飛竜小隊訓練学科 〇六
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■シリーズシナリオ
担当:なちか。
対応レベル:フリーlv
難易度:やや難
成功報酬:4
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:07月12日〜07月19日
リプレイ公開日:2008年07月16日
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●オープニング
●自習を心がけているかい?
日にちが開いてしまってすまなかった。
実は展示飛行にはつきもののスモークをどうしようと色々と知り合いに相談をしていたのもあって遅れてしまったね。
さて、各自自習を怠ってはいないだろうね? 日々の練習こそが全て血肉になるという事を忘れてはいけない。
それはそうと、色つきスモークも色々手配してみたが無理だった、白一色でならなんとかなりそうだが、君達で他にいい案はないだろうか?
今回は前回に引き続き、更に高い難易度の個人技に組み込もうと思う。
もう既に選抜ははじまっているとおもっていい。
もうひとつだけ重要な事を教えよう。確かに技術力はないよりもあった方がいい。
だが、それだけでは戦いには勝てない。熟練の冒険者である君達にも覚えがある筈だ。
決して、『数字だけでは勝てない』という事を、君達は身に染みて理解している事だろう。この展示飛行の選抜も同じ事、技術力だけではない、もっと各々のもっている魅力的な部分をアピールして欲しい。
今回は前回の個人技からの強化メニューのどれかを選んでもらう事になる。
●個人技の強化
前回インメンマルターンを練習しようとしていた訓練生もいたが、上昇しながらのインメンマルターンよりもやや機体的には厳しいスプリットSを加える。
こちらは高い高度からの下降版インメンマルターンのようなもので、素早く連続マニューバしなければもたもたしていると地面に激突する恐れもある。その為、難易度的にはインメンマルターンの方が難易度が低いという。
今回は全員がインメンマルターンかスプリットSをマスターするように。
加えて訓練生には特別に三つの個人技を練習してもらう。こちらは一つ以上をマスターしてもらいたい。
・ウィングウォーク
低空で進入し、翼を左右に振りながらの飛行だ。バランス感覚とリズム感覚を両立させてテンポよく切り返すのがポイントとなる。
・ナイフエッジパス
これは機体を真横90°にバンクして(傾けて)飛行するもので、そのままの状態を維持する事がポイントだ。
通常の水平飛行よりバランス感覚が要求される技で、また維持しつつ飛行の為、体をしっかりホールドしていないと難しいだろう。
・360°ターン。
これは何度も練習したコースを定期周回して速度や進入角度、高度などをしっかり体に覚え込ませているならより正確な円を描く事が出来るだろうが、地味に見えてかなり難しい。
これら全てがクリア出来たものだけ、最後のソロ課題キューバンエイトにチャレンジしてもらう。
キューバンエイトは円を描く360°とは少し違い、8の字を描くように飛行するものだ。総合力が試される為、今回はチャレンジ出来る者はいないかも知れないが、今回の訓練では文字通りの『個人の魅力』と『総合力』を見る機会だと思って欲しい。
ソロで最大六つ、という選択肢そのものは前回までより少ないが、難易度は前回までの比ではない。
下手をすると大事故にも繋がりかねない為、技量もそうだが、練習量をこなして体を慣れさせる事が必要となる。
振り落とされたり、バランスを崩したりしないようにして欲しい。
(さすがに機体の性能から見て、アップワードエアブルームは無理そうだな‥‥ここはループ無しの高高度からのレインフォールにしておこうか‥‥)
●リプレイ本文
●リトルワイバーンの編入生
「もしかしたら今回限りの参加になるかもしれませんが、客人扱いでなく、厳しくご指導宜しくお願いします」
今回の訓練は前回からしばらく日が開いてしまったという事もあり、また他の依頼などで都合が合わなくなってしまった訓練生もいたようで、数名の訓練生が欠席した形になった。
そんな中、中途編入という形で参加する事になったのがシルビア・オルテーンシア(eb8174)だった。
