近江の豚鬼退治2−2
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■シリーズシナリオ
担当:凪
対応レベル:2〜6lv
難易度:難しい
成功報酬:2 G 24 C
参加人数:7人
サポート参加人数:2人
冒険期間:06月27日〜07月03日
リプレイ公開日:2006年07月05日
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●オープニング
●近江の豚鬼退治2−2
蓬莱山とは、京都の北北東、近江の北北西に位置する豚鬼達が支配する山である。
千にも及ぶ屈強の豚鬼達が、豚鬼王の鐵の支配下に寄って牛耳られている。
しかし、どのような集団の中にも集団の規律を守れない物が居る。
それは豚鬼でアレ、人間でアレ、例外ではない。
「ワシはもうガマン出来ん。米なんて人間の喰う物だ。ワシは肉が食いたい。人間をバリバリと頭から喰いたいのだ!」
一匹の豚鬼が鬼の言葉で愚痴をこぼす。
「私もだ。鐵様も何を思ったか、白銀様の休戦の意見を受け容れられて折る。これから人間をバリバリ倒そうと言う時期に阿修羅山で花見などと‥‥」
もう一匹の豚鬼がぶつくさとモンクを言い始める。
「今なら鐵様の赤銅様も阿修羅山に向かっていて居ない‥‥今なら村人食い放題じゃないのか?」
もう一匹の豚鬼がそう言ってニヤリと笑う。
かくして、6匹の豚鬼達がコッソリと下山して村を襲うように成った。
彼らはまだ分かっていない。その行為が蓬莱山にも人間にも狙われる行為であることを。
「山を下りた数匹の豚鬼が発見された。近隣の村々を襲っているらしい。出来るだけ早急にそれらを殲滅し‥‥我らの力を見せつけて欲しい‥‥出来るな?」
鋼鉄山猫隊司令本部では神楽坂紫苑の檄が飛んでいた。
「なにぶん老骨故‥‥、冒険者達の手を借りれば何とか‥‥」
近江で大きな政治の動きがあり、神楽坂紫苑は現在多忙にて、ガンサイが代理で指揮を取ることに成っていた。
「では、アリサとガンサイ‥‥冒険者を雇い入れて早急にそれを退治して欲しい。ヨロシク頼む」
神楽坂紫苑はそう言ってまた大津城へと帰って行く。
「はてさて、それでは冒険者ギルドに‥‥依頼しましょうか」
そんなわけで、はぐれ豚鬼達を倒してくれる冒険者を募集。中には強い物が混じってるかも知れないが、今回は相手の数も知れており、地の利もこちらに有るのでダイブ有利であるそうである。
●リプレイ本文
●近江の豚鬼退治 2−2
世界には精霊が満ちあふれている。
ジャパンではそれを八百万の神と言う。
神に愛され、神と共に存在する土地ジャパン。
そんなジャパンの一角に、人知の及ばない世界がいくつかある。
その中の一つが、豚鬼王鐵が治める蓬莱山を中心とする豚鬼達の王国である。
蓬莱山を治めるのは豚鬼王鐵。
武勇を好み、強い物には、敵味方問わず分け隔て無く尊敬の念を表す存在で、支配者ではなく、戦闘欲が強い。戦いと成ると正面に出たがる戦闘家である。
そんな彼の右腕が青銅、左腕が赤銅と呼ばれる豚鬼王である。
彼らは人間達との長い戦いの中で、陣形や地形の有効な使い方を学び、学習し、お互いにナンバー2のポストを奪い合う為に、どん欲に強く成っていった。
そしてそれらの学んだ戦闘技術が今の蓬莱山を支えている。
彼らの支配する山では命令は絶対である。
命令違反は重罪で、死を抗う術はない。
それらに従えない物は、山を去るしかない。
