飛竜小隊訓練学科 〇三

■シリーズシナリオ


担当:なちか。

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:4

参加人数:12人

サポート参加人数:1人

冒険期間:02月15日〜02月22日

リプレイ公開日:2008年02月20日

●オープニング

●更なる飛行技術を学べ!
 やあ、また集まってくれたね。前回のレースは中々面白く見させてもらったよ。
 前回は非常に単純なコースであったにも関わらず、限界近い性能を引き出し続けながら飛ぶという事がいかに難しいかを君たちに身をもって『体験』してもらった。
 あのレースの中で、早くも『風を掴む』事へのヒントを得た者もいるようだが、まだまだ君たちは純粋に飛ぶことも、飛びながら戦う事にも慣れていないように私は思う。
 レースの結果に満足していない者もいるだろう。だが、それは正解だ。
 そう簡単に納得されてはこの訓練科は成り立たないからな。

 さて今回は前回飛んでもらったコースを同じくして、今度は左右にスラロームしながら飛んでもらう。
 パイロンとなる木々を、一本ずつ、左右に避けながら飛ぶんだ。ただし今回は速度重視ではなく、よりパイロン近くすれすれを飛んでもらう。
 前回はパイロンに触れてはならないとルールを設けたが、今回は特別に機体に損傷を与えない程度の接触は許可しよう。
 だがパイロンはただの『障害物』や『目標となる木』という訳ではない。スラロームを行うという事がどんな状況なのか、各々イメージを拡げて、飛んでみてもらいたい。

 今回は更に、各自に設定された番号のうち、同じ番号のパイロンの上に設置された『目標(ターゲット)』を最後に破壊してもらう。
 前回同様、パイロンの数は九。それを全てスラロームで通り抜けた後、自分の番号と同じパイロンのターゲットを破壊。
 つまり、君たちが飛び立つ位置であるスタート地点は全員違う事になる。ゴールも違う。
 さて、気になる番号だが、これは当日、くじをひいてもらって決めるので完全なランダムだ。
 どんな番号でも全てが同じ条件という訳ではない事は、今言った通り。ただし、今回は別にレースのように順位を決めるものではない。
 正確さを求められるが、それゆえ非常に繊細な操縦技術が要求される。
 前回、風の精霊が乱れるとどうなるかを学んだ君たちにとってグライダーを駆使してのスラローム飛行に求められる繊細さ、正確さ、そして確実性は理解出来ている事だろう。

●ゲヲルグ先生からのアドバイス。
 だが、いつも『安全』に飛べるかどうかは別問題。パイロンが『生木』である事と、常に『風』が吹いている事を頭に叩き込まないで適当に飛んでいたら、痛い目を見るハメになるだろうな。
 またこのターゲットは薄い木の板で出来た箱で、耐久力はそれほどないように見えるが、パイロンが風に揺れると木の先に取り付けられている分、大きく揺れる。
 自分の目標以外のターゲットもパイロンに付いている訳だから、それを回避しながら飛ぶ事になる。
 スラローム中にも強い風が前後左右、上下斜めと縦横無尽に吹き付けている事を忘れるな。強引にバンクに入っているにも関わらず逆風が吹き付けてパイロンが君たちを容赦なく襲ってくるかも知れない。
 それを回避するのに夢中で次のパイロンを抜けられなくなってしまう可能性もある。

 自然の中で飛んでいる事を忘れるな。
 精霊たちの力で飛べている事を忘れるな。
 己だけで完結するな。
 戦いになれば、今よりももっと動きにくい状況に追い込まれる事を忘れるな。
 その上で、集中し続け、正確に動き、冷静に判断し、ターゲットを破壊せよ。

