【京都勾玉怪盗記】狙われた平良坂
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■シリーズシナリオ
担当:西川一純
対応レベル:11〜17lv
難易度:難しい
成功報酬:5 G 20 C
参加人数:8人
サポート参加人数:1人
冒険期間:10月20日〜10月25日
リプレイ公開日:2006年10月28日
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●オープニング
世に星の数ほど人がいて、それぞれに人生がある。
冒険者ギルドでは、今日も今日とて人々が交錯する―――
「ここでアルトさんにお聞きしたいんですが‥‥」
「‥‥何よ、突然」
ある日の冒険者ギルド。
職員の西山一海は、勇気を出して目の前の女性‥‥アルトノワール・ブランシュタッドに質問してみた。
勿論、告白とか色気のある話ではなく‥‥聞くほうは内心戦々恐々である。
「前回の、勾玉を狙う忍者集団とのやりとりは、一体どういうことでしょう?」
「‥‥どうも何も報告されたとおりでしょ」
「いや、っていうかですね、相手が守る側の方に潜入してるなんて聞いてません! 私には、依頼内容を出来るだけ正確に参加者の方々に伝える義務があるんですが!?」
「‥‥馬鹿? 相手は忍者集団なのよ。変装・潜入・隠密行動は得意分野でしょ。そんなの言わなくても警戒なさいな」
「うぐぐっ‥‥! し、しかしおかしいですよ。潜入したならさっさと勾玉の確認すればいいものを、なんでまた結構の日取りを決めたりするんでしょうか。アルトさんたちに嗅ぎ付けられて、邪魔されるのに」
「‥‥さぁ。捕まえたやつにでも聞けば?」
「もう死んでるって知ってるでしょーが!? 連中、情報を遮断するためには仲間を消すことも厭わないんですよ!?」
「‥‥それが普通でしょ。頭悪いわね」
「うーがー! 駄目だこの人、話があわなーい!」
「‥‥何を今更」
閑話休題。
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ‥‥とりあえず話を進めましょう。次に狙われるのはどこです?」
「‥‥名家E(仮称)と、平良坂のとこよ」
「ほー。じゃあ今回は名家Eに集中できそうですね」
「‥‥そう? あえて平良坂のとこに行ってみるのも面白そうなのに」
「向こうにはビーフ特選隊やら果樹王組とか色々いるじゃありませんか。そもそも屋敷内に入れてくれるとは思えません」
「‥‥まぁね。ま、好きになさいな」
「でも、本当に平良坂さん以外に、京都内の名家で天地八聖珠を持ってる人なんているんですかね‥‥?」
「‥‥いるんでしょ。だから連中だって探してるのよ」
「いっそ懸賞金かけて譲ってもらうとか、情報提供を呼びかけたらどうでしょうか?」
「‥‥お金出せるといいわね」
今回、勾玉を持つことが確定している平良坂冷凍がとうとう狙われるという。
静かに、そして分かりにくくも確実に進行している勾玉事件。
ひょっとしたら今回は、大きな転機になるかも知れない―――
●リプレイ本文
●平良坂宅
「ほっほっほ‥‥そうですか。悲しみですか。それは恐いですね」
「真面目に聞く気はないということかのう? わらわたちは解読結果を伝えているだけなのじゃが」
「いえいえ、ちゃんと聞いていますよ。しかしですね‥‥それの何が悪いと? 何かを手に入れるためには何かを犠牲にしなければならないものでしょう。物が欲しければお金を、知識を得たければ時間を、力が欲しければ体力等を‥‥と、世の中等価交換なのですよ。何の危険性もなしに願いを叶えようなんて、それこそおこがましいというものです」
「なるほど‥‥一理も二理もある。しかし、その悲しみというものが誰に向けれるものか分かっていないのだぞ。自身か‥‥はたまた近しい者か。それらが危険に晒されるのも構わんと?」
「なるほど‥‥他の方々に、ですか。それは考えませんでしたねぇ」
「‥‥そんな薄ら笑いをしておいて、その言葉を信じろと言うのかのう? やはりどこまで行っても平行線じゃの‥‥」
三月天音(ea2144)と葉隠紫辰(ea2438)は、狙われる二つの名家のうち、平良坂冷凍の家にやってきていた。
