【求めしもの】道行の導を見つける為に。

■シリーズシナリオ


担当:蓮華・水無月

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:4 G 15 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:03月15日〜03月20日

リプレイ公開日:2009年03月23日

●オープニング

 王宮のとある一室で、グウェイン・レギンスは上官に報告を行っていた。

「‥‥ってワケで、どうやらカオスの魔物は村に隠されている『かも知れない』何かを探してたらしいぜ」
「ははぁ、それはそれは、大変だった事で」

 上官に対するとは思えない口調で報告を締めくくるグウェインに、特にそれを咎め立てる様子もない上官。と言うのも彼らは冒険者時代からの知り合いだったし、幸いにしてここには互い以外の人目がない、という気安さもある。
 とは言え、態度は気安いが互いに仕事は真面目にこなす。案の定、グウェインの話を熟考するように黙りこくってテーブルを見下ろした男が、再び口を開くのをグウェインは大人しく待ちの体勢に入った。





 北の街道筋で、村が魔物に占拠された事件。
 無事に村人を救出する事に成功した冒険者達は、捕まえた首魁の魔物の代理・火を放つ者から、彼らは『鍵』なる品を探す為、この村を占拠して村人を使役していたと言う事を聞き出した。それは火を放つ者の主が、ジ・アースを跳梁跋扈すると言うデビルなる魔物に依頼された品であり、どんな物なのかは詳しく判っていない。だが力ある品であり、故に宝物などに詳しい魔物がその任を任され。
 デビル達が最後にその品のありかを確認したと言う、その村をまずは徹底的に荒らし回っていたのだと言う。

「‥‥そりゃ判断に困るなあ」

 しばしの沈黙の後、特に困った様子でもなくそんな事をうそぶいた上官に、グウェインは鼻にしわを寄せて眇め見る。

「何に困るってんだ? 首魁は捕まえられなかったんだぜ、このままほっといたら同じ事が続くだけだろ。だったら先手必勝、ヤツラが見つける前にその『鍵』とやらを見つけようぜ」
「それは勿論、そうなんだが。だが魔物が探している品を我々が見つけたとして、今度は我々に魔物の矛先が向くだろう? それを迎え撃つならそれなりの準備が必要になる。私のような部隊長レベルの人間が、判断する訳には行かないだろう」

 上官の言葉はもっともらしく、それ故にグウェインはますます顔をしかめて男を見返した。
 言ってる事は、ある意味では正しい。魔物の被害を打ち切るために『鍵』を先に確保する、と言うのなら魔物に此方が『鍵』を持っていることを知らしめなければならないし、そうすれば要らない厄介ごとを自ら招き入れる事になる。そしてそれを退ける為に、恐らくはかなりの手勢を投入しなければならない作戦を、上に計らず現場レベルで勝手に判断する事も出来ない。
 だがしかし、そんな理屈ではいそうですかと納得出来るようなら、そもそもグウェインは冒険者なんて生業をやってなかった訳で。
 剣呑な表情になった部下に、男が苦笑する。

「グウェイン、話は最後まで聞け。‥‥私が判断する訳にはいかないが、それまでに新たな被害が出れば動かざるを得ないだろう。第一、上に計るにはより多くの情報が必要だ。魔物が何を狙っているのか、それは本当に存在するのか、だとすればどんなものなのか、そして現在どこにあるのか」
「‥‥俺にそれを調べろってか?」
「だってお前は昔から、一度受けた依頼には絶対に最後まで付き合っただろう」

 一度関わった事態から離れるなんて出来ないだろう、と暗に言われてグウェインはニヤリと笑う。全く、彼の言う通りだ。もしこれでグウェインを外すようなら、この男を殴って、1人でだって追うつもりだった。
 その笑みに、やれやれ、と男はまた苦笑する。この率直な所がグウェインの良い所であり、同時に王宮という枠に所属するには窮屈な部分でもある。
 だがこういう男だから、彼はグウェインを冒険者を辞めて自分の元に来るよう口説き落としたのだ。
 嬉しそうにグウェインが言う。

