●リプレイ本文
窮地に陥った清を救え! かわいい教え子のピンチに今回も裏方組が駆けつけた!
「ふふふっ、これくらいのピンチがプロデュースのし甲斐もあるというものっす」
仲間達を率いて小道具(eb0569)が声を張り上げる。野郎ども‥‥
「カチコミじゃー!!!」
「そしてあたしが任侠裏方組が一人、タイムキーパーの秤都季(eb2614)! 二代目だけどぉよっろしくぅ♪」
今回からの新顔はハリセン陰陽師の秤姐さんだ。
「タイム姐さんの後釜だよん♪」
「今回もいろいろとやるみたいですねえ‥‥」
とそこへ大曽根浅葱(ea5164)と神楽聖歌(ea5062)、二人の冒険者も駆けつけた。漸く遣ってきた二人へ秤がじろりと視線を向ける。まあ二人が到着まで手間取ったのにはちゃんとした訳があるのだが。
「いえ、そもそも吉原というものは本来一般の女性が入れる場所ではなく、今回も他所を回って事情を話して特別に許可を――」
と事情を説明する浅葱にハリセン一閃。秤が容赦なくひっぱたく。
「きゃははっ。あたしと一緒のときにぃ、時間に遅れるような考え無しには制裁ぃ♪」
ちなみに笑顔は絶やしていないが声はドスが効いていたりする。苦笑して浅葱。
「まぁ、その辺は隅っこの方においておいて‥‥」
さて。まずは事件の検証。の前に。
「何者だ、お前達は――?」
一行へ役人が怪訝な顔を向ける。そりゃあ、これから捜査って時に妙なのがわらわら現れて重要参考人と歓談始めたら驚くわな。
「作戦たーいむ!」
小の号令で清を初めとして冒険者達が集合する。清を囲んでその場でかがみ込んで何やらごにょごにょ。
「私にとって、遊郭は私の庭のようなもの」
清の傍には遊女の紅閃花(ea9884)が侍っている。
「その庭へ土足で踏み込むような真似は捨て置けませんね。しっかり、清さんを操ってお仕置きしてあげませんと」
庭という言葉から微妙に縄張りのニュアンスが見え隠れしているのは置いておくとして、やる気は十分のようだ。
「問題はどうやって清さんを名探偵に仕立て上げるかっすよ」
「意外と浮かばないなあ‥‥」
聖歌が小首を傾げて考え込む。が、そこは幾多の事件を解決してきたプロの冒険者達。それぞれに磨き上げた技を駆使すれば不可能はないのだ。‥‥きっと。
「松本清をかっこいい名推理役に仕立てるんだったっけねぇ。ま、素敵な傀儡になってもらおうじゃなぁいぃ?」
秤が皆を見回すと、冒険者達はが頷いて立ち上がる。サウティ・マウンド(eb0576)が清の肩を叩いた。
「ま、俺は考えることは苦手だけどよ! お前ならこの事件解けると思うぜ!」
本当によく考えずにスカっと爽やかに笑うサウティ。紅が清に耳打ちする。
『まずは「現場百遍」と言いまして、事実の検証からです。全ての可能性を排除して残ったのが真実と肝に銘じて下さい』
それは探偵としての心構え。一つひとつに小さく頷きながら清が反芻する。
『そして何よりそれらしい決め台詞ですね。初心者はとりあえず親類縁者の名に賭けておくとよいかと』
最後に清は力強く頷いた。肺に大きく息を吸い込んで。
「俺は冒険者の松本清。この事件、俺が解決してみせるっぜ!!」
深まる謎。繰り広げられる愛憎劇。清の推理がスパークするぜ! 清が役人へ向けて握った拳を突き上げる。
「親類縁者の名に賭けてッ!!」
清ー、マチガエてるー。
まずは浅葱の提案で事件の検証が行われる。ガイシャの紫やっこの人物像や、その交友関係。そこから怨恨や金銭目的など、動機を割り出すのだ。
「清君を今回もバッチリプロデュースっすよ!」
小が何やらがさこそと荷物を漁って‥‥
「この手の小道具は自分の本領発揮っすね。現場検証のためのミニチュアセットを作ってきたっす」
いつの間に用意したのか、郭のミニチュアを小が座敷へ並べる。被害者が見つかったのは郭の二階の一室だ。小の用意した模型を指しながら清が発見当時の様子を説明する。
