【反転攻勢】東雲城三つ巴
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■シリーズシナリオ
担当:西川一純
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:9 G 4 C
参加人数:10人
サポート参加人数:3人
冒険期間:07月21日〜07月26日
リプレイ公開日:2009年07月27日
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●オープニング
世に星の数ほど人がいて、それぞれに人生がある。
冒険者ギルドでは、今日も今日とて人々が交錯する―――
「さて‥‥冒険者さんたちの調査により、謎の勢力は悪魔の一団であるというのは確定的になりましたね」
「‥‥目的も『七つの冠』狙いだろうってことは分かったわね。イザナミがそれを持ってるんだろうってことも」
ある日の冒険者ギルド。
職員の西山一海と、その友人である京都の何でも屋の片割れ、アルトノワール・ブランシュタッドは、丹波で暗躍する謎の勢力について話していた。
紡いできた歴史、絆、そして推理。それらを総動員して行われたアプローチで、謎の勢力の正体と目的について、おおよその判断はついたと言っていいだろう。
同じ勢力出身であるという悪魔・カミーユの言によれば、人間に手を出すつもりはなく、あくまでイザナミ狙いであり、八雷神などとも散発的に戦闘を繰り広げているとのこと。
ただ、先輩(?)であるカミーユには接触してこないので、詳しい戦力は不明らしい。
そこで五行龍の長、金翼龍・刃鋼に接触したメンバーの情報が役に立つ。
刃鋼と戦った悪魔は、胴は人間、頭と下半身が鹿で背にコウモリのような羽を持っていたという。
また、水牙龍・氷雨のところに向かったメンバーからは、その近辺にいた八輝将の一人、翡翠の緑葉から『巨大で、歪んだ人の頭が空を飛んでいた』という目撃情報を得ている。
「これに加えて、イザナミ軍の八雷神と思わしき雷龍でしょう? もうなんていうか、本当に丹波は混沌としてますよね‥‥。記録してるだけで頭が痛くなりますよ」
「‥‥戦ってる連中はもっと頭痛いでしょうけどね。でも、今回はチャンスとも言えるわ」
「‥‥珍しいですね? どっちかって言うとアルトさんも他人に利用されるの嫌いなクチでしょうに」
「‥‥ふん、私のことはどうだっていいでしょ。とにかく、その悪魔軍団が東雲城に散発的に攻撃を仕掛けてるらしいから、人類側も戦力を出して機に乗じられないか‥‥っていうのが今回の主旨なわけよね」
「仰るとおりで」
東雲城といえば、丹波中央部にある丹波藩の主城であり、イザナミが鎮座する場所でもある。
そういえば、丹波藩主の山名豪斬も、まだ生きているならば捕らわれていることだろう。
そこに例の悪魔軍団が攻撃を仕掛けているため、八雷神が追加で召集されたり地方の防衛力が弱まったりしているわけだ。人類からしてみれば言わば棚ぼたである。
京都上層部の方針としては、こちらと敵対する意思がなさそうなら悪魔勢は無視し、八雷神など敵の主戦力を撃破してしまいたい‥‥というところ。
いい加減八雷神に頭を悩ませ続けるのも嫌だし、事が成れば京都や周辺諸藩の士気も上がろうと思っているようだ。
「悪魔が人類も同時に敵だとみなしたらどうするつもりなんでしょう‥‥」
「‥‥カミーユに説得させればいいとでも思ってるんじゃないの? ‥‥おめでたいのよ。今に始まったことじゃないけど」
イザナミ軍の混乱に乗じ、ついにイザナミの足元を攻めようという京都軍。
今回は前哨戦のような形となるだろうが、場所が場所だけに相当の覚悟が必要だ。
敵の敵は敵。京都は幾度となくその苦汁を舐めたはずだが‥‥果たして、今回は―――
