【丹波藩侵攻?】謎の派遣先
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■シリーズシナリオ
担当:西川一純
対応レベル:11〜lv
難易度:易しい
成功報酬:2 G 64 C
参加人数:8人
サポート参加人数:6人
冒険期間:04月27日〜05月04日
リプレイ公開日:2008年05月05日
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●オープニング
世に星の数ほど人がいて、それぞれに人生がある。
冒険者ギルドでは、今日も今日とて人々が交錯する―――
「銅鏡の奪取、御苦労であった。過程はどうあれ、物が手に入ればよい。ようやくそれらしい成果を上げたようじゃな」
「‥‥‥‥」
ある日の冒険者ギルド、訳あり依頼人を通す部屋。
例のごとく二人のお供共々編み笠を被った、恐らく老人であろう依頼人。
藤原満定。現在もにらみ合いを続ける京都VS丹波の戦場において、京都軍の指揮を執る人物である。
現在は副官に戦場を任せ、銅鏡の確認及び新たな依頼を出すために京都に帰還中らしい。
応対するギルド職員の西山一海は、ずっと戦場に居てくれればいいのにと思わずには居られなかった。
「わざわざ出雲大神宮まで行って取ってこいなんて、その鏡は何なんですか?」
「貴様に言う義理も義務もないわ、たわけが」
「うぐぐ‥‥そう言われるとは思いましたがっ‥‥!」
「ならば言うでない。知りたがりは早死にするぞ」
「う‥‥」
「まぁよい‥‥今日は機嫌が良いのでな。そうじゃ、前回ワシが送った依頼状はまだ残っておるな?」
「へ? え、えぇ、これのことですか?」
そう言って、一海は一通の書状を差し出す。
前回の依頼の時に寄越された、銅鏡を取って来いという旨の手紙。
それを受け取った藤原道定は、おもむろにお供の一人にそれを手渡し‥‥燃やさせた。
「ちょっ!? な、何してくれてるんですか!?」
「別によかろう‥‥もう終った依頼じゃ。最初から依頼状などなかった‥‥それだけのことよ」
こうまで言われれば一海にも分かる。
あれがあると後々厄介な事態が発生する可能性があるので、早い段階に処分しておいたのだろう。
「さて、それでは今回の依頼じゃ。先日手に入れた例の鏡を持って、出雲のとある場所へ冒険者を派遣させよ。鏡の受け渡し日時と詳しい行き先は追って知らせる」
「‥‥出雲ぉ? 丹波じゃなくてですか?」
「ほう‥‥貴様、その歳で耳が遠いのか?」
「(意味のわからないこと言ってるくせに‥‥!)いえ、そんなことは。一応お伺いしますが、目的は? 暫定的なものでも構いません。それがないと、冒険者さんたちも何をしていいか分からないと思うんですが」
「なるほど‥‥それは道理。ふむ‥‥どう言ったものか」
珍しく歯切れ悪く唸る藤原満定。
しばし悩んだ後、ゆっくりとこう言った。
「まぁ、今回は下見でもよいのだ。場所の確認と、神話へ思いを馳せる旅としても結構」
「‥‥は? はぁ? はぁ〜〜〜?」
「‥‥死にたいようじゃのう」
「あ、いえ、すいません、つい地がっ! そんなことより、どういうことですか、それは!?」
「言葉通りじゃ。まぁ、出来るならすぐに事を成してくれても構わんがな」
「分かるように説明を願います!」
「却下する。とにかく、指定の場所へ鏡を持って行かせい。今回の依頼はそれで目的達成とする」
有無を言わせず条件だけ突きつけ、藤原満定は去っていった。
果たして、出雲に何があるというのか? 最近怪異が続いているという出雲だけに、嫌な予感しかしない。
銅鏡の真の力は? 神話へ思いを馳せる旅とは?
