【経】ふたつのまなこを閉じてはならぬ

■シリーズシナリオ


担当:成瀬丈二

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:10 G 85 C

参加人数:5人

サポート参加人数:2人

冒険期間:07月16日〜07月21日

リプレイ公開日:2008年07月26日

●オープニング

 府中城を中心にじわじわと勢力を浸透───否、奪回していく。
 それを主導するは、源徳長千代(げんとく・ながちよ)の身に記紀の時より蘇りし軍神『経津主神(ふつぬし)』ひと柱であった。激戦が続くが、八王子千人同心には癒し手の及ばぬほどの深傷を負った者はなく、主戦力として健在であった。
 6月の内に、軍師から少なからぬ軍資金を受け取った、八王子代官にして後方の要、大久保長安(おおくぼ・ちょうあん)。
 当座、占拠した府中城は平城故、長の守りには向かぬ、武田勢の手により小田原が落ちたと聞いても一兵も裂けぬ。裂かないのではなく、裂けないのだ。購う金は在っても、民人は小判大判だけで生きてはいけない。義経禍により府中の物資は余剰がなかった。
 そこへ江戸を大きく回って、神主の一団が訪れた。
 鹿島神宮からの使者である。
 膝を交えぬ歓談で、剣神鹿島神宮の使者の長、大鹿帯刀(おおが・たてわき)と名乗った、如何にも武人ばった大男は歓談の結果、客観的に経津主神が長千代である事を認める訳には行かなかった。
 八王子勢は、常勝を以て経津主神の証とする。しかし、最後の戦いまで一度も泥を付けず、そして、不帰の客となった勇者、猛者の歴史の中、古今東西如何に多かったものか。
 大社のみが知っている、秘密を以て証とする。これは泥仕合となり、正しい答えが必ずしも、経津主神の証明となるとは限らない。
 そこで神社で腕を磨きし、新当流の使い手を6人───連れてきた。彼らとの戦いの行方を以て、鹿島大社が協力するか否かを占いたいという。
 おそらく、一ヶ月後には500人は氏子が集まるだろうとの由。
 試合の形式は八王子勢に一任された、
 軍神を巡る冒険が始まる。

●今回の参加者

 ea2046 結城 友矩(46歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea6264 アイーダ・ノースフィールド(40歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 eb0833 黒崎 流(38歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 eb5758 ニセ・アンリィ(39歳・♂・ナイト・ジャイアント・ロシア王国)
 eb9669 高比良 左京(31歳・♂・侍・人間・ジャパン)

●サポート参加者

ガユス・アマンシール(ea2563)/ 桐乃森 心(eb3897

●リプレイ本文

 陣幕には緊張が立ち込めていた。鹿島神宮が源徳長千代を、経津主神の顕現と見なすかどうかの大一番の卜占が六対六の武芸者勝負で行われようとしているのだ。
「新当流、蘭!」
 小柄なパラの女武芸者『蘭』が、長い髪を紐で束ね、袴に足を通した少女めいた影と対峙する。
「新陰流、柳生左門」
 手には闘気より形成された打刀を携え、太陽を背に負う形で戦いが始まる。
 経津主神の軍配が下がると同時に、互いに自分の有利な間合いを得ようと諍いが始まる。
 下がる蘭、追い詰める左門。互いに軽装故動きは軽い。
 しかし、陣幕という下限がある以上、蘭の後退には限度がある。敢えて追う立場を放棄し、闘気を集中させる左門。桃色の淡い光に包まれると、開いた掌から一塊の闘気が射出された───オーラショットである。向こうが逃げるなら、此方は遠距離から攻撃すればいいだけの事。
 打ち返せず、ただ一方的に追い詰められた蘭から降参の合図が出された。
 八王子側、まずは一勝。
 アイーダ・ノースフィールド(ea6264)が鹿島側、騎乗射の勝負に挑むのである。
「ふぅん、決闘で味方につくか決めようっていうのね‥‥…面白いじゃない。
 私の対戦相手としては、同じく弓を使う葵がいいわね。
 格闘系の相手をしても、距離を制した側が一方的に攻撃するつまらない展開になりそうだもの。
 その弓はダテじゃないんでしょ。
 お相手願えるかしら?」
「『あの』弓騎士のアイーダ卿なら相手にとって不足無し」
「そう───普通の流鏑馬でもいいんだけど、簡単すぎると双方成功し続けて、いつまで経っても勝負がつかないかもしれないわね。
 お互い、相手の身体に付いた的を射合うっていうのはどうかしら?」
 お互いの額の鉢金の上に皿状の的を付けて馬に乗り、先に相手の的を壊すか地面に落とした方の得点。
 勝負は3回行い、2点先取した方の勝ちというところにおさまった。
 固定された的と違い、動き回り、時には矢を回避するような的を相手にするのはそう簡単な事ではない。
 それに、もし矢を無駄遣いしたならば、補充するまで致命的な隙ができる。
 そして、経津主神の軍配が上がった。互いの愛馬は落ち着いたものである。この馬の主への信頼をみただけで互いの格が判ろうというものである。
 アイーダは葵の額の的を破壊するために、すべての射撃にはシューティングPAとバーストシューティングを組み合わせて挑む。当然騎乗シューティングは前提である。アルスターの魂と言ってもいいかもしれない。
 初戦は小手調べ。相手の実力を見るためにも上記のCOと回避だけて凌いでみせる。
 しばし、遠距離での戦いが続いたものの、地力の差でアイーダの放った梓弓の一矢が葵の皿を打ち砕いた。
「まだまだ!」
「───力量の差、判ってる?」
 次戦は日本の流派には無い騎乗シューティングEXを使う。
 お互いの馬が交差した直後、振り向きながら相手の的を射る。
 葵の頭を掠める様に、唸りを立てた矢が瀬戸物の的を打ち砕く。
「参った」
 との葵の声にそっけなくアイーダは。
「じゃあ、八王子側の二勝目ね、後はよろしく」
 霊亀は高比良左京(eb9669)と対峙する。
「新当流の猛者と腕比べか燃えるぜ〜───だがな、鹿島大社の援助頂きだぜ」
「そうは巧く行くかな」
「さてね? しかし。あんた、ごついな」
 腰の虎徹を抜き放つと一旦八双に構える。
 開始の合図を待たず摺足でじりじりと相手の刃圏ギリギリまで近寄ると中段に構える。 北辰流の切先をユラユラと動かしながら挑発していく。
「江戸の今風な闘い方をお見せしよう」
 試合開始の合図を聞くやいなや一気に間合いまで詰めて斬りかかる。手数で勝負!
 自分のターンは強打と陽動を組み合わせた三連撃を叩き込みダメージの蓄積を狙う。
 しかし、相手の重装甲と急所外しのデッドオアライブにより大して傷は負わない。
「なるほどな───受ける気がないのなら、手加減は要らないってか?」
 左掌を前に突き出し、右手の太刀を肩に担う様な、新当流独特の構えのまま攻め込んでくる霊亀の一撃が浴びせられようとした刹那、放胆に左京は踏み込み、迷いのない一刀を霊亀に返す。
 しかし、稲妻の様に情け容赦なく浴びせられる、霊亀の一刀に左京の意識は飛びそうになる。しかし、今までの研鑽が本能と染みついた、左京の虎徹はその重量の全てを以て、霊亀の脇腹を抉っていた。
「勝者は誰だ!」
 叫んだ左京は、自分の側に軍配が上がるのを待たず、意識を失った。
 八王子側三勝───。