「なら早速、冒険者ギルドに依頼を出してくるぜ! 取り敢えずは今回の村の周りを徹底的に調査だな。ついでに王宮図書館の資料を調べさせて貰えるよう頼んでもらって、これはティーが図書館司書と知り合いだって言ってたから伝手を辿ってもらうとして。よっし、ティー、お兄ちゃんが今行くから待ってろよ♪」

 ‥‥妙にうきうきとした足取りで出て行った、あの徹底したシスコン振りがなければもっと良いんだが、と言う言葉は胸の中に仕舞いこんで、男は部下を見送った。

●今回の参加者

 ea1458 リオン・ラーディナス(31歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea1819 シン・ウィンドフェザー(40歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea2449 オルステッド・ブライオン(23歳・♂・ファイター・エルフ・フランク王国)
 ea3486 オラース・カノーヴァ(31歳・♂・鎧騎士・人間・ノルマン王国)
 ea5513 アリシア・ルクレチア(22歳・♀・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 ec4371 晃 塁郁(33歳・♀・僧兵・ハーフエルフ・華仙教大国)
 ec4600 ギエーリ・タンデ(31歳・♂・ゴーレムニスト・エルフ・アトランティス)
 ec4873 サイクザエラ・マイ(42歳・♂・天界人・人間・天界(地球))

●リプレイ本文

 どことも知れない闇の中で。

「ああもう、マジむかつくんだけど! 何なのあの役立たず! 前に偵察に行った時も狼引き連れてった割に逃げ帰ってくるし!」

 頭から湯気を出しそうな勢いで怒る、妙齢の女性の姿があった。ついでにそこらに居た魔物を蹴り飛ばすが気分は晴れない。
 台風の様に暴れまわりながら口汚く罵り続けていた彼女は、不意に聞こえた主の言葉に耳を澄ませ、ふん、と鼻を鳴らして唇を尖らせた。

「そ、そりゃ主様がそう仰るんなら。でもホントにデビルのヤツラが言ってる『鍵』なんてあるんですか?」

 正直、彼女は『鍵』とやらが見つかろうと見つかるまいとどうでも良い。でも主がそれに興味を持ってるし、力の込められた品ならば骨董知識マニアの彼女としても興味はそそられるし、適当に人間も殺せそうだから探しているだけだ。例の村では彼女好みの屍にするのに良さそうな人間もあまり居なくてストレス溜まったけど。
 そんな風に、しばらくブツブツと文句を言っていたが。

「ま、今後に期待、ってトコですね! 私好みのボーヤも来てるみたいだし、まずは冒険者のお手並み拝見☆」

 かつて一度見えた冒険者、彼の屍を手に入れるチャンスかしら、とワクワクしながら彼女は闇の中に姿を消した。





 さて、件の村は北に登る街道筋の途中、ウィルから馬で1日半ほど行った場所にある。もう少し北に上ればやや大きな町があり、街道から逸れて西の崖を迂回するように大きく回り込めばまた別の村があった。東にずっと行った所にももう一つ町があるのだが、この町は年明け頃に疫病に倒れ、旅人は勿論周辺住民も近付くのは避けている現状。
 それらの情報を確認し合った現地調査組は、互いの無事を祈り合って三々五々に駆けて行く。村に居た魔物は殲滅したが、魔物自体が村を諦めたとは考えにくい。むしろ更なる手勢を率いてやって来ている可能性もある。
 そんな村の調査に名乗りを上げたのはオルステッド・ブライオン(ea2449)とオラース・カノーヴァ(ea3486)だ。危険もあるが、逆を言えば魔物と接触するチャンスとも言える。下級の魔物が何かを探している場面に出会ったら、わざと泳がせて獲物を横取りすると言うのもアリか‥‥などなど、考えながら魔物の傷跡も生々しい廃村一歩手前の村を訪れた。
 事前にグウェインに聞いた所に寄れば村人は近隣の町や村に収容され、帰宅は禁じられている。だが見張りを置いているわけではないので、慣れ親しんだ村を離れ難い幾人かはこっそり村に戻って居た。2人は一瞬顔を見合わせ、互いに石の中の蝶を見ながら行動を開始する。
 一方、近隣の町の調査を選択した晃塁郁(ec4371)は、途中購入したスクロールを片手に避難中の村人や、住人達に話を聞いて回っていた。

