
 印を結んでいた宿奈芳純がムーンアローを放った。
 だが、それは自らの身体に突き刺さる。
 西洋河童は狙うためのワードに成らない様子だ。

 それに合わせて、ゆっくりとした動きで背中の甲羅を左手に装備する。
 どうやら甲羅の盾を左手に、右手に竹槍を装備するのが彼の戦闘スタイルらしい。

「未確認の人間‥‥居ると聞いて見に来た‥‥が、敵‥‥か?」
 ベアータ・レジーネス以外には殆ど何語かさえも分からなかっただろう。
 彼にもそれしか聞き取れなかった。
 だが、これでハッキリした。西洋河童は人間の言葉を話す、れっきとした人系種族で豚鬼や犬鬼のようなモンスターではないことを。
 おそらく河童やジャイアントの様な物の西洋の生き物なのだろう。

「お前は‥‥何者‥‥だ?」
 ベアータ・レジーネスが何とか言葉を並べて文にする。
 現代語万能があると言っても、殆ど使ったことのない言葉である。
「言葉‥‥分かる奴が居るのか‥‥私はタダの傭兵‥‥だ。金で雇われて‥‥この国に来た」
 会話の合間を縫って、神田雄司が太刀で斬りつける。
 だが、西洋河童一号はそれを甲羅の盾で軽く受け流してしまった。

 神田雄司の腕は決して悪くない。完全に達人の領域の一撃だ。
 その一撃を簡単に受け止めてしまう。西洋河童はかなりの力量の様だ。
「黒幕は誰です? アナタを雇ったのは」
 ベアータ・レジーネスが質問を続ける。
 西洋河童一号は静かにそれに答える。
「知らない。今の雇い主は石川五右衛門‥‥だ」
 西洋河童一号は槍で攻撃する気配も無く。静かに盾で神田雄司の攻撃をけん制しているだけだ。
「なぜ‥‥攻撃してこないのですか?」
 島津影虎が暗闇から忍び寄り、突然に彼の手首めがけて忍者刀を振り抜く。
 西洋河童一号は右手動かし、刀の腹を手の甲で弾いて軌道をそらしてそれを避けた。
 島津の言葉をベアータ・レジーネスがそのまま訳してぶつける。
「怪しい者が居る。確認して‥‥敵なら殺せ‥‥言われてきた。まだ敵だと判断していない」
 西洋河童一号の言葉に質問するベアータ・レジーネス。
「こちらから攻撃を仕掛けているのに‥‥ですか?」
 その言葉に西洋河童一号が目をぱちくりしながら応える。
「この風体なれば‥‥見知らぬ者から、攻撃をしかけられるもやむなし‥‥っと考える。こいつらは‥‥私の言葉が分からぬのだろう?」
 西洋河童一号はそう言って自らの左右で刃を構えている2人に目線を送った。

「オーラテレパスでも使えれば良いと思うんだけど、あいにくと私は志士だから‥‥、でも強い相手とは手合わせしたいと思ってるんだ‥‥って伝えてくれる?」
 小春がそう言ってベアータ・レジーネスに通訳を求めた。

「本当は人前で余り見せるな‥‥手の内をさらすな‥‥って斉藤さんに言われてるけど‥‥仕方ないよね」
 上着を脱ぎ捨て、身軽に成った小春。
 印を結ぶ。一つ目の呪文詠唱で雷を身に纏った。
 さらに印を結ぶ。2つ目の呪文詠唱で雷で出来た剣を右手に握りしめた。
 そして、最後の印で自らの身体に風を纏う。
 ライトニングアーマー。ライトニングソード。そして、ストリュームフィールドだ。

「チェストー!!」
 ほぼ半裸に近い状態の小春の行動ポイントは極限まで高い。
 4回の連続攻撃が放たれる。
 3発目まで余裕で受け止めていた西洋河童一号も4発目を受け止める行動力はない。
 かかと落としの4発目が肩を直撃する。
 打撃と雷撃の2段攻撃が西洋河童一号を襲う‥‥が、着込んでいる皮鎧と自前の皮膚の防御力によって、そのダメージは有効打にすることが出来なかった。
「ふふん‥‥なるほど‥‥今のでダイブ相手の相手の強さが分かったね」
 そう言って小春は後方に飛び退いた。
 この攻撃で分かったことは。同時に何発も攻撃されると受けきることは出来ない。
 そして、小春の蹴りを避けるほどの回避能力は持ち合わせていない。
 さらに、物理攻撃でダメージを与えることは出来るが装甲が高い‥‥である。

 西洋河童一号が一呼吸空けてから竹槍で小春を攻撃する。
 回避出来ない‥‥っと判断した小春がそれをライトニングソードで受けようとする。
 だが、達人の領域を脱したその一撃は到底受け止められる物ではなかった。
 鈍い音を立てて竹槍が小春を直撃する。

「少なくてもお化けや妖怪の類じゃない‥‥力で倒せないことはない‥‥って事が分かったね」
 受けた傷は肩を掠めただけの軽傷である。
 相手も十分手加減して攻撃を放っている様で、十分に余裕があるように見える。

 だが、小春は芝居がかって、十二分に痛がるように様なそぶりを見せる。
「これ以上近付けば‥‥こんな物では‥‥すまないと理解して‥‥くれ」
 西洋河童一号がそう言って捨てぜりふを吐いて川を上っていく。
 追いかけようとする島津影虎を止める小春。
「追わなくて良いよ。斉藤さんに頼まれた事はこれでダイブ分かったから」
 小春がそう言って4人に声をかけて元来た河を下る事にする。

●京都の店にて
 斉藤一に呼ばれ、小春と4人は天ぷら屋の座敷に上がる。
 小春は天ぷら鍋焼きうどんを美味しそうにズルズルと啜り込みながら状況の報告をした。
「ほほう。それだけ情報が有れば十分だご苦労だったな」
 斉藤一がそう言って自らも天ぷら鍋焼きうどんを啜る。
「何が分かったのです?」
 神田雄司が斉藤に質問した。
「相手が戦闘狂じゃねぇって事と、戦闘スタイル。それに対策方法が分かったって事さ」
 斉藤がそう言ってうどんを啜る。
「もし、相手が戦闘狂‥‥河上彦斎や岡田以蔵の様な相手なら、命令が無くても人を殺めるだろう。だが、そいつは金を貰わなきゃ人をやらないと来ている。ならばそう‥‥金を積めばこちらに寝返らせることも出来るんじゃないかと思ってね」
 斉藤のその言葉に他のメンツを言葉を失う。
「新撰組三番隊も色々有って戦力補給を求められている。西洋河童に武士道が有るかどうかは分からないが、強いなら戦力として欲しいところでは‥‥ある」

 その斉藤の言葉に絶句しながら、うどんを啜る面々なのでありました。