「俺が来たときにはもうガイシャは死んでたんじゃん?」
争った形跡はあったが目ぼしい手掛かりは見られない。ただ、江戸紫の鉢巻が一本だけその場に残されていた。
「なるほど。しかし松本殿が真犯人で、捜査を霍乱するために第一発見者を装ったとも――」
「その可能性はありません」
答えたのは紅だ。
「言い争いをする声を聞きましたが、相手は清さんではありませんでした」
「それなら」
と、口を挟んだのは戸来朱香佑花(eb0579)だ。
「何だお前は」
まだ十を数えるばかりの香佑花ではこの場は不自然だ。役人が怪訝な顔を向ける。
「‥僕は‥‥清の助手だよ‥」
「なるほど、助手か。松本殿は名のある冒険者なのだな。うむ」
役人は何か都合のいい方に解釈してくれたようだ。香佑花が肘で突付くと清が慌てて口を開く。
「戸来朱君、捜査の進展を報告するんじゃっぜ」
「僕の聞き込み捜査では、捜査線上に上がったのは、常連客の助六だね」
助六は役人の捜査で第一容疑者としてあがっているが、否認を続けている。
「俺じゃない、家が荒らされていて鉢巻は盗まれたものだ」
「噂では紫やっこと良い仲だったとか‥‥」
「‥‥だったとかいうじゃん?」
清に睨まれて助六がたじろいだ。だが犯行だけは頑として認めず、気まずい沈黙が辺りを覆う。それを不意に高笑いが吹き飛ばした。
「清ちゃんもついにやっちゃったか‥‥えっ違うの? なんだーつまんないの」
「今度は何者だ!」
現れたのは裏方組照明係のショウ・メイ(eb0738)だ。
「ボクは清の永遠のライバルにして舞台袖の名探偵、金田一ショウメイ! ボクが来たからには、このショウメイに任せなっ!」
常であれば様々な手段で持って清にスポットライトを浴びせるショウ。だが今回は趣向を変えて、ライバルとして舞台に上ることで清を引き立て、輝かせようという魂胆だ。
「アハハ、じっちゃんの輝きにかけてこのボクが謎を解き明かす。犯人はこの中に居る!!」
ばーん。
「ガイシャの紫やっこは大変な人気のある芸者だった。つまり犯人の動機は怨恨。犯人は彼女の人気が妬ましかった‥‥そうでしょう、小姐?」
ビシィ!とアニメ処理でショウが小を指した。
「小姐はいい年をして結婚できないのを恨んでいた‥‥ほら凶器のハンマーも握り締められて居ます。それとも秤さんかな? 二人とももう三十路‥‥」
ゴゴゴゴゴ‥‥
「‥誰が三十路でいい人もいない――」
「――売れ残りの行き遅れだってぇ、言うワケないよねぇ??」
「アハハ何でもないー」
小の鉄拳と秤のハリセンがショウを一閃。
「ボクの推理はどうだい、清ちゃん‥‥じゃなかった松本君」
「どうということはないんだっぜ。親類縁者の名に賭けて!」
が、肝心の清はいつもの様子なので推理はここで打ち止め。このままではどうにも埒があかない。その時だ。
「あ!」
サウティが部屋の外を指して叫んだ。部屋の外へ気を取られているその隙に。
ゴチン。
清の後頭部を殴り倒した。
「あ、そうか分かったっぜ!」
「左様か清殿!」
だが振り返った先の清は床に転がってぐったりしている。
「き、清殿‥‥?」
これぞ今回の奥の手、『名探偵・眠りの清』作戦。
いざとなったら清へ当身を食らわせて気絶させ、サウティの声音と秤の念力でマジモンの操りに人形にしてしまおうという、ちょっと人道的にも過激な作戦なのだ! ていうかうつ伏せになって畳に倒れている清は、目とか白目剥いちゃっててエラいことになっちゃってるのだが、あくまでも『眠っている』ということで通すことにする。
(「力加減間違っちまったな」)
サウティは苦笑しつつも仲間へ合図を飛ばす。いそいそと秤が魔法の巻物を持って隣室へ消える。やがて清の腕がぶるぶると震えだし、片腕が見えない力で宙空へ持ち上がった。それがズビシィとばかりに部屋の隅を指した!!
「犯人はお前じゃん?」
「な、わしが犯人じゃと!?」
皆が一斉に振り返るとそこには老人の姿が!