「最近奇妙な病が広がったという話や場所はありますか?」
「さあ‥‥東の町は疫病が流行って大変だったと聞いたけど、この町では‥‥」

 首を振ったり、捻ったりしながら語られる話を記録し、デティクトアンデッドで入り込んだ魔物が居ないかも確認する。幸い、怪我人や病人などはこの町には居ないようだ。生憎セトタ語は習い覚えていないが、後で記録を見ながら仲間に報告すれば良い。
 そうしながら昔話や伝承など、古い言い伝えの様なものを知らないか、と尋ねて回る塁郁の補佐をするのは、リオン・ラーディナス(ea1458)だ。にぱッ、と気さくな笑顔で住人達に、この辺の昔話を教えてくれと頼んでいる。

「さて、連中が占拠していた以上、何かしらの根拠があっての事だろうが‥‥」

 調査開始前にもシン・ウィンドフェザー(ea1819)がそう言っていた通り、デビルが最後に『鍵』の行方を確認したのがあの村だとしても、その後も占拠し続けたのには何か理由がある筈。ならばその理由はなんなのか、それを探るのが今回の目的だ。
 同じ事はウィルに残って王宮図書館所蔵の資料調査に当たる者にも言えた。ギエーリ・タンデ(ec4600)が先日言っていたが、文字は時を越えて情報を伝えるもの。口伝では変容したり、廃れてしまった情報も、書物には残っている可能性がある。勿論逆もまた然りだが。
 先日の図書館の騒動の折、夫とギエーリが用意しておいてくれた書物の山を前に、アリシア・ルクレチア(ea5513)も気合を入れた。『鍵』そのものについては、ジ・アースでそれらしき魔杖があったと聞くし、サイクザエラ・マイ(ec4873)が月道を通って(故郷の地球に帰れるかと思ったらしい)聞いてきた所に寄れば、高位のデビルを封印出来る程に力ある存在が『冠』たりえるとか。
 ならばカオスの魔物が探していた品も、その様なものか、或いは『誰か』なのかもしれない。

「まずは村のある地方の伝承や御伽噺を調べてみましょう。それに、近隣に住まっておられた方の日記も手ですな」
「運良くその様な好事家が居られれば、ですね。その地域にあった遺跡など古代の遺物に関する情報もあれば良いかも知れませんわ。私はまず、カオスの魔物に関する分析や、対抗手段を集めた調査文献の資料を探してみようと思います」
「私も伝承や関連の書物を当たってみよう。地獄で戦った時に気になった事もあるんでね」
「ん。じゃあ俺は精霊について調べるぜ。後は足りない本を取って来るとか、要らない本を片付けるとか適当に使ってくれ」

 最後にグウェインが肩をすくめてそう言って、冒険者達はそれぞれ目的に見合った本を山の中から発掘し始めた。調査結果はサイクザエラがスクロールにまとめていく事にする。調べているうちは判らなくても、後で読み返せば何か判るかも知れない。
 ちなみにこの後、本を抱えて駆けずり回るグウェインの姿がしばらく王宮図書館の名物となったとか。





 オラースとオルステッドは、わずかな村人と共に魔物が荒らして行った惨状の後片付けに取り組んでいた。
 戻ってきていた村人は当初、余所者の姿に警戒を抱いた。街道筋の村では旅人は珍しくないが、この村を襲った『死屍人形遣い』はそれを逆手に取り、旅の踊り子のふりをしてこの村に入り込んで、歓迎する村人達を殺して屍を操り、抵抗の気力を奪った上で配下の魔物を引き込んだからだ。
 だが救出作戦に携わったオルステッドの姿を見知った者がいた事、そして例えあんな事があってもこの村が旅人の為にある村だと言う事は変わらない、と言う老人のお陰で、2人は受け入れられ、戻ってきている村人を手伝いながら改めて、何か心当たりはないか、と尋ねた。

