【級】君はまだ戦えるか? 強襲江戸防衛線

■シリーズシナリオ


担当:成瀬丈二

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:10 G 85 C

参加人数:5人

サポート参加人数:2人

冒険期間:11月15日〜11月20日

リプレイ公開日:2008年11月23日

●オープニング

 府中砦にて、妖怪変化がたむろする。
 経津主神───いや、級長津彦である“源徳長千代(げんとく・ながちよ)”の威により集められた、鎌鼬と風精龍、人に化ける狐狸の類である。
 その数およそ百。
 江戸に向かい、伊達勢の反撃により、ほぼ壊滅状態となった香取五百神人の後を埋めよ、というのは些か荷の勝ちすぎる話であった。
 八王子代官の大久保長安(おおくぼ・ちょうあん)は渋い顔をしている。
 人に変化する能力を持つ、風精龍の長である彦之尊(ひこのみこと)が、公の場で長千代に向かい、級長津彦と述べた件である。神人を含めたほとんどの者は、その意味する所を判りようがないだろうが、これまでの推移を知っている者には、暴発寸前の言葉であった。
 府中砦を獲得したものの、こちらに展開する伊達勢は物見によると、最低でも騎馬隊が千騎はいる。最低───で、である。更に時間を費やせば、西方との情報網も寸断され、府中砦に雪隠詰めという状況になりかねない。
 打って出るにしても、彼我の兵力差は如何ともし難い。こんな状況でも役立つのが冒険者である。
「親が来るのを座して待つのでは、元服も遠そうだな───」
 嘯きながら長千代が出した案は、冒険者と長安配下の忍者部隊による、伊達勢の後方攪乱の後、八王子千人同心の全軍を以て押し出し、少しでも伊達の戦力を削る。
 しかし、物見によると、伊達勢も精兵を徴集しているらしい。経緯は不明であるが。
 その12人の背に染め抜きしは『ほうおうのまる』。火の精霊魔法を使う志士と、火のスクロールを能く用いる陰陽師からなる、鳳凰『翠蘭』の氏子───不死鳥教典らしい。
「懐かしいな───しかし、厄介な」
 長安がそう漏らす。単純な後方攪乱では済みそうにない。伊達勢もこちらのやり口を読んでいたようだ。
 精鋭同士の鎬の削りあいだろう。
 江戸を紅に染めよ。

●今回の参加者

 ea2046 結城 友矩(46歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea6264 アイーダ・ノースフィールド(40歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 eb3225 ジークリンデ・ケリン(23歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)
 eb4803 シェリル・オレアリス(53歳・♀・僧侶・エルフ・インドゥーラ国)
 eb9669 高比良 左京(31歳・♂・侍・人間・ジャパン)

●サポート参加者

ジルベルト・ヴィンダウ(ea7865)/ アレーナ・オレアリス(eb3532

●リプレイ本文

 異音がした。
 ジークリンデ・ケリン(eb3225)が印を組み、淡い赤い光に包まれると、江戸近辺を記した地図が燃え上がる。
 灰の中から記された道筋で、不死鳥教典の党首であり伊織の居場所を確かめる心積もりであった──しかし。
「おかしい?」
 彼女がそう訝しむ。情報があれば『伊織の居場所』への道筋が記される筈だが、不確定な情報ならそれなりの精度での出てくる──はずである。
 灰はなにも示さなかった。
 ジークリンデの人間離れした魔力ならば10キロ四方に伊織が存在すれば、何らかの兆しが出てくるのだ。それが無いという事は──。
「10キロ以内に伊織は存在しない?」
 かつて船路を共にした、源徳長千代や柳生智矩といった少年達の情報がそれほど、当てにならないという事なのだろう。
「ジークリンデさん? 何か判った」
 アイーダ・ノースフィールド(ea6264)が灰の前で思索にふけっているジークリンデに問いかける。
「この付近にはいない‥‥多分」
「ジークリンデさんの魔法でも無理なら、離れている。むやみに歩いて伊達の勢力圏に入るのも面白くないわね」
 アイーダは伊達軍の軍馬に一服盛ろうと考えた。大久保長安に肝腎の毒草の備蓄、そして暗躍に関する人員(普通は忍者である)の依頼を打診し、彼女が総指揮を執る、という前提で、認可を受けていた。
 そして、彼女は辞退した。数十名の忍者を統括するには彼女の兵法の手腕が絶対的に不足している。
 自分ひとりでやった方がスムーズに行くだろう。
「まあ、一応言う分には言った。それだけ」
 アイーダの言う分とは、毒を盛るのに成功したら、高台に占拠して、伊達勢の頭を押さえ、矢を射かけようというものであった。
 赤羽の弓騎士と異名を持つ、アルスターの精化たる彼女らしい思考法である。
 長安は応えた。
「馬と徒歩、どちらが速い?」
 以上であった。

