ファーブル大昆虫記〜大芋虫の段2〜

■シリーズシナリオ


担当:成瀬丈二

対応レベル:6〜10lv

難易度:難しい

成功報酬:6 G 20 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:05月08日〜05月23日

リプレイ公開日:2005年05月15日

●オープニング

「トレビア〜ンだね、全く」
 神父ウィッグルズワースから観察すべき大芋虫の大きさが全長6メートルと聞くと、キャプテン・ファーブルは集ったスタッフ一同に、その言葉で感動の意を表した。
「私も詳しい習性などは調べていないのですが『牛』などを食べたりしているようです」
 大芋虫が発見されたのは、ドレスタットから1日程行った、山の中で、行方不明になったシフールを探索中の事だという。
 そのシフールはおそらく、大芋虫に『丸呑み』されたのではないか、とウィッグルズワースは付け加える。
「まあ、我が頼りとなるスタッフには今の所、シフールはいないし、問題なし。さて、捕まえて飼うにしてもじっくりと生態を観察してからにしないと。生命力は強そうだが、こんな珍しい昆虫は万が一にも死なれては寝覚めが悪いし。ま、じっくりとフィールドワークをしようではないか? 諸君」
 愛船コメート号から、筆記具や羊皮紙の束などを下ろしながら、キャプテン・ファーブルは告げた。
「では、観察開始だ」

●今回の参加者

 ea1241 ムーンリーズ・ノインレーヴェ(29歳・♂・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea2022 岬 芳紀(30歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea4340 ノア・キャラット(20歳・♀・ウィザード・エルフ・フランク王国)
 ea7209 ロゼッタ・デ・ヴェルザーヌ(19歳・♀・ウィザード・エルフ・イスパニア王国)
 ea8384 井伊 貴政(30歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

「しかし、目立つなありゃ?」
 ロヴァニオン・ティリス(ea1563)がくだんの大芋虫──キャプテン・ファーブルはキャタピラーと呼ぶ事にしたようだが──の警戒色とも取れる鮮やかな青い巨体が木々の若芽を食い散らかし、目の前に運悪くいた猪を、一噛みで痺れさせ、傍若無人の覇王ぶりを発揮するのを表していった。
「どうやら、特定の食草はないようですね。成虫にしても、この2年、3年というタイムスパンでは見られていないようですね」
 同行するムーンリーズ・ノインレーヴェ(ea1241)も相方がレディでないのを聖なる母に嘆きつつ、長きに渡る観察結果を頭の中に刻みつけていた。
 実際に文書に纏めるのはロゼッタ・デ・ヴェルザーヌ(ea7209)の仕事であるが。その為には正確な記憶と観察が欠かせない。
 せめて、そのレディの為、ムーンリーズは全力を尽くすつもりであった。
「はい、メシ。遠くからの観察も飽きてきました‥‥いくら何でもキャタピラー、俺のメシ食わないでしょうね?」
 井伊 貴政(ea8384)がノア・キャラット(ea4340)が採取してきた香草をふんだんに使った差し入れを入れる。残念な事に旨そうなものは全て、キャタピラーに片付けられていたようだが。
 岬 芳紀(ea2022)が観察初日に行った実験──ドレスタットで購入したニワトリを目の前に放して、どの様に捕食するかの実験で、キャタピラーは見事なまでの瞬発性を見せ、見事ニワトリ数匹に食らいつき、麻痺させて丸呑みしていった。
 キャタピラーはエチゴヤで購入できる程度な虫除けの香では、躊躇すら見せず。残るメインディッシュ──人間、エルフ、その他に向けて猛進してきた。
「大気に宿りし精霊たちよ、煙と成りて敵の視界を遮断せよ! スモークフィールド!」
 ノアの呪文と、咄嗟に芳紀が虫除けの香を放り捨てた事で、キャタピラーが混乱したらしく、何とか逃走する事には成功した。
「ドラゴンと戦うのって‥‥これくらい消耗するんでしょうか?」
「ドラゴンと刀を交えた事がないから──わからん」
 以上、実験終了。
「ところで、その主語無し文章。イニシャル、略語体だらけの、代名詞乱舞な筆体はどうにかならないものかね。前後を知っている者か、吟遊詩人の想像力に任せるしかないような文章は、記録という文章とは相反するのだよ」
 キャプテン・ファーブルは、ロゼッタの文章を見て、てんてこ舞いしていた。ローテーションの合間を縫って、文章の修正をしている。彼の明晰な知性は十分に隠し立てした部分を正確に思い出せたから良かったが、他のメンバーではそうはいかなかっただろう。
 ムーンリーズはファーブルにひとつの結論を出した。
「この近辺にいるのはおそらくあれ1匹きりです。あの食欲の生き物が数匹いたら、この辺りにはドラゴン1匹残っていません」
「君はこんな蝶を知っているかね? 親は1本の食草に複数の卵を産むが、最後に蝶として羽化できるのは1匹だけという生態のものがいるのだよ」
「そんなマニアックな話をされてもこまりますね。そういった事はウィッグルズワーズさんと話し合ってください。でも、バーテンダーに蘊蓄話は欠かせませんから、最後までお聞きさせてください」
「うむ、忝ないね。どうして、1匹しか成長しないかというと、最初に孵化した幼虫が、残った他の卵を食べてしまうからなんだよ。どうやら、これにより、生き残った幼虫は活発さを増して、生き残る可能性を増やし、同時に食草を、多数の幼虫で食い荒らし、誰も成長しきれず、共倒れになるのを防ぐ巧妙なシステムであるのだよ。おそらくキャタピラーも同様に、一番最初に孵化した幼虫が他の卵、あるいは幼虫を食らって活性化するのではないかと、考察してみたりするのだがね?」
「面白い仮説ですね。でも、成虫はどこにいったのでしょうか?」
「おそらく、蛾か、蝶か、蜂の類の延長線にある生物だとすれば、そう長い事は生きていないだろうね。よほど特殊なケースでなければ、冬を越す事は無いだろう。あんなものの成虫がいたら是非とも見てみたいものだが、それには無事にあれを私の島まで連れ帰る事が第一の課題だな。捕獲には万全を期して、人数を増員しよう。おそらく短期間の仕事になるだろうから、給料はそれなりに出しても問題は無い筈だ。もちろん、給料は君たちも一緒だよ」
「おーい、魚を釣ってきたぞ、新鮮な内に貴政にさばいて貰おうぜ、以前、食い損なった“SASIMI”にして食うのも悪くはないだろう」
 ロヴァニオンがローテーションの合間を縫って、太公望していた所で釣り上げた川魚を待機組の前に放り出す。
「いや、川魚は寄生虫の可能性が大きいから、生で食べるのは望ましくないね。非常に残念な事に、全くもってのこんちきしょうだ」
「じゃあ、塩焼きにしましょう。こつは串を通した後は身を崩さない様に遠火でじっくり焼く事です」
 貴政が調理道具を漁り始めた。
「所で卵も悪くならない内に、早く食べましょう。目玉焼きという所ですね──で、皆さん、目玉焼きには何をかけて食べます」
 7通りの意見(ウィッグルズワースも何か言っていたようであるが)が出たところで、一同は皆を変人と思うのであった。
 これがキャタピラーの生態観察日記の顛末であった。

●ピンナップ

ムーンリーズ・ノインレーヴェ(ea1241


PCシングルピンナップ
Illusted by 友藤たもつ