門前払いを喰らうことを覚悟で来たのだが、平良坂は意外とあっさり二人を招き入れ、面会に応じた。
が、予想通りと言うかなんというか、平良坂は二人の話を聞いてもいつもの笑いを絶やさない。
「‥‥この際だから正直に言ってしまおう。敵の敵は味方、という言葉があるが‥‥俺はそうは思っていない。目的が明らかでないという点では平良坂殿も同じだが、素性の知れぬ第3者に勾玉が渡るとなれば、この争い、泥沼となるだろう。ここは是非にも黒装束たちの魔の手を断ち切るべきだ」
「それについてはご安心を。私の屋敷にはビーフ特選隊の皆さんに加え、蛇盆さん、果樹王さん、辺時板さん、弓囲さん等等の実力者が揃っています。お二人の手を煩わせるまでもありません」
「しかし、経験がある人間や守る人間は少しでも多い方がいいのではないかのう?」
「ほっほっほ‥‥三月さん、あなたが仰ったんですよ?『勾玉に関する活動をして以降に雇った人間はしばらく暇を出すなどして今回の一件から遠ざけた方がいい』と。この話を持ってきたあなた方が一番怪しいし、信用なりません。というより、あなた方は本当にご本人ですか?」
「‥‥話にならん。道理ではあるが、これでは取り付く島がない。最早語ることはなし」
「ほっほっほ‥‥そういうことです。情報はありがたくいただきますが、それ以上のご助力は結構です。お引取りを」
茶にも手をつけずに席を立つ三月と葉隠。
しかし、その背中に平良坂が声をかけた。
「そうそう‥‥先ほども申し上げましたが、世の中は等価交換です。私からも有益な情報を差し上げましょう」
その言葉は、わりと意外なものだった。
だから、二人も思わず足を止め‥‥我が耳を疑った。
「私が持っている勾玉は合計4つになりました。そして、この京都内の名家のどこかにもう一つあるとか―――」
●名家E
さて、こちらは武家の家系である名家E。
鋼蒼牙(ea3167)、蒼眞龍之介(ea7029)、昏倒勇花(ea9275)の陳情を受け、名家Eは協力を喜んで受け入れた。
6人はまず、各々合言葉を決め、食事も水分も自分たちで用意した物のみに徹底した。
「やれやれ、忍者とは厄介なものだな。ま、後はやるしかないさ」
「直前、もしくは少し前より新たに雇った使用人、又は出入りの店の者で変わった者に暫く出入りをやめさせていただいた」
「京都にいるのに味気ない食事だけど、仕方ないわね‥‥。心配の目は予め摘んでおきたいもの」
そして、バーク・ダンロック(ea7871)は持ち前の絵の技術を活かし、屋敷内の風景を絵にしていた。
主に木遁の術を警戒してのことである。
「なかなかいい絵が描けてるぜ。こいつは意外と創作意欲をそそられる庭だな!」
「へぇ、上手いじゃなぁい。結構値打ち物になるかもねぇ」
「これなら異変があればすぐにわかりますね。しかし‥‥あの忍者達は冷凍氏の屋敷に侵入して、無事に逃げられるのでしょうかね。敵ながら心配になるといいますか、哀れといいますか‥‥」
鳳刹那(ea0299)、セイロム・デイバック(ea5564)はバークの描いた絵を眺めながらも、警戒は怠らない。
黒装束たちが動くのは夜だと決まっているようだが、日の高い今でも油断はならないのである。
決行の予定日は今日‥‥つまりは今夜が勝負というわけである。
果たして、こちらには何人来るのか。そして、やつらを捕らえることができるのであろうか―――
そして日は暮れ‥‥辺りは夕闇に包まれる。
しかし篝火が絶えず炊かれているので、庭も煌々と照らし出されていた。
「皆、合言葉の確認だ。セイロム君‥‥『ナイト』」
「はい、『桂馬』です。鋼さん、『アイアン』」
「『鉄鉱』。次、バーク。『絵師』」
「おう、『掛け軸』だぜ。昏倒、『リボン』だ」
「『乙女』よ。鳳さん、『武道』」
「はいはぁい、『グレープ』。最後に蒼眞さん、『龍』よぉ」
「あぁ‥‥『天』。仲間内に敵は紛れていないようだ」
6人は勾玉の安置してある部屋で黒装束を待ち構えている。
庭へ面している障子は閉じ、軽い密室状態を作り上げており、いきなり勾玉を掻っ攫われることもなかろう。
‥‥しかし、敵も然る者と言うべきか。
冒険者の同行は、向こうも調べていたのである!
