轟!義侠塾!! 〜雄々大魔転死〜

■シリーズシナリオ


担当:小沢田コミアキ

対応レベル:1〜5lv

難易度:やや難

成功報酬:4

参加人数:12人

サポート参加人数:4人

冒険期間:02月15日〜02月26日

リプレイ公開日:2005年02月24日

●オープニング

 遂に毅業院岳三災尽死、その最後の試練が幕を開けた。戴逝災の悟吾の武を飾る種目は雄々大魔転死(おおだまころがし)。惨号生筆頭である毅業院先輩からの雄闘死大魔(おとしだま)を皆で転がして校庭まで持ち帰るという試練である。毅業院先輩が火炎とともに吹き上げたそれは北へ飛んだ。
 それを追うは、塾生たちを代表した壱弐人の男児。雄闘死大魔を追い、北へ塾舎を旅立つ‥‥!


 とはいえ北に飛んだというだけでは手がかりが少なく必死の聞き込みが続けられた。
「うむ。それは巨大な岩の玉だな」
「北の方にあるはずなんだよね」
「今そのせいでみな血眼で駆けずり回ってるんだがなァ?」
「何でも三つの災いを尽くして死に至ると聞く」
「しかも近づく者に死を振りまくとか」
「とにかく死を呼ぶ大いなる魔なんですー」
「でも侠たちが死を賭してまで目指すものでござるよ」
「皆使命を帯びてそのために戦うって訳だ! チクショー!燃えるぜ!!」
「とにかく今話題の北にあるという岩の玉だな(ヲイ」
「って訳だ。何か知ってたら情報提供よろしくな!」
 塾生たちの話を聞いた土地の民は暫く考え込んだ後、得心がいった風にぽんと手のひらを叩いた。
「ああ! アレね、はいはいそれならこの街道を‥‥」


「しっかし。土地の奴ら、妙な名前で雄闘死大魔のことを呼んでやがったな」
「勝牙通の風習は土地ごとに違うからな。うむ」
「にしても殺生石とはまた物騒な呼び名だよなあ」
 印度・華国・京都と三つの災いを為した大妖・九尾の狐はこの北の地で死して殺生石となった。今それを巡って那須では多くの男達が命を賭けて戦っている、那須はもちろん江戸中を騒がした話題の岩の玉である。
「何だか猛烈に勘違いをしている気がするんだが‥‥」
 この危険な勘違いで雄闘死大魔の試練は8割増しくらいでその危険度が跳ね上がった。そんな訳で何故か茶臼山を目指すこと数日。一行が出くわしたのは殺生石を目指す鬼の一団とそれを迎え撃つ義勇兵たちであった。
「あれを倒さないと雄闘死大魔には辿りつけないって訳か」
 ていうかもう目覚めてるのでどっちにしろ無理ではあるが。鬼の一団は雑兵も多く混じっているがやはり熊鬼や山鬼などを相手取っては、苦戦は必至だろう。雄闘死大魔へ辿り着くにはここは非情ながらも見捨てていく他はないが――。
「一つ! 義を見て為さざるは勇なきなり、勇なき男は侠に非ず!」
「一つ! 背中の傷は侠の恥、斃れるときも前のめり!」 
「一つ! 男児の下着は褌に限る、これぞ義侠の締め心地!」
「褌は締めたか?覚悟はいいかぁ?? 義侠塾壱号生、いざ‥‥!」
 ――出陣!!

●今回の参加者

 ea0270 風羽 真(36歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0452 伊珪 小弥太(29歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)
 ea0561 嵐 真也(32歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)
 ea0639 菊川 響(30歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea3681 冬呼国 銀雪(33歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)
 ea3865 虎杖 薔薇雄(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea6130 渡部 不知火(42歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea6381 久方 歳三(36歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea6402 雷山 晃司朗(30歳・♂・侍・ジャイアント・ジャパン)
 ea7036 伊達 拳(38歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea8968 堀田 小鉄(26歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 eb0568 陰山 黒子(45歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)