 ああ、そうだ。忘れていた。
 ターゲットの中には、何かが入っている。
 それを私の元に持ち帰るのが今回の一応の『ゴール』としようか。
 健闘を祈っているよ。

●今回の参加者

 eb4077 伊藤 登志樹(32歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4257 龍堂 光太(28歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4322 グレナム・ファルゲン(36歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4482 音無 響(27歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4532 フラガ・ラック(38歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb7875 エリオス・クレイド(55歳・♂・鎧騎士・人間・メイの国)
 eb7880 スレイン・イルーザ(44歳・♂・鎧騎士・人間・メイの国)
 eb8378 布津 香哉(30歳・♂・ゴーレムニスト・人間・天界(地球))
 eb8388 白金 銀(48歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb8475 フィオレンティナ・ロンロン(29歳・♀・鎧騎士・人間・メイの国)
 eb9700 リアレス・アルシェル(23歳・♀・鎧騎士・エルフ・メイの国)
 ec1201 ベアトリーセ・メーベルト(28歳・♀・鎧騎士・人間・メイの国)

●サポート参加者

アリーシャ・サーモァン(ec4418

●リプレイ本文

●新たなる課題!
「ドラグーン乗るにゃぁ、腕が立たねぇと話しにならねぇ、んで、ここに来た!」
 そう言って先ず頭を下げたのは伊藤登志樹(eb4077)だった。
「さて、今回から参加するといって、難易度を下げたりはしないつもりだ。だが、自分の力量を知らず、無茶はしないように」
「ゲヲルグ先生、競技で飛び立つ前に、魔法を使ってもいいでしょうか?」
 一応今回も練習期間を数日設け、それから全員でおさらいするように一人ずつ飛んでいく事を告げられた音無響(eb4482)は覚えたての魔法を実戦でも早く馴染んで使いこなせるようにと提案をしてみせる。
「ああ、これからの課題でも率先して自分はこうしたい、こうやってみたいという事を積極的に発言してもらいたいと思っていたところだやってみるといい」
「はい!」
「‥‥あー、いまだ飛ぶだけで精一杯なのに今度はスラロームか。どんどん難易度が上がっていくな」
 今出来ることを精一杯。飛べているイメージを頼りに、何かしらを掴もうとする布津香哉(eb8378)。
 必ずしも、全てがイメージ通りに運ばない事はこの世界で生きるものたち全てが多かれ少なかれ知っている。だからこそ、トライ&エラーを繰り返して成功のイメージ力をアップさせるのだ。

 今回も事前のミーティングと共に実際に飛行する順番を決めるくじを引くことになった訓練生たち。
 そうして決まったのが、以下のような順番である。
 一番手から順に、

 フィオレンティナ・ロンロン(eb8475)
 布津香哉
 伊藤登志樹
 フラガ・ラック(eb4532)
 龍堂光太(eb4257)
 グレナム・ファルゲン(eb4322)
 ベアトリーセ・メーベルト(ec1201)
 音無響
 リアレス・アルシェル(eb9700)
 エリオス・クレイド(eb7875)
 白金銀(eb8388)
 スレイン・イルーザ(eb7880)

 となった。
「うわ! 私が一番最初か〜。よーし、しっかり練習して、今度こそばっちり決めるぞー!」
 前回のレースでは残念ながら本選入りを僅かな差で逃した。だからこそ、という訳ではないが、全員の最初の目標飛行となる事が逆に彼女を燃えたぎらせる。
 まだ自信を持てないでいる布津や今回から本格参戦となる伊藤もフィオレンティナの直ぐ後の飛行という事で、こちらはどちらかというと無駄な緊張感で張り詰めているようにも見える。
 くじを引き終えた全員はまさしく十人十色の表情を見せていた。
 これからの戦いに向けた、静かなる戦いの火蓋は切って落とされたのである!

