【境界線】敵の敵は‥‥?
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■シリーズシナリオ
担当:西川一純
対応レベル:6〜10lv
難易度:難しい
成功報酬:4 G 50 C
参加人数:9人
サポート参加人数:2人
冒険期間:05月26日〜05月31日
リプレイ公開日:2008年06月02日
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●オープニング
世に星の数ほど人がいて、それぞれに人生がある。
冒険者ギルドでは、今日も今日とて人々が交錯する―――
古の黄泉女神、イザナミは復活した‥らしい。
出雲は大混乱に陥っている。それは数年前、大和で黄泉人が復活した時を彷彿させた。
あの時も切れ者と言われた大和藩主松永久秀が有効な手段を何一つ打てず、増殖する不死の軍団は大和から溢れて畿内全土を蹂躙した。今も大和には、その時の爪痕が残っている。
現在は黄泉人達の力もあらかた研究され、冒険者ギルドの成長により、黄泉人の被害は少なくなっている。しかし、出雲で復活したイザナミは石舞台の黄泉大神と同等の不死の軍団を持つ可能性がある。更に不運な事に、出雲から報せが届いた時、頼みとなる筈の冒険者も神皇軍も都に居なかった。
ちょうど、上洛した平織軍が比叡山を囲み、延暦寺と睨み合っていたのだ。
都から遠い出雲の事件という事もあり、情報は錯綜し、対応は後手に回った。
イザナミを制御できる‥‥味方に付けられると信じていた藤原満定の予想は完全に裏切られたようだ。
「おのれ‥‥何故だ!? 冒険者が下手を踏んだのか? そうだ、そうに違いない‥‥!」
「見通しが甘すぎたってことですかね。で? まさかこの期に及んでまだ京都だ丹波だと仰るおつもりで?」
「やかましい! それとこれは全く別の話じゃ。ワシが下手を打てば丹波の罪が消えるとでも云うのか。貴様の丹波贔屓も聞き飽きたわい!
ともあれ、起きてしまった事は仕方が無いのう。ま、このワシが腹を切るか、それとも冒険者どもに罪をかぶせると言った話は後で良いのじゃ。全て丹波の策略という手もあるしな。今はそれより都を守らねばならぬ、出雲の亡者共を止めねばな‥‥」
「あんたって人はぁぁぁ! 清々しいまでに外道ですね!! 冒険者さんたちがどんな気持ちであんたの依頼を受けてたのかも知らないでまだそんなことを!」
「それが上三位たるワシへの言葉遣いか、下郎! ‥‥ワシとて‥‥こんな結果を望んだわけではない! ただ純粋に‥‥神皇様のお力になれるものと信じておったのだぞ‥‥!」
それこそ、信じていれば罪が消えるわけではないが。
問題は、正確な情報が入らない事だ。確たる情報は生還した冒険者達の話しかない。出雲から黄泉人の被害を伝える報告が都にようやく入ってきたレベルで、もし冒険者達が戻ってきていなければ、何が起きているか気付く事さえなかっただろう。
「えぇい、貴様と口論する時が惜しいわ! よいか、出雲の国境へ冒険者を派遣し、イザナミの戦力を測るとともに少しでも削らせよ。それから、冒険者は功を焦って突っ込むかもしれぬゆえ、貴様が釘をさしておけ。今は情報を手に入れる事が先決じゃ」
討伐軍を派遣しようにも出雲は遠く、今は時も悪い。
冒険者数名の情報で、黄泉女神イザナミが復活しました等と報告すれば満定の首が飛ぶどころでは無い。まず信用されないし、信用されたらしたで京都市民の大恐慌、最悪都が無政府状態になる。大混乱を避けるため、満定はギルドを通じて陰陽寮にも協力を要請し、可能な限りの情報収集を行う事にした。
「冒険者が戻ってこれたのも彼らのおかげですし、この際丹波にも要請をお願いしては‥‥?」
「ならぬ! 断じてならぬぞ! 丹波は都の敵じゃ!」
弱みを見せれば何をされるか分からない。イザナミと丹波が手を組む危険もある。下手に出ればどんな条件を出して来るかも分からず、大事な情報収集は都だけで行いたい。もし丹波と交渉するとしても、その後で十分だ。
●リプレイ本文
●願いと返答
「恥知らずな願いとは思いますが、出雲に残る民の為にも力をお貸し頂きたい‥‥!」
「あい分かった。では八卦衆から地の砂羅鎖を、八輝将から黒曜の屠黒を随伴させよう」
「‥‥‥‥。い、いや、御協力はありがたいのですが、即答ですな」