●サポート参加者

天城 烈閃(ea0629)/ ラティール・エラティス(ea6463)/ 菊川 旭(ea9032)/ 昏倒 勇花(ea9275

●リプレイ本文

 ででんっ!
(めくり):『かくして遂に幕を開けた最終試練! 旅立ちまするは義侠塾壱号生拾弐闘士!』
 過酷な教練と言えど壱号生にとっては初めての遠足。菊川響(ea0639)が早々と防寒着を着込んですっかりその気になっているかと思えば、案の定伊珪小弥太(ea0452)のように弁当を忘れる者も出て賑やかな道中となった。伊達拳(ea7036)や堀田小鉄(ea8968)がどぶろくやらポーションで飢えを凌ごうとするが、こんなこともあろうかと虎杖薔薇雄(ea3865)は多めに保存食を用意している。いるよね、そういう奴。勿論のこと嵐真也(ea0561)には冬呼国銀雪(ea3681)が手料理(クリエイトハンドで作ったお粥。当然手渡し)を。
(めくり)『さて、江戸を旅立ちますこと五日。遠くに見えまするは砂塵でありやす』
 ででんっ!
「鬼まで先を争って雄闘死大魔の所へ行こうとしてるのか‥‥」
 行く手に繰り広げられる激戦を前に銀雪がぼんやりと呟いた。
「玉藻? 何それ、美味しいの?? でも、雄々大魔転死って意外に大規模なイベントだったんだね」
 あくまでボケ倒すつもりらしい。
「さて、試練に入る前に邪魔者どもがいるようだな。聞けば、悪為す鬼の一団とのこと」
 雷山晃司朗(ea6402)が腕組みして隣の嵐を見ると彼もまた頷く。
「ここに来て多くを語る必要はあるまい」
「わかりましたー! 雄闘死大魔、別名殺生石を転がせばいいんですねー!」(←とりあえず分かってない)
「‥‥‥ああ、思い出したわ。殺生石。愛しいうちの長弟が追ってるアレね――って、ぅおい!」
 一人ノリ突っ込みを決めたのは渡部不知火(ea6130)。塾長に知れればどやされそうなお姉言葉だが根は熱き日本男児である。
「人、それを勘違いと‥‥冗談を言っとる場合じゃないか。ならば、嵐真也、推して参る」
「大きな狐だったら毛皮にしたら高く売れそうだけど。転がして持って帰らないといけないし、とりあえず邪魔な鬼は道中で退治しておこうか」
「義侠心の厚い俺達なら当然助太刀だぜ」
 嵐の言葉通り、義侠塾生たる者どんな相手であろうと関係無い。ただ勝利するのみだ。
「僕感激しちゃいました。やっぱりニッポン男児って違いますー!」
 仲間達の義侠心に焚きつけられた小鉄は褌締め直しも怠らないがその辺はショタ仕様描写になりかねないため割愛。ともあれ一行は助太刀の決意を固めた。
「窮している者を見捨てる訳にもいくまい。義の為に、そして侠足る為に前へと進むのみだ」
 でででん!
(めくり)『これより繰り広げますは天下御免の大立ち回り。熱き義侠の気炎を上げて、義侠一念大乱舞。拾弐闘士の運命や如何に‥‥!』
 ででででででんっ!
「一つ! 義を見て為さざるは勇なきなり」
 陣太鼓の音と共に塾生心得の唱和が木霊する。
「勇なき男は侠に非ず!」
「そうさ、この国の為に闘っている勇士を助けないのなんて、侠が廃るってもんだ」
 拳を突き上げて伊達が叫んだ。雷山が大きく息を吸い込み、高らかに名乗りを上げる。
「義勇の軍を見過ごしては義侠の名折れ。我ら義侠塾壱号生、推して助太刀に参る!」