丹波を後回しにしてまで送り込まれる先に待つものとは、何なのだろうか―――
●リプレイ本文
●神話や伝承
今回の依頼は、下見程度の旅行にも等しい旅になるという。
それを鵜呑みにするようでは木偶もいいところ。冒険者たちは疑問点や不審点を当然持っており、それを解消するためにも、滅多なことが起こらないようにするためにもまず調査を行った。
先に現地に入るため、先行したメンバー以外の四人は、それぞれ陰陽寮や商人関係へ当たり、調べ物をする。
そして集合日時になり、京都から出発となったのだが‥‥四人は、出雲に向うことを躊躇していた。
「‥‥銀砂家は、金や銀、銅と言った希少金属から鉄などの一般的な金属までを取り扱う商家のようです。当然様々な方面と取引があり、かの黄泉人と手を組んだ丹波の商人、平良坂冷凍とも多少ながら付き合いがあったとのことです‥‥」
「私も調べてみたのですが、御所にも出入りがあるとのことでした。そこで満定公と接触があったとしても不思議ではありません。丹波に常駐しているカミーユさんとの繋がりは不明ですけれども‥‥」
御神楽澄華(ea6526)とフィーネ・オレアリス(eb3529)は、カミーユ及び銀砂家のことを調べていた。
熟練の冒険者が10人居て、その全てに気付かれず背後に立った謎の少女。
彼女が実家を出たのは二年ほど前で、そこからずっと丹波藩に世話になっているというのはすぐに掴めた。
銀砂家は丹波と親交があり、その伝ということを考えれば想像に難くはない。
が、肝心のカミーユが丹波で何をしているのかと言う話はさっぱり聞かない。
銀砂家の人間に尋ねても、『お答えできません』だの『知らない』だのと取り付く島がなかったのだ。
とにかく、黄泉人と密接な繋がりがある丹波の商人とも多少なりと接点があると判明した以上、嫌な予感は更に増した。
「出雲、確か少し前にその辺りの依頼を受けたが黄泉人、それも将軍級が活動しているようだな。奴らは我らの神の復活と言っていたが‥‥。作戦卓で聞いた神無月の説、照魔鏡と大神宮の地下‥‥どうにも嫌な予感がしてならんな」
「いやはや、私も色々調べてみたのですが、中々どうして出雲と言う国はそこに纏わる話が多いようで」
出雲関連のことを調べたのは、琥龍蒼羅(ea1442)と島津影虎(ea3210)の二人。
琥龍はこれ以前にも出雲で怪異に対する依頼を受けていたようで、黄泉人の関連を示唆する。
鏡や出雲に関係する神話や伝承を調べた島津は、その多さに辟易した。
出雲と言う地域は、出雲神話として多くの物語が今も語られている程、様々な逸話がありすぎる。
八束水臣津野命の国引き、大国主の国譲り、八岐大蛇、因幡の白兎など、有名どころだけでも枚挙に暇がない。
そんな中で、琥龍が聞いたという黄泉人たちの『我らが神の復活』。
出雲に黄泉比良坂があるというのは有名な話だが、神話関係で黄泉の国と関係がありそうなのは‥‥。
「確かイザナミは、黄泉の国に助けに来たはずのイザナギにおいてけぼりにされたという話だったな」
「かなり語弊がありませんか? 大事な部分を端折っているような気がしますよ(汗)」
このイザナミの別名が黄泉津大神。いやでも黄泉人と関連づけたくなる話だが。
しかし、イザナミは夫イザナギとともに日本を作った神だ。ジャパンの母神が黄泉人というのは甚だ風聞が悪いし、少なくとも彼らが遭遇してきた黄泉人は、創造神の眷族には見えなかった。
「とても短期間で調べられるものではありませんな」
島津が溜息をつく。
それだけ神話の多い土地だから、冒険者達も多くの仮説を立ててああでもないこうでもないと話していた。
特に懸念されたのは出雲で太古の神を復活させる企みがあり、鏡がそれに関わるというものだ。
「‥‥止そう。依頼人からは詮索無用を釘刺されている。これ以上は依頼人を疑う事になるし、それでは仕事が達成できない」
琥龍は推論を打ち切った。疑惑はあるが、それだけで行動していたのでは世の中が混乱するばかりだ。即行動は出来ないとしても、依頼の範囲内で保険をかけておきたい気持ちは強い。
ではどうするか。
鏡を調べる。‥‥時間がない。
偽物と入れ替える。‥‥やばすぎる。
