飛竜小隊訓練学科 〇五

■シリーズシナリオ


担当:なちか。

対応レベル:フリーlv

難易度:やや難

成功報酬:4

参加人数:12人

サポート参加人数:-人

冒険期間:04月18日〜04月25日

リプレイ公開日:2008年04月22日

●オープニング

●飛行技術を更に飛躍させる為に
 編隊飛行も数日の訓練のうちに初歩の初歩までは大体掴めて来ているようだな。
 まだまだ極めているとは言いがたいように思えるし、君たちもそれに気付いているはず。
 そこで今回は戦闘としての飛行訓練ではなく、前回行った編隊飛行をより『魅せる為』の飛行訓練も加えていこうと思う。

 実は先日この編隊飛行について思う事があるという訓練生がいてね、それで少し昔の話を思い出していた。
 ――天界で航空機を使って曲芸飛行を行う飛行隊の事だ。
 私と私の父はメイで生まれたが、私の祖父は天界人なんだ。それで天界の話をよく聞かされていた。
 特に祖父はアクロバット飛行を得意とする航空機の乗員だった。それで空の話はよく聞いていた、興味もあったんだ。私もそんな話を聞いているうちに空への憧れが強くなり、今ではこうして‥‥そう、君達のような飛竜のたまごたちを育てる立場になったという訳だ。

 実際に軍事的な意味合いでもこの曲芸――『展示走行』というのは現在におけるゴーレムグライダーの操縦技能をアピール出来る示威行為にもなる。
 明確な敵の存在がある以上、この飛行技術を他国に示すことが出来れば、プレッシャーを与える事が出来るという訳だ。
 もちろんすべてのプログラムをクリアするのは――並大抵の努力では完成するのも――難しいだろう。
 しかしこれからの訓練を通じて、より安全に飛ぶ事の大切さ、危険な機動においても心の揺らぎ無く自信を持って挑める事、そして何よりチームワークという仲間の絆を深める事が出来ると私は信じている。

 それにもう、特別なセレモニーなどで我々飛竜小隊の精鋭による展示走行の許可も取ってある。
 近いうちに本当に飛行隊として、国を守る空の象徴として、飛んでもらう事になるだろう。
 しっかり責任を持って飛んでもらいたい。

●基本機動の説明
 これからの訓練は今後の通常戦闘でも充分使える飛行技術であり、文字通り基本機動と呼べるものばかりだ。
 ただし、その基本をマスターするのにも相当な技術と少しの努力と根性が必要になる――。
 説明の中でわからない事があればしっかり質問をして、吸収するように。
・ローパス
 会場上空を低空で通過する事。(高度は前回までに樹木などを利用して低空に慣れている為比較的クリアしやすい課題)
・ハイスピード・ローパス
 会場上空を低空、高速で通過する事。(最大戦速付近で通過する、ローパスが可能なら集中力でクリア可能か)
・インバーテッド
 背面飛行の事。(非常に危険行為(高難易度)だが、バランス感覚が高く、両手を離しても体が騎体から落ちないように出来るならばここから更なる行動が可能になる。ただし、難易度は基本機動中最大難易度の為、失敗は覚悟せよ)
・ロール
 横転の事。(前回までに樹木を利用した旋回機動でこのロールをマスターした者がいる為、ローパス同様比較的クリアしやすい課題)
・バレル・ロール
 バレルとは樽の事で、樽の周囲を沿う様に大きくロールする事。(ロールがマスター出来ればそのままクリア出来る可能性あり)
・ループ
 宙返りの事。(インバーテッド同様、危険行為(高難易度)だが、これをクリア出来れば戦闘中のドッグファイトで凄まじい機動を叩き出し、空戦での撃墜率生存率に大きく差がつく技能。ただし、難易度は基本機動中最大難易度の為、失敗は覚悟せよ)
・ターン
 旋回の事。(ロールとは違う旋回機動。こちらの方が基本機動となるので通常飛行でもマスターしているだろう)
・スピン 
 錐揉(キリモミ)の事。(インバーテッド、ループに並ぶ危険度の高い機動だが、展示走行のプログラムで採用される場合もある。インバーテッド、ループをマスターした者ならば挑戦可能か)