次回以降はこういった中途編入組を含めて、再編成される可能性もある。さすがにここまで訓練生が増えると『小隊』というのも少々こそばゆい気分ではあるが、この訓練学科ではどんな手練もリトルワイバーン(ひよっこ)だ。
先生も新たな仲間を紹介してから、当然、編入組だからと言って特別扱いはしないよ、頑張って、とシルビアに声をかけた。
なお、一応彼女には訓練生と同等の意味を持つ『飛竜小隊編入生』という称号を付与される事になった。
さて、今回も個人技を更に強化した訓練課目が挙げられた。
「前回は基本中の基本、ゴーレムグライダーはただ飛べれば良かったという所から一歩進んだ所を、意識的に変えていく事が目的だった。今回はその意識を集中力に変え、技術面を鍛えていくよ」
グライダーが鎧騎士などの搭乗者によって飛べているのは精霊力だけではない。グライダーは自由に飛ぶ為に必要な形になっていて、それを精霊力だけに頼らず、自然と一体になってその流れに身を任せる事も時には必要となってくる。
初日は前回までの復習という事で、基本機動のおさらいをする者が多かった。
「訓練の他にあまりグライダーを使う機会が多くなかったんだって? ふむ、それは平和でよかったとも言えるかな」
シルビアも言っていたが、現時点では最も高い技術とセンスを評価されている音無響(eb4482)も機会に恵まれなかった事を洩らしていた。
「はい。直接グライダーを使える機会はなかなか無かったけど、吊した丸太に逆さにぶら下がって両手離したり、色々工夫してみて、逆さ状態での安定感覚を鍛えました‥‥後は、憶えた2つの飛行技を部分部分の動きに分解していっての、基本技イメージ訓練も。みんなの訓練を見ていたから、憶えてないのもイメージは出来ていたので」
こうした『イメージトレーニング』は日頃からやっているものといないものとでは、実際の訓練、実際の依頼などで行う作戦時など様々な場面で効果が現れてくるものだ。
万が一、不測の事態が発生してもその時の場面までを想定していれば、例え事故が発生してしまったとしても最悪の状況までは達しない。そういう事は、まま、あるのだ。
インメンマルターンとスプリットS――。
この二つの機動は非常に酷似している。上昇ループからの反転ターンがインメンマルターン、下降ループからの反転ターンがスプリットSだと思ってもらえばいい。
ゆえに、ループの上下感覚と地面との距離感を覚えてさえいれば、バランスを崩さない事を前提に、ここまで訓練を重ねてきた訓練生たちならばインメンマルターンを決める事は可能だろう。
ロールやターンといった旋回機動へ移るタイミングは当然個々によって違うので、全員が全員、同じ高度で複合機動であるこういったインメンマルターンのような技は決まらない。
だが、時として、これを全く同じに決めなくてはならない瞬間がある。
「その瞬間はいつだと思う?」
ゲオルグ先生は片手で飛行機の形を作りながら、その機動をジェスチャーで教えながら訓練生に問い掛ける。
「まったく同じ、というのなら、やはり実戦ではないだろうか。相手の動きを捉えながら振り切られないようにするには必要だろう」
スレイン・イルーザ(eb7880)はあくまでも冷静に、両手を使い、一機は敵騎、一機は自騎をイメージするようにして敵を追い詰めるように手を動かしていく。
「ドッグファイトってやつだね」
龍堂光太(eb4257)も納得しながら先生とスレインのやり取りを聞いていた。
「その通り、スレイン君、藤堂君。正解だ。この個人技は、確かに個々で行う機動ではあるが、実際には相手がいる事を想定している。さて、君達は『個人技』とばかり聞いて、技術を完成させる事ばかりに集中してはいなかったかな?」
回りを見渡すと、エリオス・クレイド(eb7875)や白金銀(eb8388)らがうんうんと肯いていた。
「確かに、今回に限らず実際の戦闘で使いこなせればこれ以上ない戦力になります。訓練がはじまる時も注意していたつもりでしたが、いつの間にか技術の習得にばかり目がいきがちだったかも知れない‥‥」
実力は折り紙つきのフラガ・ラック(eb4532)も、技の習得という面では非常に優秀な成績を収めてはいるが、改めてグライダーを意識的にコントロールするという『イメージ』を再認識させられていたようだ。
これまでの訓練はどちらかというとグライダーと自身を一体化させ、まるで鳥のように自然と共に飛ぶ感覚を体に染み込ませていた。