●単純かつ、複雑な飛行プログラム
 実際に飛んでみると、今日もかなり風が強い事が理解出来た。肌に吹き付ける寒気で身に染みる。
 夏期のように、風が心地よい、などと言っていられない。それにこの時期の風は寒いだけではなく、時折、強い風で木々を揺らす事が多いのだ。
 そんな時々来る、イレギュラーな突風が最大の難関として最後まで立ちはだかった。

 ただ、木々の間を抜けるだけでは、この訓練――。
 どうやら、その為だけにゲヲルグ先生はこの訓練を命じた訳ではなさそうである。

 前回本選に出場出来なかった悔しさからか、フィオレンティナを筆頭に、特に今回は女性陣が光る動きを見せていた。
 基本が揃っていなくとも、よかった。
 全てを揃えなければ飛ぶことが出来ない、という訳では、決して無い。
 むしろ足りないものを一人で、何もかもを補おうというのが間違いなのだ。人には、得手不得手がある。
 長所をのばすか、短所を補うか。
 やり方はひとつではない。そのどれを選択しても、必ずそれぞれの『完成』に近付く事を忘れてはならない。
 大切なのは何なのか、敢えて『捨てる』という選択もある事を、忘れてはならない。
 それは決して『何かを犠牲』にするという意味ではない。

 数日間の練習日を経て遂に本番飛行を迎えた。全員が万全という事も無いだろうがこの日のために調整してきただけあり、皆、いい顔になっていた。
 練習で少しでも何かを掴んだのだろうか。それとも、本番一発勝負という緊張感が今は逆に心地よいのか。
「フェイ、どう、空のご機嫌は」
 供の精霊の言葉を聞きながら、一番手を担うフィオレンティナは深く深呼吸してスタートを待つ。
 そして――スタートの合図が切られた。
「よし、いっくぞーっ!」
 風の流れが強いのは練習の時から随分思い知らされた。だが、その体の芯まで冷え込むような寒気が今の彼女にとってはいい刺激になっていたようだ。
 改めて、先生の言葉を思い出す。

「上手に、綺麗に飛ぶ事だけを考えていてはいけないよ」
「綺麗に飛ぶ事を考えてはいけない?」
「ああ、デモフライトのように『魅せる』飛行ならその方が好ましいだろう。けれど、今回の目的や意味を考えながら飛ぶとしたら、何が必要か。そこで何を得るか。何をすべきかを理解出来れば、私の言葉も理解出来ると信じているよ」

 上手に飛んではいけない? 綺麗に飛んではいけない?
 今回の目的? その意味? 何が必要か?
 まるで謎かけのようなゲヲルグ先生の言葉の真意はまだわからない。それでも飛ぶしかなかった。
「んっ! 少し傾けただけなのに、思い切りあおられる!」
 無理やり、力ずくで機体を押し付けなければ、即めくり上げられるような感覚が襲い掛かる!
「風を読む‥‥風を掴む‥‥風を味方に‥‥」
 何度もそうやって念じるようにスラロームに突入していくフィオレンティナ。だが、その時――。

 ヴァフュッ!!

「ちょ‥‥ッ!?」
 突然風向きが変わり、バンク状態から外側に向けて機体全部で強烈な風を受けてしまう。同時にパイロンが恐ろしい速度でグライダーを撃ち落そうとせんばかりに襲い掛かってくる!
 地に根付く、普段は『動かないもの』として認識している樹木が、この低空という条件下では、その揺れる枝葉はまるで縦横無尽に暴れまわるモンスターだった。
 ガヒュウゥゥオオ
「あ、あぶなっ! 何、今の!」
 思わず速度をあげて切り抜けた、のはよかったが、次のパイロンまでは間もない。
「加速したら旋回が追いつかないっ」
 しかし速度を下げて近付けば、また――。だが、ここで怖がってしまえば、以前と同じ結果しか残らない。
 自分を信じて、そして、己だけで完結しない。
 一見矛盾したようなアドバイスは、彼女の中で、不思議な気持ちを弾けさせる。
 ――そうか‥‥これは。
「やってみる価値は充分すぎるほどあるよね‥‥いよぉぉっし!!」

