【五行龍復活】その名、水の牙
|
■シリーズシナリオ
担当:西川一純
対応レベル:9〜15lv
難易度:難しい
成功報酬:4 G 50 C
参加人数:8人
サポート参加人数:4人
冒険期間:03月30日〜04月04日
リプレイ公開日:2006年04月07日
|
●オープニング
世に星の数ほど人がいて、それぞれに人生がある。
冒険者ギルドでは、今日も今日とて人々が交錯する―――
「派遣された陰陽師が全滅しました」
『ぶっ!?』
ある晴れた午後、京都冒険者ギルドの職員、西山一海は冷や汗を流しながら報告した。
同僚の虎覆面男‥‥大牙城はもちろん、たまたま来ていた京都の便利屋、藁木屋錬術も盛大に茶を吹いたのだった。
「ぜ、全滅ッ‥‥!? 12人の陰陽師が全滅ッ!? 3分保たずにかッ!?」
「行ったのは5人ですしもっと粘りました(汗)」
「まさか死んだのかね? 陰陽師が派遣されたと言うからには西北西の五行龍のことなのだろうが、そうなると非常にまずい展開になってしまうな‥‥」
「いえ、誰も死んではいません。ですが、ボロボロで再起不能(リタイヤ)一歩手前とのこと」
「相手の龍はッ!?」
「ほとんど無傷らしいですね。例によって再生能力も持っているようですので、回復しちゃうんでしょう。『水牙龍・氷雨(すいがりゅう・ひさめ)』と名乗り、話を聞かずにガブリと‥‥」
「気性の荒い龍か‥‥厄介だな」
「いえ、それがですね‥‥どうも陰陽師に反応したようなんです。一人二人ならまだしも、陰陽師の集団にやってこられたら五行龍はちょっと引くんじゃないでしょうか。実際問題、『やだやだやだぁーっ! もう絶対封印なんてされてやらないんだからな! 僕たちに構わないでよ! 陰陽師なんて大っ嫌いだぁぁぁ!』という発言があったそうです」
「子供かっ!? ‥‥とにかく、まずいことをしてくれた。陰陽寮は今回、どういう趣旨で依頼を出すのかね?」
「‥‥御推察のとおり、水牙龍・氷雨の撃破です。とは言っても殺す必要はなく、力で凹ませて大人しくさせようという算段らしいですね。気が立って話を聞いてくれそうにないので、強行措置だとか」
「むぅッ‥‥! 前回こちらを選んでいたら、などと言っても漢らしくないがッ‥‥! 恐らくどちらを選んでも正解で、どちらを選んでも間違いだったのであろうッ‥‥!」
「人生にもしもはありませんよ、大牙城殿。ただ前を向いて‥‥その時その時で最善を尽くすのみ」
「無事に事件が収束すればいいんですけど‥‥現段階じゃ行き先不明のままですね‥‥」
ヒトと龍との間柄。
怪しい雲行きのそれをあざ笑うかのように、午後の晴天はただただ青かったという―――
●リプレイ本文
●水牙龍・氷雨
「他の龍さん達はちゃんと話を聞いてくれて対応してくれたのに。貴方だけです、我侭言って話も聞かないでただ暴れるなんて、みっともないと思わないんですか? 水の龍は頭が悪いって伝承は本当だったんですね」
『うるさいうるさいうるさぁぁぁいっ! お前たちなんかに何がわかるんだよぉっ!』
ガイアス・タンベル(ea7780)の挑発に乗り、全長10メートルを越える蛟の身体が湖を出る。
一同はガイアスがダークで張った結界を目指し、一旦後退しようとするが‥‥。
『逃がさないぞ! 刃鋼お姉ちゃんに止められてるから殺しはしないけど、虫の息程度にはなってもらうんだからなっ!』
「うわわっ、挑発に乗りすぎだよー!? あんなのに噛まれたら、ひとたまりもないしー!」
「よ、よかった‥‥変装して来て本当によかった。氷雨様に真っ先に狙われたらと思うと、胆の冷える思いがします(汗)」
一行は、聞き込みで水牙龍・氷雨の居る湖を特定し、彼に接触する前にオーラパワーやら結界やらフレイムエリベイションやら、戦闘準備をきっちり行った。
湖の畔に社も発見したが、調査する前に氷雨が出てきてしまったので未調査の状態。
そこに、話し合いをしようとするのもそこそこに、ガイアスが挑発まがいの台詞を言ったものだから現状に至る。
まぁ例え挑発がなかったとしても、気の立っていた氷雨が一行を攻撃してくるのは時間の問題だっただろうが。
風月明日菜(ea8212)や拍手阿義流(eb1795)も裸足で逃げ出すかのような、氷雨の迫力。
外見は恐いが声は少年っぽいというアンバランスさも、返って何をやらかすか分からないから恐い。
「くぅっ! で、でかいくせに結構速いじゃないか! 鍛えてるな!」
「あ、あれをもらったら本気で命がなさそうでござるな‥‥体当たりだけでもかなりの衝撃のようでござる(滝汗)」
