松本清無頼帖 ざ・むーびー

■シリーズシナリオ


担当:小沢田コミアキ

対応レベル:1〜5lv

難易度:やや易

成功報酬:1 G 62 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月23日〜09月02日

リプレイ公開日:2005年09月02日

●オープニング

 ------予告編---------

 その日、一人の男が日本に帰ってきた。彼の名は七唐・十一朗。東国は上州の生まれの薬師。若き日に海の向こうへ渡って修行を積んだ凄腕の薬師だ。
 十一朗は野望を抱いていた。薬の商いはその野望の第一歩だ。政治的な混迷が続き、きな臭い気配の流れる日本。仮に源平藤の三巨頭が動けば日本は戦国の世に突入するだろう。それは何かのきっかけで明日にでも起こるかもしれないのだ。もしその日が来たとしたら。優秀な薬は飛ぶように売れ、大きな富をもたらすだろう。それを足がかりに、江戸、ひいてはジャパンの経済をその手中に収める――。
 十一朗は手始めに、故郷である上州の薬売りを金に任せて強引に支配下に置いた。上州を平らげた十一朗は、遂に江戸へその魔手を伸ばさんと行動を開始する。狙うは秩父、そし多摩へ。その勢力を拡大し、最後には江戸をその手中にするために。
 十一朗に次々と買収されていく薬屋!
 その強引な手口とやり方は多くの反発を買うが、十一朗の資本力によって誰もが成す術もなく彼に屈していく。このままでは東国の薬市場は十一朗に牛耳られてしまう。危機感を抱いた奥多摩の薬売りは、遂に一人の冒険者へ事件の解決を依頼する――。その男とは、奥多摩の薬売りの出でありながら、将来の資質を開花させて一流の冒険者として華々しい活躍を見せた伊達男。。地獄から生還した男との異名を持つ男。その名も松本清!!
 遂に清は立ち上がった。そう、かつての薬屋としてではなく、一人の冒険者として!

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 とまあそんな予告編で始まった第四話。依頼を受けたはいいが、そもそも清がどうやって立ち向かったものか。
「策はあるんだっぜ!」
 清が腰の物を抜き放ち、白刃を天に掲げた。
「この俺が上州に乗り込んで、奴を――倒す!!」
 ガチンコ?
「敵は上州にあり! 俺は勝つ、親類縁者の名に賭けて!」

●今回の参加者

 eb0568 陰山 黒子(45歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)
 eb0569 小 道具(35歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)
 eb0576 サウティ・マウンド(59歳・♂・ファイター・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 eb0579 戸来朱 香佑花(21歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb0591 大 道具(51歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 eb0738 ショウ・メイ(17歳・♂・ジプシー・シフール・エジプト)
 eb0804 キーパット・ターイム(25歳・♀・バード・シフール・ビザンチン帝国)
 eb2614 秤 都季(40歳・♀・陰陽師・パラ・ジャパン)