「‥‥来るぞ!」
鋼の台詞の直後、がたがたんと乱暴に障子を蹴り倒し、3人組の黒装束が進入してくる!
「今回は確認すらもさせてあげないわ‥‥!」
「足をやれば逃げられる確率を減らせるわねぇ!」
しかし流石に6人全員がこの場にいるとは思わなかったのか、黒装束たちも驚きを隠せない。
一人が昏倒の腕に捕まりホールドされたが、微塵隠れで脱出(昏倒はかすり傷)。
鳳が足を狙った攻撃を敢行し、黒装束にヒットさせる。
残りの二人は無茶は禁物と思ったのか、すぐに脱出にかかった。
「思考の切り替えが速いですね。しかし、そういつもいつも上手くいきませんよ!」
「いつまでも足踏みはしていられないのだよ! 龍牙!」
「『しんぷるいずべすと』ってな。作戦は一つ‥‥『鋼抉咬』だけだ!」
今回も軽装にしたセイロムが駆け出し、鳳が足にダメージを与えた黒装束を追う。
蒼眞と鋼は、ソニックブームとオーラショットで遠距離攻撃!
どうやら微塵隠れを使えるのは一人だけ‥‥そして平良坂の方に4人向かった計算か。
「いけます! 支援攻撃に感謝の意を!」
「微塵隠れの人は諦めた方がいいわ! 欲張るとロクなことがないからね!」
「逃がさない! そして死なせない! 鳳刹那は女の子ぉぉぉ!」
セイロムがチャージング+スマッシュで攻撃し、黒装束の一人を一気に行動不能にもっていく。
後方から鋼と蒼眞の援護が続く中、昏倒と鳳がもう一人の黒装束に接近戦を挑んだ。
微塵隠れが使える黒装束は他の二人に見向きもせずにとっとと逃げたが、今回は二人捕らえられるか!?
しかし、懐から円筒状の物を取り出した黒装束は、それから煙幕を発生させて、6人の視界を数秒晦ます。
そして煙が晴れた後‥‥黒装束の姿はなかった。
「逃がした‥‥? でも変ね‥‥遠ざかった気配はなかったのだけど‥‥(ため息)」
「忍術の中には音を消す術もあるらしいから、それじゃないのか?」
「それは音だけでしょぉ? 遠ざかる気配そのものがなかったんだってば」
「微塵隠れなら、少なかろうとお二人にダメージがあるはずですし‥‥最初から使ってますよね?」
「‥‥空蝉の術か? しかし、何と入れ替わったというのか‥‥」
「チッチッチ‥‥みんな、ちょっとこっちに来てくれ」
突如、スピードの関係で遅れを取っていたバークが皆を集める。
何事かと近寄った5人だが、バークはここにいろというジェスチャーをして、自分だけ庭を進む。
そして、充分な距離であることを確認すると‥‥。
「はぁーーーーっ!」
『!?』
オーラアルファー(専門)を発動!
同時に、庭の木だと思っていたものが一本、軽々と吹き飛ぶ!
「バーロー! 木遁なんざ予測済みだってんだ!」
絵と庭の現状を見比べて、一本余計な木があると気付いたのだ。
もちろん、木遁を見破られた黒装束がこれ以上逃げられるわけもなく‥‥一行は二人捕縛し、連中の目的も挫いたのである。
残念ながら、この家の勾玉は天地八聖珠ではなかったが‥‥この勝ちは大きいはずだ。
果たして、捕まえた忍者からどのような情報が得られるのであろうか―――
●ちなみに
平良坂の方に向かった4人の黒装束は、ビーフ特選隊たちの抵抗に会い、勾玉を奪えずに退却。
しかも微塵隠れが使える人間が二人いたにもかかわらず、たった一人しか脱出できず‥‥三人が死亡したという。
平良坂曰く、
『ほっほっほ‥‥手加減して捕まえられるような相手ではないと伺いましたのでね。みなさんには殺していただくつもりでやってくださいと申しましたら、本当に死んでしまいましたよ』
とのことである。
残りの黒装束は3人‥‥いずれも微塵隠れを使える難敵だ。
こんな状況になってなお、連中は勾玉を求めるのであろうか―――?