●リプレイ本文
●揺らぎと決意と
「いやはや、随分な数がお揃いで。警戒態勢‥‥と言ったところですかな」
「東側に前見た雷龍がうろついていますね。西側には‥‥骨の馬に乗った骸骨武者、火雷でしたっけ? がいます」
丹波藩主城、東雲城の城下町を遠目から偵察するのは島津影虎(ea3210)とシーナ・オレアリス(eb7143)。
本当は潜入偵察が望ましいのだが、文字通りのゴーストタウンと化した城下町は、遠目からでも分かるくらい多数の不死者が徘徊しており、一人の状態であっても隠密行動は難しい。
不死者は本能で生者を襲うため、気配を察知され次々寄って来られる展開が容易に想像できるのである。
島津とシーナは本隊に戻り、その様子を報告しお手上げのポーズをして見せた。
「強行突破は無理そうか。やはり悪魔の動きを待つしかないな」
「見える範囲だけで八雷神は二体か。巡回してると考えるのが妥当かな?」
琥龍蒼羅(ea1442)と鷹村裕美(eb3936)は、報告を聞いて『待ち』が妥当であると再認識する。
屈強な冒険者が十人も居るとはいえ、逆に言うとたった十人しかいないということでもある。
以前、金翼龍・刃鋼と共にイザナミとの会談に来たこともあったが、その時と今とではあまりに状況が違う。
その時は八雷神の存在も広く知られていなかったし、悪魔がイザナミと対決姿勢を取っている事もなかったのだから。
「悪魔勢力の介入が分かったわけですが‥‥イザナミが八雷神を召集したってことは悪魔軍も強いってことだよね。なのに八雷神を減らしちゃったら丹波の戦力均衡が大丈夫かって思うのですが‥‥」
「この国は、悪魔に対する認識が低すぎる感がある。古来の神であるイザナミより、よく分からない存在であるデビルのほうが御しやすいと思ったのだろう。悪魔の活動規模は全世界に渡るというのに」
「悪魔の誑かしが有ったとは言え、人がイザナミを呼び出し、人の悪意と死が悪魔に力を与えて地上に呼び出し、イザナミを襲う脅威となる。最悪の事態ですが、この事態すら好機とした取れない京の動きは信じ難いですね」
月詠葵(ea0020)が言うように、現在の丹波は様々な勢力が入り乱れており、それぞれが微妙なバランスで刺激し合うことで混沌としながらも妙な均衡を保っている。
しかし、ここで最大勢力であるイザナミ軍の戦力‥‥この場合は八雷神を倒してしまうと、悪魔が目的を遂げて世界規模の危機を呼び込むことになるかもしれない。
かと言ってイザナミ軍を放置すれば、再び戦力を整えられて京都に侵攻されるのは明らかである。
アンドリー・フィルス(ec0129)が言うように、日本は悪魔に対する理解度が低く、その危険性を把握し切れていないのかもしれない。その証拠が悪魔であるカミーユに京都上層部が協力を求めるという行動なのだろう。
山王牙(ea1774)に言わせれば、悪魔に詳しくなくとも京都上層部の動きは理解しがたいし、この世界で巻き起こる戦いは人がいなければ起こりえなかったものなのではないかとすら思えるのだ。
「しっ。何か聞こえるわ。‥‥‥‥あそこよ!」
何かの気配を察知した南雲紫(eb2483)が指差したのは、薄暗く曇った空の一方向。
よくよく目を凝らしてみると、上空で黒い影がいくつも舞い踊り、ぶつかり合っている様子が見て取れた。
どうも一体VS複数のような構図のようである。
「地上でも騒ぎが起きているようですが‥‥シーナ様、不死者の動きはどうですか?」
「変ですね‥‥全然動く気配がありません。火雷と思われるアンデッドが戦っているのは見えるのですが、その付近の不死者が援護に向かおうともしていないんです」
「あれでしょう。悪魔などというものは真っ当な生物ではありませんから、不死者が生者として認識しないのでは?」