●リプレイ本文

○裏方組、上州の地に立つ!
 とまあそんな感じで勇ましく始まった訳だが、いきなり刃傷沙汰になるのは誰しも御免である。戸来朱香佑花(eb0579)が清を引き止める。
「アンタ‥‥人が斬れる程、腕前が上がったの? 人を斬ってただで済むと思ってるの? 僕達も捕まったら、どう責任とるつもり? 切腹する?」
 情け容赦のない言葉のポイントアタック(対象部位:精神)で切り刻む。清がうなだれたその時。
「待つんだ清ぃ!!!」
 サウティ・マウンド(eb0576)の強烈な体当たりが清に炸裂する。
「今敵陣につっこんでも敵の思う壺だぜ!! ここは辛くても耐える時だぜ清!!」
 清の肩を掴んでがくがくと揺さぶるサウティ。慌てて大道具(eb0591)が仲裁に入るが。
「まぁアレだ、意気込むのもいいが、もう少し落ち着いて確実な手段を――」
 ドゴッ!ゴスッ!
「探そうな‥‥ってもう聞いちゃいねぇか‥‥」
 サウティのボディーブローが清に炸裂し、清はすっかり白目を剥いて転がっていた。既に明らかに意識がない様子の清を香佑花が容赦なく足蹴にする。
「という訳で暫く大人しくしてくれると助かるのだけど?」
 爪先でグリグリとするが反応はない。まあ経過はどうあれ大人しくなってくれたので結果オーライ。ちょっと予定と違ってしまったが、これより裏方組始動である。
 気を取り直して。
「今回も清君のためにえんやこらっす!」
 小道具(eb0569)が仲間たちを見回して声を張り上げる。
「んー今回は随分と大きなことに巻き込まれてしまったみたいっすね。しかーし、これくらいの方が清君のプロデュースのしがいがあるというものっす! まさに今回は裏方組がもっとも裏方組らしい仕事が出来るっすね」
 一頻り頷くと小は宣言する。
「全ては清君と皆のためにっす。さしあたって、まずは各薬屋さんたちの意識を一つにする必要があるっすね。そしてその中心に清君を持ってくるっす」
 顎に手を当てると、アニメ処理で小の瞳がキランと光る。
「野郎ども、カチコミじゃー!!」
 それを合図に作戦は始まった。それぞれの使命を帯び、任侠裏方組みは一斉に駆け出した。それぞれが各分野のエキスパート、ただひとり清の活躍のため、各々が磨いた腕を発揮するのだ。何かかっこいぜこのシチュエーション!
 と、そこで思い出したように小が振り返った。
「‥‥あ、勿論本当に敵さんにカチコミするって意味じゃないっすよ?」
 ともかくも裏方組は行動を開始した。
「と!いう訳でぇっ」
 お次は秤都季(eb2614)がカメラ目線でフリップを取りだす。
「は〜い、ここで今回のタイムテーブルだよん♪」
 今回の作戦の肝は、清を中心に十一朗のやり方に反感を持つ薬屋を纏め上げて敵対勢力として旗揚げすることだ。松本清VS七唐十一朗という図式を作り上げるため、組織力をもって買収に対抗するのである。
「まずは潜入捜査の班。これは香佑花ちゃんの担当ぅ」
 香佑花は早速上州入りして現地での聞き込み調査に当たっている。
「清が勝手に行動するよりは僕がやった方が早いから。‥‥まずは現状把握‥」
 ああ見えて香佑花は人遁の術の使い手でもある。この仕事には適役だ。一人では手が回らない部分はサウティがサポートに当たり、主に十一朗の身辺調査を行っている。
「これで何かあくどいことをやってんならそれが敵をつぶす手段にもなるし、被害にあった人たちを助ければ、清の株も上がるってモンだろ」
 後は十一朗の下についていない薬売りがいないかも調査の手を回せれば上出来だ。
「もちろんあたしも動くよっ。十一朗の生活ぶりとかぁ、現在の動向を聞き込むよん♪ んで清の売り込みは小姐さんっ。こっちは調査と並行して別の班で同時進行ぅ♪」
 調査に当たった残りの面子で薬屋を見方につける工作を進め、最終的に今回までで対決の前準備を進めてしまうという訳だ。
「さぁて、薬屋さんたちへ地道に声をかけ回って来るっすかね。まさに裏方の鏡っすね‥‥。大の字、今回はしっかり頼むっすよ!」
「そうと決まったら上州の薬屋に片っ端から伝えて回るぜ‥‥と、言いたいとこだが」
 槌を取りだして唇の端で笑う。
「大道具担当としちゃ、その前にやらなきゃいけねぇ仕込があるもんでな? ふっ‥。今回は大仕事になりそうな予感だぜ‥‥」
 こうして仲間達は東国の各地へと飛んだ。で、肝心の清はどうしていたかと言うと‥‥