「風羽! 見せてやろうぜ!俺達の技を!!」
「‥‥へっ、雄闘死大魔を探す行き掛けの駄賃だ。皆、ちょいと連中に助太刀してやろうじゃねぇか!?」
 伊達の呼びかけに風羽真(ea0270)が応え、二人はがっしりと肩を組んだ。
「「悪歩路道羅里猪!」」
 伊達が戦況を見極めて誘導役を務め、その指示を信じて真が疾走し、その後を雷山が金棒を手に追う。
「これは‥‥俺達に対する試練だな? おもしれー、義侠・伊珪小弥太の心意気とくと見せてやらあ! 不知火、例のヤツ頼む!」
「義侠塾壱号生・新参、渡部不知火。義に依り推してまぁ―いぃ―る―ぅ――――っっっっらぁ!!」
 不知火が伊珪を担ぎ上げ鬼目掛けて思い切り投げ飛ばした。いや、実際に推して参るのは投げ飛ばされた伊珪だけど。
「って、しまったー! 六尺棒忘れてきちまったー!」
 敵陣真っ只中に着地した伊珪が絶叫する。多分弁当と一緒に塾舎に忘れてきたのだろう。
「って、あれ。拙者も軍配が」
 伊珪は咄嗟に錫杖で代用するが忘れ物をしたのは伊珪だけではなかったらしく、久方歳三(ea6381)が荷をひっくり返して得物を探している。その間に残りの面々はも敵陣の中央突破を図った。
「過度の救済は黒の仏門教えと微妙に食い違うが‥‥俺は、義侠心を貫き、助太刀する」
 嵐が風羅李覇射・真具瑠(〜・しんぐる)で飛翔すると、小鉄も六尺褌を振り回して特攻する。
「やあやあ我こそは、雄田島塾長を頭に頂き天に聞こし召す義侠塾壱号生堀田小鉄16才! 義によって助太刀致しますですー!」
 この義侠塾の乱入で戦場は両軍を巻き込んでの大乱戦と化した。
「よっしゃあっ! 前回は夢見が悪くて勝牙通を楽しめなかったが、今回は気合入れて行くぜっ!」
 敵陣中央、伊達と離れた真が両手の得物を水平に持ち上げ奥義・挑転自護魔の構えを取った。強烈な回転で両の刃を振るうと、一方の伊達も負けじと大きく太刀を振りかぶって雑魚を相手取る。
「燃える侠の紅蓮の剣技! 必殺!愚冷威刀・火怨!」
 放たれた衝撃波は身を灼く焔の如く小鬼の群れ弾き飛ばした。
「見せてやるぜ暗黒流奥義! 真説・魔畏武痲威鵡!」
 魔ー畏武‥痲ー威鵡‥‥ 魔ー畏武‥痲ー威鵡‥‥
 八の字髭を書き込んだ伊珪が錫杖を振り回して鬼たちを翻弄する。元は意味不明な仮装によって油断を誘う暗殺術だが、まあこの塾生達だけで十分アレなのでその辺は問題ないみたいでもある。
「小細工など無用、とにかく前に立つやつはぶっ倒す!」
「なるほど。いかなる時も正面から立ち向かう私達にはまさにうってつけだな」
 金棒を振り回した雷山も遠心力に任せて鬼の群れを薙ぎ倒す。
「これぞ暴輪倶横守頻(〜・よこすぴん)なり!」
 それが真を弾き飛ばし、その力を利用して挑転自主彬を炸裂させる。銀雪も塾生生活を振り返って槍を投げたりとか(投げ槍)。ともかく義侠塾勢は力の限りに敵陣を掻き回した。
「ふっ、素晴らしく大変なことになっているようだ‥‥さすがだね」
 薔薇雄も戦場へ打って出た。
「‥目の前で苦しむ者達のために、今はただ――」
 敵を美しく斬り捨てるのみ。
「美しき薔薇雄‥‥いざ参る!」
 小細工は無用。薔薇雄は中央を堂々と歩んで行く。奇声を上げて襲い来る小鬼へ、薔薇雄は小さく眉を顰めて眼を伏せる。
「美しくないものたちよ‥‥せめて‥」
 長い睫が光の中で揺れた。
「散り際くらいは美しくしてあげよう」
 赤くバラの花弁が舞い、剣光と共に鬼達を煌めきの中に紅く沈める。(注:バラはイメージ)
「僕、山鬼討ち取りましたー!」、
 小鉄の叫びが戦場に響き渡る。苦戦していた義勇軍は士気を盛り返し始めた。
「義侠塾魂、一打入魂ですー!」
 拳に宿した闘気で鬼の顎を砕き、注意を引きつけては小柄さを活かして敵を撹乱する。親分格の伊珪と二人一組になっての奮戦だ。熊鬼はそれでも手に余る強さだが、後方には菊川が控えて仲間の窮地も見逃しはしない。