 これらの機動を選択科目として最低二つ以上をマスターする事が今回の目的だ。
 どれも空戦技能として高機動戦闘で使える技術だ。これらをマスターする事で、各種セレモニーで飛んでもらうメンバーや前回でも君達が頭を悩ませたリーダーやウィングマンの構成を選択する事になる。
 ぜひ頑張って各種機動をマスターして欲しい。

●今回の参加者

 eb4077 伊藤 登志樹(32歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4257 龍堂 光太(28歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4322 グレナム・ファルゲン(36歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4482 音無 響(27歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4532 フラガ・ラック(38歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb7875 エリオス・クレイド(55歳・♂・鎧騎士・人間・メイの国)
 eb7880 スレイン・イルーザ(44歳・♂・鎧騎士・人間・メイの国)
 eb8378 布津 香哉(30歳・♂・ゴーレムニスト・人間・天界(地球))
 eb8388 白金 銀(48歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb8475 フィオレンティナ・ロンロン(29歳・♀・鎧騎士・人間・メイの国)
 eb9700 リアレス・アルシェル(23歳・♀・鎧騎士・エルフ・メイの国)
 ec1201 ベアトリーセ・メーベルト(28歳・♀・鎧騎士・人間・メイの国)

●リプレイ本文

●それぞれの目標
 今回の訓練も相当ハードになる事は、ミーティングの時から全員が覚悟していた。
 本当は『そういう意味』で言った訳ではなかった、とは心の中で思いつつも、これからの訓練は機動が複雑になる分実戦向きとも言えた。
 龍堂光太(eb4257)が結果的に提案者という形にはなっているが、実際のゲヲルグ先生の手際の良さや狙いを見るとどうもいずれはこういったアクロバティックな内容にも触れようとしていた事が薄っすらとだが垣間見る事が出来た。
 そんなタイミングで訓練生からそれに近いアプローチがあった、という解釈の仕方も出来るだろう。だが、ゲオルグ先生はむしろとても喜んでいたらしい、訓練生からの提案はこれからも益々、積極的にしてもらいたいと笑顔を見せていたという。

 それはそうと、今回は珍しく初日の午後からゲオルグ先生の姿が見えなくなってしまう。
「どうしたんだろ? いつもならびっちり見てもらえるのに‥‥? 何かあったのかな」
 言いながらフィオレンティナ・ロンロン(eb8475)は基本機動の初歩となるみっつの機動――ローパス、ロール、ターンの訓練を開始していた。
 この基本機動を行うのは比較的簡単である。だが、だからこそそれを習得する意義があった。
 これまでのゴーレムグライダーを扱う鎧騎士は乗れるから乗る、飛べるから飛ぶ、戦えるから戦う、といった部分の延長線上にグライダーを捉えるのが一般的だった。理由は簡単、彼ら鎧騎士は文字通り騎士であるからだ。言ってみれば職業軍人のようなもので、武器を扱って相手を叩きのめすというごく単純な国からの命令に従えばこそという訳である。
 しかしこの訓練科では『そういう部分』を意識から改革していっている。
 理論的な部分、感覚的な部分、グライダーだけでなくゴーレム兵器全般を扱う鎧騎士の超エリート集団を育成しているのとほぼ同義と捉えてもらって構わない。
 今までは何も考えなくとも飛べた。だが、これからはもっと考え、そして『感じながら』飛ぶ事を覚えていく事になる。
 この意識の改革は、必ず未来のメイを支える事になるのだから。

