【金山迷動】 街とか作りますがナニカ?

■シリーズシナリオ


担当:小沢田コミアキ

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:4

参加人数:10人

サポート参加人数:7人

冒険期間:09月20日〜09月30日

リプレイ公開日:2006年09月28日

●オープニング

 太田宿、深夜。
 裏路地を男が一人歩いている。ふらつく足取り、腰には刀を差して浪人風の身なり。酒でも入っているのか千鳥足で男は宿へと向かっていく。その背へ、長い影が忍び寄った。
 影が拳を振り上げる。それは闇を切り裂いて男の頸筋を狙って振り払われた。暗闇に紅く血の花が咲く。
「――!!」
 薄く臭い立った殺気を寸でで嗅ぎ取り、男――義侠塾風羽弐号生は紙一重で身を捩っていた。見切ったのではない。辛うじて躱わせただけに過ぎない。その証拠に、彼の首筋から血が噴出した。表皮は避けて傷は皮一枚で頚動脈へと達しようとしていた。咄嗟に傷口を押さえながら真が振り返った。
「現れやがったな‥‥手前ェか、―――――黒夜叉!」
 その時には既に影は身を翻していた。速い。機敏な身のこなしで影は路地を走り去っていく。その後姿を彼ははっきりとその目にした。全身黒尽くめ、身の丈は真より頭一つ程小さい。それは彼の視界からまたたく間に遠くなった。
 囮となって太田を流していた所に首尾よくひっかかったはいいが、奴はもう二度と彼の前に姿を現すことはないだろう。真の戦闘者としての勘がそう告げていた。いや、獣を追い詰めている感覚に近いだろうか。一度身の危険を嗅ぎ取れば、二度と危険な領域へは踏み込まぬだろう。厄介な話だ。
 黒夜叉には城から賞金がかけられる運びだとの話だ。
「賞金出す事を否定する訳じゃないが、それに目が眩んだ馬鹿共が揃って斬られる前に何とかしたいしな」
 だが思惑とは裏腹に、黒夜叉の犯行はこの日を境にパタリと止んだ。有力な情報もほとんど得られぬまま、黒夜叉は太田の闇へと消えたのである――。

 --------------------------------------------------

C:松本清、上州に立つ!
 清の手により新田方から取り戻されたかに見えた金山の街だが、その実情はかなり厳しい。
 疲弊した清の手勢に代わり、源徳は兵500を金山の城へ差し向けた。事実上、城は源徳に横から浚われたのだ。辛うじて清の腹心である由良具滋が立ち回り、清へ地頭の役職を据えることに成功した。
 金山では、傀儡の地頭である清のもとで遂に新しい街作りがスタートしたのだ。
 
 しかしこの松本清。
 数々の武勇伝を残し遂には難攻不落の金山城を落とした英雄のはずなのだが、その実態はただのヘタレ。冒険者達に苛められながらも神輿兼使いっ走りとして日々慌しく街作りに従事している。
「地頭殿、今日は剣術道場の視察のご予定が入っております」
 新田時代に太田の外れに金狐教の寺院の建立計画が持ち上がったが、完成を見る前に義貞が金山から敗走し、いまだ手付かずのままとなっている。その空き地を借りて、先月から新たに剣術道場が動き出したのだ。
 道場は太田の自警団の窓口ともなっており、練習生から自警団への入団者も見込んでいる。当の団員もここで修練を積んでいる。今日は開場の催しとして小さな試し合戦が予定されている。凄腕の武芸者として知られる清も、ちょうどキヨシ城が非番とあって招かれているのだ。
 道場主の顔を思い出し、キヨシの顔色から血の気が引いていく。
「やだっぜ、絶対にいかないんっぜ! けけけけ剣術はまっぴらなんだっぜ〜!!」

 --------------------------------------------------

D:由良具滋は静やかに考える
 金山城の実質的指導者は清の腹心である由良具滋という男だ。
 元新田重臣でありながら義貞の謀叛を諌めて家中を追われ、金山の民を護持するため今は清の元へ身を寄せる異色の経歴を持つ男だ。彼が源徳との間に立ち回り、この金山の主権を辛うじて留めている。
 太田の実権を握る源徳。そして連合を束ねる張子の虎、清。両者の間に渡された架橋は、たちまち踏み外してしまいそうに危うく細い。
(「現段階では我らが動く足場すら固まってははおらぬ。まずは力を蓄えねば‥‥」)
 金山政策の目玉として施行された楽市楽座を成功させるためには、まだ多くの問題を解決せねばならない。