今回はもちろんそういう自然的な風を読むセンスも持ち合わせながら、その技ひとつひとつに意味がある事を知り、実戦でも通用するように自身を鍛え上げていく、という部分に注意しながらの訓練となった。
文字通りの鍛錬という奴だ。
●水平と垂直
インメンマルターンを先だってマスターしようとしたメンバーは伊藤登志樹(eb4077)、龍堂、エリオス、スレイン、シルビア、白金の六名となった。
全体練習の前に、前回までに行った訓練の内容を思い出しながら、基本機動をおさらいしつつの出発となる。
どの応用機動も、操舵の切り替えのスピーディさとタイミングが重要になる。元々このインメンマルターンは基本機動を応用した複合技であるから、基本をマスターしている者にとってみればそれなりに形になっているのが自身にも、回りからも見れ取れた。
ほぼ同じ機動を逆から行うスプリットSに挑んだのは音無とフラガ。
二名共に、ことグライダーの空戦機動となるとその勢いのよさとカンのよさ、機体の安定度といい、その水準の高さから他の訓練生たちからも見本となる美しい軌道を描いていた。
伊藤もここまで過酷な訓練に、必死に喰らいついてきた一人だ。死に物狂いの、貪欲なまでの意欲は確実に彼の意識を変えていく。
「上手い奴の飛び方を見て、自分の飛ぶイメージを固める。こうすれば自分の飛んでる間の空間認識も違ってくるはずだ!」
そう、彼は自分以上に高い技術を発揮する面々を見る事で、『見て覚え、見て真似る』という職人の流儀である手法を積極的に実際の機動にイメージとして焼き付けていった。
真似る事は覚える事とかなり密接に繋がっており、彼のいう――見るのも訓練という考え方は実に的確であった。常に上位の『見本』を見る事でその成功のイメージを頭に描きやすくなる。
そういう意味で、この世界での真似事は実に効率のいい訓練方法であるといえた。理論だけでは成しえない。本物の空気をいち早く掴むためには、伊藤のような貪欲さは評価に値する。
その必死さこそが生きる為の糧となるのだから。
そんな中、途中編入となったシルビアが中々のセンスを見せつける。元々グライダーを扱ってきた事もあり、飛行技術のノウハウもかなり習得しているようで、初日から二日目といった前半戦で復習をしている訓練生らと一緒に基本をたっぷりとこなしていた。
理論的な部分でも、あくまでこれらの応用技は『複合技』である事を理解していたようで、上位組にも劣らないほど乗れているようであった。ただ、精神面においては理解力はあるものの、度胸という意味でみると訓練の日も浅いという事でこれまでに参加してきた訓練生の思い切りの良さには及ばなかった。
綺麗に乗りこなしてはいるが、綺麗に飛ばそうとか飛ぼうという意識が強く出るあまり、ダイナミックさに欠けた。
逆に精密さを要求される技術ではその性格が幸いし、丁寧で繊細なコントロールを叩き出してくる。この辺り、彼女がどのような乗り方を意識しているかによって今後の適性が診断されていく事になるだろう。
シルビアは飛行訓練の課目、キューバンエイトについて気になる事があったようで、三日目折り返しとなった訓練終了時に先生に質問を投げかけた。
「もしかしたら、インメンマルターンとスプリットSで高低方向に八の字ができるような気がするのですが‥‥」
「ふむ。君はやはり理解力に優れているようだ。今回の課題の中にある360°ターンやキューバンエイトは水平方向での旋回機動だ。実戦ではもちろん正確な円は描けないだろうが、これらの機動はおなじように垂直方向への機動にも変えられる」
ゲオルグ先生の回答は、こうだ。
水平方向に機動するのはこれまで教えている通りだが、垂直方向、つまりシルビアの疑問どおり空間の上下を使っての機動にも応用が出来るというのだ。
その機動を総じて『バーチカル』という。ちなみに垂直方向への360°旋回は訓練生にはおなじみとなった『ループ』である。ただし、正確な360°ループは実は非常に難しい。
そして縦方向へのキューバンエイトは『バーチカル・キューバンエイト』となる。今回の訓練では難易度の関係で課目から外されたが、ある程度の技術拾得者であれば応用の範囲内である。ただしこちらも水平方向とは比べ物にならないほど正確な八の字を描くのは難しいとされている。
●後半戦、本格訓練!
