飛竜小隊訓練学科 〇四

■シリーズシナリオ


担当:なちか。

対応レベル:フリーlv

難易度:やや難

成功報酬:4

参加人数:12人

サポート参加人数:2人

冒険期間:03月21日〜03月28日

リプレイ公開日:2008年03月25日

●オープニング

●これまでとこれから
 さて、前回の飛行までに君たちも色々と学んだはずだ。今後にも通用するような、たくさんの技術や知識をどんどん取り入れて、もちろん質問に関しても出来るだけ答えられるようにしていくつもりだ。
 さあ、今回も前回よりもぐっと難易度をあげていくよ、今回は本当に難しいよ。

 今回君たちに挑戦してもらうのは、編隊飛行だ。
 その名の通り、隊列を組んで飛行する為に用いられたフォーメーションの事。
 その役割は多岐に渡るが、一言であらわすなら、それはまさしく『芸術的なまでに美しい』という事だ。
 魅せる為の、飛行技術。
 だが、戦術的に見ても編隊飛行というのは実に重要な要素でね。
 先ず、第一に互いの死角を互いでカバー出来る点にある。
 また第二に攻撃力を集中出来る、という点もある。これは言ってみれば単騎では得られない火力を、密集する事で引き上げるという役割もあるんだ。
 他にも、単騎では難しい例えば弓を撃っている間に僚騎がその射撃前後をカバーしたりするというような細かいフォローもききやすい。

 つまり、今までやってきたのは単騎での性能と飛行技術を底上げしたものだった。
 今回からはフォーメーションを組んでの、更なる高度な技術を応用した飛行訓練を行う事にする。

●エシュロン編隊飛行を極めろ!
 今回やってもらうのはエシュロン、と呼ばれる編隊だ。
 いきなりの編隊飛行は危険だし非常に難易度が高い為、慣れてもらう必要がある。
 前回揺れ動くパイロンを相手に色々とこなしてもらったが、今回は同僚の騎体とはいえ、更に自由に動くゴーレムグライダーだ。
 リーダー騎にはとてつもない責任と技術が要求される。
 そこで、今後リーダー騎を務め上げる事の出来る者を選出する為にも、努力してもらいたい。

 先ずは初日は二人一組で組んで飛行してもらう。急激な加速・減速・上昇・下降・旋回は隊を乱すだけでなく危険な行為だと言うことを体で感じてもらいたい。
 そしてまた、編隊で飛行している時の風の受け方もそれぞれで違う事を覚えてもらいたい。
 言っておくが、ただ並んで飛ぶだけじゃないかとたかをくくっていたら、大怪我の元だから、注意するように。
 また、本来の編隊飛行は基本密集隊形だ。つまり、前回までのパイロンに極力近付く、という距離感が今回からの訓練で活きてくる。

 今回は最終的に最大四人一組の右エシュロン、左エシュロンの編隊飛行を完成させる事だ。
 その為にはチーム編成とチームワークが絶対条件となる。
 先ずは、初日からの二人一組のチーム編成を君たちで決めてもらおう。その後の君たちの様子を見て、チーム編成をアドバイスしていく。
 一応、四人一組が最終的な隊列にはなるが、エシュロン編隊で足りない班はデルタに回ってもらう事もある。デルタは右、左のエシュロンのウィングマン(リーダー騎に随行する僚騎)をマスターした者が可能な更に難しい隊列だ。
 少々専門用語のようなものが加えられているが、後々説明していくから、あまり難しく考えなくていい。

●今回の参加者

 eb4077 伊藤 登志樹(32歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4257 龍堂 光太(28歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4322 グレナム・ファルゲン(36歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4482 音無 響(27歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4532 フラガ・ラック(38歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb7875 エリオス・クレイド(55歳・♂・鎧騎士・人間・メイの国)
 eb7880 スレイン・イルーザ(44歳・♂・鎧騎士・人間・メイの国)
 eb8378 布津 香哉(30歳・♂・ゴーレムニスト・人間・天界(地球))
 eb8388 白金 銀(48歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb8475 フィオレンティナ・ロンロン(29歳・♀・鎧騎士・人間・メイの国)
 eb9700 リアレス・アルシェル(23歳・♀・鎧騎士・エルフ・メイの国)
 ec1201 ベアトリーセ・メーベルト(28歳・♀・鎧騎士・人間・メイの国)