〇太巖組離反
 新田義貞の手から金山を取り戻すために清と手を組み共に戦った太巌組。清が地頭となった後も影から彼を支えて来た信頼できる同志。だが度重なる城からの援助の打診。無謀な野盗討伐の依頼。そこへ、先月の第二次野盗討伐への外部からの指揮官の派遣。これが決定的な反感を買った。上野の侠客へ根付く反骨の気風を読み損ねた結果がこれであった。
 太巌親分の意思は固い。裏社会への影響力を絶たれたことはこれから清たちへ重い影を落とす――。

〇野盗討伐
 領外を根城にし太田への旅人を襲う野盗たちは駅伝制の最大の癌。敵の動向や本拠もいまだ掴めぬ上、しかも非公式の協力者であった太巌組の離反により討伐の策も潰えた。
 だがこれ以上野盗をのさばらせる訳にはいかない。早急に野盗の本拠を調べ上げ、対策を講じる必要がある。領外へ派兵するには、当の領主の許可を仰ぐ他に、源徳方を刺激せぬような策が必要だ。或いは正規兵を使わずに何か奇策を打つか‥‥?

 現時点で重大な問題がこの2点。
 更に、清の結婚問題や、キヨシ村の開発、自警団の運営、更にはいまだ治まらぬ新田義貞の乱や、華人流入によるトラブルも予想される。
 これらを処理する資金である金山城の金蔵は底をつきつつある。金山の商人への税免除により税収も大幅に落ち込むだろう。そして城内の勢力も一枚岩とは言いがたい現状。この厳しい状況の中で、源徳からの外圧を避けて金山の主権を確保せねばならない。
「金山七千の民を生かすも殺すもすべて我らの胸先三寸。その重い責を自覚し、皆でこの金山の発展に尽力しようぞ」

●今回の参加者

 ea0270 風羽 真(36歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0452 伊珪 小弥太(29歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)
 ea6381 久方 歳三(36歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea8432 香月 八雲(31歳・♀・僧兵・人間・ジャパン)
 eb0576 サウティ・マウンド(59歳・♂・ファイター・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 eb0579 戸来朱 香佑花(21歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb1555 所所楽 林檎(30歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)
 eb2244 クーリア・デルファ(34歳・♀・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 eb3751 アルスダルト・リーゼンベルツ(62歳・♂・ウィザード・エルフ・フランク王国)
 eb3773 鬼切 七十郎(43歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●サポート参加者

タケシ・ダイワ(eb0607)/ キルト・マーガッヅ(eb1118)/ 小野 麻鳥(eb1833)/ 八城 兵衛(eb2196)/ ヴィスコ・ヤンセン(eb2270)/ アルディナル・カーレス(eb2658)/ 平山 弥一郎(eb3534

