【多田銅銀山】進んだ先には?

■シリーズシナリオ


担当:西川一純

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:9 G 4 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:06月04日〜06月09日

リプレイ公開日:2008年06月05日

●オープニング

世に星の数ほど人がいて、それぞれに人生がある。
冒険者ギルドでは、今日も今日とて人々が交錯する―――

「というわけで、冒険者さんの活躍により、見事赤銅埴輪は撃破されたのでしたっ! めでたしめでたし」
「まだ終わってないんでしょー。三倍速かったわけでなし‥‥赤って言っても大したことなさそうねー」
「なら自分で行ってみろい!?」
 ある日の冒険者ギルド。
 職員の西山一海とだべっているのは、アルフォンス・ブランシュタッド。
 何でも屋の居候という、よく分からない立ち位置の娘である。
「で、ですね。崩れてしまった瓦礫を撤去すべく、多田銅銀山の人足さんたちが協力してくれたそうなんです。冒険者の皆さんのおかげで例の区画の埴輪はほとんどいなくなりましたし、現場に残った岩鉄さんが護衛をしたので、作業も滞りなく終了。奥に進めるようになったそうです」
「で、また埴輪がぞろぞろ出てきたってわけ?」
「そこまで数は多くないようですが、やっぱり埴輪は出てきたそうです。なので奥を調べることも出来ず、赤銅埴輪の部屋を封鎖するので手一杯だったとか」
「えっ、じゃあ何? 折角赤いの倒したのにそこはもう通れないの?」
「いえ、どうも奥に進むにはその部屋を通るしかないみたいなんですよ。なので、冒険者さんたちはその封鎖を現場で外して進んでいただくことになります。埴輪がまた充満しないだけマシと思っていただくしかありません」
「そんでもってまた大量の雑魚埴輪の相手、と。ホント、奥に何があるのかなー。ちょっと興味あるかも」
「自動で埴輪を製造するような仕掛けがないことを祈ります‥‥」
 毒霧の中、少しずつではあるが確実に進んでいく冒険者たち。
 多田銅銀山の奥で待つ埴輪大魔神までに、あとはどんな強敵が待っているのだろうか―――
 ‥‥ん? 多田銅『銀』山‥‥?

●今回の参加者

 ea1774 山王 牙(37歳・♂・侍・ジャイアント・ジャパン)
 ea6381 久方 歳三(36歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb1422 ベアータ・レジーネス(30歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 eb2018 一条院 壬紗姫(29歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb2099 ステラ・デュナミス(29歳・♀・志士・エルフ・イギリス王国)
 eb3225 ジークリンデ・ケリン(23歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)
 eb6553 頴娃 文乃(26歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)
 ec0154 鳳 蓮華(36歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)