●サポート参加者

イェーガー・ラタイン(ea6382)/ 久遠院 透夜(eb3446

●リプレイ本文

●個人技から、チームワークへ!
 いよいよ、といった所だろうか。
 訓練生の皆もいずれはこういった訓練が始まるであろうと予想はしていたようではある。それでも、前回までに覚えた事は決して無駄では無かった事を知る。
「そっか‥‥今まではただ並んで飛んでいただけ、なんだよね」
 フィオレンティナ・ロンロン(eb8475)はぐぐぐっと拳を握り締めると空を望む。
「まだまだ序の口、音をあげてなんていられないよっ!」
 彼女は今回、リアレス・アルシェル(eb9700)をリーダー騎に自身はウィングマンを担当する事になった。
「今までは自分を磨けば良いだけだったけど、これからは他の人とも息を合わせなきゃいけないし、がんばらなきゃだよね」
「そうだよね、でも、頑張ろうね!」
「ええ」

 彼女たちの組以外に、初日にコンビを組むのは――。
 音無響(eb4482)・ベアトリーセ・メーベルト(ec1201)組
 伊藤登志樹(eb4077)・白金銀(eb8388)組
 グレナム・ファルゲン(eb4322)・エリオス・クレイド(eb7875)組
 龍堂光太(eb4257)・スレイン・イルーザ(eb7880)組
 フラガ・ラック(eb4532)・布津香哉(eb8378)組
 以上の組み合わせになった。共にフォローしあえる、あるいはリーダー騎がフォロー出来るような構成だ。
 今回の訓練で重要なのは、やはりその組み合わせの妙にある。とはいえ、いずれは『どの組み合わせ』でも――つまりどのような編成であっても完璧な機動を全員がマスターしなければならないだろう。

 しかし。
 なぜ編隊飛行なのだろうか?
「――ふむ。皆も気付いているようだが、一応、説明しておくか‥‥」
 ゴーレムグライダーは全開性能でも航続距離も稼動時間も短い。それは核となる精霊力を得る推進装置が小型である事、扱う鎧騎士が供給できる能力差など、他様々な理由があるが、それもこれも、一人で全部を負担する事に問題がある。
 フロートシップやゴーレムシップという大型ゴーレム機器の機関部における『メリット』を思い出して欲しい。
 つまり。
 最小限のエネルギーで最大効率を叩き出す、という技術だ。
「しかし‥‥なんていうかこの編隊飛行って、もうちょっと集まると雁か何かの渡り鳥が飛んでるみたいな感じだね」
 そう言って笑うリアレス。しかし実のところ、『渡り鳥』がなぜあんなにも長距離を航行出来るのかを理論的に考えて発した訳ではなさそうである。
 ゲヲルグ先生も前述した通り、編隊飛行には『密集隊形による火力の集中』や『哨戒などにおける索敵能力の向上』という理由も含まれている。なによりその美しい編隊飛行の姿は圧巻である。
 そしてその他に、単騎では成しえなかった『航続距離の延長』も視野に入れていたのである。
 単騎での性能は基準とはいえ、既にカタログスペックとして公表されている通りだ。
 しかしそれはあくまでも『単騎』での性能だ。

 渡り鳥がなぜ編隊を組んで飛ぶのか。これは一度飛んでみればわかるだろう。
 恐らく――今まで飛んだ彼ら彼女らならば、すぐに理解出来るだろうから。
「私も、もう少しゴーレムに慣れていれば一緒に飛んでいたかもしれないな」
 若き天界人は空を往く翼たちを見上げる――。