基本の応用であり、基本をみっちりとこなしてきた訓練生達。遂に四日目の全体訓練では完成度に難があるエリオス、伊藤を含んで及第点の白金、初参戦でありながら健闘を見せたシルビア、他上位組はインメンマルターンを完成させた。
またフラガと音無は、前半戦でスプリットSを完成させ、後半四日目でインメンマルターンを完成させるという習得速度も皆を驚かせた。
次いでスプリットSをマスターし、二種類の機動を完成させたのはこの二人に加え、龍堂がみっちりとその練習にあてたおかげで完全にマスターするに至った。
ここまで厳しい訓練を乗り越えてきた彼らだからこそ、それこそ応用を実戦レベルまで高めていくという方向にシフトしていたのかも知れない。
その後半戦となる選択課題に取り組む訓練生の面々。
ふと、その後半戦で疑問に思っていた事を尋ねるシルビア。訓練生としてはかなりの初心者である彼女なだけに、色々な疑問やそれに対する対応なども積極的に行おうとしていた。
「ナイフエッジパスについてなのですが‥‥接近されたときや翼への攻撃に対する回避運動として、この姿勢のままで上下(翼の方向)に移動はできないものでしょうか?」
「なるほど、その質問はバンクからの上昇、下降、という事だね。推力、つまり正確に高度を保つにはそれなりに速度が必要だという事は皆もよく理解していると思うほとんどの機動は機動を行っている間、そして直後を含めて必ず速度は低下する。それを調整するには速度を保ちながら、高度をも保つという二つの意識と技術が必要になる。フルスピードでバンクを行っても必ずスピードは低下する。その状態で加速しようとしてもどうしてもパワーは出せず、結果失速してしまう事になる」
バンク中に失速すると、回転は螺旋を描くように落下していく。これは文字通り『スパイラル・バンク』といい、状況によっては失速にはならない場合がある。これは角度にもよるので、上昇気流を掴まえてバンク中に斜め上側に螺旋を描く事もある。
ナイフエッジパス中の失速懸念だけでなく、今回の360°バンクも正確に元の位置に戻るためにはスパイラル・バンクを回避しなければならない。
本来はその高度や軌跡を最も効率よく視認するのにスモークがあればいいのだが、今回訓練が遅れた理由の一つとしてスモークの調達があったのだが、まだまだ先生側にも準備に忙しいようである。
今回、難易度はともかく、そのテンポの良さと『回避』という面において意外なほど好評だったのがウィングウォークだった。
これは軌跡を見れば細かく、素早いターンを繰り返すバレルロールのような機動で、バレルロールのように大きく旋回機動を取らずに左右に振っていく事で、後ろを取られてからの攻撃の標的にならないように振り切っていく、空戦での回避行動に役立つものである。
特に真後ろにつかれた場合に弓や魔法による射撃の標的を外していくには効果的である。もちろん射撃だけでなく、背後からの攻撃全般を避けるにはもってこいだった。
体のバランス感覚に気をつけて、テンポよく決めたのはエリオスとシルビアだ。シルビアの方は流れるような軌道、エリオスはきびきびした鋭角な軌道を描いていたが、どちらもかなり完成度が高く、これには先生の評価も上々だった。
360°ターンはこれまでの訓練で周回飛行を重ねてきた訓練生らには慣れという面でかなり手応えがあったらしく、スレインは堅実にマスター、正確さでかなり高度な完成度をみせたのはフラガ。
どうも高度調節が上手くいかず、上記のスパイラル・バンクに陥ってしまったのは白金だ。完成、というにはやや課題を残す形にはなるが、大分教訓を活かせるようになってきているようだった。常に意識して飛べば次こそは完成に近付く事だろう。
直角の姿勢で高度に気をつけながらナイフエッジパスをマスターしたのは音無、伊藤の二名。
音無の優等生ぶりは訓練生の見本ではあったが、今回一番の成長株は執念の伊藤だっただろう。訓練生の中では難易度的にみてやや不利だったものの結果を見れば充分に課題をクリアした事になり、それも含めての努力の成果という事も先生には評価されていたようだ。
●訓練を終えて
今回も反省会をする訓練生。
全体的な反省としては、飛行姿勢を変える事は必ず速度を殺してしまうという事、それを強く意識する事。
速度と共に高度もパワーも必ず下がる事に注意する事。
最後に一番重要なのは、個人技の多くの場合、その飛行中の前後に敵がいる事も想定して飛ぶ事などがミーティングで交わされた内容となった。攻撃の時も、回避の時も類似したシーンが必ずある筈だからだ。
エリオスも、いつも通りこういった注意点を頭に叩き込みながらも資料として今回もレジュメに残していた様子。
シルビアは初めての参加だったが、とても刺激的な訓練だったと先生と訓練生の面々に深く頭をさげた。
訓練生はまた一緒に頑張ろうと声をかけ、彼女もまた、機会があれば必ず――と、微笑んで見せた。