近江の豚鬼退治 2−3

■シリーズシナリオ


担当:

対応レベル:フリーlv

難易度:難しい

成功報酬:0 G 85 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月11日〜11月17日

リプレイ公開日:2006年11月19日

●オープニング

●前回までのあらすじ
 ダイブ間が開いてしまったので少し説明をしよう。
 近江の国。
 京都の東に有る天下の米所として有名で琵琶湖の水のおかげで美味しいお米を大量に生産することが出来る。日照りとか干ばつとか知らずの取ってもすばらしい国である。
 そんな近江にはいくつかの人知を超えた大問題がある。
 比叡山の酒呑童子や琵琶湖の九月鬼などがそうである。

 そのなかでも近江で有名な問題として蓬莱山の豚鬼が上げられる。

 彼らは蓬莱山を中心に琵琶湖の北西に豚鬼の王国を築き上げ、1000を超える豚鬼達が1万人を超える人間達を支配していると言われている。

 その頂点に立つのがオークロード鐵。そしてその部下に6匹の豚鬼王達を統べている。

 彼らは定期的に‥‥儀式的にも似た戦を多々人間達と‥‥近江武士団と刃を交えている。

 数ヶ月前に鐵との会談に成功。一ヶ月の間の停戦協定が結ばれた。

●現在
 それから3ヶ月。
 蓬莱山の豚鬼達が山を下りたという話は聞かない。
 鋼鉄山猫隊は近江の豚鬼達と戦うために組織された特別な部隊である。
 近江の中でも屈強なサムライや志士達で構成されている。

 とは言うものの、豚鬼達がそれにおそれを成して逃げ出したという事は殆ど無い。

 では、何故、豚鬼達は3ヶ月も襲ってこないであろう。

「ふしぎじゃ。何か良からぬ事が起きなければ良いが」

 鋼鉄山猫隊を蓬莱山の麓に推し進めてみる。
 新たな見張り台などが増設はされているものの、いつもと変わらない状況。
 ふもとギリギリまで近付かない限りは、豚鬼達も矢をいかけて来る様子はない。

「妙じゃな‥‥ジライヤを呼んで調べさせてみるのじゃ」

 神楽坂紫苑の号令で数日の内に、ジライヤ率いる甲賀忍軍に寄って状況が調べられた。
 どうやら豚鬼達は北西からやってきた犬鬼の一族と小競り合いを続けているらしい。

「ふむ‥‥これはどうしたものか。わらわとして、寝討ちの様な真似はしたくない。出来れば正攻法で戦い所じゃが‥‥。冒険者の意見をふまえて考えて見ると言うのはどうか?」

 そんなわけで、大津のお城での会議が行われることになった。
 一応料理と酒が用意されるので酒宴と言う形を通して会議は執り行われるらしい。

 大まかな話の内容としては、『豚鬼と合戦をいつ始めるのか?』『犬鬼に対してどうするか?』 である。
 一部の者達からは『犬鬼と手を結んで豚鬼を強襲』等という意見も出ているが、難攻不落の蓬莱山の豚鬼が犬鬼を仲間に入れた所で落とせるとは到底思えない。

 もし仮に倒せたとしても、『犬鬼の力を借りなければ、物の怪一つ討伐出来ない』っと近江武士達が笑われるような事に成れば天下の恥となる。

 そんなわけで客観的な意見もふまえた上での意見として参考にするので、ふるって参加し、ご意見して頂きたい。

●今回の参加者

 ea8384 井伊 貴政(30歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea8616 百目鬼 女華姫(30歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb0160 黒畑 丈治(29歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)
 eb6553 頴娃 文乃(26歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●近江の豚鬼退治 2−3
 今日の大津は慌ただしかった。
 小谷城と安土城からお偉いさんが沢山くるからである。
 近江国主の浅井長政を筆頭に、浅井三将または海赤雨三将と呼ばれる、海北・赤尾・雨森のお三方。
 磯野員昌、藤堂高虎、遠藤直経らの名だたる武将。
 近衛家や京極家などの名家の人間も見受けられる。
 神楽坂紫苑は、それらの出迎えに忙しいらしく、冒険者の出迎えにはニャオ・ファンがお相手となった。

「ささ、遠路はるばるようこそおいで下さいました」
 チャイナ服の娘は皆を大津城へと案内した。
 すっかり忘れられているかも知れないが、彼女は鋼鉄山猫隊アイアンリンクスの一員でハーフエルフの武闘家、ニャオ・ファン(鳥・迷)。女性。
 若くして(ハーフエルフだから見た目ほど若くないけど)実力者として神楽坂紫苑に認められ鋼鉄山猫隊に抜擢された人物である。
「ささ、坂下城が改築工事中ですので、今回は大津城にて。大津城は坂下城の何倍も大きくて何倍も立派なんですよ〜」
 そう言って冒険者達の先導をするニャオ・ファン。

 やや大きめのお座敷に足を運ぶと、神楽坂紫苑と浅井長政が部屋を暖め待っていた。
「ようこそ、冒険者諸君。改めて始めまして。浅井長政と申します」
 見た目の年齢は20才前後といった所であろうか、若々しい若武者はそう言って静かに頭を下げた。
 浅井長政と言えば、近江の国主(一番偉い人)である。
 近江の重鎮達(さっき見えたとても偉い人達)をほっといてコッチに居て良いのだろうか、そうそうに謎である。

