●リプレイ本文
「んで、集まったのがまーたこういう奴等か。なんか一部見かけた気がするがー」
「覚えてないのでござるか!?」
「んむ、全くといっていいほど」
船の上。乗り込んで竜祐の一発目の言葉がそれだった。
京都は今や死人の群れが沢山いると聞く。そんな中京都に行くという事で護衛を受けた冒険者達。
特に、暮空銅鑼衛門(ea1467)は竜祐がその黄泉軍討伐に志願しにいくものとばかり思っているようだ。
ありえない話なのになぁ‥‥。
「で?女医さんに薬をって頼まれたの?」
「あぁ。どうやらそうらしいんだが名前聞いてくるの忘れたな‥‥」
「まぁ、有名らしいし、すぐ見つかるって思おうよ」
空漸司影華(ea4183)が宥めるように言う。
色町へいくんじゃないかと疑った影華は、やっぱり同行する事にしたらしいのだ。
さて。本当に無事京都へと辿りつけるのであろうか?
●竜祐、京都に立つ!
「ふいー!着いた、着いた!」
船での長旅はやっと終わった。京都に無事到着したのだ。
其処には幾人もの兵の姿も見える。黄泉軍と戦っている者達なのだろう。
けれども、彼等にはそれは関係はない。
今は別の依頼をこなさなくてはならないのだから。
「ここが京都かぁ‥‥江戸とは雰囲気が違うなぁ‥‥」
「さぁて、まずは仕事として‥‥」
(「あら?珍しく仕事に‥‥」)
「色町見学と行くか♪」
竜祐の言葉に、影華はがっくしと肩を落とす。
一瞬でも期待した自分がバカだった、と。
「ちょ‥‥ちょっと!?お仕事が先でしょう!?」
「仕事が終わったら行っていいんだなっ!?」
影華の言葉に、竜祐が勢いよく尋問。
どうやら相手の策に嵌ったようだ。
「しっ、仕方ないわね‥‥でも、見学だけよ!?」
「色町ってただ眩しいだけなのに、どうして怒るのかしらっ?」
ジュディス・ティラナ(ea4475)がさりげなくそのつもりはなくとも竜祐の援護に入っている。
どうやら何かを勘違いしているようで、行って見たいようだ。
「ほれほれ竜祐君、さっさと薬を渡す相手を探したまえ〜」
影華を援護するのはトマス・ウェスト(ea8714)。やっぱり仕事がいいらしい。
「よし、竜祐。俺と一緒に色町に行こうか!」
「おぉ、お前なら分かってくれると思ってたぜ!おゼゼはお前もちなっ!」
そんな会話を八神鬼王丸(ea8353)と繰り広げ始める。
ヤバイ。このままでは非常にやばいぞ!
「‥‥私達だけで探した方がいい気がします‥‥」
「それもそうね。男に任せるのは間違ってるのかも」
「待った!我輩は仕事優先だぞ!?」
ティアナ・クレイン(ea8333)と影華の会話にツッコミを入れるトマス。本当にこのままでやっていけるのだろうか。
結局、クリス・ウェルロッド(ea5708)が竜祐の首をひっ掴んで、女医さん探しに移行するのである。
●謎の女医さんを追え!