●高負荷と負荷の低減
「く‥‥ついていくのにやっと、だがっ――」
 何度も飛んだ空だ。ここで編隊飛行のコツを覚えなければ、更なるステップに踏み出す事など出来ない!
 布津は必死に食らいつくように、ビタリ、と張り付いたように安定したリーダー騎であるフラガの飛行を感じながら機体を揺らす。
 実のところ、先頭を担うリーダー騎の方がこういった編隊飛行では高い技術を強いられる。
 速度、高度を維持する為の基準となるリーダー騎はフラガのように安定飛行を続けられる事が条件である。ただし、状況によってはリーダー交代という事もある。
 その為にはウィングマンからもいずれはリーダーとしても飛ばなくてはならなくなる場合もある為、どちらにせよ、『ついていくだけ』では厳しいだろう。
 しかし、布津だってこれまでただ闇雲に飛んできた訳ではない。確かについていく事に必死だったが、必死さゆえに体に染み付いた経験がここに来てようやく開花しつつあった。
「――んっ!?」
 急に、体全体が軽くなるような感覚を覚える布津。いや、これは――。

「また一緒に飛べて嬉しいです、宜しくお願いします」
「こちらこそっ!」
 ベアトリーセと組んで飛ぶ事になったのは音無。今回は彼がリーダー騎を務める。
 ベアトリーセも普段通りに飛べば決して他の面々に引けは取らない。それでも音無をリーダーとしたのは、彼女も一目置く卓越したレベルで飛べると、信用の置けるフライトが出来ると考えたからだ。
 リーダーとしてのリードを信じる事が、編隊飛行には重要だと感じたのである。
「一緒に飛ぶ人の事を常に考えて、しかも自分より下とか後方にいるんだから‥‥リーダー役って後ろ、いや360度に目が欲しくなるなぁ」
 そう言いながら、実のところ、彼もゲヲルグ先生の言った『互いをフォローする』という言葉の意味を、従える事で理解する事になる。
 リーダーという役どころを信じてもらう事で、飛びながら欲する『目』を委ねるという事を。
 責任と、そして高い技術を用いる事でどうしても手が回らなくなる部分を、僚騎に任せる事で連携を取るのだ。

 それだけリーダー騎の負担というのは、厳しいのである。
 今回初日にリーダーを担当した音無、フラガ、グレナム、龍堂、白金、そしてリアレスはそれを思い知らされる事になり、対するウィングマンは逆に慣れるにしたがって、今まで単騎で、それぞれで飛び回っていた事がどれだけ非効率的だったかを思い知らされた。
 結論から言うと、ウィングマンの負担というのは、極端に軽減されるのである。
 メイの国ではまだウィルの『航空力学』に知識的に、技術的にも及ばない、というのはそろそろ過去のものになりつつある。
 少なくとも、飛竜小隊で行われている訓練は形こそ違えど非常に(天界での)近代的な、高度な技術を学べているからだ。

 ただし。
 ゴーレムグライダーそのものはメイで独自に再設計でもしないかぎりは、『質の向上』は難しいかも知れないが。
 メイが例えドラグーンを生み出したところで、飛行に関しての知識や技術が乏しければ結果的に力任せになってしまう。それはつまり、精霊力を無駄遣いする事につながり、結局、搭乗者が要らない消費を強いられる事になる。
 結果、飛ぶだけでもごく短時間の稼動しか実現出来ないのでは、せっかくの超兵器であっても宝の持ち腐れというものだ。
 風を掴む、とゲヲルグが言っていた事は、力任せに空を切り裂くのでは無く風の流れに乗って――高く、飛んで欲しいというグライダー単騎でも痛烈に理解させられる限界を軽減させる知識と技術と、何より『感覚』を掴んで欲しい。
 そう考えていたようだ。