だが、群れを離れた豚鬼達に待っているのも‥‥人間や追ってからの恐怖でしかない。
6匹の豚鬼達は山を下り、近くの集落を襲い、人間を口にしていた。
人間の味が忘れられず、蓬莱山から逃げ出してきた豚鬼達である。
「さて、改めて自己紹介がまだの人には挨拶を‥‥鋼鉄山猫隊で飯を食わせて貰っているガンサイと言うケチなじじぃでござる。日本の言葉はまだ余り理解出来ていないでござるが、一つよしなによろしくでござる」
そう言って鉄弓を背負った一人のドワーフが冒険者一行に挨拶をする。
「儂は皆さんに比べればずっと弱い。特技も弓しか無い。そんな私ですが、一つヨロシクお願い致す」
ガンサイがそう言って皆に食事を勧めた。
質素な味噌粥料理だが、身体が芯から温まる料理だ。
っと言うか、季節的にちょっと暑いのだが。
彼に同行する無言の甲冑‥‥2mを超える巨躯にヘビープレートとヘビーヘルムで身を包んだそれは味噌粥を静かに啜っていた。
マナウス・ドラッケン(ea0021)は今回の冒険者の中では1〜2を争う実力者である。
おそらく彼女の強さは、ガンサイの3倍以上あるだろう。
見た目と気配と存在感が十分に違い過ぎる。
「戦場(いくさば)では個人の強さよりも陣形や戦術が優先される‥‥っが、今回は戦場ではない。冒険者のその抜きに出た強さで、力押しで十分対処出来るだろう」
甲冑の戦士アリサはそう言って静かに微笑した。
●いざ戦場へ
連絡の途絶した村の入り口に近付く、彼らの鼻を血の臭いが刺激した。
「私はここに待機する。かれらが村から逃げ出さないようにな。君たちは存分に戦ってくれれば良い」
アリサはそう言って微笑を浮かべた。
臭いをたどると一件の家からその臭いは漂っていた。
おそらく豚鬼達が根城にしているのだろう。
一件の民家‥‥っと言っても合掌造りの家である。その建物はとても大きい。
九紋竜桃化(ea8553)と黒畑丈治(eb0160)。それに太丹(eb0334)が正面から、残りは裏から攻めることにする。
建物の中での戦い‥‥となると少々緊張が背中を走る黒畑丈治である。
「オグ! オグオグオグ!」
乗り込んだ3人に2匹の豚鬼達が同時に襲いかかる。
獲物は棘付き棍棒。鎧は皮鎧の様だ。
一匹が力一杯棘付き棍棒を振り下ろしてくる。
九紋竜桃化がその太刀筋を見切る。
太刀筋からして、本当に力任せの攻撃だ。
彼女はリュートベイルでその一撃を受け止める。
ミシリ‥‥っと肉が軋む音が聞こえる。
それは豚鬼のではない‥‥彼女のである。
彼女の渾身のカウンターアタック『昇竜』が炸裂する。
並の人間なら即死させることが出来る剛力の‥‥掛け値なしの剛力の一撃が豚鬼の胴を大きく切り裂き、深々と身体に突き刺さった。
「兵は、統率されてこその力と言う物、その力を放棄し、村々を襲うなど、兵の風上にも置けぬ、無頼(豚鬼)漢、彼らのその報い得と味合わせてあげましょう。食らえ『昇竜』」
彼女の決めぜりふが一呼吸おくれて豚鬼に捧げられる。
肺の中の酸素を一気に消耗して、彼女の呼吸が少し高鳴る。
そのまま自らの自重で倒れる豚鬼。豚鬼はまだ絶命はしていない。息はある。その動きを止めた豚鬼に、黒畑丈治の束縛の術が放たれた。
コアギュレイトが負傷した豚鬼を束縛する。
太丹の一撃がもう一匹の豚鬼を襲う。
龍叱爪の一撃が、厚みのある豚鬼の皮下脂肪と内臓脂肪に突き刺さる。
それでも致命傷にはほど遠く、豚鬼は流血しながら部屋の奥へと逃げていった。
裏に回った一行は2匹の豚鬼と遭遇する。