慎重を期すなら、鏡を陰陽寮や寺社に持ち込んで分析し、更に平織や源徳など大諸侯に話を通して背後を調べる方法も無くは無い。だが、秘密裏に行えるほどツテが無く、依頼人を誤魔化せるほど不誠実でも無かった。
だから、躊躇う。
だから、戸惑う。
「‥‥行きましょう。行かねば志士としての役目を果たすことも叶いません。‥‥丹波を許せはしません。ただ、それ以上に許せぬものがそこにいるなら‥‥私は‥‥」
悲壮と言っていいほどの決意を表した御神楽。
明確な方針は無く、漠然と不安を感じながら、冒険者は出雲へ。
●神在りし土地
「ゲヒャヒャヒャ! 来いやぁ! ヤってやんよぉ!!」
「下劣ですね」
「‥‥私、戦闘中でもあそこまで酷くはならないわよね?」
「はっはっは。ノーコメントとさせていただきましょうかなぁ」
こちらは、一足先に現地に入った四人。
怪骨をチェーンと十手でひたすらぼてくりまわしているのは、伊東登志樹(ea4301)。
黒雲に覆われた出雲の国。いや、黒いのは雲だけではない。
彼らの気負いがそう思わせるのか、空気さえも微妙に黒ずんでいるように見えるこの土地で、一行はそれなりの妖怪と何度か遭遇し、撃破している。
遭遇したのは主に不死者に属する妖怪達で、駆け出しならばヤバい相手も、彼らはさくっとあの世に叩き返した。
戦闘は任せ、やたら周囲の地形やらに注意を向けている琉瑞香(ec3981)。
伊東のキレっぷりを見て、冷や汗混じりの南雲紫(eb2483)。戦闘中はちょっと激しくなると自覚しているのだろうか。
そしてデルスウ・コユコン(eb1758)は、朗らかに笑いながら、戯れてくる怪骨を叩き割った。
伊東のキレっぷりは、レミエラというアイテムの副作用でないことを祈るのみである。(何)
四人は妖怪退治をしながら、出雲大社周辺の村々で情報収集を行っていた。
「古くはスサノオノミコトの大蛇退治の舞台となったとも聞きましたが‥‥ヤマタノオロチを屠った際も、川は赤く染まったという話もありましたでしょうか」
デルスウは赤く染まっていたという川を眺める。
以前、出雲の異変に関する依頼がギルドに届いたが、住民の話では今も不可思議な事が続いているらしい。
出雲大社に祈りに来る人間も多いと言う。
「それにしても魔物が多いですね。もう少し調べていきましょう」
遅くまで調査に費やした四人は、出雲大社近くの町に宿を取った。
「魔物が増えているって話はあるけど、理由が分からないな」
「大和の黄泉人が出雲に流れてるって噂しているらしいよ」
「狙いは‥‥出雲の黄泉比良坂か?」
「ですが、あそこはただの観光地だと聞きましたよ? 昔はどうだったか知りませんが、今は妖気一つ無いとか」
出雲に黄泉比良坂の入口と呼ばれる場所があるが、ただの洞窟で、アンデッドも居なければ不浄な気も全く感じないという。出雲の事を聞いた時、陰陽寮も黄泉人騒動があった時に念のため調査したという話を聞いたが、やはり何もなかったらしい。
「何も‥‥無いねぇ」
焦りを感じつつ、宿の人にこの辺りに遺跡や妙な物は無いかと聞く。宿の後ろの路地に小さな祠があると教えてくれた。
「どんなご利益があるの?」
カップルで訪れると高確率で分かれるのだという。
「縁切りか‥‥まあ、よくある話だな」
「そんな事はありませんよ。訪れたカップルが七割の確率で別れるというデータがあるのございます」
「データって‥‥七割なんて自然に分かれるのと違わないんじゃあ‥」
逆に自分たちの絆を試すべく訪れる人たちもいるというが‥‥それは置いておいて。宿の人が熱心に教えてくれるので散歩がてら見に行く事にした。
「おーおー、ぞんざいな扱いなこった。完璧にガキの遊び場にされてんじゃねぇか、こりゃ」
「信仰するべき対象でないのでしょう。これはお粗末ですなぁ。八百万の神などとよく言ったもので」
「どれどれ祠の中は‥‥石があるだけか。うーむ、普通ね」
伊東、デルスウ、南雲は、一応祠の前で手を合わせてみる。
周りには鞠だの竹とんぼだの、子供の玩具が無数に落ちている。大人に狭苦しい裏路地も、彼らには絶好の遊び場なのだろう。