「都の危機とあらば、神皇様の御為、協力は惜しまぬ。以前口にしたことに嘘偽りはない」
丹波藩の主城、東雲城。
デルスウ・コユコン(eb1758)は単身、藩主である山名豪斬に謁見を求めていた。
そして協力要請を、との願うと、お聞きのとおり豪斬は二つ返事で了承したのである。
御都合主義というか、えぇかっこしいというか‥‥しかし豪斬の想いには一点の曇りもない。
「しかし、藤原氏も思ったよりは話が通じるようですなぁ。何とかしようとしているようですし、現場に状況を任せるだけの度量もあるようで」
「‥‥あの方も悪い方ではない。満定様は満定様なりに神皇様の御為に動いておられるのだ」
「ほう‥‥器の大きい意見ですな。‥‥本音は?」
「出来れば年寄りの冷や水は止めていただきたい。‥‥これは満定様には内密に頼むぞ」
「御意」
穏やかな笑みを交わす二人。
状況が状況だけに丹波の軍勢を出雲に差し向けることは出来ないが、イザナミの軍勢が丹波に入ってくるようなことがあれば、豪斬は全力で迎撃に回るだろう。
今はただ、現状で出来る最大限の助力を提供するまで。
デルスウは豪斬のとりなしで、五行龍との交渉に入ったという―――
●現地では
「皆さん、右後方から回り込まれています。一旦そちらを突破し、体勢を立て直してください!」
「あの藤原の無茶苦茶な依頼や、あのカミーユとか言う女の所為で随分と欲求不満が溜まっているのでな。派手に暴れさせてもらおう。各員、後方に移動するぞ!」
「あの女は姿を見せんか。まぁ、女と呼んでいいのかも分からんがな。被害者には悪いが、これ以上お前たちのような被害者を出さないためにも‥‥容赦はせん」
斥候及び冒険者たちとイザナミ軍の位置関係を見極め、逐一報告してくれる島津影虎(ea3210)。疾走の術を使っているとはいえ、自身も戦闘に参加するので一番疲れる役だ。
そして今までの鬱憤を晴らすかのように、鬼神の如き剣閃を振るうのは南雲紫(eb2483)。
ウィルマ・ハートマン(ea8545)は弓矢で援護中。無慈悲であることが慈悲‥‥そんなこともあろう。
が、実は地上で不死者の相手をしているのはこの三人だけ。
もちろん後退しつつ付かず離れずで、である。
すでに軍団規模となってしまったイザナミ軍を前には、8人全員で当たっても手数が足りない。
一応、まだ出雲でうろうろしていることからも分かるように、イザナミ軍の進行速度が思った以上に遅いというのもこの戦法を成り立たせている要因ではあるのだが‥‥。
「最悪、黄泉軍からはぐれた奴だけでも誘導しておきてぇってのによぅ! はぐれた奴が、てんでバラバラに村とか襲って被害が広がると、余計に手がつけらねぇんだぞ畜生!」
「統率が取れていなさすぎる‥‥! 辛うじて進撃しているという具合ですね‥‥!」
グリフォンに乗り、引魂旛で不死者を引き寄せるのは伊東登志樹(ea4301)。
そしてそのグリフォンを駆り、長槍「畜生道・解」で敵の航空戦力を迎撃するのは御神楽澄華(ea6526)。
なるべく人のいない方へと連中を引き寄せたかったのだが、イザナミ軍は纏まりに欠けており、右側の連中を引き寄せると左側が明後日の方向へ行ってしまうといった具合で、思ったように効果が上がらない。
「コアギュレイト。イツマデン、でしたか? 数が多いのが厄介ですね‥‥!」
「地上の連中も気になる。伊東、ある程度で見切りをつけろ」
「時間があれば再封印か滅する方法を調べたいところですが、今はこれが精一杯です」
グリフォンに乗り、魔法による束縛で航空戦力を墜とすフィーネ・オレアリス(eb3529)。
そして、ペガサスを駆ってライトニングサンダーボルトで攻撃する琥龍蒼羅(ea1442)。
琉瑞香(ec3981)はペガサスに同乗、長弓「鳴弦の弓」をかき鳴らし、琥龍への攻撃を阻害している。
しかし、先も言ったように思ったほどの効果は出ていない。
確かにこの誘導や事前の避難勧告のおかげで、人的被害は大分抑えられているのだが‥‥。
この時、この作戦に致命的な欠陥があることに、まだ誰も気づいていなかった。
「‥‥雨雲? 先ほどまでは晴れていたような気がしますが」
「っ!? いけない、ホーリーフィールドを!」
琉のつぶやきを聞き、フィーネの背中に冷たいものが走る。
瞬時の判断で高速魔法バリアを展開。直後に、フィーネの乗るグリフォンに激しい落雷が直撃する!