ウチの一匹を奇面(eb4906)と椥辻雲母(eb5400)が相手をすることになった。
椥辻雲母が両手に小太刀を1振りづつ構え、静かに前に歩み出す。
彼女の右手の一撃、そして左手の一撃が豚鬼に炸裂する。
だが、皮下脂肪がそれを食い止め、決定打には至らない。
印を結び、10秒と言う気の遠くなるような時間を抜け、奇面の術が豚鬼へと発動する。
だが、豚鬼はそれを意にも介して居ない。
もう一匹の豚鬼に井伊貴政(ea8384)が日本刀で斬りつける。
その一撃で豚鬼の着ていた皮鎧が粉々に砕け散った。
だが、豚鬼の皮鎧など殆ど防御力の無い粗悪品である。
問題の皮下脂肪を何とかしなければどうしようもない。
「ここはバーストアタックより‥‥ダメージを与えることの方が優先だろう」
マナウス・ドラッケンがそう言って刀を抜いた。
椥辻雲母の攻撃では有効打を与えられないだろう‥‥っと思ったからだ。
しかし、彼自身も技は神業的なレベルだが、エルフと言う立場上、一撃のダメージには乏しい。
ポイントアタックの無い彼は隙間を狙った攻撃や顔や首など装甲の薄い部分への攻撃が難しい。
美味くカウンターで合わせて威力を高めて攻撃しなければならない。
「分かった。冒険者だけ働かせる訳にはいかないからな。一つ芸を見せよう」
ガンサイがそう言って背中の鉄弓を構える。
矢は一つ。
狙うは椥辻雲母の戦う豚鬼。。
吸い込まれるようにして、放たれた矢は、肉厚の薄い脇の下へとピンポイントに突き刺さる。
マナウス・ドラッケンはその技に見覚えがあった。
いや、彼自身も習得している技の一つである。
シューティングポイントアタックEX‥‥っと呼ばれる技である。
極めて‥‥極めて習得できる流派の少ない技である。
彼も自分以外の人間でコレを使っているのを見たのは久しい。ドワーフは人ではないが。
「弓なんてのは前衛が居てくれて初めて効力を発揮する武器だ。特に矢をつがえてる間に攻撃を喰らったんじゃ、しゃれにも成らん。アンタみたいな凄腕の剣士が護衛してくれて、前衛が敵の注意を引きつけてくれて、初めて矢が撃てる‥‥、儂が強いんじゃない。チームワークの勝利だって事だ」
ガンサイはそう言ってマナウスと椥辻雲母に笑みを浮かべた。
一度ダメージが入り、相手の状況を悪くすれば術はとけ込みやすい。
鬼面の術が豚鬼に浸透し、豚鬼の顔を真っ青に塗り替えて行く。
っと建物の奥から矢が飛来する。
井伊貴政の身体に竹製の矢が突き刺さるが、武者鎧のおかげでダメージは殆ど無い。
「援護してやる。いけるか?」
マナウスがガンサイに問いかける。
ガンサイは同時に3本の矢をつがえた。
オーク弓兵に3本の矢が一斉に降り注ぐ。
オーク弓兵が体勢を整えきれず、建物の奥へと逃げようとする。
っが、正面から突入した2人がそれを許さなかった。
逃げ場を失った豚鬼達が次々と断末魔の悲鳴を上げて行く。
先ほどまで豚鬼であったそれは、今ではすっかり肉の塊だ。
今ではすっかり奇面のおもちゃである。
「規律を破った以上、お前らにもはや戻る場所は無い。蓬莱側も切り捨てるほうを選ぶだろう」
庭に並べられた豚鬼の死体に無情の言葉を投げかける。
捕虜にすることも出来たが、豚鬼の言葉が分からぬ以上、今は命を絶つしかない。
雑兵ずれから手に入れられる情報もたかが知れているだろう‥‥。
「十分な活躍だったようだな。私は暇を持てあましていたぞ」
アリサの言葉に微笑を浮かべながら、冒険者達は一路坂下城へと帰るので有りました。
どっとはらい