【胡蝶と竜】狸寝入り

■シリーズシナリオ


担当:成瀬丈二

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:15 G 20 C

参加人数:6人

サポート参加人数:1人

冒険期間:06月22日〜07月01日

リプレイ公開日:2007年06月30日

●オープニング

 江戸の西、八王子に代官の大久保長安は城館を構える。
 今は源徳信康の側室と子供達、登久姫さま、仙千代が、家康の側室阿茶の局と、その息子『源徳長千代』───肌は浅黒く。目は吊り上がり、凛々しい面影を宿すが、まだ9歳の若年である。傍目には14、5に見えるが───とその側仕え、柳生左門───見た目は麗しい乙女であるが、中身は歴とした柳生の御曹司である───が世話になっていた。
 家康の伊達等の失策を待って、江戸城奪還戦に挑むという言葉を受けて、長安は平泉を中心に密偵を放っていた。その八王子の穴を埋めるのは冒険者である。
 しかし、イレギュラーはつきもの。
 八王子と江戸の往復の間にまだ赤子の仙千代が何者かに掠われたのだ。
 鬱屈した状況にいた忠輝と、その暴走を止めようとした左門が、デビルが中核にいると思しき、忍者集団を手足の様に使いこなす『皇虎宝団』が江戸を包囲する諸侯と手を組んだと判断して独自の暴走を始めた。
 こうして八王子にやってきた冒険者は最初の想定外の任務を申しつけられ、皇虎宝団から仙千代を奪回し、若君の暴走を止める事になったのである。
 八王子を巡る冒険が始まる。
 

●今回の参加者

 ea2046 結城 友矩(46歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea2741 西中島 導仁(31歳・♂・ナイト・人間・ジャパン)
 ea6264 アイーダ・ノースフィールド(40歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea6764 山下 剣清(45歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb3701 上杉 藤政(26歳・♂・陰陽師・パラ・ジャパン)
 eb5475 宿奈 芳純(36歳・♂・陰陽師・ジャイアント・ジャパン)

