●リプレイ本文
連合の放った流言は敵方の策略によって封じ込められた。裏で糸を引いていた紅閃花(ea9884)は敵ながらその手際に舌を巻く。
「さすがに相手も専門家、一筋縄では行かぬと言う事ですか。まあ、それはそれで面白い、結構な事です」
口の端にニヤリと笑み。
「‥‥成功すれば良し、失敗しても私は困らないですしね」
連合の村では道志郎の冒険者らとの折衝が始まり、いよいよ金山攻めへの準備がスタートした。道志郎の名代としてカイ・ローンが村を訪れている。
「九尾だろうが新田勢だろうが、連合を倒す為に無関係な民まで手をかけた以上、ただでは済まさない」
思惑は違えど利害の一致する以上は心強い味方。黒崎流ら連合の冒険者を中心に軍議が始まる。
「先には妖怪の手によって御所が襲撃されたとの報も入っている。この一戦、上州だけでなく日ノ本の未来を大きく左右する戦になるだろう。故郷を、家族を守る為に、志ある者は集い力を貸して欲しい」
敵は新田軍中最強の篠塚伊賀守と、夏の挙兵以来活躍目覚しい外様の華西虎山。この二強が東国随一の山城・金山城にて待ち受ける。それを攻めるのは寄せ集めの民草の兵達。至弱が至強へ立ち向かう、連合の挑戦が始まる――。
というシリアスな展開はおいといて。
「清君‥‥私は、私達は、貴方を助けに来たのですよ?」
大説得大会の一番手は赤霧連(ea3619)。にっこり笑って襖の向こうへ語りかける。
「私は貴方に伝えました。貴方の信じられる仲間になると‥‥私は貴方を助けたい。清君、私のこの手は貴方のその手に届いているでしょうか?」
‥‥しーん。(ガビーン)
流石に清のへたれっぷりは一味違う。とりあえず陰山黒子(eb0568)がメシ抜きにしておいたが音沙汰ナシ。小道具(eb0569)が嘆息付く。
「ホント、流石というか‥‥期待通りっすね。まぁいいっす、そこも含めて清君っす。自分達があぁだこうだ言い始めても仕方がないっす‥‥野郎ども、カチコミじゃー!」
「お葬式の準備はやっておきますので、皆さん思う存分やって下さい」
風花誠心(eb3859)がツラっと真っ黒なことを言った気もするが、戸来朱香佑花(eb0579)のプロデュースの元で裏方組は作戦に取り掛かる。襖の外で宴会をして清をおびき寄せようという題して天岩戸作戦。寿司やらを並べて酒を飲みながら宴会というか通夜というか何か。とりあえず清の席には当面の身代わりにまだら模様の何かの卵を鎮座させて宴会スタート。襖の横にはサウティ・マウンド(eb0576)がスタンバッている。
「いやー、今日は楽しい夜だぜ、なあ清? お前も一緒に呑ろうぜ?な?」
が、無反応。
ヴェルサント・ブランシュ(eb2743)も嘘泣きしながら甘い声を出すが。
「いつも困難に立ち向かう、逞しい清さんの姿に憧れていました」
やっぱり無反応。
1時間経過。
「しかして清君、私は何もできません! 逆に守られに来たといっても過言ではないのですよ!(キラーン☆)」
「清ー、可愛い女の子も一杯だぜ。お前も一緒に楽しもうぜ!」
2時間経過。
「辞めるんなら、今後あの子が清になる‥‥それでも良い?」
「かーっ!この寿司はうめぇな! 頬が落っこちちまうぜ!」
3時間経過。
「これで清君がいてれ来ればもっと楽しいんすけどね」
「盛り上がってきたな!!今夜は果てまで呑み倒そうぜ!」
16時間経過。
「わー楽しいなー」(テンション下がり気味)
何でこうどうでもいいことだけは立派に遣り遂げるんだ清。反応ないまま酒だけは進み、香佑花は目が据わっている。
「‥‥小、とりえあえず脱いでみて‥」
「‥‥き、清君が出てくるなら、か、体の一つや二つくらいなら‥‥」