●信じて、飛べ!
 ウィングマン担当だったフィオレンティナ、ベアトリーセ、伊藤、エリオス、そして布津らは、全員、後方の、しかも斜め下で追従しているにも関わらず、妙な浮遊感を得た。
 天界でも空の、飛行機についての知識を興味として抱いていたリーダーの一人である音無は飛んでからようやく実感する。
 その浮遊感の正体こそが、『翼端渦(よくたんうず)』――或いはウェイクタービュランスと呼ばれる気流だった事を。
 そのヒントを得て、同じ天界人の龍堂や白金、なるほど、と納得する布津。
「どういう事?」
 同じリーダーであったリアレスは、頭に疑問符を浮かべる。
「つまり、先頭であるリーダー騎の両翼が生み出した揚力を、後続の騎体が得る事が出来るって訳」
 リアレスの最初にイメージングした渡り鳥は、それを、生まれながらにして『知っていた』のだ。
 それによって、ウィングマンの負荷が軽減される。つまり、リーダー騎を交代しながら飛ぶ事が可能ならば、渡り鳥の如く航続距離を延ばす事が可能になる、という訳だ。
 訓練生たちの顔が、驚いたような、眩しい笑顔に変わる。
「なるほど。編隊飛行をマスターすれば、個々の連携も格段に上昇しますね」
 リーダー騎を務めたフラガも、理屈を知って、尚更の事納得する。
「しかし‥‥これまでの練習であれば、己一人の怪我で済んだが、こと編隊となると相手にも怪我をさせかねん。これまで以上に、安全面にも注視する必要がありそうだな」
 グレナムも、これまで以上に緊張と責任感を覚悟する。
「どちらにせよ、味方との連携がかぎになる」
 スレインも改めてチームワークの重要性を感じた。

「ところで、ゲヲルグ先生。この編隊飛行はグライダーはもちろん、将来的に複数のドラグーンによる戦術への応用は可能ですか?」
 ベアトリーセの質問には、意外な答えが返ってきた。
「この『波』を捉えて航続距離を延ばすという方法は空だけの事ではないんだ」
「それって、他にも使えるって事??」
「そう。メイは海に面した広大な土地を持っているだろう? 実は同じ事を『船』でも出来るんだ」
「――!!」
 便乗したフィオレンティナの質問に、意外な回答が返る。
 大きな船の後に生まれる波、それを上手く掴めば非力な小型の船舶でも大型船舶とほぼ同程度の速度を得られるという。
 つまり将来的に、というまでも無く、今すぐにも応用――軍事的な戦術転用が可能という訳である。

 先ほどウィルの航空力学の話をしたが、グライダーの設計段階で航空力学が適用されていたと考えればこの翼端渦も考慮されている筈である。リーダー騎の負担を軽減するウィングレット(ウィングチップ)とよばれる小翼の事だが、にも関わらず、ウィルからもたらされたゴーレムグライダーには現時点ではそのようなものが取り付けられている騎体はない。
 それが無い事と、今回の編隊飛行には実は不思議な因縁みたいなものがある。
 ウィルが当時ゴーレムグライダーを制作した『目的』と、これから飛竜小隊が行おうとしている事に差異が生じ始めているという事だ。
 今後、航続距離を延ばすという観念から改修を施すのであれば、小型騎であるグライダーでも取り付けることは、現時点でのゴーレム技術でも難しい事ではないと思われる。
 これからグライダーにも携わるゴーレムニストは、もし可能であれば――条件が許すなら――そういう提案をしてみてはいかがだろうか。
 ただし、ドッグファイトなどを行う場合については、このウィングレットが高機動の邪魔をしてしまうという事も一言付け加えておく。
 またこれらは騎体によって最適な効果を発揮できる取り付け角などを計算しなければならず、それに加えてグライダーはいつも同じ姿勢で飛んでいる訳ではない。離着陸に加え、上昇下降、旋回姿勢に至るまで、長時間一定の姿勢を維持する状態に最適化されなければならないという事になる。
 戦闘航空騎であるグライダーではなく、遠距離を飛ぶ哨戒騎や偵察騎などの前提次第ではこれらの効果も見えるだろう。
 用途によって、という事だ。