「いやはや、なにやら諸国が不穏な動きをしている様子で大変なのだよ。近江は京都から越前・美濃・伊勢・岐阜・尾張への通り道なので東ジャパンへの街道筋は皆近江を通るのでね。五条の宮や武田信玄などが兵を挙げれば、真っ先に近江は矢面に立たされる‥‥そうだ。この気に近江の説明を簡単にしてあげてくれるかな?」
 ヒザを崩し、ざっくばらんに冒険者達を席に案内する浅井長政‥‥っが、流石にそれは近従のサムライ達に制させる。

「ささ、先ずはお茶と茶菓子を召し上がれ、外国の珍しい菓子じゃぞ」
 そう言って用意されていたのは一人につき、1つのハニーカステイラ。
 蜂蜜たっぷりのカステイラ。それが一人一本(一斤)お膳に乗って用意されていた。
 一応緑茶も用意されている。

「それでは一つ頂きましょうか」
 黒畑丈治(eb0160)が一つちぎって口に運ぶ。なかなかの美味である。
「どうじゃ? 近江の菓子職人達に腕を振るわせた至極の一品じゃぞよ」
 カステイラは黄金の菓子‥‥っと呼ばれ長崎でも一斤で一両はくだらないと聞く。
 蜂蜜で近江で作らせたと言っても、かなりの値段は張っているだろう。

「さて、あたしから意見を言わせて貰うわね」
 百目鬼女華姫(ea8616)がそう言ってお茶を啜ってから意見を述べた。
「犬鬼と豚鬼の一戦はとりあえずは傍観し、お互いの戦力が削がれてから、雪が降り始める前に、豚鬼と再戦した方が宜しいと思いますわ。運が良ければ犬鬼の毒で豚鬼の戦力が削られるわね。犬鬼と手を組んでも良いことは無さそうだし」
 カステラを摘みながら意見を述べる百目鬼女華姫。
 黒畑丈治も豚鬼と退治すると意見では賛成である。

「私は犬鬼は無理して関わる必要も無いと思う。犬鬼と小競り合いをしている間に、豚鬼側へ攻めても良いのではないか? っと思っているわ」
 頴娃文乃(eb6553)の言葉を受けて少し考える神楽坂紫苑。

「ふむ‥‥問題は既に蓬莱山には初雪が降り始めていると言うことじゃな‥‥」
 そう言って神楽坂紫苑が苦笑する。

「ささ、お鍋が出来ましたよ〜」
 井伊貴政(ea8384)が侍女達と共に鍋を持って部屋に入ってくる。
 どうやら料理の手伝いをしていた様子である。
 味噌仕立てで鴨と大根を煮込んだ鴨大根の臭いが味噌に乗って鼻孔をくすぐる。

「お酒の方も沢山用意してありますから、ささ召し上がってください」
 熱燗‥‥お銚子のお膳が配られる。

「今回はシフール達の姿が見えぬようだが‥‥せっかくのカステイラなのにもったいないのぅ」
 そう言ってつぶやく神楽坂紫苑。
 惜しそうな感じでカステイラのお膳は下げられ、料理の膳が並べられる。

 近江は琵琶湖のおかげで淡水の幸が多く、この時期は美味しい鰻を食べる事が出来る。
 鯉のお鍋にウナギの煮物などが用意されている。

 酒が進み、すっかり宴会状態である。
「では、本日の犬鬼にはケンカを売らず、今は坂下城の備えを固め、小競り合いの準備を進める‥‥っと言うことで良いかな? 雪解けまで待つと言う案も有ったが、流石に今から雪解けまでは日が長すぎる。それまでには奴らも戦いたくなるであろうからな。相手をせねば近隣の村々が教われるやも知れぬゆえ」

 そんな感じの話の流れに成った。
 っがすっかり酒が回っている。

 深夜。頴娃文乃が大津城のお湯所へと足を運ぶ。
 着物を侍女に脱がせてもらい、お風呂へと足を運ぶ頴娃文乃。
 どうやら先客が居るようだ。
「おや、綺麗なご婦人の来客なら歓迎するよ」
 すっかり酔っぱらった浅井長政様が、湯に浸かって酒を呑んでいる。
 頴娃文乃が湯を浴びて、湯の中に相席することとなる。

「っでどうですか?」
 頴娃文乃が質問する。浅井長政は静かに頴娃文乃に目線を向ける‥‥っが目線はややした、胸元の方をぼんやり見つめている。

「あたし達は信用のおける人物だ‥‥っと思えました」
 頴娃文乃が静かに首を縦に振る。
「皆が言う、私は臆病ではないのか‥‥っと。その通り、私は臆病者だよ。だから戦に望む時は細心の注意を払う。それに私より腕の立つ武将達に指揮を任す事もある。私は政治向きな人間なのでね。西の供えに神楽坂紫苑。東の供えに磯野員昌を用いている。私は良い部下達に恵まれて幸せ者だよ」

 酒に寄っているのか顔を赤らめながらぼーっとする浅井長政。
 そんな彼に酒をつぎ足す頴娃文乃。

 艶やかな夜はしずかにと過ぎて行くのでありました。