 ローパス、ロール、ターンの訓練はフィオレンティナだけではなく、伊藤登志樹(eb4077)、便宜上提案者となった龍堂光太の他にもグレナム・ファルゲン(eb4322)、エリオス・クレイド(eb7875)、スレイン・イルーザ(eb7880)、布津香哉(eb8378)、白金銀(eb8388)などが加わった。
 基本機動から派生となる機動を併行して習得しようとしているのはリアレス・アルシェル(eb9700)やベアトリーセ・メーベルト(ec1201)といった女性陣。
 そして現在最も成績優秀な音無響(eb4482)、そして実は最終的には習得希望者も多いループを視野にいれているフラガ・ラック(eb4532)と、訓練生全員がそれぞれに自分の技量を見極めながら飛ぶ事を目指した。
「実戦において有効なものから習得していこうと思います。天空の騎士を目指すと言ったのは伊達でも酔狂でもありませんから」
 ロールの機動は非常に単純だが、正確にターンとロールの旋回パターンを覚える事とそれをとっさに出せるのは空中機動では上昇下降や加減速と同じくそれだけで強みになる。
 また、ここでは『旋回』とひとくくりにしてしまっているが、後々この二つの旋回機動が派生機動に重要な初動のひとつである事を理論からも知るようになるだろう。
 また、グライダーに航空機のように離着陸時に出す脚があったならば『ダーティ』という技も可能だっただろうが、残念ながらゴーレムグライダーにはそれに相当するものはない為、ダーティは省いてプログラムを考えているようである。

「くうちゅうせんとうきどう? まにゅーば? ま、まあ、実際にやって覚えるしかないよね」
「そういえば先ほど、先生は教官室に戻っているから何かあれば聞きに来て欲しいと言ってましたよ」
 頭上に疑問符がぽわぽわと浮かんでいるように見えなくも無いリアレスにベアトリーセが一応フォローになるかどうか、先のフィオレンティナの疑問も一緒に返す。
「教官室に? 何をしているんだろうねー」
「さあ、そこまでは。でも両手一杯に資料を持って行きましたよ」
 いつもなら細かい部分も指示を入れ、空から目を離さないゲヲルグ先生が一体どうしたのか。女性陣だけでなく、基本機動を習得する男性陣らも大なり小なり気にはしているようだった。

「そうなんです。一番の問題が、展示飛行で必要なカラースモークで‥‥飛行プログラムは半分位は決めてあるんですが」
「カラー‥‥スモークですか。技術的な事は訓練生の中に天界人もいるらしいですから、聞いてみるといいのでは」
「そうですね。知り合いにも近く話を聞いてもらう事にしましょう」
 ゲヲルグ先生はそう言いながら、教官室の机で何やら忙しそうにしていた。

 初日の訓練は結局訓練終了の合図の時になってようやくゲヲルグ先生がやってきた。
「やあ、すまない。色々とやらなければならない事が重なっていてね。見てやれなくて申し訳ない」
「先生も大変ですね‥‥」
 フラガとグレナムが最後に地上に降りるのを確認する。全員ケガも無いようで、それぞれの表情も様々だが、初日はそれなりに自分自身にかけた課題はクリアしているように感じる。
「いやいや、大変なのは君たちなのには変わらない。だが、そうだな、明日からはしっかりと見られるようにしていくから、さぼってはいけないよ」
「キツイですけど、さぼるほど余裕はないですよ。基本をしっかり身に付けるという意識はありますがね」
 苦笑する布津。
「さあ、まだまだ始まったばかりだ。疲れを残さないように各自、ゆっくり休め」

「はい!」

●先を見る、天才
 初日の感覚を忘れないようにと、二日目も基本機動をみっちりとこなしていく面々。
 二日目からは先生も顔を出すようになり、初日指導出来なかった分、細かいズレなども指示を出して回った。