●出来る事、やれる事
 序盤でかなり体勢を崩したものの、結果的には全体の動きは悪くなかった。むしろ、今回評価された点はリカバリーにあった。
 風の怖さもそうだが、その風に揺れる木々までもが『敵』となるスラローム飛行では、更なる敵が潜んでいた。
 そう、自らが操っている『はず』のグライダー自身だったのである。
 次いで飛行した布津、伊藤は、それぞれ堅実に、飛びきる事を考えていたようだ。
 だが敢えて危険なリスクを回避し、堅実さを選ぶ事も時には必要だろう。ゲヲルグ先生は先にも言った通り、無茶な事をさせようとしている訳ではない。
 それぞれの知識、経験、技術をもって、その中で最大限出来る事、やれる事を精一杯やる事を教えたかったのだろう。
 更に四番手となるフラガ、五番手となる龍堂、次いでグレナムの三名も風の強さやグライダーランスなどの装備による機体バランスを考慮しながら、堅実さとアグレッシヴさを両立させる好飛行を演じてみせる。
「一点を注視するのではなく、ぎりぎりの状態においても全体を俯瞰する視点を維持することが必要ということですね」
 飛行を終えたフラガはそう言って、自分の目だけでない全身で感じる目を養う事が大切だと感じていた。
 これは、ひとつの『風を掴む』ヒントに成り得たのではないだろうか。
「中々複雑なレースだが、とても面白いな」
「バイクでやったことがあるけど、やっぱりそれとはまた違って、更に複雑さを感じた。こうして飛んでみるとわかるな、前回ともまた違う世界だった‥‥同じコースのはずなのに」
 グレナムも龍堂も『そこ』に気付かされた。前回とは違って一人で飛ぶという事で多少は気が楽になるかと思われたそれも、実は攻め始めると自分でも気付かない不意の『敵』の動きに気を持っていかれてしまう。
 集中出来る環境にも関わらず、自然がそれを許してくれないという感覚を味わった。しかも、飛んでいたコースは前回とまったく同じで、それにスラロームを加えただけなのにだ。

 いや――『だけ』というのは厳密に言うと間違いか。
 それにいち早く気付いたのは、今回光った飛行を見せた女性陣、二人目となるベアトリーセだった。飛行順も折り返しを迎える。
「木々の高さ、つまり前回の低空飛行‥‥。風、しなる枝、揺れる前後左右に、攻撃なら壱の太刀の間合い。考えるより回避に慣れるほうが早いかな」
 そうなのだ。この不測の事態に対処する最も単純で、有限実行でもっとも難しい事が『考えるより慣れる事』だ。春夏秋冬、オールシーズンの気候や温度、風も、木の種類だって場所によって違う。一番確実なのは、場数を踏む事だ。
 経験は何者にも勝る。
 彼女はまた、飛んでいる最中、こんな事も考えていたようだ。
「木々の枝を敵からの攻撃と想定して、飛んでいました」
 これまでの飛行を終えた者は飛びながら、その『敵』とのエンカウントを読む事ではなく風向きが変わってから対処していたのに対し、彼女は最初から動きのある『敵』と想定していた。
 これが抜群の反応力を叩き出した。風に吹かれる事を意識しながら、流されながら調整して飛んでいたという。
「枝の動きをじっくりと見ない、惑わされない、迷わない。これが目標でした」
「なるほど。いいところに気が付いたね。動く木々に目を奪われ、気をやってしまわないように、尚且つ冷静に対処し、風に逆らわず風に身を委ねつつコントロールをするように気をつけたと」
「はい。終えてみて、再度思ったのですが、空中で攻撃を回避し、空中で攻撃を当てる! というのが今回の目標だったのでしょうか」
「君たちのグライダーは風に逆らう木の葉のようなもの。だからこそ、自然に吹き付ける風がとても邪魔に感じただろう? けれど邪魔だと思っているのは君たちだけではないんだ。『風』も、君たちの無理に押し付けいう事を聞かせようとするグライダーは邪魔者なんだ」
「風が、私たちを邪魔に‥‥」
「自然に身を任せる事を選んだ君はそういう部分でもいいところに気が付いた。風を敵にすれば、それに揺られる木々の枝葉までもが敵となる。風と一体になって、無理のないコントロールはパワーで飛ぶそれとはまるで違う能力を養う事になる。風を味方にすれば、木々を敵と認識せずとも、今度は木々が『味方』になってくれる」
 低空での戦いで木々を味方にすれば、相手を障害物でもある木々で翻弄出来る事をゲヲルグ先生は伝えたかったのである。
 全てを敵にする事はない、むしろ味方にし、自然を武器にして本当の敵を倒す事も可能なのだと。だから、その手に持った武器だけが本当の武器だと勝手に思考を止めてはいけないのだ、と。