半ば弾き飛ばされるように攻撃を受け流した日比岐鼓太郎(eb1277)。
その横で、高威力版のオーラソード二刀流を発動している七枷伏姫(eb0487)も戦々恐々である。
そもそも蛟というのはあまり湖から出ないもののようだが‥‥。
「ちっ‥‥噛まれるなよ! 飲み込まれはしないかもしれないが、噛み付かれたままになると危険だ!」
「そ、そうありたいものですね。しかし、結界内におびき寄せるより、包囲した方が得策なのでは‥‥」
「その方がいいかもしれないな。見ろ、氷雨は一定距離以上湖から離れようとしていない。結界も悪い発想ではなかったが、向こうの習性というか特色と合わせて考えると望み薄か‥‥」
戦闘中になると口調や性格が変わる南雲紫(eb2483)と、ハンマー片手のナイト、ミラ・ダイモス(eb2064)。
ある程度おびき出したところで急に氷雨が止まり、悔しそうにしながら湖に戻っていく姿を確認した一行は南雲とミラを中心として集合し、次の手立てを考える。
「拍手様‥‥アグラベイションのスクロール等で氷雨様の動きを封じることは出来ないのでしょうか?」
「無茶言わないでください。走りながら逃げながらではスクロールなんてとても‥‥」
御神楽澄華(ea6526)の質問に、拍手はお手上げといった仕草をする。
道中風月が言っていた、『倒さずに、とにかく落ち着かせちゃえば良いんだよねー♪ 頑張ろー♪』という台詞が、実際に氷雨に会った後では非常に無理っぽく思えてくる。
「こうなれば水辺で戦うしかないでござろう。向こうが出てこないのでは、戦うも何もないでござる」
「す、すいません‥‥ダークが役に立たなくて」
「いえ、この場合仕方ないと思います。それより、七枷さんの仰るとおり、水辺での戦闘を考慮すべきでしょう」
「けどさミラ、俺は水遁の術使ってるから大丈夫だけど、他の皆は湖に引きずり込まれたら致命傷だぞ?」
「ならばなるべく氷雨を湖から離し、そこを包囲して攻撃。死なない程度に痛めつけて大人しくさせればいい。行くぞ」
「な、南雲お姉ちゃん過激ー‥‥というか恐いよー(汗)」
「しかし、仰っていることは間違いではありません。痛めつけるという言い方は少々気が引けますが、氷雨様がお話をしてくださる気になるくらいには頑張りましょう」
御神楽の台詞に全員が頷き、一同は再び氷雨の居る湖を目指す―――
●五行龍の力
「くっ‥‥拙者の飛燕十字斬が殆ど通用していないでござる!」
「サンレーザーも同様です! ファイヤートラップは踏まれなければ意味がありませんし‥‥!」
「ボクの弓も致命傷には程遠いです。シューティングPAEXにすると、避けられる可能性がありますし‥‥」
効果時間が心配な魔法をかけ直し、氷雨との二度目の交戦を開始する8人。
が、遠距離からの攻撃ではよくて軽傷‥‥それもちょっと様子をみたりすると再生してしまう。
しかも、迂闊に接近戦を挑もうものなら‥‥。
「あぐっ‥‥か、はっ‥‥‥‥!?」
「風月! くっ、迂闊な‥‥受け流しの余力を残しておかないからだぞ!」
「の、飲み込まれはしないでしょうけれど‥‥あのままでは、氷雨様の牙が風月様の身体に食い込み続けます!」
「それ以前に死ぬぞ! 明日菜のやつ瀕死じゃないか!?」
ダブルアタックで氷雨を攻撃し、すぐさま離れようとした風月。
通常の蛟であれば有効であったかもしれないが‥‥相手は五行龍と呼ばれる強力な個体。
カウンターアタックで噛み付かれた風月は、華奢なことが災いしてか一撃で瀕死まで持っていかれ‥‥あと少し氷雨が噛む力を強めた時点で死亡する可能性が高い。
『ええっ、この娘死んじゃうの!? それは困るから、返すね!』
噛んだ氷雨の方が慌て、ゆっくりと明日菜を地面に降ろす。
拍手とミラがすばやく風月を連れて後退し、彼女が携帯していたヒーリングポーションを使ってなんとか危機は脱する。
が、この傷ではもう戦闘には参加しない方がいいだろう。
「やってくれたな。やりすぎは禁物だと思っていたが‥‥きついお仕置きが必要か」
『ふーんだ! おまえたちもこの前来た陰陽師たちと一緒だぁ! 僕をいじめて、また封印するつもりなんだろ! いっつもそうだ‥‥人間なんて、勝手にこの国を自分たちの物だって決め付けて、僕たちをいじめる! ちょっとくらい痛い目見た方がいいんだい! 後ろの‥‥』
後ろを一度も振り返っていないのに、正確に背後の人物に攻撃を仕掛ける氷雨。
「なっ‥‥バックアタックか!?」
『忍者もだよ! このまま湖に沈めてやるー!』
背後から攻撃を加えた日比岐にカウンターで噛み付き、彼を咥えたまま湖の方へ!