●サポート参加者

カノン・リュフトヒェン(ea9689

●リプレイ本文

●慣れたもので
「ハァーイ、エヴリバディ! ミーは今日も絶好調ネ! レッツアドベンチャーデース!」
「はァ‥‥なんて言うか、聞いてはいたけど実際に見ると痛々しいねェ」
「ホワッツ!?」
「わー、ズバッと言っちゃったねー。みんな思ってるけどあえて黙ってたのにー」
「ジーザス!?」
「‥‥純日本人が怪しい外国語交じりのしゃべり方をすれば、それはそうでしょうね」
「ノォォォォォッ!?」
 丹波藩南部、多田銅銀山。
 もういちいち説明する必要もあるまい。冒険者たちは今回も鉱山部分から遺跡部分へと侵入、先を目指す。
 前回までの戦いで、赤銅埴輪がいた部屋まではほぼ制圧。
 あれだけいた埴輪たちの姿も残骸でしか確認できず、余裕綽々で歩ける状態だ。
 例の防毒マスクで対策を施しているとはいえ、必要以上に喋る助っ人‥‥丹波藩士、八卦衆・山の岩鉄はどうかしている。
 頴娃文乃(eb6553)や鳳蓮華(ec0154)、山王牙(ea1774)は、わりと加減なしで岩鉄の異常性を指摘。
 その度にリアクションを取るので、見ていて飽きないがとりあえず五月蝿かった。
「しかし、岩鉄さんは思ったより体力がありますね。やはり志士だからでしょうか」
「私たちのような純粋な魔法使いは、山登りと洞窟紀行と毒霧とで、すぐにへばってしまいますものね‥‥」
「まったくもって。私も、もう少し体力作りしないと駄目かしら‥‥」
 ベアータ・レジーネス(eb1422)も魔法使いだが、彼は何故か意外と体力がある。
 比較して、同じ魔法使いでも女性陣‥‥ジークリンデ・ケリン(eb3225)やステラ・デュナミス(eb2099)は、外見から見ても分かるように体力面では相当劣る。
 消耗の激しいこの遺跡内では、せめて頴娃くらいの体力がないと休み休みになってしまうのだ。
「それにしても、落ち着いて見ると結構な惨状でござるな。埴輪の欠片が無い場所のほうが珍しいでござるよ」
「‥‥くすん‥‥こんなに苦しいのなら悲しいのなら‥‥愛などいりません‥‥くすん」
 足元に散らばる無数の埴輪の残骸。
 結構大きなものもあり、注意しなければつまづくことだってありえる。
  久方歳三(ea6381)の言葉に、赤銅埴輪の壮絶な最後を思い出した一条院壬紗姫(eb2018)がちょっと凹んだ。
 その肩にそっと優しく手が置かれ、一条院の心がぽうっと暖かくなる。
 振り返れば、ステラの微笑み。どうやらフレイムエリベイションをかけてくれたようである。
「辛いだろうけど、遺跡の謎を解き明かしてより深く埴輪さん達と仲良くなる為にも、頑張って」
「‥‥はい。今は、試練の時なのですね‥‥。でも、どうせ壊してしまうなら、悲しくなるので目は合わせません‥‥くすん」
 『はにわーぷりんせす』にして『萌えっ娘』の力を遺憾なく発揮している一条院。
 やがて、一行は赤銅埴輪がいた例の部屋へと到着。
 瓦礫は部屋の端のほうに押しやられ、お世辞にも綺麗な後始末とは言いがたいがしっかりと道が出来ていた。
 その先には、木材や瓦礫の一部などが積まれたバリケード。
 部屋の出口をしっかりと封鎖しており、その先に何があるのかは分からない‥‥のだが。
「確認しました。この先はしばらく一本道の通路となっており、そこにぎゅうぎゅう詰めで埴輪がいます。数は30程です」
 感知魔法系のスクロールを多用し、自らのクレバスセンサーも用いて先の空間の把握に努めるベアータ。
 耳を澄ますと、ガリガリだかゴリゴリだかと、陶器が擦れ合うような音が聞こえる。
「ありゃァ、そりゃまた予想通りの展開だねェ。それじゃ例の作戦で行きましょうか。灯り持ちと回復は任せといて」
「イエッサー! それじゃあ、グラビティーキャノンで一網打尽デース!」
「壁にダメージがよく通ってしまう魔法は駄目だと申し上げたではありませんか。私はストーンでいきます」
「大丈夫だよー。レンたちが確実に壊してくから、魔法使いさんたちは保険で充分ー♪」
「‥‥そういうことですね。では、打ち合わせどおり人一人が通れるくらいの穴を開けますよ」
 こうして、山王がバリケードを崩した途端、一匹目の埴輪が部屋に雪崩込んで来たのであった―――

●埴輪叩き
「砕け、必殺ー! 爆虎掌ーっ!」
 ばかん!
「漢・やり返し突きでござる!」
 ずこん!
「‥‥‥‥いや、俺は言いませんよ?」
 ごぎん!
 鳳、久方、山王のアタッカー組みが、穴から次々と出てくる埴輪を交代交代で叩き割っていく。
 たまにタイミングが合わず、埴輪が三人の網をすり抜けることもあったが、一条院が軍配と十手で応戦、破壊する。
 さながら埴輪叩き。
 断続的に出てきては砕かれる埴輪たちには、哀愁すら漂っていた。
「やっぱりいいアイディアだったわよね、これ。本当に目から鱗だわ。頴娃さんには感謝しなきゃ」
「役に立てたなら良かったわ。前回、アタシがいなくても赤銅埴輪を倒せたみたいだし、必要ないかと思っちゃったし」
「そんなことはありませんよ。しっかりと青銅埴輪の数を減らして、足場固めをした結果ですもの」
「私は結構魔力を使ってしまいましたので、少し楽をさせていただいています」
 魔法使い組みのステラ、頴娃、ジークリンデ、ベアータはとりあえず見えてるだけ。
 戦場に見合った良いアイディアは、数の戦力差をも軽く覆した。
 頴娃の知恵と、それを実行できるだけの実力を持ったアタッカー4人がいてこその結果である。
 埴輪たちも無限ではない。やがて、埴輪が穴から出てこなくなる。
 ベアータがインフラビジョンのスクロールを発動してひょいと覗いて見ると、遠くの方で1〜2匹埴輪がうろついているだけで、通路はとりあえずすっきりしたようだった。
「それじゃ進みましょう。今日は行ける所までいかないとね」
「むー‥‥正直、ミーはここでのバトルに向いていまセーン‥‥(泣)」
 岩鉄のボヤキをきっぱり無視し、一行は更に奥へと進んだのであった。