バリアは一瞬で砕け散ったが、おかげで何とか無傷で済んでいた。
「げろっ!? い、今のってもしかしなくてもヘブンリィライトニングかぁ!?」
「いけない‥‥いくらレジストデビルをかけていただいているとはいえ‥‥きゃあっ!?」
「抜かった。相手が黄泉人なら風魔法への警戒は当たり前だったはずなのだがな‥‥ちぃっ!」
御神楽たちのグリフォンと琥龍たちが乗るペガサスが落雷を受けて撃墜される。
両者ともになんとか空中で体勢を立て直し、低空飛行に切り替えたが、これでは高度を上げた瞬間また狙い撃ちにあうだろう。
フィーネもホーリーフィールドで何回か防ぎつつ下降していたが、どうやら敵は複数人数で連続詠唱していたらしく、弾幕が途切れなかったのである。
結局最後は一撃を貰ってしまい、地面へ‥‥いや、不死者の群れの中へ!
高度の問題もあるが、彼女の騎乗能力では空中で体勢を戻せなかったのである。
「いやはや、まずいですよ‥‥フィーネ殿が落ちた場所は、完全に取り囲まれています!」
「かと言って、7人でも突破できる距離ではないな。さて、どうしたものか」
「どうするもこうするも、やれるだけやるしかあるまい! 仲間からも被害者を出してたまるものか!」
「‥‥やれやれ。長生きできん考え方だな」
南雲の意見に肩をすくめるウィルマ。
が、その瞳は彼女をあざ笑ってはいない。志を同じくして戦う目だ。
と、そこに。
「だからこそ、南雲さんたちは精霊龍とも心を通わせられたのでしょうなぁ。はっはっは」
『お待たせ。助けに来たで、南雲さん』
「うっわぁ‥‥すごい数です‥‥(汗)」
「そんなものは関係ねェーーーッ! 倒そうと思うなッ! 生き残ることを考えろォーーーッ!」
デルスウ、金翼龍・刃鋼、地の砂羅鎖、黒曜の屠黒。
丹波からの援軍も含めた三人と一匹が到着した!
「お二方‥‥手を貸していただけるのですか? 豪斬様のお言葉に、嘘偽りはなかったと‥‥」
「御神楽さん‥‥。も、勿論です! 豪斬様の思し召しは、今も昔も変わっていません!」
「細かいことは後だッ! 刃鋼、弾き飛ばせェーーーッ!」
『ウチ、あんたに命令される謂れはないんやけど‥‥まぁえぇか』
刃鋼がフィーネが墜ちた場所あたりに急行、体を捻りながら自慢の翼で不死者を切り刻みつつ弾き飛ばす。
元々の体がでかいので何発かHLを貰ったようだが、フィーネの救出に成功する。
だが、やはり数が多過ぎる。
範囲魔法の使い手が二人と刃鋼が加わってなお、一行の後退は止まらない。
例の骨車や小型がしゃ髑髏が前線に出てきたことで、トントンな感じになってしまったからだ。
削り・偵察という趣旨から言えばもう充分なのかも知れないが、ただやられっ放しでは帰るに帰れない。
とはいえ、このまま無策に戦っていては包囲されて新たな犠牲者にされかねないが‥‥?