「‥‥そもそも、連中の宝なぞこちらの人間には認知されていないのかもしれない‥‥或いはごくごくありふれたものこそが宝かも‥‥」

 すでに村人が思いつく限りの『宝』は魔物に差し出している。そのすべてが『鍵』ではないのなら、極端な話、杖か農具か、ありふれた日用品である可能性すら否定出来ないのではないか。
 そう尋ねられても、日用品であれば尚更思いつかない、と村人達は首を振る。オラースも仕事の合間に近隣を馬で駆け回ったり、水汲み池や井戸の底を攫ったり、果ては箒で空を飛んで上空から不審物を探したりしたが、目ぼしいものは見当たらず。
 それでも諦めず、地道に探索と聞き込みを続ける冒険者達に、役に立つかは判らんが、と老人が言った。

「わしが生まれる前の話だがね、一人の娘の旅人が村に来たそうじゃ。どんなお人かは伝わっとらんが、その娘が旅立つ時、彼女に恋焦がれた若者が後を追って行ったというよ‥‥この村で変わった事と言えば、魔物の他にはその位だねぇ」

 そうか、と頷いたオラースはハッと石の中の蝶に視線をやる。かすかに、震えるようにその羽根が動いていた。だがすぐにその羽ばたきは止まり、辺りをどれほど探してももう蝶はピクリとも動かなかった。





 幾つ目になるのか、近隣を回っていた冒険者達がようやくそれらしい話に行き当たったのは、街道をさらに北に登って4つ目にある町だった。

「言い伝え‥‥と言うほどのモンでもないが。この町には昔、変わり者の爺さんが住んでたらしいぜ」

 首を傾げながら言った青年が語った所に寄れば、その老人はある日ふらりとやってきて、町外れのあばら家に住み着いた。若い頃からあちこち回ってきたとかで、色々珍しい話も聞かせてくれたが、竜と友達になったとか、海の向こうに国があるとか、陽精霊は丸いとか、大半はあり得ない様な作り話ばかりだった。
 ただ、それを除けば老人は至って真面目で礼儀正しく、薬草知識も豊富だった為、人々は老人と親しく付き合った。老人はそれに感謝し、人々に請われれば快く薬草を煎じてやったと言う。

「で、その爺さんはどうなったんだ?」
「さぁ。死んだんだろ? 俺はそう言う変わり者がいた、って聞いただけだしなぁ」

 シンの言葉に青年はひょい、と肩をすくめて首を振り。その後幾人かを捕まえて同じように話を聞きまわり、ようやく断片的に聞き取れた話を繋ぎ合わせていくと。

「変わり者のお爺さんが居て、亡くなった後はどこかに埋葬されたらしい。とても大切にしていた物があったと言われてるけど、誰もそれを見たことがない、かぁ」
「どこに埋葬されたのかは判らない、と言う事でしたね‥‥その大切にしていた品と言うのも、確認出来れば良かったのですが」

 レオンの言葉に、塁郁がため息交じりに相槌を打つ。
 すでに老人が住んでいたあばら家は時の流れに耐えかねて老朽化し、危険だと言う事で取り壊されたと言う。元から何も持っていなかったのか誰かが取っていったのか、中には椅子や机、ベッドと言った家具位しかなかったらしい。
 後は仲間と合流して、情報を交換し合うしかないだろうか。そう考えながらこれまでと同じくデティクトアンデットを唱えた塁郁は、ハッ、と目を見張った。