しかもまんざらでもない様子。天鈿女命よろしく裸踊りでもしてみるかと服に手を掛ける。
その頃清は。
「‥小さんが脱ぐ‥‥(そわそわ)」
ふと顔を起こして清は襖を振り返った。ふと記憶の小の顔が浮かぶ。次々に思い出される小との数々の場面‥‥は全て地獄の特訓の日々。リロード完了と同時にガクガク震えだす清(調教済み)。
「か、勘弁してくれっぜ〜!!」
と、その肩を誰かがぽんと叩いた。
「ねえ、キミもてる為に冒険者になったんだよね」
いつの間に忍び込んだのかマハラ・フィー(ea9028)が微笑を浮かべて立っている。
「聞いたよ南天輝さんを覚えてるかな? わたくしの片思いの相手よ、彼なら自分の為に人が集まったなら全ての人の命を預かる責任を捨てる事はしないわ」
「南天師匠が‥‥」
「キミには皆がついていますわたくし達が信用できませんか? ひどいですわこんなキミでも皆好きだから付いてきたのに裏切る気なんですね」
フィーが顔を伏せて肩を小さく震わせた。あからさまに嘘泣きだが当然見抜けるはずも泣くテンパリ清。どこをどう勘違いしたか抱きつこうとて殴られたりとかして。
さて再び宴会場。
「か、勘弁してくれっぜ〜〜!!」
襖越しに清の声は小の耳に届いていた。ちょうど肩まで脱ぎかけだった手がピタリと止まり、そのままぷるぷると小刻みに震え始める。
「‥き〜〜よ〜〜し〜〜〜‥‥‥!」
こう見えても裏方組は任侠者。小姐さんが怒り心頭と見るや香佑花がすかさず。
「やーっておしまい」
「アラホラサッサー」(どっかーん)
サウティーが襖を吹き飛ばし、清の首を引っ掴んで引きずり出した。すかさず香佑花が胸倉を掴んで。
「ちゃんとしてってお願いしたよね? 忘れた? ここで終わるか、続けるか、清?」
「あわわわわわががが‥」
「清君? 怯えるのは恥ではありません、それはカッコ悪くありません。だけど、女の子を守らないのは最低ですよ」
連がにっこり微笑むと誇らしげに胸を張った。
「大丈夫です!私はこう見えて、守られ上手なのですよ!」
それは威張れることじゃありませんよ連ちゃん?(チーン)
とりあえず清を引きずり出すことには成功したがこれからどう誤魔化してくれようか。連合の仲間にはこの十日は新必殺技の修行中と言っちゃったし何かでっちあげねばならない。
『そういえば清どの、だいぶ痩せやしたね』
この十日とロクに食べてないせいかガリガリに痩せた清はさっきからふらふらしている。これを利用しない手はないと黒子。
『敵の攻撃による僅かな風圧にも柳の如く、その動きは風に舞う木の葉の如し。文字通り餓えた獣のような鋭い眼光は見る者を威圧するに違いないでやすね』
黒小頭巾から覗く口許がニヤリと笑い、同じく何かを思い立ったらしいサウティと相談を始める。黒子が持ってきていためくりを進める。
『命名・当たらなければどうということはないんだっぜ改』
バーン!
「ま〜、ようするに今までの奴と似てるようだが。実はかわしざまに攻撃するっつうしろ物だ。要はカウンターだな」
痩せてふらつく足取りでゆらゆら揺れて紙一重。清が唯一得意な回避から攻撃に転ずる必殺技だ。
「さっき壊しちまった襖もこの必殺技で壊したことにしちまうか!」
「あの、サイウティさん」
とフィーが挙手。
「襖は攻撃してこないので迎撃でないのでは?」
‥‥うーむ。
「なら皆さん、こんなのはどうでしょう☆」
【絶対無敵の微笑】(※スマイル0円)
解説しよう!
それは無償の笑み!!どんな状況下でもけして崩れない100%の笑顔!!
「さ、清君。やってみて下さい?」
「‥‥でへっ」
「むむむ失敗‥‥弱りましたね。ではこんなのならどうでしょう??今度は私が先にお手本を見せますネ」
【偽善使いの制限時間】(※結論6分間)
解説しよう!
