【京都勾玉怪盗記】黒装束の正体
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■シリーズシナリオ
担当:西川一純
対応レベル:10〜16lv
難易度:難しい
成功報酬:4 G 84 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:11月04日〜11月09日
リプレイ公開日:2006年11月12日
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●オープニング
世に星の数ほど人がいて、それぞれに人生がある。
冒険者ギルドでは、今日も今日とて人々が交錯する―――
「さて、前回の攻防で二人の黒装束を捕まえることに成功したわけです。残念ながら平良坂さんのほうでは全員手討ちという形なので、情報は引き出せなかったようで‥‥」
「そして我々で話を聞いた結果‥‥彼らは『百面衆』と名乗るはぐれ忍者集団で、決まった主に仕えず、金さえもらえればなんでもやり、誰にでも協力することで生きてきたとか」
「むぅッ‥‥私もギルドの仕事をして長いが、聞いたことがなかったがなッ! 冒険者の時分でもだッ!」
京都と冒険者ギルド、いつものスペース。
ギルド職員、西山一海。
何でも屋、藁木屋錬術。
ギルド職員、大牙城と、顔ぶれは見慣れたものである。
勾玉云々の事件は大きな転機を迎えており‥‥敵を捕縛したことで新たな情報が流れてきたのだ。
「ちなみに、百面衆は自称少数精鋭でして、9人で全員だそうなんです。つまり、残っている3人だけを警戒すればいいということですかね。増援はありません」
「しかし、厄介なことに3人全員が微塵隠れを使えるらしくてね‥‥どう対処したものか、正直分からないのですよ」
「して、どうのようにして口を割らせたのかなッ!? 相手は玄人‥‥生半可な責苦では吐かなかった筈ッ!」
「そこはそれ‥‥玄人であるが故に損得勘定が速いようで、金であっさり転んでくれましたぞ。少々下世話で申し訳ないが」
「‥‥前から思ってたんですけど、藁木屋さんたちのお仕事って儲かるんですか? 随分お金もってるみたいですけど」
「ピンからキリまで‥‥と言っておくよ。ちなみに、彼らに勾玉の確認・及び奪取を命じたのは身元不明の武士だったらしい。前金で200G積まれたし、断る理由がなかったとか」
「また大金だなッ!? しかし、依頼人のことを調べぬのも玄人の約束事というわけかッ!」
「そういうことです。相変わらず黒幕の正体は不明‥‥目的も不明のまま」
そして、捕まえた黒装束が言うには、残りの仲間たちは人数が減った以上2箇所に同時に潜入することはやめ、一箇所に集中するだろうとのこと。
結構の日取りは例の依頼人である武士が決めて連絡してくるらしく、規則性は見当たらない。
そして、今回狙われるのは名家Fか名家G(共に仮称)である。
「候補地が2箇所なのは変わらないんですか!?」
「仕方ないだろう、我々にだって調査の限界がある。これでも帳簿の名家を片っ端から当たって勾玉を見せて貰っているんだ。時には叩き出され、時には茶を出され、当初から動いていたさ」
「ほうッ! して、成果はッ!?」
「平良坂殿の言が本当であれば、この名家Fか名家Gのどちらかに天地八聖珠があると思われます。他の候補は調べつくしました」
残るは高速微塵隠れを使える黒装束が3人‥‥そして、どちらの名家に来るのかも不明。
果たして、身元不明の武士とは誰か? その目的は?
勾玉の行方と事件の顛末は、今、大きく動こうとしていた―――
●リプレイ本文
●名家F
「くっ、なんなんですかねぇ、この人たちは! いかにも『お金で雇われました』って雰囲気ですよぉ!」
「あーあ、来ないでくれると面倒が無くてよかったんだがな」
京都某所、名家F(仮称)。
公家の家系であるこの家の護衛に来たのは、鳳刹那(ea0299)、鋼蒼牙(ea3167)を初めとする4人。
準備万端整えて百面衆を待ち構えており、飲食物への注意、合言葉の徹底など、密室を作り出すことこそ難儀していたが、ほぼ完璧な下地作りをしていた。
が、家主の好意で見せてもらった勾玉は偽物であり‥‥あまつさえ、屋敷に押し入ってきたのは百面衆の3人ではなく、野党紛いの狼藉者が多数だったのである。
「鋼君の懸念が的中したか。敵が百面衆だけならば問題ないとは確かなことだ」
「しかし、これは好機とも言える。こいつらを全員打ち倒し、依頼人の名を吐かせよう‥‥!」
蒼眞龍之介(ea7029)、葉隠紫辰(ea2438)も襲い掛かる狼藉者たちを切り伏せている。
篝火が焚かれた公家屋敷‥‥夜の闇をも切り裂くように、壮絶な戦闘が行われていた。
「せっかく用意したんですからねぇ、あなたたちには勿体無いけど、喰らいなさぁい!」
敵の数はざっと30人。それに引き換え、こちらは4人。
少しでも数の不利を埋めるため、鳳は卵の中身を取り出した殻の中に小麦粉を仕込んだものを投げつけたりもしている。
これはこれで、数人の視界を遮る事が出来るものであった。
「ふん‥‥この程度の腕で俺たちに挑むとは笑止千万。百面衆には遠く及ばん」