御神楽澄華(ea6526)もまた異変に気付き、城下町で時折魔法が炸裂するのを確認して問いかける。
テレスコープで様子を探るシーナだが、言葉通り戦っているのは八雷神だけのようだ。
もし狩野幽路(ec4309)の当てずっぽうがその通りなのだとしたら、特別な命令が無い限り不死者は悪魔を襲おうとしないことになるし、この機に乗じようと突っ込んでも大量の不死者が冒険者にのみ牙をむくことになる。
「カミーユを連れて来なかったのは失敗だったかも知れないわね‥‥。彼女の能力なら、戦場近辺の不死者を退かすくらいわけないのに」
「いや、やっぱり連れて来ない方が正解だったよ。パッと見だけでも悪魔は八匹はいる。カミーユに下手に干渉させて立場を悪くさせると、最悪連中と協力して事に当たれとか上司のマンモンってやつに言われかねない」
「カミーユ嬢‥‥。私が契約したのはカミーユ嬢であって、『悪鬼』と言うくくりではない‥‥。しかし、そのカミーユ嬢が『悪鬼』というくくりに縛られて行動してしまった時‥‥私は‥‥私たちは‥‥」
南雲、鷹村、御神楽など、カミーユに縁の深い人物はその存在の有無について悩んでしまう。
敵対するわけではないとはいえ、悪魔を利用しようとする今回の作戦においてカミーユを戦列に加えてしまうと後々厄介なことになりそうな気がしたため、今日のところは不参加の方向性で頼んだのだ。
一戦力の参加、不参加がどんな波紋を起こすか分からない。
それが京都の現状であり、運命の流れと言えるのかも知れなかった。
「黒雷が落ちた!? みんな、議論は後にしましょうです! カミーユお姉ちゃんは今は居ない‥‥そういう選択したの。ならボクたちは、その中で全力で当たるしかありません!」
空中で戦っていた黒雷が悪魔の攻撃によって地面に叩き落され、悪魔勢もそれを追って地上に降り立っていく。
それを見た月詠は、自分の、ひいては仲間全員の迷いを断ち切ろうと白刃を抜いた。
その決意のこもった瞳を見て、冒険者たちは次々と得物を抜き、戦闘態勢に入る。
一丸となって戦う、八雷神狙いの奇襲作戦が今始まる―――!
●99%敵
「邪魔だ、退け!」
「こんなところで手間取っているわけには!」
城下町へと侵入した一行は、予想通り多数の怪骨や死人憑きといった不死者の歓迎を受けた。
城下町の人間は予め退避したとのことなので、この不死者たちは出雲方面からやってきた人々だろうか?
どちらにせよ、アンドリーや御神楽がなぎ倒しながら進んでいくものの、建物の影からいくらでも湧いて来そうな勢いで増援が現れるのだからきりが無い。
しかし‥‥
「不死者の流れが変わった‥‥? さてはイザナミが城から指揮でも始めたか。おい、なるべく建物の陰で戦うんだ」
「魔法は目立ちますから、封印しておいて正解でしたね。これでデビルに向かってくれるといいのですが」
琥龍とシーナが、遠くに見える不死者がこちらに向かわず、北東の方角に進んでいくのを見て直感する。
降りかかる火の粉は払う必要があるが、わざわざ目立って行動することは無いと、一行は派手は魔法や技は使わずに実力行使で不死者を倒していっていた。
不死者が向かったであろう北東は、黒雷が地面に落ちた方向。つまりは悪魔と八雷神の戦闘区域だ。
数の暴力で、重装備であろうと生傷を増やしていく冒険者たち。八雷神と出くわす前に体力を消耗したくないが‥‥。
と、そこへ‥‥!
「みぃ〜つけた。こそこそとかくれんぼかしら?」
「意外とは言わんぞ。私と君たちとの因縁は、あまりに根深いのだからな」
「イザナミ様に言われちゃしょうがねぇや。この不死身の甲羅茶話が相手してやるぜ!」
「ぁ〜‥‥。お前たち相手のほうが楽しめそうだ‥‥」
折雷が屋根の上に姿を現したかと思うと、正面から火雷、土雷が接近、鳴雷が北東の方角の角から出現する!