「とりあえず、ここいらで聞き込みでもしてみるか。有名な医者なんだろ?」
「‥‥しかし女医さんにはあまりいい思い出ないんだよなぁ‥‥この間はハリセンでどつかれたし‥‥」
そうぼやくのは前回葬らんされたオイシイ男、九十九嵐童(ea3220)だ。
どうやらかなりの女医さん恐怖症に陥っているようだ。
「とにかく、聞き込みにいくわよっ!あのー、すいませーん!」
「はい?何か御用ですか?」
影華が立ち止まらせたのは綺麗なエルフの少女。
綺麗な長い金髪で、緋色の目。そして服装はまるで看護婦のような真っ白い格好。
「あの、聞きたい事があるんですけど、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫ですけれど。何か?」
「実は私達、殺女という女性を探していて‥‥」
『殺女!?』
同時に叫んだのはエルフの少女と竜祐だった。
エルフの方はどうもびっくりしているようで、竜祐の方はちぃっと舌打ちを打つ。
「お前等、まさか渡す相手の事知ってて俺を連れて行くのか!?」
「え?でも、竜凱さんから頼まれたのはあなたでしょ?少しは仕事してくれていればこーいう事には‥‥」
「俺はここで待つ!あの女のとこになんざ絶対いかねぇ!」
どうもその女医さんと竜祐は仲が悪いようで、どうしても竜祐はイヤだという。
強引にでも連れて行ってもいいんだろうが、流石に其処で暴れられても困る。
「仕方ないですね。クリスさん、彼の見張りをお願いします」
「分かりました。後のお方は其方に行っても‥‥」
「あたしはいくわよっ!?いっぱい光ってるのみたいものっ♪」
「むむむむむ〜〜、京の都は今はもはや危険極まりないでござる〜〜!!ジュディちゃんがかようなところへ‥‥いいい色町へいっくくくうくと?!?!?!危険でござる〜〜〜読み人に食べられるでござ縷々縷々〜〜〜〜!」
ドサリ。どうやら銅鑼衛門は頭から血を流して再起不能に。
可愛い娘とも思っているような子が色町に行きたいというのだから、こうなっても当然か。
「あ、あの‥‥殺女先生をお探しなのでしたら、私がご案内しますよ?」
会話に入れずおどおどとしていた少女が、やっと会話に入り込む。
「けひゃひゃ!それじゃご案内お願いしようかね〜」
「はい、任せておいてください」
ここで運命の別れ道が出来るのであった。
●色町組。
「やれやれ‥‥どうしてそうも嫌がるんです?」
「あの女だけはイヤなんだよ、どうしても!」
「女好きで有名なあんたが珍しいこともあるもんだな?」
鬼王丸がけらけらと笑う中、結局ついてきたジュディスはわくわくとして辺りを見ている。
「何処からが色町なのかしらっ?あたし、凄く楽しみだわっ♪」
「ジュディスさん、楽しむようなものはないですよ?」
クリスが苦笑を浮かべ、溜息をつく。
そんな時。そう、ここから。女難への道が一歩踏み出されるのである。
トントン。
クリスの肩を叩く手。振り返るクリス。
其処にいたのは男。見た感じではごく普通の男。
「綺麗な顔した姉ちゃんじゃねぇか〜。俺と一緒に遊んでいかね〜?」
クリスにとっては恐れていた事が発生!男にターゲッティングされたようだっ!
「ち、ちょっとまってください!?私はおと‥‥!」
「! ‥‥可愛らしいっしょ?旦那、幾らで持っていきます?」
更にゼゼが貰えると睨んだ竜祐がまさかの裏切りを見せる!
「竜祐さん!?私はおと‥‥!」
「いいねぇ‥‥ならこんぐらいでどーだ?」
「もう一声!5Gでどうっすか?」
「高いが仕方ねぇ!よし、ちょっと借りてくぜっ!」
「勝手に商談成立しないでください〜〜〜〜!」
「クリスさん、どっかいくの〜?頑張ってね〜☆」
ジュディスの声がクリスにとっては災難を示していた。
「さーて、ゼゼは揃った!後は色町に行くだけなんだがー‥‥」
「後はコレ、だな」
チラリとジュディスを見る竜祐と鬼王丸。
確かに子供がいると、流石に色町には入れて貰えない。
ここはどうにかしてまかなければ‥‥!
「なぁ、ジュディス?お前、色町ってどんなとこか知ってるのか?」
「知ってるわよっ!お坊さんがいっぱい歩いていて眩しいんでしょっ?」
「‥‥そーかそーか。お坊さんが好きならあっちの方にいっぱい光ってる人がいたぞー?」
鬼王丸の言葉を聴いて、ジュディスは一目散に示された方角へと走り出す。
残った二人はハイタッチ。急いで色町へと向かうのである。
●女医の正体は‥‥!