●対峙
 その後も、襲い来る埴輪を叩きのめしつつ、一行は奥へと進む。
 思ったよりも遺跡の構造は単純で、迷うことも無かった。
 そして一行は、とある奇妙な部屋へと到着する。
「何これー。ベッドだよねー?」
「ひい、ふう、みい‥‥六つもあるでござるな」
「‥‥宿直室のようなものなのでしょうか。遺跡で作業をしていた人足の休憩所とか」
「それっぽいねェ。なんだ、ちゃんと寝るところもあるなんて意外と気が利いてるじゃない」
「しかも、どうやらこの部屋には埴輪は入ってこないようですね。見てください」
「埴輪が入り口で立ち止まっている‥‥? どういう理屈なのでしょうか」
「相変わらず毒霧はあるけど、休むにはベターな場所ね。日誌でも落ちてると助かるんだけれど‥‥」
「子はに(雑魚の青銅埴輪のことらしい)さん‥‥」
 聖徳太子云々の話が本当なら、ここは百年以上前からあったことになる。
 そんな昔に自由に字が書けた人間は少ないだろうし、例え木簡などが残っていても読めたものではあるまい。
 一行はベアータのクリエイトエアーで新鮮な空気を吸い、しばし休憩した後で探索を続けた。
 防毒マスクが乾き、効果が薄れてしまっていたが、休憩中に予備の解毒薬で再度濡らしたので問題あるまい。
 奥に進むにつれ、当然ながら毒霧は濃度を増していく。
 が、逆にそれが埴輪大魔神に近づいている証となっているようで、一行の気は逸っていった。
 そして。
「‥‥っ! あれは‥‥!」
「埴輪大魔神さん‥‥!」
「間違いありません。私のマグナブローを、耐え切った埴輪‥‥!」
 その後、数時間も探索をした結果‥‥一行は巨大な空間へと足を踏み入れていた。
 岩肌が露出した無骨な壁を背に、白金に輝く巨大な埴輪が鎮座していた。
 豪華な兜。神と書かれた鎧。そして、立派なヒゲ。(ヒゲ?)
 戦った者なら決して忘れない、戦慄の埴輪大魔神の姿‥‥!
「なんだいありゃァ。あの埴輪、変な紫色の水に浸かってない?」
「まさか、あれは傷を修復する効能がある、温泉のようなものなのでしょうか」
「そ、そのようでござるよ。以前の戦いで折れていた兜の衝立が、直っているでござる‥‥!」
 遠目なので分かりづらいが、どうやら埴輪大魔神は腰くらいまで紫色の水に浸かっているようである。
 埴輪大魔神の上から日光が降り注いでいるから分かるのだが、どうやら上のほうは地上と繋がっているらしい。
「だったら、直りきる前に叩くしかないよねー!」
「雑魚埴輪も多いけれど‥‥ここは埴輪大魔神に集中攻撃したほうがよさそう! みんな、行くわよ!」
 鳳とステラの言葉に全員が頷き、一直線にヤツへと向かう!
 どうやら埴輪大魔神はまだ眠っている(?)らしく、こちらを見ているはずなのに微動だにしない。
 そして、あと半分くらいで埴輪大魔神というところまで進んだ瞬間。
「っ!? みなさん、止まって! とても大きな埴輪力が三つ!」
 一条院の勘が、はにわちからを感知。
 こと埴輪のことに関し、一条院の勘は信用に足る情報。
 ぎくっとした一行が足を止めると、彼らから埴輪大魔神を守るかのように、銀色の埴輪が一体、赤茶色の埴輪が二体、突如として上から降ってきた!
 埴輪大魔神を一回り小さくしたような、鎧兜で武装した姿だ。
「そ、そんな馬鹿な!? 白銀の埴輪と‥‥赤銅埴輪が二体でござるか!?」
「金の埴輪がいれば完璧だけどねェ。時間稼ぎにしては随分過剰な戦力よね」
「いけません。このままでは青銅埴輪も集まってきてしまいます」
「撤退、撤退ー! これじゃ手合わせとか言ってられないよー!」
「‥‥ヤツを目の前にして‥‥! 無念です‥‥!」
「あの紫の水‥‥あれが毒霧の正体? 埴輪大魔神を修復しているから濃度が薄くなったのなら、あいつが出たら‥‥」
「とりあえずマグナブローで突破口を開きます。巻き込まれないでくださいね」
「銀色の親はに(ボスクラスの強い埴輪のことらしい)さん‥‥」
「ローリンググラビティで足止めするヨ! レンさん、浮き上がってからのフライングキックとかできマースか!?」
「おっまかせー! 殿は任せてー!」
「ウォーターボールの逃げ撃ちで援護するわ! あぁもう! こういう古い遺跡好きだけど、向いてないかしら‥‥!」
「向く、向かないではないでござる! やるかやらないか、やりたいのかやりたくないのかでござるよ、ステラ殿!」
 後ろ髪を引かれている一条院を引っ張り、一行は必死に脱出する。
 最奥と思われる場所にたどり着き、まだ動かない埴輪大魔神を見つけたが‥‥どうやらそう簡単に事は運ばないらしい。
 今度は白銀埴輪と、一体でも強敵だった赤銅が二体。そしてやはり青銅が多数。
 道中を非常に楽にしたような、良い作戦やアイデアが浮かぶといいのだが‥‥果たして―――