「魔物の反応が‥‥ッ!」
「何ッ!?」
「どこだ!」

 リオンとシンも得物に手をかけながら、鋭い視線で辺りを見回す。だが辺りにそれらしい影はなく、デティクトアンデットももはや何の反応も示さなかった。





 図書館資料調査組は、日夜書物の山を積んでは崩し、積んでは崩し、と言った具合で調査に励んでいた。
 グウェインが図書館司書に交渉し、夜も使わせて貰える事になったので、交替で休憩と仮眠を取りつつ書物を紐解いていく。ちなみに「何、私も司書室で本を読んでおりますので」とは件の図書館司書の弁だ。
 まずはロード・ガイ時代の書物から調べて見る、と言ったギエーリは今は、ペンドラゴン時代の伝承を書き留めた書物を読んでいて。アリシアは伝説の剣やら盾やら矛やら杖やら、とにかく出てきたアイテムをテーブルに置かれたサイクザエラのスクロールに書き留めていき。そのサイクザエラはカオスの魔物について書かれた書物に目を通し続けている。グウェインも精霊について調べる傍ら、書物の出し入れをしたり、休憩用にお茶を用意したり。
 やがて5日目の朝がやってきて、ようやく彼らは疲れ切った顔を見合わせ、調査の成果たるスクロールを見下ろした。時々ミミズがのたくったような字になっているのはご愛嬌だ。
 書かれている量は多岐に渡り、すべてを検証する事は難しい。だが今回の事件の舞台たる村がある地域で、と限定すると

「ペンドラゴンの時代、月精霊を従えた娘が空より舞い降りてきて、人間の若者を連れ去った、という伝承があるようです」
「何だそれ、人攫いか? 私の方ではさすがに、デビルに関する記述は見当たらなかったな――ああ、数十年前に居た賢者とか呼ばれてたヤツが、天界にもカオスの魔物が居る、と預言したらしいが、当時は戯言と受け取られたらしい」
「‥‥その賢者はもしかして、アランドール・ビートリッヒという人物でしょうか? 私が調べたアイテムの中に、賢者アランドール・ビートリッヒが生涯肌身離さず大切に持っていた品物で、精霊から譲り受けた首飾り、と言うモノがありましたわ」

 サイクザエラの言葉に、アリシアが驚いて積み上げた本の中から目的の本を抜き出し、幾つか付箋が挟んであるうちの一箇所のページを開いて仲間に見せた。そこに記載されていたのは彼女の言葉通りの文章。
 かつて賢者と呼ばれた老アランドール・ビートリッヒが若い頃に精霊から譲り受けたと言う首飾りを持っていた。彼はその首飾りを生涯肌身離さず大切に守り、彼の死後その首飾りは彼と共に埋葬された、と言う。
 ふん、とグウェインが唇をへの字に曲げた。

「そいつが本当に賢者だったかは知らねぇけど、その首飾りは普通に怪しいよな」
「ええ‥‥でもこの人物は、本によっては伝説上の人物、と言われています」
「だとしてもモデルになった人物は居るでしょうな。ふむ、その話がこの地域に伝わっている、というのも興味深い一致です」
「天界から来た人間なんじゃないのか? デビル、という概念はこの世界の人間には伝わらないから、天界のカオスの魔物、という言い方をしたとも考えられる――同じ姿だしな」

 何しろ調査に加わったギエーリ自身が、デビルとは天界のカオスの魔物の事でしたよね、と言っている位なのだ。グウェインも、知識としてデビルと言う存在がジ・アースの魔物だと認識しては居るが、ようはカオスの魔物の事だろ? とか思っていたり。先日火を放つ者がデビルに対して散々愚痴っているのを聞いて初めて違うモンなんだ、と知った。
 あとは現地調査組が調べてきた事と併せて検討するか、と言いながらも新たな書物に手を伸ばした冒険者達に気付かれぬよう、窓の下から巨大な蝿が飛び立った。





 冒険期間の都合もあり、一旦ウィルへと戻った冒険者達は、グウェインに調査結果を報告してひとまずの依頼を終えた。グウェインは冒険者の協力に謝意を述べた上で「後は俺と上司で検討してみるぜ! ああでも、無料奉仕はいつでも大歓迎だ」と宣言して、聞いていた妹ティファレナ・レギンスに散々怒られ。

「おい、妹さんを紹介してくれよ、義兄さん」
「何ぃ‥‥? オラース、テメェ、オレのティーに目をつけるとは、見所はあるが命が惜しくねぇらしいな‥‥しかもテメェに『義兄さん』とか呼ばれる筋合いはねぇぜ!?」
「兄さん、いい加減にしてください! オラースさんも、そういう冗談を仰って兄をからかわないで下さい!」

 そんなやり取りの決着は、後日別の場所で着けられる事になる。ちなみに『鍵』捜索とは勿論、何の関係もない。