それは揺ぎ無い決意の時間!!善でもなく悪でもなく、彼(彼女)を助けるために正義の味方になる時間!!
「来たよ来た来た来ましたよ!正義感みるみるアップ☆ 私だってヒロインになれるのです! さあ清君もご一緒に!!」
「ぎゅんぎゅん来たぜ正義感! 俺、何か強くなったような気がするっぜ!」
すっごい気のせいな感じなのだが本人がやる気になってる内にサクサク進めるが吉だ。今度はヴェルサントが講師をバトンタッチ。
「では私がお教えしますので言われた通りに体を動かしてみて下さい。まずは膝立ちになって下さい。そして上半身を地面に伏して指を立て、膝のバネを溜めて最大の攻撃に備える。これぞ猛虎平臥ノ形です」
土下座に見える気がするがたぶん気のせいだぞ?
「次の奥義は飢えた狼が獲物を前に牙を噛み鳴らして咆哮する様を見立てたもの。咬合力を最大限まで発揮すべく、上下の歯を噛み慣らしながら武者震いに体を震わせる。その名も餓狼想吼牙」
けして現実逃避でしてるんじゃねーぜ?
「最後はこれです。体を180度反転し、あたかも竜が雲を駆け上るが如くに疾走する技。これぞ雲竜尾旋脚」
言っとくが逃亡してる訳じゃないからな?
「‥‥う〜ん」
そんなこんなで急ピッチでの特訓が始まった。清を完全バックアップするために加藤武政(ea0914)の案で冒険者を始めとする側近が隠密血風衆として組織され、清直系の精鋭部隊として主に身の回りの世話で甲斐甲斐しく大活躍。
「清君、お疲れ様です☆」
「着替え用意しといたっすよ。体を拭いたらマッサージするっすね」
分かりやすい性格の清だからおだてられるとホイホイ乗ってきて扱い易いことこの上なし。
「清にも守る物、家庭とか恋人が出来れば、ほら、たくましくなるかなーと」
日中は香佑花の指導で分身同時攻撃技『反転分離攻撃・鏡(ミラー)』やヤクザ系ラフファイト『往生スラスト』の練習が続く。
「こう、いきなり肩口からぶつかる様にして突くの。行くよ、タマ獲ったらァーッ!」
「往生せいやー!」
「声が小さい」
「往生せぃやァーーッ!!!」
ドス振り回しての大特訓は深夜まで続き、その間は誠心や他の仲間達が連合の訓練などに精を出す。
「さあみなさん、お仕事です」
誠心はというと軍の実績と民の支持の獲得を目指して社会奉仕活動を展開。町のゴミ拾い、道の整備、家の補強や挙句はペットの世話など生活に密着しすぎた活動を行う
「こうやって地道な努力を重ねていけば悪い噂も忘れてくれるでしょう」
などという感じで方向性がよく分からなくなったりしていた。
「そうですね。これからの季節は雪像でも作って雪祭りでもやってみしょうか」
夢は広がるばかりだがとりあえず置いといて。同時に冒険者らによって練兵も行われた。今回は連合幹部のアイーダ・ノースフィールドによってスリングがもたらされた。日ノ本では見られないこの武器は連合の隠し玉として軽歩兵隊30人へ支給される。
「スリングは予備の武器として有効よ。こんな風に使うの」
弓の名手であるアイーダが試しに手本を見せ、農民達へスリングが配られる。
「敵も馴染みがないから不意を突けるかも知れないわ。いざという時使えるよう訓練しておいて。さて、次は弓兵隊ね」
弓兵は全開組織した弓の心得のある者達に、野盗からの流入組で素質のある者を選抜して30名程が組織されている。
「弓にとって騎馬隊は脅威ね。でも通常馬なら虚仮威しよ。馬は臆病だから、馬の顔当たりを狙えば、騎手を落馬させる事ができるわ」
騎兵への対策は機動力を如何に封じるか。接近を許す前に集団で狙い、かつ2列の隊伍で射撃の隙をなくす陣を組むこと。遠距離射撃と移動対象への射撃を徹底的に鍛え上げる。