「まったくだ。おいおい、魔法を使う必要もないじゃないか‥‥楽は楽だが、手応えがなさ過ぎるな」
所詮はごろつきの域を出ないのか、狼藉者たちはどんどん数を減らしていく。
中には少しばかりできる者もいたが、そこはそれ‥‥手練であるこの4人には全く通用しない。
「何者の指示かは知らないが‥‥天龍に牙を向けばどうなるか、身を以って知ってもらおう。恨み言は君たちの黒幕にな」
「爽快ですねぇ! 百面衆の人たちと違って、真っ正直に戦ってくれるからやりやすいですわぁ!」
4人の強さは、はっきり言って狼藉者たちの想像を遥かに超えていた。
彼らは依頼人から『ある程度の邪魔はあるかもしれないが、気にせず勾玉を奪うことに専念しろ』と言われただけなのだ。
当然、ヤバイと思って逃げ出す者も少なくないが‥‥。
「おっと、逃がすか! 俺の闘気は日本一ィィィ、ってか」
「家人を探しても無駄だ。念のために俺たちの後ろにある部屋に集まってもらっている。人質などと言う手段を取りたければ、我らを突破することだな」
鋼のオーラショットを背後からくらい、もんどりうって倒れる者が一名。
葉隠のスタンアタックで、障子を開けて人質を探していた二人が倒れ伏す。
あれよあれよと言う間に、残るは後一人となってしまった。
「ば、化け物かこいつら‥‥!」
「では聞かせてもらおう。君たちにこの襲撃を命じたのは誰だ? 百面衆を操っていた武家か」
「そ、そんなこと知らねぇよ! ただ、武家だってことは確かだ。なんか、どうしても手が足りねぇからお前らはこの家を担当しろって言われただけなんだ! 本当だよ!」
どうやら性根も芯までごろつき。
有利不利であっさり喋る辺り、素人としか言いようがなかった。
蒼眞に刀を突きつけられ、すでに抵抗する気配はない。
「け、けどよ、ダンナ方みたく強そうにゃ見えなかったぜ!? なんつーか、小汚くて貧乏臭かったんだよ! でも銭はしっかり前金でくれたから、文句はなかったけどよ」
「ほーう。そりゃ面白い」
「何がですかぁ?」
「ンな貧乏臭そうな武家が、なんで百面衆やらこいつらやらを雇えるだけの金があるのか。つまり、黒幕はさらに別にいて、その武家はつなぎの役かもしれないってことさ」
「なるほど、考え得るな。しかし、何故そんな真似をする必要がある?」
「‥‥真の黒幕は、そう簡単に身元がわれては困る人物ということだろう。どこかの大名か‥‥あるいは‥‥」
蒼眞は、ふとある筋書きが頭をよぎった。
そして鋼を見てみると、『あんたもそう思うかい?』という顔でこちらを見ているではないか。
「被害者が必ずしも被害者とは限らないってことだよな。ま、もうしばらくしたらわかるだろ」
「ご納得いただけたようで! じゃ、あっしはこれで‥‥」
がしっ!
狼藉者の最後の一人がこそこそ逃げ出そうとしたので、鳳がその肩をがっしりと掴む。
「どこに行くつもりですかねぇ? あなた方の行くべきところはぁ‥‥新撰組の屯所辺りですよぉ!」
男に鳳の鳥爪撃が直撃し、夜の闇に絶叫が響いたのであった―――
●名家G
さて、こちらは名家F。
名家Gに百面衆がやってこなかったということは、当然こちらにやってくることになる。
そして‥‥。
「間違いない、本物じゃな。この透き通り具合と文字‥‥藁木屋殿に預かってもらっているものと告示しているのじゃ」
「はー、綺麗ですねー。透き通った青に地の文字‥‥これはそう簡単には真似できそうにないですー」
そう、この屋敷に伝わる勾玉こそ、本物の天地八聖珠の一つ。
平良坂冷凍の言葉が真実であるなら、7つ目ということになる。
三月天音(ea2144)、井伊貴政(ea8384)の二人は、屋敷の主人に貸してもらった蔵の中で待機中。
依頼自体には初参加とはいえ、凄腕の冒険者兼料理人である井伊が勾玉を所持する形で守っていた。
すでに何度も百面衆とやりあってきた一行のことはすでに有名で、屋敷の主人もかなり好意的だったのだ。
「しかし、勾玉が本物であったのはいいのですが、無事守り切ることが出来たとした場合‥‥あれはどうなるのでしょうかね? 家宝をそう易々と譲ってくれることは無いでしょうし」
「一先ず百面衆の連中をとっ捕まえて、勾玉を守らねぇと話にならないだろ。そのためにあれだけの荷物も運び出したんだ‥‥あの蔵を最終決戦場にするつもりでいくぜ!」
セイロム・デイバック(ea5564)とバーク・ダンロック(ea7871)は蔵の入口を固める形で警護。
すでに4人の手で密室状態となっている蔵は、最後にして最高の罠である。
合言葉、飲食物を徹底、なるべく他人と接触を避け、蔵の中の物を運び出して使わせてもらう。
無論、最後の手段は家人の中に最近奉公しだした者がいないことを確認してのこと。
やがて‥‥篝火が焚かれた屋敷の外れ。
4人がいる蔵の辺りに一陣の風が吹き、3人の黒装束が姿を現す。
「よぅ、待ってたぜ。流石のお前らも今回ばかりは確認せずに逃げるってわけにゃいかねぇだろ?」
「残りのあなた方が使える術は、微塵隠れのほかに湖心の術、春花の術、疾走の術、開錠の術、竜巻の術。お仲間に聞いたので間違いはないと思いますが?」
バークやセイロムの言葉に動揺するでもなく、百面衆の3人は一気に駆け出してくる!