 派生機動で課題とは少し離れているが複合機動のひとつに伊藤の言う『インメルマンターン』が挙げられる。
 通常機動でも空中で進みながら動くという時点でバランスを取っている時点で自然に複合機動にはなっているのだが、空戦などではもっと複雑で高度な技術を組み入れる事が多い。
 高度を保って投下する爆撃などでは安定した飛行を求められるが、瞬時に判断し常に複合機動をし続ける空戦――特にドッグファイトのような近接戦闘に突入するとこの基本機動が必要不可欠となる。
 インメルマンターンは伊藤の頭の中にイメージとしてしっかりと残っていたようで、それぞれを同時にこなす技術が伴えば『知っている』アドバンテージで覚えは早いのかも知れなかった。
 それでも我慢して基礎を叩き込むのには理由があった。
「とにかく基礎を固めるのと、飛行中の『空間認識力』を磨く。普段地上で移動する時は、大体、前後・左右の方向になるが、飛ぶとなると、上・下での動きもするからな。特に、上方向か下方向に飛んでいるのか判らなくなったら命とりだからな」
 複雑な機動を要求されるアクロバット飛行のように内容ががハードな物になればなるほど、自分自身がどの方向に飛んでいるか判らなくなり易い。彼もそれは知識としてあるし、実際これまで考えて飛ぶ事を意識しだしてからはより強く感じるようになった。
 安全に、確実に飛ぶという意味でも、戦う、瞬間的な判断で行うという意味でも。
 この機動に関しては、伊藤だけでなくフラガも念頭に置いていたようである。ループとロールの複合機動であるこのインメルマンターンだが、実際には『必ずしも』ループとロールの角度を正確に180度行う必要はない。高度を保つという意味では非常に強みがあるが上昇するという前提から速度を犠牲にしてしまう。
 つまりパワーを使ってループ機動に突入しなければならない。
 その為、一度下降し速度を得てから上昇してループからロールへという機動を利用する場合もある。
「インメルマンターンはより実戦向きの機動だ。覚えることが出来れば心強い技のひとつだと思ってくれて間違い無い」
 ゲヲルグ先生もその実用性は認める。グライダーだけでなく自分自身のコントロールを高く維持する事で再現可能となるだろう。

 基本機動中、難易度の高いものを選択して集中して練習を開始していた音無はインバーテッド、ループの修得を目指していた。
 フラガ、フィオレンティナ、ベアトリーセも順次ループの訓練に突入する。
 残りの面々は基本派生となるハイスピード・ローパス、バレル・ロールといった方向に順次進んでいった。
 特に音無はいきなり背面飛行というアクロバティックな機動を大胆にも選択していて、それが基本を固めようとしていた面々にもよい刺激を与えたようである。
 現時点でトップの実力を誇る彼だけが可能な技という訳ではない。いずれは誰もが出来るようになるべく、練習メニューに織り込んでいるのである。
 だからこそ、高い難易度であるにも関わらず『基本機動』としたのだ。
 インバーテッドやループのように、最後まで機動を終了させるという事は全ての操作を安定して行う事が前提となる。
 先のインメンマルターンはそんな機動を途中で切り返して行う機動である事から、全ての基本機動の延長に高い難易度の技が置かれているのは当然の事と言えた。
「空間や方向は流れる風を肌で感じて‥‥意識しなくても落ちないバランスを体に憶えさせるんだ」
 空中で両手を離す、というのは思った以上に度胸がいる。だが、魔法や――特に弓といった両手で扱わなければならない物の場合、どうしても必要な行動となる。
 もちろん最初は『怖さ』も手伝って難しく感じるだろうが、徐々に慣らしていけば短時間なら手放しでも飛んでいられるようになる。
 それを更に背面飛行で、更に両手を離した上で魔法を発動させようというのである。
 彼の技術をもってしても、完成には遠いかも知れなかった。
 それでも卓越したセンスと彼の絶対に諦めない気迫が彼を支えていた。もちろん、道を同じく歩む訓練生達の互いの意見交換や技術交換によって音無だけではなく、全員が少なからず今回の訓練には手応えがあったようである。