流石の冒険者も一度に四体もの八雷神と出くわすのは初めてであるし、八雷神側からしても半分が固まって戦うなど前代未聞のことであろう。
「いやはや、イザナミ様に言われて‥‥ですか。隠れるまでもなく我々のことはばればれだったようですなぁ」
「‥‥城の上から戦況を的確に把握する‥‥。流石、一軍の大将としても抜きん出ておられますね‥‥!」
島津と山王が軽口を叩く暇も無く、八雷神たちは攻撃を開始する。
付近の不死者はあらかた掃討したので、対八雷神に専念は出来るが‥‥!
「あら、随分素早いわね。満足させてもらえるのかしら!?」
「ふん‥‥どんな馬鹿力だろうと、当たらなければどうということはない!」
「お手伝いしましょう。撹乱程度ならこなせるはずですので」
「触れられれば千切られるっていうんなら、千切られる前に斬り伏せるだけなのです!」
折雷には南雲、島津、月詠。
見た目には巫女服と袴を着た軽装と言っていい女だが、その実態は刀すら素手でへし折る豪腕の黄泉人である。
手を覆う電撃を纏い、それを盾にして刀を弾く。
疾走の術で速度を増し、折雷の脇をすり抜けるように駆け抜ける島津。
それに一瞬気を取られたところに、島津の後ろに隠れて接近してきていた月詠が刀を振り上げる!
しかし、折雷の動作で『刀を掴まれる』と直感した月詠は、空中で身体を捻り、左足で折雷の右上腕を蹴り飛ばす!
「いい動きじゃない‥‥冒険者ぁ!」
「効かないっ! 南雲お姉ちゃん!」
「分かっている!」
体勢が崩れ、右側ががら空きになっている折雷に対し、南雲が素早く追撃をかける。
が、折雷は無理な体勢ながら左足を振り、地面に尻餅をついていた月詠を南雲に向かって蹴り飛ばす!
力が入れにくい体勢で蹴られたにも拘らず、月詠は南雲を巻き込んで通りの反対側の壁に叩きつけられる!
「おねんねしてる暇は無いわよぉ!」
「では、立ち上がる暇は私が作らせていただきます」
島津が壁を蹴り、スタンアタックで折雷の脳天を蹴りつける。
一瞬ふらついた折雷だったが、黄泉人は人と構造が違うのか気絶までには至らなかった。
「やれやれ‥‥はずれを引いたか。おまけが相手じゃなぁ」
「誰がおまけだっ!? この土雷様の恐ろしさを忘れたとは言わせないぜ!」
「俺の記憶に間違いがなければ、お前は死なないだけでやられてばかりだと思ったが?」
土雷には鷹村と琥龍。
電撃を帯びた槍は脅威ではあるが、鷹村なら余裕を持って回避できる。
琥龍のトルネードでの援護もあり、流れ的には鷹村たちが圧倒している。
しかし‥‥
「いてっ! くっそー、相当できるやつと見たぜっ!」
「私より強い奴はごまんと居るけどな‥‥。しかし、なんて耐久力だ。斬っても突いても効きやしないじゃないか!」
「それが特徴の奴だからな。俺たちはこいつの足止めに専念すればいい。倒そうと考えるとこっちが先にへばる」
腕が良くないとはいえ、他の八雷神の援護に回られても厄介だ。
二人はのらりくらりと時間をかけつつ、他の組が他の八雷神を討ち取ってくれることを祈った。
「兄から聞いている。八雷神の内、少なくともお前には情けをかける必要は無いとな」
「っはぁ! いいぞ‥‥全力でこい。そうでなけりゃ面白くない‥‥!」
「これはなかなかの見ものですね。あとで一服の画をしたためさせていただきましょう。題名は『八雷神堕つ その一』とでもしますか」
「首尾よく倒せれば‥‥ですが。しかし、あの口ぶり‥‥悪鬼勢と戦ったのに狙いをこちらに変えたということに‥‥」
鳴雷にはアンドリー、狩野、御神楽。
若い侍の姿だった鳴雷であったが、三人を見回して狩野の姿をコピーした。
軽装でありながら、凄まじい防御力と強大な攻撃力を持つ愛刀を持つ狩野。
その力は、パラディンであるアンドリーですら決定打を与えられないほど。
「ぬぅっ! 世にはまだまだ見知らぬ強豪がいるものだ。味方ならいざ知らず、敵に回るとなると‥‥!」
「いや、しがない絵描きなんですがね。私も自分と菊一文字が敵に回るとは思いませんでしたが」
腕そのもので言えば、狩野よりアンドリーが上だ。
しかし、総合力の話になると狩野が大きく上回ってしまう。
オーラマックスでの行動力増加も、パラスプリントでの瞬間移動も致命傷を誘発できない。
「私が仕掛けます! お二人は奴の隙を!」
ファイヤーバードの魔法で鳴雷に突っ込む御神楽。
当てるつもりは無く、近くで軌道変更して撹乱するための使い方のようだ。
だが‥‥!