 新当流四番手は、鬼牙崎は一種仙人の様な趣を漂わせていた。
 その相手を勤める、黒崎流(eb0833)は先月と合わせ、金子三千両を八王子勢に渡していた。受け取った大久保長安は苦笑して。
 金はあっても困る事はないが、肝心の物資を売ってくれる相手が居ない、と頭を掻いたのであった。

 流は相手の鬼牙崎がオーラ使いと言う事だが、補助系であっても仕掛けられるオーラには抵抗。
 自分の技は後手に回って得をする事も特には無い。
 相手がオーラを使った場合など、隙あらば様子見など無用で攻め立てる。
 しかし鬼牙崎は間合いを取った所で、桃色の淡い光に包まれ、一瞬でオーラ魔法を発動。
 それでも流は初手はルーンソードで強打を仕掛け、防がれようとこれを印象付けておく。
 しかし見えない力場が展開されていても流の攻撃を受けきれず、脇腹から鮮血があふれ出す。それでも再び淡い桃色の光に包まれ傷口はふさがっていく。
(左手はオーラシールド?)
 続く攻撃は二天一流の太刀筋で攻め込む。やはり右のルーンソードは脇を狙い、踏み込みながら鉄扇を上段から振り下ろす。
 相手は裁ききれず鉄扇を喉の手前で寸止めする流。
「参ったと言って下さい」
「───こちらの負けだ。これで四勝だな。八王子に助力しよう」
 見ていた足軽達は歓声を挙げる。
『浪人』の鶏頭は斬馬刀を振り下ろしながら。
「新当流の負けは認めた。だが、私は負けていない」
「ナラバ、闘オウ」
 ニセ・アンリィ(eb5758)の目的は新当流との試合に勝って武威を示す事であり、その為に露西亜から助太刀に来たのである。ロシアへこの試合が終わったら直帰する強行軍であったが。
「俺的ニハ亀チャント戦イタカッタガ、マァ文句ハイエネェゼ。
 俺ノ相手ハ鶏頭カ。
 似タモノ同士ダサッサト終ワラセヨウ。
 未ダ極メヌ身ナレド、虎南流剛剣術オ見セ仕ル!」
 言うと大剣スクリューミルが唸りを上げ、斬馬刀を粉砕し、鶏頭を陣幕まで吹き飛ばしていた。
「コレデ勝負ハツイタナ?」

 結城友矩(ea2046)は帯刀と視線で会話を交わす。
(これでも闘うか?)
(強い相手と闘うのは武人の誉れ)
(よろしい───ならば本懐である)
「鹿島大社氏子五百人か。我が軍にとって喉から手が出るほど欲しい戦力でござる」
 互いに開始1分前までにオーラ魔法を使用し、試合に臨む事で帯刀と友矩の対戦条件はまとまった。オーラエリベイションを発動。続いて鯉口を切ると一気に刀を引き抜き天にかざすとオーラパワーを付与する。互いに魔法を発動させ試合に臨む。
 胴田貫を青眼に構え、切先はぴたりと相手の喉下を真っ直ぐに狙っている。その立ち姿はレザーアーマーとレザーヘルムで身を固め。更に外套を纏っているとは思えぬほど軽やかだ。
「新陰流、結城友矩でござる」
「新当流───帯刀参る!」
「始め」の合図で裂帛の気合を発しながら相手の刃圏に踏み込む。新陰流独特のカウンターを恐れぬ、捨て身の斬りこみ。
 胸にレミエラによる発光現象を発生させながら、初太刀は兜割りの秘剣。相手の虎徹を一撃でへし折る。
「降参しては如何かな」
「そうだな、これで剣神経津主神の霊威ありと皆に伝えられる」
 帯刀はそう言ってほほえんだ。
 これが氏子を巡る冒険の顛末である。