並行して槍兵へも山下剣清による教練が行われている。
「槍は間合いが命だ。なに、お前達が使ってた竹やりと間合いの感覚はさして変わらん。これまでも訓練してきたんだ、自信を持ってやれよ」
次の戦に向けて近接戦闘の部隊強化は急務。城攻めでは短槍が支給されることになっており、前衛としての働きが期待される。
「弓の連中に負けるなよ。お前らが俺たち連合の要となる。肝に銘じておけ」
「ま、集ったからには互いに仲ようやりまひょ」
西園寺更紗が受け持つのは盗賊からの合流組。攻守共に高い練度でバランスの取れた更紗は女の身ながらにその実力で人望を得ている。
「野盗みたいにヤクザな商売やるんよりは、世間様の為に剣を振るう方がやり甲斐もありますやろ」
「だがよ姐さん。ヤクザな稼業ってんなら冒険者だって似たようなもんだろ」
「これは一本取られましたえ」
寄り合せの烏合の衆でしかなかった連合だが、冒険者達の手にとってこうして着実に軍のかたちが出来上がりつつある。裏の林ではミネア・ウェルロッドの指揮で材木が切り出され、手製の盾作りが進んでいる。
「付け焼刃だけど、無いよりはマシだもんね? 後はう〜ん‥‥そうだ、寒中での模擬戦なんかもしてみたいね♪」
「できれば実戦に近い形式がようおすな。検討してみますえ」
一方。
清の修行はというと一日の終わりはフィー達でフィットネスケア。
「清、お薬を用意しておきましたよ」
夜は隠密血風衆で枕元でそっと見守ったり手を握ったりと、ヴェルサントも甲斐甲斐しくお世話。
「この戦が終わったら、ご褒美を上げる」
清の背からギュっと抱きすくめ、耳元で甘く囁く。
「もし失敗したら、お仕置きですよ? フフ。何の心配もありませんよ。二人きりの秘密です。世界が変わるかもしれませんよ?」
「ヴェ、ヴェ‥‥」
「あら、私は構いませんよ。どっちでも」
「ヴェルサントちゃーーーん!!」
ピピーーー!!
「はいそこまで。キスより先は許しません!」
危なくなった所できっちり加藤が乱入しそこから先へは行かせない。屈折した加藤の好意により女性陣はこの時点で退場。生殺しの清は辛抱たまらぬ様子で珍しく加藤に食って掛かった。
「お、俺にもモテさせて欲しいんだっぜ! 立派に冒険者やってモテモテの加藤さんにはこんな俺の気持ちなんか分から――」
「清‥‥」
不意に押し黙る加藤。
俯くと、清の肩に手を掛けて。
「実は清。俺、童貞なんだ」
加藤が顔を上げると二人の視線が合わさって。
加藤の唇の端に苦笑。
清の顔も泣き笑い。
「か、加藤の兄貴ィ‥‥!‥」
・
・
・
そして二日間が過ぎた――!
「見て下さい、修行の成果を。ほらこんなに逞しく」
隠密血風衆のバックアップのもと、清の体はイイ感じにシェイプアップ完了。調教済み。ヴェルサントの声に従って清が修行の成果を披露する。
「猛虎平臥ノ形」
ドゲザッ!
「餓狼想吼牙」
ガクガクブルブル
「雲竜尾旋脚」
とんずらー。
「ほら。この通り(笑)」
チャララララーン。
松本清は逃げだした!
冒険者は1ポイントの経験値を獲得!
冒険者は、反上州連合を手に入れた!
「‥だ、だめだー‥‥!‥」
追記
清が逃げたので香佑花の持ってる斑模様の卵『清』が跡を継いだ模様。
追記の追記
偽清が密かに活躍。農兵の慰問や訓練の指揮を始め細やかなケアで支持率アップ。
もういっちょ
黒子の交渉で清の父親の清十郎から軍資金300両の調達に成功。アイーダ達で物資輸送のための補給部隊も結成され、遂に準備は整った。次は戦争だ。