「雄闘死大魔が飛んだ先が那須とはな‥‥」
 那須のギルド支局には冒険者仲間の多くが依頼で訪れている。
「されば同じくこの地で戦う義勇兵をどうして見捨てられようか」
 その一撃は寸分違わず山鬼の眉間を貫いた。
「勝牙通の前祝いはそう、この勝利のために」
 文字通り矢継ぎ早の連射で雑魚を射倒して蹴散らし、味方を援護する。
「同胞を見捨てる事は義侠道不覚悟、よって当然助太刀致すでござるよ!」
 ようやく追いついた久方も戦列に加わった。仲間から預かった筈の武器は結局見つからなかったようだが。
「それでも大丈夫でござるよ。こんなこともあろうか!」
 自信満々で久方が突貫する。
「おお、久方殿! これは期待していいんだな!」
「任せるでござるよ‥‥なにしろこの那須行の前からあらかじめ――」
 振り返った久方が力強く微笑んだ。 
「体を鍛えておいたでござるから!」
 ‥‥素手?
「歳ちゃん感激ー!」
 当然山鬼の反撃。その窮地を、現れた陰山黒子(eb0568)が救う。言葉でなく拳で語ると言わんばかりに鉄拳制裁。久方へ無言の内に侠の背中を見せ付けると、振り返らずに拳を掲げ再び袖へと消える。
(めくり)『とまあ兄さん方を引き立てるのが裏方の役目でやす。黒子とは其処に居ない存在――敵の標的と成ることもないんでやす』
 それは無理か。兎も角も。
 ででん!
 残ったのは屈強な山鬼や熊鬼。不知火も普段のお姉口調は疾うに消え、その身に呑んだ抜き身の刃を隠そうともしない。二刀を振るい、普段の様からは及びもつかぬ剛剣で鬼を断つ。
 霞刀での斬撃で攻め立て、好機と見るや鎧を打ち砕き、崩れた所を小刀の打突。
「身に纏う厄介なブツを取っ払うのが先決だろう?」
 武具さえ砕けば後は他に任せて次の獲物を探す。素早さでは他の仲間には引けを取る。ならば自ずとやることは定まってくる。
「重機にゃ重機のやり方がある‥‥相手の威力を削ぐ、ってな」
 乱戦ともなれば大技も使えない。横守頻を解いた雷山も正面からの白兵を挑む。足、腹、頭と確実に狙って叩き折り、突き砕く。
「敵の数は決して少なくないだろう‥‥だが、侠は退いたら駄目だ! それに、俺には共に学んできた盟友がいる! だからこそ闘えるんだ!」
 伊達も太刀の厚みを活かして猛攻を受け流しながら機を見て反撃に転じる。相手取っていた山鬼を銀雪の鞭が打つと、隙を突いて力任せに押し倒し太刀を突き刺して止めを刺す。銀雪もまた牽制を織り込みながら戦闘を組み立てる。
「俺が与えるダメージは期待できないけど、他の皆や嵐サンがきっと仕留めてくれるからね」
 チラ‥
「‥でも‥‥鬼の肉縛ったって全然食欲が湧かないや‥‥」
 チラ‥
「むう。何かさっきから妙に濃い殺気を感じるがそれはそれとして」
 熱の篭った視線にちょっとたじろぎながら嵐。自分の実力を見極めながら雑魚を引き受け、時に仲間と共に大物を相手取る。素手の久方も小鬼を投げ飛ばして奮戦する。
「美しくない雑魚どもの攻撃など、私には通用しない」
 かどうかは分からないが、薔薇雄も紅に咲く花弁の如く戦場を舞う。
「美しくない死に方は御免だね。それに、私の帰りを可愛い弟子達が待っているのだ‥‥」
 だが長引くにつれ疲労の色が濃い。
「しまった‥」
 刀を弾かれた嵐へ止めの剣撃が迫る。咄嗟に白羽取りで受けるが鬼の膂力には敵わない。じりじりと押され、その背が同じく苦戦していた真とぶつかる。
「‥この声は‥‥」
 朦朧とした意識の中、だが塾生達の耳には確かに届いていた。太鼓の音と掠れた大声量。それは義侠塾名物・大衝音のエール! その大音響は距離の隔たりばかりか、時空をも超えて仲間の元へ響くといわれている。塾舎では義侠塾生が皆の生還を待っているのだ!