「セイロム、作戦通りいくぜ!」
「信条に反するので、できれば遠慮したいんですけどね‥‥(汗)」
まずはセイロムが突っ込み、顔から真っ向両断するつもりで斬りかかる。
まぁ流石に全員が微塵隠れを修得しているだけあって、当たりはしなかったのだが‥‥後詰にはバークが!
しかし、彼のオーラアルファー(専門)が発動した瞬間、二人の百面衆は微塵隠れで離脱したが、一人がダメージ覚悟で竜巻の術(初級)を発動、バークを空中へ巻き上げる。
「ちぃっ! けどよ、この俺がこんなもんで―――」
鉄壁の防御能力を誇るバークには、術でもらったダメージは殆どない。
が、しかし。続けてかけられた春花の術は話が別だ‥‥!
「がっ‥‥く、くそっ、これか‥‥よ‥‥!」
「バークさん! ならば、一撃必殺に‥‥かける!」
チャージング+スマッシュで斬りかかるセイロム。
が、魔法で準備をしていなかったのが災いし、春花の術を使われてしまい‥‥。
「そ、そん‥‥な‥‥!」
その場に倒れ伏してしまったバークとセイロムを見下ろし、百面衆は蔵の入口へ急ぐ。
そして、扉のすぐ前まで来た時。
ぼんっ!
予め三月が仕掛けておいたファイヤートラップにひっかかり、二人が中傷。
しかしそれでも歩を止めない辺り、彼らもプロだ。
中には、三月と井伊が百面衆を待ち構えている‥‥!
「外の先輩方は突破されちゃいましたかー。しかし、僕たちはそうはいきませんよー」
「おぬしたちが‥‥いや、おぬしたちの黒幕が欲しがっておる勾玉はここにあるぞ。どうやらお目当ての物らしいがのぅ」
それを聞き、わずかに百面衆が殺気立つ。
結構な犠牲を払っている以上、プロとしてはなんとしても目的を達成しないと沽券に関わるのだろう。
最初に動いたのは三月。
荷物がないとはいえ、蔵の中で火の魔法を使うわけにはいかないので、鞭と短刀での接近戦!
あまり格闘の得意でない三月の攻撃さえ、忍者たちは術を使わないと避けるのが危なっかしい。
連中は蔵のことなど知ったことではないので、微塵隠れを使うのにも躊躇がない!
「これは噂以上に厄介ですねー。しかし、それだけに惜しかったですねー」
井伊の小太刀での攻撃は、普通なら百面衆は避けられる道理がない。
微塵隠れでなんとか避け続け、丁度全員が動ききったところに!
「二人とも、今じゃ! まさか本当に寝てはおらんじゃろうな!」
『!?』
なんと、寝ていたと思われたバークとセイロムが蔵に入ってきて、入口を閉めてしまったのである!
しっかりと施錠もし、脱出口になりそうなところは何一つない!
「うぅ‥‥私、正々堂々がモットーなのですが‥‥」
「正々堂々やったって負けちゃどうしようもねぇだろうよ。たまにゃダーティさも必要ってな!」
セイロムが仕入れた情報で、敵の中に春花の術を使う者が要ると知ったバークは、それを使われたらわざとかかったふりをし、連中を蔵の中に引き入れて袋のネズミにしようと言い出したのだ。
その作戦は見事に成功‥‥まぁ、連中の焦りも理由の一つなのだが。
「さて‥‥どうする? 魔法力がなくなるまで粘るかのぅ?」
「この暗さでも、小太刀なら充分立ち回れますよー。降参された方が身のためかと思いますー」
最早問うまでもない。
何気に負傷している百面衆たちは、プロらしく潔い任務失敗を宣言し、捕まえられた。
こうして、7つ目である本物の天地八聖珠は守られ、百面衆は全員お縄。
残るは、彼らを雇い、狼藉者集団をも雇った謎の武家だけである。
京都を騒がせた勾玉怪盗の顛末は、いよいよ大詰めを残すのみ―――