●試行錯誤の渡り鳥
 しかし、いくら編隊飛行が重要な課題になるとはいえ、全員も覚悟はしていたがそうそう簡単には上手くいかない。
 先ず非常に危険な事。
 綺麗な編隊を組むのは密集隊形になる必要があり、その為には騎体を寄せなければならない。
 前回までの訓練によって騎体をぎりぎりまで寄せるという事への勇気と怖さを知った面々は、やはり初日に完璧な編隊を組む事は難しかったようである。
 ただ、今回は面白い現象が起こった。
 ウィングマンを経験すると、難しさよりも、負担の軽減を感じる者が圧倒的に多かった事だ。みっちりと密集編隊を叩き込まれた戦闘機乗りたちは、口々に言う。「密集編隊のウィングマンは楽だ」と。
 しかし、難しさもリーダー騎とまではいかないがある。速度の調整は一番気を使うところだったろう。

「どうして上手くいかないッ!」
 苛立ちも、焦りもある。思わず悲鳴にも似た叫びで地面を蹴った布津の姿に、フラガはリーダー騎のプレッシャーを痛感する。
「すみません、私が‥‥リーダー機が適切な指示を出せれば、編隊飛行もきっと上手くいく筈なんです。私の不足でした」
「いや‥‥そうじゃない。俺の腕は下から数えりゃ一番だ。胸を張って言える事じゃないが、だからこそフラガさんの足を引張らないように頑張らないとならないんだ」
「互いに、互いを補って、信じて信じあって飛ぶんだ」
「先生――」
 フラガ、布津組の苦しみだけではない。全ての組が大なり小なり同じ苦しみを共有している。
 だからこそ。
 だからこそ、一体感が生まれる。この苦しみの先に、見える、光を信じて飛んで欲しい。先生は彼らにそうアドバイスをすると旋回時の注意点も付け加える。
「旋回の時は特に早めの合図が必要だ。またウィングマンは指示を的確に受け、手早い操作を覚えるんだ。リーダーは全員に指示が行き渡った事を目でなく、感覚で捉える。一々指示の確認をしてからでは何もかもが遅い」
 更に、旋回時はその位置関係から、外回り、内回りで旋回半径が違う。それによって速度、高度、旋回機動のありとあらゆる状況が一変するのだ。

「エシュロンの状況では最初は難しいだろう?」
「はい、直線だけでも全体的な状況を常に把握しなくてはならないですし」
 リーダーを務めた経験は何より、難しさを先に覚える。しかし、次第に感じる責任感と、充実感。
 ここで、一度全員を降ろし、エシュロンでの維持の難しさを実感させた先生は直線で飛ぶ時はエシュロン、旋回する時は無理にエシュロンを維持せず、『トレイル』で追従する事をアドバイスする。
「トレイル? ってなんでしょうか」
「つまり、リーダー騎の真後ろにくっついて、縦列編隊になればいい」
「えーっと、それって一列になってって事? ですか?」
 ベアトリーセも、むむむむっと頭をひねりながら。
「そう、模型で説明すると、本来こう斜め後ろにある騎体をこうして追従させることで‥‥」
「なんだか空中に舞う蛇みたいですね。‥‥海蛇?」
「なるほど良い例えだ。そう、トレイルというのは旋回などで使うものではなく、通常飛行でも充分に役立つ技術だが、旋回エシュロンの維持よりは隊列の変更の方が最初は簡単だと思うから、次からは試してみるといい」
「はい!!」
 全員が、そして、もう一度空に舞い上がった。

「たしか昔見たブルーインパルスの訓練では、隊員のことを良く知って、その動きや癖などをイメージするのが重要とかいっていたから、皆と接する機会は多い方がいいのだと思う」
 龍堂のいう『ブルーインパルス』というのは天界の曲芸飛行を行う部隊の事で、各地の航空祭で『展示走行』を行っている飛行隊だ。
 彼のそんな何気ない一言が、ゲヲルグ先生の耳に届き――。