●リプレイ本文

 城についてからこっち、アルスダルト・リーゼンベルツ(eb3751)は休む間もない。
(「ワシの考えが甘いせいぢゃの。ぢゃが太巌の親分には何としても交渉に応じて頂き軽挙は慎んで貰わねば金山は終わる! それだけは避けねばならん、ワシの命に変えてもぢゃ」)
 老の懸念はけして大袈裟ではない。太巌組との繋がりは金山の生命線だ。裏社会とのパイプをなくせば清の源徳にとっての利用価値はなくなる。事を重く見た戸来朱香佑花(eb0579)は清を伴って謝罪を行うことを決めた。
 清は伊珪小弥太(ea0452)と共にキヨシ城の興行に出たりと、あれで何かと忙しい。だがアルスダルトとしても、野盗討伐に動いている久方歳三(ea6381)やクーリア・デルファ(eb2244)達を待たせる訳にもいかず、この件にばかり余り時間を掛けてもいられない。先方と日程を調整し、遂に会見を持つこととなった。
 共の者を連れて太巌組を訪ねたアルスダルトは開口一番深々と頭を下げた。
「お怒りは尤も。今迄の尽力に際しての見返りの無さ、これまでよう見捨てないでいてくれたと恐縮の限りぢゃ」
「新参のアンタは知らねえだろうが、俺達ゃあ同志だったのよ。今は表と裏に分かれちまったが、根っこの心意気はかわらねえものと信じてたんだぜ」
「ワシ等は甘えておったの‥‥。ぢゃが誤解はせんでくれ、ワシ等は親分を、太厳組を城の部下として扱ったつもりは無いのぢゃ。結果としてそう見えたのならワシの配慮が足りなんだ‥」
 同席していた陸堂明士郎が親分の目を見据えた。静かに、誠実に。かといって媚びることはなく。その様には潔さすら感じる。
「前回の件で不審を抱かれたのなら謝罪致す。だがあの時点ではこちらの要請を拒否する事も出来た筈。それをしなかったのはやはり金山の為を思っての事では無かったのか? それは我等とて同じ」
 権力を嫌い剣侠として生きる陸堂には、彼ら太巌組の上に立ったという気持ちなど毛頭ない。まして彼らは反義貞を共に戦い抜いた同志だ。
「少なくとも自分はそう思って接したつもりだ。全てを理解してくれとは言わない、だが貴殿等を同志と思うこの気持ちだけは信じて頂きたい」
 だが立場が悪かった。頭越しに命令が飛べば、指揮する側と率いられる側、齟齬は避けられない。座は暗い沈黙に包まれる。
 アルスダルトが語りかけた。
「今金山は危機に瀕しておる。意に沿わぬ事でもやらねばならない。お上の都合と笑ってくれても良いがの。頼む、今一度清殿を信じては頂けぬぢゃろうか、共に金山の未来を憂える気持ちは同じの筈、源徳にも新田にもこの金山を渡す訳には行かんのぢゃ‥!」
「ボクからもお願いする」
 香佑花が両手を突いて頭を垂れ、肘で小突かれた清もそれに習う。今までの度重なる金の無心や蔑ろにした非礼を詫びるが、親分は渋い顔のままだ。
「頭を上げな。仮にも人の上に立つ者が軽々しくそんなこたぁするもんじゃねえぜ」
「今後、親分に何か困った事があれば清直属部隊が必ず駆けつけて力になる‥。今度の野盗討伐でも戦利品は全て譲渡して、これまでも借金の返済にあてるから」
「今回は我々だけで野盗征伐に向かう所存。これ以上貴殿等に迷惑はかけぬ」
 陸堂からも口添えし、再び頭を下げる。香佑花もひたすら頭を下げた。
「その他にも催しなどの儲け話は太巌組へも持っていく。これで手打ちにして貰いたい」
「見返りとかそういうんじゃあねえんだよ。話は分かった。‥‥今日の所は帰ってくんな」
 何度頭を下げても答えは変わらない。歩み寄りの道は残されているのだと信じて今日の所は引き返す他ない。陸堂は黙って一礼し、その場を辞した。最後にアルスダルトは呼びかける。
「ワシも清殿も民草の為に立った。その想いは親分も同じでは無いのかの?」
「だがアンタらと俺らあじゃ立場が違う。立場がな」
 そうして一行が引き上げると、奥の襖がそっと開いた。
「いやいや、親分も隅に置けないね。まったく、モテることモテること」
 張り付いたにやけ顔は天山万齢だ。
「キヨシにはガマンならねぇってこったろ? なら簡単な事じゃねぇか。兄さん方がやっちまえば良いんじゃねぇかぃ? 『ごめんなさい』『はいそうですか』って振り上げた拳が降りるわけでもねェだろ? それなら、やる事はそう多くねぇと思うがなァ」
 これまで金山で静観していたこの男が遂に動いたのだ。かつて鬼哭の街で抗争に破れて壊滅しとうとしていた的屋へ手を差し伸べ、後に鬼哭を牛耳るまでに至らせた男。
「天山の旦那よぉ。いっとくが、あの話、俺はまだどっちとも決めた訳じゃねえんだぜ?」
「またまた親分、今さら腹芸かい? 俺はこう見えて美味い飯と儲け話の匂いにゃ敏感でね。俺も一口乗らせてもらうぜ」
 天山が太巌組へ持ち込んだのは新しいシノギの口。
 毎月の市で客の取れる場所を占有するというものだが、その権利をただ売り渡すのではない。優先予約権と銘打ち一種の富籤として売り出そうというのだ。
「当たるも八卦、当たらぬも八卦ってな。だいたい『優先』予約権だぜ? 『絶対』なんて誰も言ってねえよ」
「ったく、悪どいこと考えやがるな。だがこれだきゃあもう一度言っとくぜ。俺の胎ぁまだ決まってねえからな。少なくとも、あの爺さん達の誠意はホンモノだろうよ」