「戦争は嫌い‥‥でも、伊達さんや、武田さんに比べたら長千代さんの方がだいぶましなので、お手伝いします」
 エルフの僧侶、シェリル・オレアリス(eb4803)が、熱いものを飲み干し終えると、向かいの席の長千代に告げた。いや級長津彦に、と語るべきであろうか。
「多分、ましといわれても──照れるけど、本質的に差はないと思う。結局、江戸を源徳の手に戻そう、というのだから。単に時代を逆行するだけかもしれない」
「そこまで考えなくとも。時間はたっぷりありますわ。ゆっくり考えましょう」
「シェリルさんがそう言ってくれるのは嬉しい。でも、長千代じゃなくて、級長津彦として一生分、国津神と戦って出した結論なんだ。いくさを必要とするのはまともじゃない、って」
 身長に似合わず、まだ声変わりしていない長千代のそれは、高音部が微妙に掠れて、独特の響きを含んでいる。
「お国の事は判りかねます。とはいえ、確かにまともじゃない、と判りつつ、いくさをしているのは妙なものですね。残念です」
 この残念です、という言葉の裏側には、ジークリンデやシェリルが、八王子側に請求した、魔力回復アイテムの実費での補償を要求したものの、断られた一件も含まれていた。
 アイテムの消費は自己責任で行ってくれ、という事だ。補填は全部とはいかなかった。

 そして、決戦前夜、就寝の間際にジークリンデはインフラヴィジョンの魔法をペットのフロストウルフと自分にかけて、一晩を過ごす。普通のウィザードやクレリックなら、それだけで魔力を使い果たしかねない量である。