●サポート参加者

リアナ・レジーネス(eb1421

●リプレイ本文

 宿奈芳純(eb5475)は一言の元に一同の希望を打ち砕いた。
「この誘拐事件に関してパーストにて見立てた所───京の都で噂のジーザス会の修道衣を着た神父が入り込んできたのが見えた。その後、神父は黒い煙の様なものにつつまれると、仙千代さまの姿が見えなくなった。───残念だが、これでも数回の試行錯誤故、魔力はもう尽きた。日にちも経ちすぎた故、限界であるな」
 山下剣清(ea6764)は───。
「赤子の仙千代を誘拐。
 やることが汚いな。
 救出することに異議などない。
 なぜ誘拐したのか、不明なところもあるが───可能性があるのはいくつかあるが」
 だが、可能性のあるものに関しては言及しなかった。非公開の予言に価値はない。
 一方、鬼の如く、関係者を集めてアリバイ関係を洗い出していた結城友矩(ea2046)はがくりと膝を突き、アイーダ・ノースフィールド(ea6264)に助け起こされる。彼女も仙千代の痕跡を愛犬に匂いを追わせようとしたが、断念した身であった。
(皇虎宝団‥‥また出たのね。
 相変わらず本拠地も不明で、こっちの都合の悪い時に現れて、一方的に攻めてくる迷惑な奴らね。
 せめて拠点でも分かれば、こっちから調査も出来るのに。
「ところで下級デビルならまだしも、雇った忍者はそう簡単に補充できないと思うのよね。
 皇虎宝団の戦力を削るには、手下の忍者を一人ずつ確実に殺していった方が早いような気がするわ」
「忍者は金次第で動く身。日の本の忍者を全て敵に回す覚悟で無ければ───むう、うまく言えぬな」
 友矩は居合わせた大久保長安に今までの作業の引き継ぎを依頼すると、飛び出していった長千代と左門を追うように動く。
 それを見た剣清は───。
「暴走しないように説得か。
 気持ちはわかるが、落ち着け。
 あせると見えないものがある」
 と、鷹揚であった。
 西中島導仁(ea2741)は仙千代誘拐に対して、如月(愛精霊のエレメンタラーフェアリー)のグリーンワードで長千代達の後を追う事にした。
「とりあえず、長千代様と先に合流して暴走を少しでも収めないといけないな。
 激情に駆られて‥‥という事もないだろうし、止めるように説得も行うつもりだが、まずは何故突撃するような事をされたのか、どこでその情報を得たのかを確認してから、それよりはどちらかというと、上手く仙千代様を救い出す方が、人助けもガス抜きも両方出来て一石二鳥ではないでしょうか、と提案という形で話を持って行こうと思う。とにかく、皇虎宝団は後回しにした方がいいと考える」
 一方、上杉藤政(eb3701)は導仁の意見に微妙な異を唱える。
「長千代殿の暴走と、浚われた仙千代殿の救出か。
 決して余っているとは言えぬ戦力を割くよりもひとつにまとめることを第一に考えるべきであろうな。
 長千代殿は父君に捨てられたと言うことが過去に刺さった棘となって、暴れたがっている面があるのであろう。
 それに方向性を持たせてあげれば、協力し合うことも難しくないと思うのだ。
 と、ここまでは互いに同調できる範疇だったのだが、藤政が───。
「しっかり挨拶をした上で、仙千代殿の誘拐の話をいたそう。
その上で、貴殿、このタイミングに関してどう思う? と聞いてみよう。
 その上で─── このタイミングから考えて、皇虎宝団こそが仙千代殿誘拐の下手人の可能性があるのではないか?
 そこまで行かずとも手がかりがつかめるかも知れぬ。
 まずはここから手をつけるのも、一つの方策ではないか? と呼びかけてみようと思う」
「いや、皇虎宝団とは切り離して考えるべきだろう」
 論争になった所に芳純からの情報が渡される。
「うむ、余計に事態は混乱しそうだ」
 との友矩の声に、アイーダは仙千代の匂いは拾えなかったが、左門の匂いを追う事には成功したとの報が入る。
「匂い袋を持っていたみたいね。如月の証言とも一致するし、まず間違いないわ」
 そして、森の中で忍者の一群を掃討している所に出くわす。
 視界に入った瞬間、反射的にアイーダの弓から矢が放たれ、連続した一撃があっという間に相手を矢襖にする。
 剣清が自分の間合いに入る前に片がつく事となった。
「長千代君、情け無いが人手が足りませぬ。助太刀を頼むでござる」
「友矩か、この前は世話になったな。助太刀はこちらからも頼む」
「アテは?」
「オーラセンサーで仙千代の気配を感じた。それを追ってやってきたのだが、生憎と八王子代官所にはオーラセンサーを使える者がいない。ならば、足手纏い。左門とふたりの方が早い。ちなみに気配はもう消えた。まるで神隠しにあった様に」
「なるほど、では左門殿、若君は快く助太刀を承知なされた。供であるそなたも当然力をお貸しいただけるな」
 と、微笑みの裏に有無を言わさぬ勢いで友矩が詰め寄る。
「落ち着いて考えて。
 もし本当に奴らが皇虎宝団と手を組んでいたとしても、多分弟さんの居場所は知らないわよ。
 皇虎宝団は手の内を隠す事で状況を有利に利用してるんだもの。
 拠点の一つも明かす筈が無いわ。教えられたとしても偽情報ね。
 弟さんを助けるには、皇虎宝団自体に切り込むしかないわ」
 アイーダの言葉に導仁が突っ込む。
「弟ではなく、甥だな。長安屋敷で口にしなくて良かった」
「弟であろうと、甥だろうと、大事な奴には違いない。親父ならともかく、兄君の泣いた所は見たくないんだ」
「長千代様───」
 左門が長千代の肩に手を置く。
「ところでこんなものを見つけたんだけど」
 導仁が忍者の死体を改めていると、一枚の書状を発見した。
『仙千代君の身柄は甲府にあり、八王子を明け渡せば無事、身柄を引き渡そう、さもなくば源徳直系の血がひとつ途絶える事になるだろう』
 それを知らされた大久保長安は一言。
「救出に向かっていただけないだろうか‥‥?」
 とだけ述べた。
 これが仙千代君を巡る冒険の最初の顛末である。