 そんなことをよそに、 太田の街は今日も賑やかだ。
 道場ではサウティ・マウンド(eb0576)が清を鍛えている真っ最中のようだ。知己の所所楽林檎(eb1555)の手伝いでキヨシ村診療所へ出向いていたサウティだが、講習会では出る幕がなくて戻ってきたのだ。
「清、おめぇが他の女の子にデレデレしすぎてっから小は怒って今回来なかったんだぞ? 性根をたたきなおしてやるぜ!」
「剣術はもうこりごりなんだっぜ〜!」
「待て、逃げるな清!」
 清は山向こうのキヨシ村へと一目散に逃げ出した大方、寄合所か、香月八雲(ea8432)達の竹之屋辺りに逃げ込もうというのだろう。
 その金井宿キヨシ村からやって来たシャーリー・ザイオンは、以前に訪ねた太田の木彫り職人の下へ再びやって来ていた。
「なかなかの出来ですね、
 頼んでおいた木彫細工の出来に満足した様子でシャーリーは一頻り頷いた。数点のサンプルと、それから別に頼んでおいた見本用の木炭を手に向かうは金山城。
 さて、城では検察官の鬼切七十郎(eb3773)が張り切っている。
「検察と警察組織は違うとおもうんじゃが、俺ぁ保安官っぽくがんばるぜぃ」
 大胆な司法制度の改革を上申した鬼切であったが、傀儡の一地頭である清にそこまでの力はない。とはいえ、由良の口利きで出来る限りの下地は作って貰ったので後は結果を出すだけである。
「黒夜叉事件も解決しておらんし、黒社会があやしそうじゃし、街に残って地道に足場を固めるとするか」
 御用帳を手に鬼切が城下町へ向かう。商家や町人を訪ね、何か困ったことがないか市井の声を拾ったり、また政庁への要望など広く募るのだ。
「金山で起こっている小さな事件も見逃さねえ。華僑自警団と、やくざの抗争がはじまりそうな感じなんで、刃傷沙汰になる前に食い止めるぜ。一応、夜の見回りもして、不審者は逮捕しとくか」
 黒夜叉事件のこともある。風羽真(ea0270)が犯人と思しき者と遭遇したそうだが、それまでの証拠と食い違って襲撃者の背丈は真より頭一つ程しか変わらなかったという。その情報を仕入れた永峰時雨も首を捻るばかりだ。
「得物が何かまでは分かっていないものの、少なくとも素手ではない、鋭利な刃物によるもの‥‥」
 小面と法衣姿の怪しい風体のこの女は、ギルドを通しての依頼で事件に関わり、以後個人的に犯人の行方を追っているのだという。
「最近は動きが無いとの事ですが、また何かあっては遅いですからね‥‥掴める手がかりは、今のうちに掴んでおきたいのです」