「しかし、出雲大社で聞いた話はどうなのでしょうか。『水面に移った自分を鏡に映すと、自分の死んだ時の顔が見えるという池があり、一人の青年がそれを試したら池から無数の手が現れ、青年を引きずりこんでしまった』というものですが」
「で、その舞台がこの町だってんだろ? けどこの町にゃ池も湖もありゃしねぇぞ」
「聞き込みしても、目ぼしい物と言えばこの祠くらいですなぁ。池は埋め立てられてしまったとかですかな」
平和な町、平凡な祠。聞こえるのは、雑踏の音。
まさに下見で来てぶらぶらと時間を潰す自分達の境遇は、やりきれないような、ほっとするような。
「ともあれ、もう少し調べてみますか?」
町人に聞いてみても、『え、そんな祠あったかなぁ』くらいの認知度だと言うのに。
「しっ。誰か来るわ」
そう言って、南雲が皆を制す。
すると、雑踏の中から一人‥‥黒い服と黒いスカートに身を包んだ、つい最近知り合った少女が歩いてくるのが見て取れた。
丹波の客人にして、出雲大神宮の隠された地下道へ冒険者を誘った、真意を測りかねる少女。
「あらあらまぁまぁ、みなさん奇遇ですこと。あなたがたも観光で?」
「観光だぁ? 丹波が国を挙げた大喧嘩かましてるって時に呑気に観光かよ、おめぇは!」
「いけませんか? わたくしは藩士ではありませんもの‥‥戦争に参加する義務はなくてよ?」
「それはそれで結構ですが。ではお尋ねしますが、何故ここへ? ここは名も忘れられた、ただの祠ですよ」
「そうなのですか? ここに来ればヤマタノオロチが見られると聞いてきたのですけれど♪」
「誰よ、そんな嘘八百教えたの‥‥」
「そんなものが居たらこの町はおろか、出雲そのものが崩壊しますな」
「いや、つーかよ‥‥こいつが言うとシャレになんねぇよーな気がすんのは俺だけか?」
カミーユ・ギンサはあくまで冗談めかしてとんでもないことを言う。
どこで聞いたかは知らないが、確かに出雲にはヤマタノオロチの伝説がある。
ただ、この町に限るのであれば例の鏡と池の話くらいしかなかったはずだが?
「それにしてもつまらない場所ですわね。まだ面白いものは無さそうですし、別のところを見て回ることにしますわ。お気に入りの御神楽さんもいないようですし‥‥」
「澄華がお気に入り? ‥‥澄華、聞いても喜ばないでしょうね‥‥」
「それは残念。わたくし、あの方結構気に入っていますのに」
「例えばどんなところでしょう?」
「決まってますわ。あの今にも崩れてしまいそうな表情です。軽く触れただけで粉々になってしまいそうなひび割れた心‥‥うふふ、ゾクゾクしちゃいますの。あぁ、自分では大丈夫だと思い込んでいるあの感じ‥‥是非とももう一度お会いしたいですわ♪」
「性格ひん曲がってんな、おいっ!」
「ではそういうことで。皆さん、御機嫌よう」
そう言って、スカートを摘まんで優雅に挨拶をし、カミーユは去って行った。
‥‥本気で何をしに来たのだろうか?
とにかく、藤原満定が言っていた『とある場所』の当たりはつけた。
下見(?)を完了した四人は、後からやってくる調査組みと合流すべく、この町の宿へ戻ったという―――
●どうする?
「お気に入り‥‥ですか? は、はぁ‥‥カミーユ様に好かれそうなことをした覚えはありませんが‥‥」
「その祠に鏡を近づけるのは止めたほうがいいか。あの女が現れたからには尚更」
「それにゃあ同意見なんだけどよ、正直なーんもねぇとこなんだぜ? 鏡を持ってったくらいでなんか起こるかぁ?」
「私もそう思いますが、いきなりやってきてヤマタノオロチがどうとか言い出す人間がどれだけいますかなぁ?」
例の町の宿。
合流した八人は、今後の方針について話し合っていた。
とりあえずの結論は、『無闇に祠に鏡を近づけるのはやめよう』とのことらしいが。
「私は余計な詮索はいたしません。依頼人を信じる、というのが信条ですので」
「いやはや、信じられる依頼人ばかりなら助かるのですが‥‥」
「でも‥‥次に鏡をその祠に持っていけ、と言われたらどうするのですか?」
「万が一ヤバいものが復活したりしたら、藤原はどうするつもりなのかしら‥‥?」
嫌な予感だけが膨らんだ出雲への下見の旅路。
もし、『本番』で危険なことを要請されたら‥‥冒険者は、勇気を出して拒否するのか‥‥それとも―――