「いや、アンタ誰‥‥?」
そこに立っていたのは、郭の常連の一人で意休という名の爺さんだ。すかさず秤の指示でショウが老人へスポットを向ける。
「この松本清の目は欺けないんだっぜ!」
サウティの声音を合図に秤が念力で清の体を引き起こす。無理やり起こしたものだからちょっと首のすわりが悪くなって大層不気味なことになっている。ていうか白目剥いてるしな。
「いけませんわ」
慌てて聖歌が後ろから頭を支えて持ち上げる。事なきを得た所でサウティが口上を続けた。
「調べでは意休は紫やっこに想いを寄せており、やっこと不快仲である助六に嫉妬していた。おそらくそのせでやっこと口論になり、勢いあまってやっこを殺してしまった。紅さんが聞いた言い争いがそれを裏付けています。――そうですじゃんよね、意休さん?」
清の口調が全てを台無しにしているのだが、眠りの清の推理が意休を追い詰めるというか、声音を使うのだから清の間違った口調まで真似る必要はなかった気もするが、そこはそれ。
「意休さん、あなたは助六に罪を被せる為、彼の家から盗み出した鉢巻を現場に残し我々の眼を欺こうとした。違いますかじゃん、意休さん」
ズギャーーン!
聖歌が二人羽織の清に要領でポージング。
(「これくらいは構いませんよね。少々派手でもよさそうですし‥‥」)
だが意休は犯行を認めない。意地悪く唇の端を捲って言う。
「どこにそんな証拠があるのかね?」
『証拠ならここに揃えてありやす』
現れたのは数人のゴロツキを連れた陰山黒子(eb0568)だ。
「何者だ貴様!」
『あっしはしがない黒衣でありやす。清殿の捜査を影ながら支える黒衣の一人とご理解頂きたく存じやす』
「全て予想して黒衣に指示を出していたんじゃん? 証拠はこれじゃん?」
相変わらず意識を失った操り清を聖歌が動かし、ポーズを作る。
「黒衣、説明してやるんじゃん?」
『コイツらが全て吐きやした』
連れてこられたのはゴロツキ風の男たちだ。
「確かにあの爺さんの命令で俺らが手を掛けたぜ」
「助六の家から鉢巻を盗んだのは俺だ」
「濡れ衣を着せるためにそれを座敷に置いた」
意休、万事休す。証拠は出揃い遂に助六の無実が証明された。全てを暴かれて意休がこめかみをわなわなと震わせる
「貴様らよくも‥‥」
「きゃ、きゃぁぁぁぁぁ!」
窮した意休は咄嗟に香佑花を人質に取った。悲鳴にちょっとわざとらしい感じが見え隠れしているがとりあえずこの辺りも想定の範囲内である。
(「変な助け方をしたら、後でお仕置き‥‥」)
後は清が香佑花を救い出す感動のシーンで番組終了である。倒れたままの清を小が抱え起こした。
「最後の戦いっすよ! 清君、頑張れっす!」
だが強く揺さぶろうとも清に起きる気配はない。
「‥‥心なしか顔色が真っ白ですね」
横から覗き込んだ浅葱がにっこりと微笑む。顔は白いを通り越して青くなっていて、よく見ると息をしてる気配がない。力加減というか打ち所の問題?
「こんな緊迫した場面なのに息をしてないなんて、清さんたらお茶目な方ですわね」
「き、清ーーー!!」
画期的なオチ。
解決編
「はっ! ここは!!」
清の意識が戻ったのは全てが片付いてからであった。香佑花は無事に役人が救い出し、意休はお縄となった。紅に解放された清は座敷に寝かされている。
「やっと気がつきましたか、清さん」
「河原とお爺ちゃんは‥‥あと着物のお嬢ちゃんとお花畑で鬼さんと鬼ごっこが‥‥」
どうやらやばいとこまで行っていたらしい。
ちょっと罪悪感を感じないでもないが、サウティが明るく笑い飛ばした。
「ええとその‥‥とりあえず名推理だったぜ!」
「そ、そうか‥? へへ。照れるっぜ」
こうして清は新たに視線を潜り、地獄の入り口を覗いて生還した。大層ハクがついたとかそんな話。何と言うかその、頑張れ、清。次回『松本清対七唐・十一朗 〜江戸経済が静止する日〜』。ご期待ください。