○父の涙
「はっ! ここはっ!!」
 置いてかれていた。
 まあ付いていっても足を引っ張ったかサウティにどつかれてただけなので何の不都合もない訳だが。そういう訳で清はまだ江戸の借家でぼんやりとしている。そこへ忍び寄る影一つ。
 小さな細身の体と、そこから伸びる赤い羽根。瞳と同じ茶色の髪、白く透き通る肌、そしてこのビンタの素振り! 遂に裏方組へあの女が帰ってきた!! 武闘派シフールが帰ってきたっ!
「って‥‥やかましいですわ!」
 ビンタ一閃。現れたのはキーパット・ターイム(eb0804)。勿論ビンタは清に炸裂していて、清は鳩が豆鉄砲食らったような顔で口をぱくぱくしている。
「まず、相手に対して自分に興味を抱かせる事が大切ですわね」
 とまあそんな反応はサックリ無視して早速講義開始だ。
「女性は飽きやすいのです。常に新鮮な刺激を求めていますから豊富な話題が必要ですわね。あと自分に自信のある男性はとても魅力的ですわね。おどおどした男性では此方が不安ですもの」
 おどおどというか怯えてるだけな気もするが‥‥。
 と、そこへ。
「清ぃ、出かけるよっ」
 秤の声だ。声の方を振り向いたキーパットが清へ向き直ると。
「以上ですわ!」
 くわっ!
「冒険は酒場で起こっているんじゃない、現場でおきているんだ!!」
 なぜかカメラ目線で言い残すと庭から飛んで去っていった。入れ替わりに秤が部屋へ入ってくる。
「あれぇ?話し声が聞こえた気がするけどぉ、誰かいたっ?」
 首を傾げて秤。が、すぐに気を取り直して。
「時間だよん♪ いざ、北へぇ!!」
 清を強引に連れ出すと、秤も江戸を発つ。そうして辿り付いたのは清の故郷である奥多摩だ。集合場所には既に役目を終えた仲間達が集っている。
「十一朗のネタはあがったから‥」
 香佑花の調査では、十一朗の薬の値段はこれまでの相場とさほど変わらないが、卸売に手を回して敵対する薬師にはネタが回らないように手回ししているという。
「薬屋さんたちも腸煮えくり返ってたっすね」
 十一朗の強引なやり方に反感を持っていても肝心の売り品を押さえられては太刀打ちできない。やむを得ず十一朗の参加に入っている薬屋も少なくない。大が先を続ける。
「って訳で決起集会で対抗勢力を組織といきたい訳だが―ー」
「よおし! これでみんなで手を組んで、買収された連中と対抗する組織に仕立て上げんぜ。そうだろ、な?」
 だが彼らのような何の後ろ盾もな一介の冒険者が立ち上がった所でできることなど高が知れている。
『そこであっしの出番でやすね?』
 現れたのは陰山黒子(eb0568)。仲間達とは別行動を取っていた黒子は一人の男を訪ねていた。その男の名は松本清十郎。奥多摩の一薬売りでありながら、その品揃えの豊富さと低価格から庶民の間で『薬売りの松清』の名で呼ばれ愛され、誠実な商いながら多くの利益を生む手腕は同業からも一目置かれる偉大な薬売りである。
「清‥‥暫く見ぬ間に男らしく‥‥?‥なったな」
 そう。かれこそ清の実の父その人である。
「お、親父! 何でここに!!」
 〜回想シーン〜
『一度は土地を捨てた息子さんが、立場はどうあれ郷里の危機にはせ参じやした。しかしながら彼はまだまだ微力。今こそ、偉大なお父上の背中を見せる時かと』
「そうか、小さい頃から何につけても中途半端だったあの倅が‥‥」
(いろいろ渋いシーンがあったりして中略)
『親子の間には色々あった事とお察ししやすが‥‥息子さんの一世一代の大勝負、父の力と威厳、沿えてやってくださいやせんか!?』
 以上回想終わり。
『という次第でありやす』
 ここに奥多摩の薬売りの協力を得て、上州は七唐十一朗へ対抗するための新勢力が出来上がったのであった。