「目には目を。精鋭には精鋭をでござるか。されど今回は期待に応えられればよいが。火の精霊魔法は拙者には相性の悪い相手でござる。されど苦手ゆえに引き下がる事は出来ぬ」
 夜明けの強襲、魔法で呼んだ雨雲から篠つく雨粒を払いながら、“天下の大猪”結城友矩(ea2046)は、“猛虎”高比良左京(eb9669)に問いかける。
「苦手かどうか、とはうらやましい限りだ。俺はあんたと違って苦手かどうか等と、言えるほど場数を踏んでいないのでな」
 ジークリンデのインフラヴィジョンの付与で、ふたりの視界には人々が青い背景の中、赤や黄色にぼんやりと浮かんで見える。
 アイーダが先に潜入し、馬を無力化しようとしている筈であった。
 まるで先読みされていたかのように、アイーダの後方を扼する影。
 後方にいるシェリルが前衛に何かを告げようとしたが、はっきりとは判らない。
 彼女のリヴィールマジックに反応したのだ。数は12、魔法源は火の精霊力。中の一体には神聖魔法デビルの反応!
 しかし、ジークリンデには伝わった。
「飛んだ!?」
 左京が油断無く構える。
 相当の熱量らしい。まるで孔雀の様な熱気を後ろに靡かせている。その数12!
 妖星の様な赫い光である。
 後方にいるシェリルが何か魔法を唱える。淡く白い光が視界の片隅に映った。
 更に淡く赤い光に包まれたジークリンデが一際大きな熱量を発生させる。
 一呼吸遅れて突出していた、アイーダと忍者からの矢が降り注ぐ。
 それが嚆矢となって、伊達勢の忍軍も暗闘を開始する。
 雨を切り裂く、不死鳥教典──その奥義はファイヤーバードであった。
「またか!」
 左京は、ジークリンデの魔法で焦げ、突進してきた一騎をすれ違いざまに斬って落とそうとするが、相手の意図は最初から武器破壊であった。
 得物が鈍い音を立ててへし折れる。
 この武具を手に入れるのにどれほどの苦労をした事か──!
 更に飛び退ろうとした所を、シェリルが白の神聖魔法で、身動きを止める。コアギュレイトの奥義であった。
 地面に落ちた瞬間、ファイヤーバードの魔法が解除され、無防備になる。とはいえ、既に死んでいる。
 それよりもシェリルが指した影。空中に浮かぶは、小柄でやや細身な影。陣羽織がはだけ顔が露出。
 ジークリンデの記憶が正しければ彼女は──伊織であった。しかし、彼女の位置を地図が示した事は一度もない。 
「あなたは本当に伊織さん? 位置を探る魔法に反応しない、それにデビルの魔法が感じられるって──」
「そこまで知っているとはな、流石──惨禍の魔術師。今や伊織は居ない。我を呼びたければ『大鴉』と呼べ、もっとも呼ぶ機会があればの話だがな」
 言い放つと、伊織、いや『大鴉』は一瞬呪文を唱えた。全身から煙のように湧き出る黒い何か。
 彼女の目が金色の光を放つ。
「ぬ、怪しげな!」
 不死鳥教典の屍の中に仁王立ちする、友矩はそう言い放つ。
「ぐわっ不覚!」
 迂闊に視線を合わせてしまった左京は魔力に抗えず、全身が金に変わっていく。
 シェリルが咄嗟に魔法を唱えて、全身を白い淡い光に包まれる。
 利けばまだいい、という判断の下のニュートラルマジックであった。
 それが良かったらしく、左京の全身の感覚が急激に取り戻される。
「助かった」
「それはどうかな?」
『大鴉』は再び、デビル魔法を発動させる。黒い炎の固まりが、シェリルに向かって飛んでいく。
 しかし、シェリルが展開していたホーリーフィールドにより威力は消滅される。
「さすがは人間としては最大級の防御力という所か‥‥」
「駄目、逃げて!」
 いいながら、アイーダが逃走してくる。後ろからは数多の歩兵。
「くくく、守りきれるかな?」
『大鴉』の含み笑い。
「シェリルどの逃げるぞ! 魔力が続かん!」
 叫ぶ友矩。
 確かに彼女のホーリーフィールドが最大級である。しかし、相手が避けない事を前提とした奥義の組み立てを以てすれば、容易く破壊できる。
 これが魔法と武術の差である。
 魔法は絶対に当たるが、威力は同格であれば差がでない。
 しかし、武術であれば、的中しないというリスクを背負えば、かなり威力を増大させる事が出来る。
 ともあれ、一同は陰陽師の不死鳥教典が使っていたと思しきスクロールを拾い(後にジークリンデとシェリルに渡された)、撤退。
 結果として、一同の作戦は八王子軍を市街戦にもつれこませ、泥濘の中の激しい消耗戦へと展開していった。
 級長津彦と風の精霊達が雷土を呼び、やはり魔力消耗が過剰な戦いとなる。
 この戦いで八王子勢は未帰還の兵がおよそ50となる。それ以上に伊達勢の首代を挙げたが、相手は補給が利く。
 とはいえ、相手の精兵も不死鳥教典か『大鴉』以下7名に減ったのは痛手であろう。
 痛み分け。あるいはサドンデス?