と、そんな時である。
「あらあら。苦戦していらっしゃいますわね♪」
『っ!?』
ぎくりとした一行の背後に立つ、優雅な微笑を浮かべた少女。
いつもながら、気配を感じさせずに背後に立つこの癖はなんとかならないものか。
カミーユ・ギンサ‥‥神出鬼没な丹波の食客である。
「て、てんめぇっ! 小悪魔どころかマジもんの悪魔が何の用だ固羅ぁっ!」
「あらあら、酷い言われようですこと。折角お手伝いに参りましたのに♪」
「あからさますぎる。まったくもって悪魔というのは、冷酷さと残忍さと趣きに欠ける。そこらの悪ガキと変わらん」
ウィルマの持つ石の中の蝶は激しく羽ばたき、目の前の少女が紛れもなく悪魔だと告げている。
「今は忙しい。目的が何かは知らんが、貴様と遊んでいる暇はない。引っ込んでいろ‥‥!」
「そう言われましても、わたくしにも事情がありますのよ、南雲さん。豪斬様から皆さんのお手伝いをと言われましたから。それに、例の出雲の件で皆さんを弁護したのはわたくしでしてよ? そんなに邪険になさらなくてもよろしいんじゃなくて?」
相変わらず真意を測りかねる行動である。
イザナミ復活の手助けをしていたようにも見えるし、そのくせ冒険者を擁護する。
それに、カミーユが悪魔だということは丹波側もデルスウから聞いたはずなのだが‥‥?
「どういうことか説明してもらいたいものだな」
「カミーユさんが悪鬼羅刹と知っていたということですか?」
琥龍と琉の追求に答えを窮したのは、砂羅鎖と屠黒である。
「え、えっと‥‥そのぉ‥‥。わ、私たちも、知ったのは、最近なんですけどぉ‥‥」
が、現在は戦闘中。問答をしている間にも敵は迫ってくる。
特に‥‥相手が人並みの知性を持っているなら、尚更。
「チッ‥‥なんだなんだぁ、進みがいつにも増して遅いと思えば。お前ら、邪魔なんだってばよ!」
「こいつら、イザナミ様が仰っていた人間と仲良くする精霊龍とその仲間ザンスね。あぁ気色悪い!」
戦場では目まぐるしく状況が変わる。
前線での戦況が思わしくないと思って出てきたたのか、空中に二人の黄泉人の姿。
ミイラ状態なので何とも言えないが、少なくとも男の声だ。
「幹部級のようですね。いやはや、どちらがどうなのか区別が付きませんが」
「どちらにせよ、あまり良い性格をしていらっしゃるとは言えないようで‥‥」
「んまぁ、失礼しちゃうザンス! ぶち殺しちゃうザンスよ!?」
島津とフィーネのリアクションに過敏に反応する左の黄泉人。
が、いきり立つ彼と冒険者たちの間に、カミーユが歩み出る。
「まぁまぁ、ここはわたくしにお任せくださいまし。みなさんはその間に逃げていただいて結構ですわよ」
「ふざけないでください! 仮にあなたが味方だとして、たった一人でどうするつもりです!?」
「クスクス‥‥可愛いですわね、御神楽さん。でも、結構な話じゃなくて? あなた方はわたくしがお嫌いなんでしょう? ならこの場で置いていって殺されてしまっても、それはそれで手間が省けるじゃありませんか」
「そ、それは‥‥しかし‥‥!」
「澄華‥‥やらせてみましょう。幹部らしき黄泉人を二人確認。今回はこれで充分よ」
南雲に言われ、一行は不承不承ながらも撤退を開始する。
それを黙って見過ごしていた黄泉人二人も不審ではあるが‥‥。
やがて、冒険者や刃鋼たちの姿が完全に見えなくなった―――
●カミーユの正体?
「気に入らねぇってばよ。お前みたいな生意気な女は即殺してやりたいとこだが‥‥」
「不穏な物を感じるザンスね。人間より、むしろアチキらに近い雰囲気を感じるザンス」
「あらあら、流石は歴戦の幹部さん。意外と勘が鋭いんですのね」
不意にカミーユの身体から邪悪な気配が立ちのぼり、その身体が人から別な何かに変形していく。
優雅な微笑が特徴的だった少女の本当の姿は、真紅の瞳の―――
『わたくし、カミーユの姿が気に入っていますの。あなた方はもう少し出雲にいてくださいまし。うふふ‥‥死霊の使役でわたくしに勝てるなどと、夢にも思わないでいただきたいですわ―――』