 更に前回いち早くヒントを掴みかけた音無。今後は飛びながらの魔法詠唱なども視野に入れているようだ。だが、こればかりは覚えてすぐに実戦で通用するかというと難しい。
 だからこそ、徐々にでも慣らす事を考えていた。
 長期的に見れば、いずれはグライダーでの空戦などに突入すれば今以上の凄まじい切り返しや攻撃を受ける危険性から回避する技術が要求される。
 だからこそ、仮想敵を『自然』で慣れさせるというのは非常に実践的と言えた。

 今回、女性陣の動きが特に良かったのは、技術や知識よりも『感覚』を多分に要求されたプログラムだったからなのかも知れない。
「機体に損傷を与えない程度の接触は許可って、それだけ勇気を持って突っ込め、と言う事なのか‥‥それとも意図しないでも接触しちゃうくらい危険なのか‥‥うーん?」
 五感全てを使って意識を広く持つことで、それらの予兆をいち早く感じる。彼女が目指したのは、危険領域と安全圏を練習の中で見つけ出す事だ。
 いくら枝が強く揺れても、その揺れには『限度』がある。予想以上に揺れるとなれば、それは、折れてしまうほどの強風という事になるからだ。そういう状態なら予期するもしないも、グライダーだってただでは済まない。
 そういう中で、最短ルートであり、最もリスクの少ないラインが理想だと感じていた彼女は女性陣の中でも文字通り理想的な飛行ラインと美しい飛行姿勢で評価された。

 後半戦に突入し、グライダーから降りて機体に取り付けたグライダーランスの様子を見て回るエリオス。
 グライダーに固定するタイプでランスを取り付けた彼の機動はやはり機体バランスがネックとなったようだ。
 ランスなどを固定する場合は、機体重量が重くなってしまうデメリットもあるがカウンターウェイトを載せるのがベストだと思われる。

 今回はリアレスがやろうと思ったものの敢えて外した弓で挑むのは白金だ。
 突貫で射撃のやり方を覚えようと数日の集中特訓で挑むものの、最後の最後で的を破壊出来なかったという残念な結果を持ち帰った。
 完全に外したというわけではないのだが、風の影響でしなったパイロンが矢の威力を殺してしまったのが原因であった。
 動いている標的の動き方までを考慮するにはグライダーでは速度的に一瞬しかなく、それがこの訓練での難易度を引き上げていたのだが、もろにその影響を受けたのが彼だったようである。弓が空中戦で役に立たないという訳ではない。
 むしろ、今回もそうだが課題のひとつでもある『慣れ』さえすれば、まだまだ空戦のバリエーションが多彩になる事だろう。
 弓を使うグライダー乗りは、今後、地上での戦い以上に自分と相手の動きや全体の流れを感じながら弓を引く事が望ましい。
 弓使いには、騎乗シューティングという地上でも充分に能力を活かせるものがあるからだ。

 最後のスレインだがいつもの寡黙な彼とは思えないほど積極的なアタックを演じた。
 攻めるべき点は攻める。落とすべきところは落とすという部分を念頭に置いた、特有のクレバーさで飛んだ。
 今回それぞれに違っていた飛び方。とにかく攻める事で攻撃的に飛ぶ者もいれば、安全圏を確保しての無難な飛行をする者、風に身を任せ無理をしない自然に近い飛び方。どれもその時その時のベストな飛行で、どれがいけないという事はない。
 スレインのように、落とし所をどこに持っていくかを常に流動的な世界の中でイメージングする。そういう飛び方も合っているのかも知れない。

 それぞれに見合った、背伸びしすぎない、自然を敵に見立てるか味方とするか。
 意識的な部分までもを含めての今回のスラローム訓練は終了した。