「へぇ、ここが診療所なの?」
人気が賑わうところにある小さな診療所。其処には怪我人が沢山運ばれている。
どうやら黄泉軍との戦いで負傷した者達なのだろう。
「あ、はい。先生!只今戻りました!」
(「そういえば、この女性。誰かに似てるな〜?」)
トマスはトマスで少し上の空。影華とティアナ。そして嵐童が次々へと中へと入っていく。
他の医者らしき人物は何処にも見当たらない。出かけているはずはないと、少女は言う。
「もしかしたら奥にいるのかも知れませんね。先生ー?殺女先生ー?」
「何回も呼ばなくても聞こえてるわよ」
「うわっ!?」
影華達の背後から声がした。振り返ってみると其処には見覚えのある女性。
どうやら彼女が殺女のようだ。
「あら、貴方達って確か江戸の色町にもいなかったかしら?」
「あ、は、はいっ!私達、竜祐さんのお使いでお薬を渡しに‥‥」
「竜祐?来てるの、あいつ?」
殺女が尋ねると、嵐童は少し強張った笑顔でこくこくとうなずく。
どうやら恐怖症の症状が出てきているらしい。
「ふぅん。竜凱が適任者に渡したっていうから誰かと思えば竜祐だったのね。でも、あいつの姿は見えないようだけど?」
「多分、また色町にいってると思います‥‥」
「また?仕方ない奴‥‥まぁ、いいわ。後で私が何とかするから。それより、薬、貰える?」
「あ、はい。これです。竜凱さんからのものです」
「‥‥ふむ。確かに竜凱からのものね。ありがと、感謝するわ。どうしても京都から離れられなくてね。現状が現状だから」
殺女が苦笑しながらそう言う。確かに、今はみんなが懸命に戦っている時期なのだ。
それにしても患者の数が多い‥‥。一人で全て対応しているらしい。
「あ、あの。私達でよければお手伝いを‥‥」
「そう?なら手伝ってもらえる?助手は一人いるんだけど手が足りなくって」
「助手?そういえばさっき案内してくれた女の子が‥‥」
「エレクトラ!早く手伝って頂戴っ!」
「は、はい!今すぐっ!」
慌てて奥から出てきたエレクトラを見て、トマスの動きが停止する。
ふるふる、わなわなと震えながらエレクトラの肩を掴む。
「ま、まさかジュリアンヌ?!い、いや、あなたは死んだはずです‥‥!」
「えっ、えっ‥‥えぇっ!?」
どうやらトマスの何かにヒットしたらしい。どうやら死んだ妹をエレクトラに重ねているらしのいだが。
「何?新手のナンパなの、あれ?」
「さ、さぁ?」
「にしても、パターン過ぎますよね」
冷静にツッコミを入れていく女性陣。そして、今だと思って嵐童は診察所から抜け出し、色町へと走る。
彼の武勇伝は最後に語ることになるが。
「殺女先生、病人です!」
「えぇっ!?またなの!?」
運ばれてきた見覚えのある姿、形。銅鑼衛門だ。
どうやら頭から血出してるの放置していたのが見つかったらしい。
「これもあんた達の知り合いよね?」
「せっ、せんせぇ〜〜!助けてくださあぁ〜〜いっ!」
未だに捕まっているエレクトラ。もうこの場の混乱は収まらない。
「人の助手にちょっかい出す暇があったら少しは医者らしく手伝いなさいッ!」
遂に殺女の巨大ハリセンが火を吹いた。まぁ、お約束。お星様第一号はトマスだった。
●最後のシメは。
「ふぃー‥‥まさかあの女医さんが殺女だったなんてなー‥‥」
遠くから聞こえる騒音。影華達がようやく気づいて追ってきているようだ。
やはり仕事が終わっても色町へいくことは赦されないのだろうか。
「‥‥俺にはまだ、やるべき事がある‥‥色町詳細図(京都編)を完成させるという使命が!それが終わるまで、俺は逃げ延びてやるっ!!」
「アンタ、それ何に使うつもりで作ってるわけ!?」
「趣味だ!浪漫だ!何が悪いかっ!」
「悪いに決まってるでしょう!?仕事を先に片付けなさいッ!」
怒鳴り声な影華。懸命に走る二人。
しかし、途中で影華がぴたりと走るのをやめた。
「諦めたか‥‥?」
と、思って前を見ると。前方にはいつの間に回り込んだのか、殺女の姿。
しかも気配まで消していたところからして嵐童と同業者の恐れもある。そう察知する。
「いい加減に‥‥」
「! 来るか、ハリセン!?しかし、俺は二度も同じ手には‥‥!」
「静かになさいっていってるでしょうっ!?」
‥‥きらんっ。
やっぱり飛ばされる嵐童。しかも今回は特大ハンマー。
どうやって持ってるんだ‥‥?というツッコミはナシにしておこう。
追伸。
その後、ジュディスはエレクトラに何とか捕獲され、鬼王丸は影華に。竜祐は殺女に捕まり事なきを得た。
しかし‥‥。
誰か一人忘れているのは、気のせいなのだろうか‥‥。
「ですからぁっ!私はおと‥‥!」
「強がる女ってのも悪くはねぇなぁ〜」
「人の話を最後まで‥‥ッ!」