「五月蝿い蝿だ‥‥」
「っ!?」
ぼぅ、と鳴雷の身体が炎に包まれ、御神楽を追って飛翔する。
背後から衝突され、御神楽は激しく地面に叩きつけられた!
「くぁっ‥‥!」
「っはっはっはぁ! どうせなら真っ正面からこいよ‥‥おいっ!」
隙をカバーするように、アンドリーと狩野が援護に入る。
一旦距離を取った鳴雷は、今度はアンドリーに姿を変えた。
「本当は折雷を相手にしたかったのですが‥‥仕方ありません。あなたを抑える人員も必要不可欠ですので」
「ごめんなさい。流石に前衛無しでこの人と戦うわけには行かなくて‥‥」
「喜んでいいのか微妙な線だな。まぁいい‥‥君にも一騎討ちを申し込みたいと思っていた!」
火雷には山王とシーナ。
骨の馬にまたがり、機動力もある火雷相手となると、後衛のシーナだけではとても抑えきれない。
土雷のように馬鹿げた耐久力があるわけではないので、充分倒せる候補なのだが‥‥?
「どうした冒険者! にらみ合っているだけでは私は倒せんぞ!」
「‥‥それはそちらも同じこと。あなたほどの武芸者を相手に無策で突っ込むほど俺は愚かではありません」
じりじりと円を描くように動く両者。
迂闊な行動が即負けに繋がる達人同士の戦いは、しばしばこういう膠着状態に陥る。
が。
「そこですっ!」
「なんとっ!?」
火雷が丁度山王を遮る立ち位置になった時、シーナが容赦なくアイスブリザードを叩き込んだ。
骸骨武者と骨馬だけに冷気が素通りし、山王にも多少ダメージが行ったが火雷に比べれば大したことはない。
「おのれ‥‥無粋な!」
「山王さんは一騎討ちを了承していません。あなたが勝手にそう思い込んだだけでしょう?」
「‥‥八雷神の一角‥‥打ち崩します!」
山王が一気に間合いを詰め、火雷の胸辺りを貫く!
相手が骸骨武者であることを考慮に入れ、背骨まで一気に差し込み、砕く!
「馬鹿なっ‥‥! き、君には、強い相手と戦いたいという気持ちは‥‥ないのか‥‥!?」
「‥‥個人の感情だけで動いていられないのです。残念ながら」
上半身だけが馬から落ち、動けなくなる火雷。
止めを刺すべく、山王が槍を構えた‥‥その時!
大音響と共に近くの民家が破壊され、五匹ばかりの何がしかの悪魔と、例の雷龍、黒雷が乱入してくる。
戦場が南側に移動してきたということなのだろうが、この混乱状態の中で冒険者たちは各々脱出。
火雷がどうなったのかは‥‥後になって聞かされることとなるだろう―――