「‥‥そうだ、俺達義侠の旗の元に集いし日本男子、こんな事で倒れる訳にはいかねぇ!」
「義侠塾魂を開放するぜ!!」
 それに皆最後の気力を振り絞った。久方が手負いの熊鬼を相手取る。
「動きを止めれば十分! 拙者には塾友がいるでござるよ。右手が光って唸って響く! 省略前口上にて射射忍虞斌雅亜ー!」
 だが一瞬速く、熊鬼は斃れた兵から刀を奪い取ると強烈な突きを見舞った。胸を突かれた久方が力なく崩れる。それに気を取られた菊川を流れ矢が貫いた。二人の首を潰さんと熊鬼が腕を振り上げる。
「久方、菊川――ッ!」
 その身を盾に伊達が飛び込んだ。
「俺だって生きてる間ぐらいは‥‥人並みに上手に生きてみたいと思うけれども‥不器用だからな‥」
 顎を伝った血の雫が菊川へ伝う。瞳を開けた菊川へ伊達は精一杯笑ってみせる。
「大丈夫だ‥‥今は‥敵を倒そうぜ‥」
 菊川が懐へ手を伸ばすと、忍ばせておいた賽が鏃を押し止めていた。
「これは烈閃殿のお守り‥‥仲間が俺を守ってくれた!?」
 それは友人が預けてくれたお守りだ。梓弓もまた別の友人から譲り受けた物。
「そうだ、数多の友に支えられ、俺はここにある!」
 確かに響く戦友の声に気合を乗せ、続けざまの矢撃が熊鬼の胸板を突き破った。
「はっ‥拙者も‥」
 久方も自分で持ってきておいた賽を取り出す。
「拙者の日頃の行いが守ってくれた!?」
 でも貫通してます。血、どくどく。そんな彼へは嵐が駆けつけ魔法で治療。
「我等が勝利は必然。何故なら、既に戦勝祝いを済ませているのだからな」
 すぐに薔薇雄と雷山も二人を庇って鬼に立ち向かった。
「弱きを助け、強きを挫く。私たちは義侠塾壱号生なのだから!」
「自分の背後に守るべき者がいると思えば、どうして倒れることなどできようか」
 背中を預ける戦友の為、帰りを待つ塾友の為、そして愛する人の為。是に応えずして何の日本男児か。
「必ずや期待に応え、義侠塾に戻る。勝利こそが我らの使命なり」
「義侠の二文字を背負ったその時から敗北は許されねぇんだっ!! ‥‥行くぞっ! 俺達、義侠塾塾生は一騎当千の武士(もののふ)だっ!!」
 でん! ででででん!
 すすす‥と緞帳が降り、舞台袖に黒子の姿。
(めくり)『侠の危機を救いしは、ただ戦友の声、義侠貫く心意気でありやした。熱き血潮を滾らせて、戦い抜きやす戦友のため。譲れぬ二文字をその背に負いて、戦い抜きやす拾弐闘士。大衝音、響き渡る方を眺むれば、ただ義侠の名のみぞ‥確かと残れる‥‥』
 トン‥トトトトトト、トン。
 聞こえ始めたのは拍子木の音、鳴り響く陣太鼓、鬨の声。幕が開けるとそこには勝利に沸く義勇兵と塾生の姿があった。互いに肩を組み、兵(つわもの)達は生還を喜ぶ。
「よっしゃぁ!」
 感極まって伊達が拳を突き上げた。
「うん。ここは勿論塾歌斉唱だよね」
 銀雪が音頭を取り、義勇兵を巻き込んでの大合唱が始まった。


  日本男児の生き様は 勇あり 義あり 情けあり
     色恋金子に背を向けて 
  進めや義侠の本道を
     嗚呼 我ら義侠塾 日ノ本支える礎とならん

  (*以下、最初から気の済むまで繰り返し)


「歳ちゃん感激でござるよ」
「ふっ‥戦いに染まる私も美しい‥‥いや、皆美しい‥君たちとともに戦えてよかったよ」
 久方の表情にも自然と笑顔が浮かぶ。薔薇雄の言葉で皆は頷き合った。
「さぁて時間喰っちまったな? んじゃ、さっさと雄闘死大魔を探しに行こうぜっ!」
 ででん!!
『嗚呼義侠塾! 熱き気炎を滾らせて、進め義侠の本道を!』
 鼓の音は止むことなく、塾歌を唱和しながら壱号生は颯爽と戦場を後にする。
『「轟!義侠塾!!毅業院岳三災尽死編」、大団円にて幕引きでやす』
 ででででん!
『これにて、閉幕‥‥押忍!』