「氷雨様‥‥流石にここまでされては見過ごせません。日比岐様をお放しください‥‥!」
「我侭なガキは嫌いだね!」
御神楽のスマッシュ、南雲のシュライク(霊刀オロチ)を受け、流石の氷雨も抜き差しならぬ状況に追い込まれる。
一応再生し、全力で突撃することによって湖には逃げこめたが、もうボロボロである。
『痛い‥‥痛い、痛いぃぃ‥‥! 酷いよ‥‥僕たちはただ生きていたいだけなのに‥‥!』
『な、なぁ‥‥痛い思いさせたのは、悪かった‥‥。けどさ、おまえも‥‥嫌な思い出のある格好の連中に、攻撃しかけたり、風月を殺しかけたり‥‥ちょっとやりすぎたってところは、あるんじゃないか? よかったらさ、お互い様ってことで‥‥友達にならないか?』
カウンターで繰り出された氷雨の牙で、日比岐は重傷。
それでもなお、氷雨を諭そうと必死である。
『あれ? 忍者さん、水中で息できるんだ?』
『鍛えてます(ちょっと辛そうにしゅっ)』
『‥‥わかったよ。友達になるかどうかはともかく、今日来た人たちに謝る‥‥』
『よし、いい子だ‥‥。今欲しいんだよね‥‥君の友情が』
湖から姿を現した氷雨は、再生に全力を注いで大分回復した。
日比岐も水際に降ろし、ようやく一同は話し合いを出来る状態になったのであった―――
●これから
『お・ん・みょ・う・じぃ〜〜〜〜〜?』
「き、牙を光らせないでください。大丈夫ですよ、私は何もいたしませんから!」
「陰陽師嫌いは相変わらずなのね。まぁ、お互い無事で何よりだわ」
「一番手傷を負わせたの、南雲さんと御神楽さんじゃなかったっけー?」
「あ、あの場合は致し方なかったわけで‥‥私は一応、加減はしましたよ?」
「あら、それじゃ私は手加減しなかったっていうのかしら?(微笑)」
「南雲殿、いじわるはその辺にしておくでござるよ。それより氷雨殿、これからどうするつもりでござるか? 拙者としては、ここで大人しく暮らしてもらうのが一番だと思うのでござるが‥‥」
『‥‥いいよ。『それで生きていける』なら』
一行がお土産として持ってきた野菜や果物を食べるのを止め、氷雨は声のトーンを落として言う。
『言っとくけど、僕が前居た場所でも別に暴れたわけじゃないんだからね。刃鋼お姉ちゃんや他のみんなに会ったてきたなら、嫌ってほど聞いたかもしれないけど‥‥僕たちは、ただその場所に居ることさえ許されなかったんだ。きっとまた‥‥ヒトは僕たちをいじめに来るよ』
「そんなことはない‥‥って言ってやりたいのは山々だけどなぁ‥‥」
「僕たちは仲良く出来ても、他の人は‥‥というのがネックですよね‥‥」
「氷雨様‥‥そして他の五行竜の方々が無害であるということを知らしめることは出来ないのでしょうか‥‥」
日比岐、ガイアス、ミラも頭を悩ます。
ただ敵を倒せばいいというわけではない、五行龍に関わる依頼。
五行鎮禍陣無き今‥‥事態を好転させるために必要なのは、いったい何なのであろうか―――