○ミエナイチカラ
 こうして遂に作戦の下準備は整った。と、そこへどこからか聞こえてきた爆笑。裏方組は照明担当のショウ・メイ(eb0738)だ。
「ショウぅ〜?今回と言う今回はぁ、色々遅すぎるんだからねぇ?」
 秤がハリセンを手ににじり寄る。それをさらりとかわして逃げると、ショウが清へ目配せする。
「清ちゃん今回もショウに任せなっ!! で、大兄さん、準備は?」
「任せな。既に舞台は作ってあるぜ」
 頷いた大は裏手の空き地を指した。
「チャブ台でもいいかと思ってたがどうも大事になるようなんでな。ここは一つ、大掛かりな物を作っておいた」
 大に促されるまま清が進むとそこには大きな櫓が。清がそこへ上ると。
 ざわ‥ ざわ‥
「な‥‥、これは‥‥」
 櫓の下には、奥多摩の民や薬屋、遠く上州から駆けつけた薬売りが集っていた。これ全て、今回の決起に賛同する協力者たちだ。
「リーダーは清だ。こういう組織のトップに立った清はモテんじゃねぇかな」
 サウティが清の背を押す。櫓の下では人々が集会の始まりを心待ちにしている。清が仲間達の顔を見回した。サウティが、大が、裏方組の仲間達がそれに頷き返す。清がそれに頷き返すと、ショウが観衆の前へ躍り出た。
「みんな安心して、奥多摩が生んだ奇跡の大冒険者がこの依頼を受けてくれたよー」
 櫓の上でショウが声を張り上げると一斉に歓声が巻き起こる。
「海を渡った国では妖怪の群をなぎ倒し、百人以上の山賊も退治し、依頼の解決率は100%お値段も格安!!
ただみんな気をつけてね、清ちゃんは気分を害すると帰っちゃうからねー」
 どさくさ紛れにさらりと大嘘をつくと、清を指して。
「じゃぁ奥多摩の革命の勇者、清ちゃんの登場でーす」
 と同時に清を灯りが照らし出した。
「みんな、どう?カッコイイでしょう?? ‥‥声が小さいなぁ。そんな事だと帰っちゃうよ? ほらっカッコイイー!!」
「かぁっこいいー」
 微妙に気の入ってないようにも聞こえるが、ともかくも客を温め終えてショウが清へ耳打ちする。
『ほら、清ちゃんここいらで一発何か決めてよ』
 だが緊張でカチコチに固まってる清。観客はその一挙一動を固唾を呑んで見守っている。が、やはりピクリとも動けない清。このままではいけない! と、その時。
 がばっ!
 清がその右拳を勢いよく持ち上げた。群集がざわめく。だが一番驚いているのは清だ。それもそのはず、秤が念力の仕業である。傍目にも、なんか見えない力で無理やり持ち上げられたように見えなくもなかったが‥‥。
(「お膳立ては整えたよん♪ 後は清次第だからねっ?」)
 振り上げた拳の行方を人々はじっと窺っている。もうどうにか纏めるしかない。清がやけになって啖呵を切った。
「‥‥俺が、七唐十一朗を倒す! 親類縁者の‥‥そしてこの奥多摩の民の名に賭けて!!」
 それを合図に、大が立てかけておいた旗を掲げた。
「あらっよっと」
 槍に布をくくりつけた即席の旗だが、それは反抗のシンボル。はためくそこには、豪快な筆致ででかでかと『反上州連合』の文字が。
「これが俺達の決意の証だぁぁ!」
「あははははカッコイイー」
 ショウの拍手が観衆に広がり、盛り上がりは最高潮を迎える。
「裏方組の皆様方、どうぞうちの倅めを宜しくお願い致します!!」
 親父さんも感無量だ。
「まさか出来の悪かった清がこの日ノ本のためにあの七党十一郎を倒そうなどと‥‥この清十郎、倅のためにはどんな協力も惜しまぬ所存! 清!お前も尽忠報国の士として立派な働きを見せるのだぞ! たとえその結果として命を落とそうとも、私はお前を誇りに思う!」
 感涙を止めようともしない親父殿。清の胸にも熱いものが溢れる。
「お、おやじ‥‥」
 その滾る想いを胸に清は強くこう思った。モテるためにはここまでしなければならぬのか、と。(続く)


●次回予告
 結束の儀式を経て、遂に発足した反上州連合。多摩の薬売りから身を立て冒険者となった清は、その長となることで否応なく歴史の荒波に飲み込まれていく。
 立ちはだかる巨大なる敵。七党を相手取っては清達は余りに無力。為すすべなく劣勢においやられた清の取ったのは逆転の一手。松本清は伊党妖華堂の下を訪ねる‥‥! 次号、『松本清無頼帖 ざ・むーびーfinal』、乞うご期待!