 それから数日の後。
 深夜、太巌組を訪ねる者達がいた。
「拙者は、鬼哭は的屋の用心棒、鷲落大光というものだ御主らの頭に話をしたい。御目通り願えるかな?」
 鬼哭の侠客筋だというその男はどういう訳か華僑からの使いだという女を連れている。
「こっちは丸腰で来たんだ、話も聞かずに追い返すなんて無粋なことはしないだろ?」
 やがて二人は奥の部屋へ案内され、親分と会談を持つこととなった。
「野盗共の拠点を突き止めたんだが存外規模が大きかったんでな、御主らに協力を仰ぎに来た」
「奴らの根城をだ?一体どんな手を使いやがったんだい? そもそもなんでまた武蔵の衆が上野くんだりの野盗なんぞに粉ぁかけようってのかも聞きたいね」
「こちらは駅伝による利益を増加させたいだけだ。利害は一致してる、怪しむ事はあるまい。根城については拙者も何かと顔が広いとだけ言っておくぜ」
「何とも胡散臭えやな。で、そっちの姐さんは」
 親分の反応は芳しくない。さして興味は持たない素振りで傍らの女へ視線を寄越した。
「景大人の名代で参りましたわ、親分。林潤花と申します、以後よしなに」
 手土産の酒状を差し出すと、柄にもなく低い物腰で丁寧に挨拶する。
「先日は不幸な行き違いがあったけど我ら信義を重んじる華僑は侠気のある太巌組とは仲良くしたいと考えているわ」
「回りくどいのは好かねえ。用件を言いな」
「金井宿の件から手を引いて貰いたいわね」
 声音を一転させ、林は切り出した。
「件の野盗は黒夜叉とも噂されているようね。太巌組が討伐を的屋と行うなら、私からも大人へ支援を行うよう働きかけるわ」
「という訳だぜ親分。あんたらには野盗撃退の手柄と奴らが奪った金品を全部やる。こいつがあれば最早城の後ろ盾は要らないだろ? 当てにならない清達と組むよりかマシだと思うがな‥」
「俺達ゃあ傭兵じゃあねえ。元が侍達と斬った張ったする商売じゃあねえのよ。今日はわざわざすまなかったな。ま、‥‥考えとくよ」
「決行は来月、その気があるならそれまでに準備をしておいてくれ」
 帰り道。
 林が別れたのを見計らって鷲落へ男が声をかけた。鳴神破邪斗だ。
「‥おいおい、苦労して調べてきたと言うのに、もうお役御免はないだろう?」
 彼にすれば大した労力でもないが、野盗の本拠を突き止めたのはこの卓越した忍びの仕事だ。
 鷲落が眉を顰めて路地裏へ入った。
「表では何だ。で、何用だ」
「話は聞いた。‥確かにその地図だけでも充分だが‥‥調べた本人が一緒なら、尚確実だと思わんかね?」
 表の顔は自警団に身を置く鳴神。城からの情報も手に入り易かろう。来る野盗討伐では有用な手駒ともなり得る。
「なるほど、してみれば安い買い物かもな。考えておこう」
「‥よい返事を期待している」
 それだけ言葉を交わすと鳴神は再び路地の闇へと消えた。


 由良の執務室では、華僑との交渉を提案しに来たサラン・ヘリオドールを始め、今月も冒険者からの献策が行われた。シャーリーもまた同じく執務室を訪ねている。
「工芸品を土産物として売り出せばよい宣伝材料になります。木炭は燃料として有用ですから、いつか産業を興す時の助けになるでしょう」
「なるほど、金山百年の繁栄を考えれば有益性は理解できる」
「特に木炭は炭焼場が必要です。何とか許可を頂けないでしょうか」
「よろしい。今後、キヨシ城の興行権について華僑と話し合う予定がある。資金に余裕が出れば検討してみよう」
 当座の資金に苦しむ城の金蔵だが、内政面、特に治安の面では少なからず実績を挙げつつある。
 先日執り行われた試し合戦でも自警団が活躍を見せ、また規模を広げたらしい。特に清へ迫った聰暁竜の活躍は目覚しく、自警団内で確固たる地位を築きつつあるようだ。人望だけなら既に団長をも凌ぐ勢いだ。
 一方の鬼切も地道な活動で少しずつ成果を出している。
 恐喝などの事件の影で、幾つか未解決の窃盗などの事件が頻発している。それも、華僑が入植を始めてから右肩上がりだ。
「こいつぁ臭うぜ。キナ臭せえニオイがぷんぷんじゃあ」
 


○おまけ
 今日も天守閣には清と香佑花の姿。
「ボク達、生き別れの兄妹だったの、お兄ちゃん」
「ほ、ホントかっぜ? なら兄妹二人、これからは仲良く‥‥」
「って嘘」
 しょぼーん。
「じゃなくて、ホントは前世で結ばれなかった恋人同士だったの、だから現世で結ばれよう」
「ややややっぱり。実は俺も前からそんな気が‥‥」
「って嘘」
 しょぼぼーん。
 掛け合いは清が人間不信になるまで続けられたとか。