 訓練生たちが訓練を終えても、ゲヲルグ先生はまだ眠らずに灯りを点けていた。
「‥‥アップワードエアブルームからスター、クロス、と。先日行った編隊飛行も併せていかないとならないな‥‥ダイヤモンドとアロー、先日覚えたエシュロンもお披露目させてやりたいが。こう考えると全部盛り込んでしまいたくなるのが人情というものだな」
 訓練生たちの血の滲むような努力はこの目に焼き付いている。だからこそ、彼らの全力を出し切れるような、そして見栄えや技術をメイの国がここまで出来るという事を誇示したかった。
 セレモニーで実際に飛行する、いわゆるレギュラーは五人に絞る必要があった。
 現在十二人を抱える訓練科のうち、上位五名を決めるには――やはりこの訓練は避けては通れない厳しい課題になるのかも知れない。
 もちろん今の実力だけでなくこれからの『伸び』にも期待を寄せたいと思っていたし、それがメイのゴーレムグライダー操舵技術的な意味での先端を担うとあれば尚の事。
 国としては――体として――メイの鎧騎士で構成するのが望ましいのだろうが、ゲヲルグ先生はそれは可能性を否定すると考えていた。
「メイの為を思うなら、面子を保つ為に実力(ちから)のある彼らを出身地がメイでないという理由で外す事など出来るはずもない‥‥そんな事があってはいけない‥‥メイの国の明日を担うのは彼らなのだから――」

●往く空の果てに
 前回の編隊飛行に続いての、緊張感のある基本機動訓練。
 何とか数日の訓練を終え、大分手応えを感じるようになった訓練生たち。
 中でも基本機動をみっちりと、基本だけに数を多くこなしていったおかげかターンとロール、そして低空飛行のローパスを仕上げる事が出来たのは伊藤、エリオス、スレイン、布津、白金、リアレスの六名。
 加えて、グレナムはバレル・ロールを、フラガはロールとバレル・ロールからのループの三種。
 ループは未完成ながらも大分コツを掴んでいたフィオレンティナは基本三種に加えハイスピード・ローパスを訓練生の中では先立ってクリアした。グレナム同様、四つの機動をマスターした事になる。
 そんな彼女だったが、後日行うレギュラー選抜戦では完全なループを習得できるようになるだろう。またインバーテッドは彼女の性格にあっているのかループに時間を取られさえしなければもしかしたら先にマスター出来ていたかも知れない。

 元々基本をクリアしていたベアトリーセはローパス、ターン、ロールに加え派生となるハイスピード・ローパスとバレル・ロールとメンバー中最も課題数を多くクリアした。彼女の持つ空間把握力は経験だけでなく、意識して飛ぶという事に関して非常に鋭い感性を持っているようである。インバーテッドは及第点だったようだが、まだ不安定だったのが気にかかる。ループに関してはもう少しといった所。
 派生機動に時間を取られたという見方もあるが、逆に習得数で一歩リードという結果を残す。
 ベアトリーセと同じく、課題数を多くクリアしたのは龍堂だ。こちらは基本をしっかり固める形での習得となり安定性は随一だった。

 課題のクリアという意味では本当にぎりぎりだったのは高い難易度を誇るループとインバーテッドを集中習得した音無だ。
 インバーテッドでの両手離しに関してはまだ安定とは言いがたいものの、背面飛行の感覚を短時間で吸収したのはやはり彼の類稀なる才能とそれだけに留まらない彼の信念でもある困難にも諦めない心が二つの高難易度を自分のものにした。
 とはいえ、何度もバランスを崩しかけ、それでも粘り強く挑戦する姿を全員が知っていた。
 そんな努力する姿を見て、ゲヲルグ先生は彼をこう例えた。
 ――努力の天才、と。
 難しいからこそ、それを乗り越えた時の喜びは大きい。それも知っているからこそ、最低限の課題数クリアという成績だが、内容は充実したものになった。

 何とか無事、ゲヲルグ先生の課題をクリアした訓練生達。
 そんな彼ら彼女らに、先生はセレモニーで行う展示飛行で実際に飛行するメンバーの選定を行う意向がある事、そしてそのレギュラーが飛ぶ際に騎体から放出する色つきの煙幕『カラースモーク』をどうやって作るか、そしてもしそれが実現可能なら装着するかの意見を聞く事にした。
 特にスモークはメイの技術では火薬や燃焼などの問題があって代替案も狭まっていた。技術的な意味も含めて、天界人にもスモーク発生装置に関する意見を聞いておきたいという話をした後、今回の訓練は終了を迎える。