【失われたモノを探して】 洞窟で探せ!

■シリーズシナリオ


担当:雪端為成

対応レベル:6〜10lv

難易度:難しい

成功報酬:5 G 40 C

参加人数:6人

サポート参加人数:3人

冒険期間:10月18日〜10月25日

リプレイ公開日:2007年10月29日

●オープニング

 遺跡発掘を進める冒険者たちと、アラン先生。
 彼らは前回、環状列石の遺跡の地下にて、隠された祭壇を発見した。
 祭壇には水晶で作られた魔法の小剣。
 そして大量の粘土板や資料が発見されたため、解読が進められていた。
 シュマールハウゼン領においてのみならず、つてのあるイーゴリ大公にも協力してもらい、古代魔法語の知識がある賢者を集めて進められる古代語の解読。
 その結果、いくつかの事実が明るみに出たようだ。
 その中で特に重要とされたのは以下の四行詩であった。

 地に刻みし三つの楔、大いなる白の災いを封じる。
 だがいずれ、時は刻まれし楔から力を奪うだろう。
 楔は楔のみならず、災いを討ち滅ぼす刃とならん。
 時はずれの白き災いが訪れし時、封印を説くべし。

 この地に、その昔なにかの災いがあったのだろう。
 それを封じるために作られたのが前回発見した遺跡ということは調査から分かった。
 しかし、さらに二つの遺跡があることとは、更なる調査が必要であることをさしている。
 いつ、大いなる災いと言われている何かが起きるときが来るのだろう。
 そのときに対するためにはこの遺跡が重要であるということだ。

 陣容が整い始めているシュマールハウゼン領。
 アラン先生は、その騎士団に所属する騎士数名を借りて、遺跡の予備調査を行っていた。
 そして、前回得られた情報から北方を中心に探索した結果、いまだ未調査の遺跡が新たに見つかった。
 川が時間をかけて断崖を切り崩したのだろうと思われる山中の岩肌厳しい崖。
 その真ん中にぽっかりと口を開けている洞窟があった。
 入り口付近は、大きく開き、動物などが出入りしているのが伺えたのだが、そのさらに奥には、予想もしなかった光景が広がっていた。
 大きく地下へと伸び行く洞窟を進むと、すぐさま凍える寒さが襲ってくるようだ。
 どうも、地下水脈が近いらしく、肌を刺す冷気が漂ってくる。
 ごつごつした洞窟の岩肌だった通路は次第に滑らかな壁となり、足場にも階段が現れる。
 まさしく、洞窟の奥は遺跡への通路なのである。
 そして、その最奥には大きな氷で閉ざされた影が、通路をふさぐようにして鎮座しているのだった。
 内部の影は青銅色の肌をした巨人。
 今回の遺跡探査では、まずこの障害を倒してからでは無いと、先に進めないようである。

「今回は、すでに敵が見えているのだから、そのための準備をせねばならない」
 アラン先生は厳しい表情で、資料を集めた城の一室で忙しく働いているようだ。
「しかし、事態に余裕はないかもしれん。こうした遺跡は貴重である以上に、重要な危機をはらんでいるものだ」
 アラン先生と冒険者たちの遺跡探索も中盤に差し掛かり、いよいよ事態は大きな転換を見せるのかもしれない。
「一同、心して調査に当たって欲しい」

 さて、どうする?

●今回の参加者

 ea2965 緋野 総兼(36歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)
 ea8367 キラ・リスティス(25歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 eb2205 メアリ・テューダー(31歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb3338 フェノセリア・ローアリノス(30歳・♀・クレリック・エルフ・ノルマン王国)
 eb5685 イコロ(26歳・♀・チュプオンカミクル・パラ・蝦夷)
 ec0886 クルト・ベッケンバウアー(29歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・フランク王国)

●サポート参加者

エレオノール・ブラキリア(ea0221)/ リノルディア・カインハーツ(eb0862)/ レア・クラウス(eb8226

●リプレイ本文

●お茶会にて
 領主の居城にて、冒険者たちは、出立前に資料の整理や準備を進めていたはずなのだが‥‥。
 焼きたての菓子とお茶を手に、なぜか歓談中であった。
「ふむ、遺跡の保護に関しては近場の集落に触れを出すようしておくからの」
 もしゃもしゃと焼き菓子片手に、冒険者たちの提案に頷くのは領主パヴェルその人である。
「フェノセリア殿の件に関してはそれで問題ないかのう?」
「はい、いつも迅速なご協力ありがとうございます」
 ぺこりと頭を下げてフェノセリア・ローアリノス(eb3338)。
「して、総兼殿は確か資材を持っていくのじゃったかな?」
「ええ、すでに準備は済みましたし、あとは向こうで作るだけという感じですね」
 緋野総兼(ea2965)もお茶を片手に、そんな答えを返しつつ。
「ほうほう、手は足りそうかの?」
「同行して頂く予定の騎士殿たちに協力してもらおうかと」
「うむ、遺跡の調査には役にたたんだろうし、それならば力になれるじゃろうな」
 ということでお茶会しつつ、相談中なのである。
 ちなみにパヴェル老だけではなく、アラン先生も同席しているのだが。
 そちらは弟子のキラ・リスティス(ea8367)たちと話し中のようである。
「パヴェル侯にお頼みして調べてもらっているのですが、時はずれの白い災いというのが気になりますね」
「ふむ、災いとなると対策が必要になるからな。おいそれとは軽視できないのは確かだ」
 どうやら解読された四行詩に関してのようである。
「季節外れの雪、などという意味ではないでしょうか。気象の異常は、この地であれば特に辛いものだと思いますし」
 首を傾げてキラが言えば。
「季節外れの自然災害というのは確かに考えられますよね。そういうものを起こすようなものが封じられているとか‥‥」
 メアリ・テューダー(eb2205)は今まで学んだモンスターの知識を思い浮かべつつ。
「となると、やはり精霊の類でしょうか? 以前ケンブリッジでは大きな精霊と合間見えたこともありますが‥‥」
「キラさんは確か土の精霊でしたよね。白き災いだと、水の上位精霊か、雪の女王か。何がいましたでしょうか?」
「過去の伝承を探してみるのも良いかもしれませんね」
 と、メアリとキラは推測を重ねたり。
「精霊が敵となると、我ら術者の魔法は大きな力となるだろうな。精進を怠らないように」
 釘はしっかり刺すアラン先生であった。

 こうして一行は話し合いを続けた後に出発するのであった。
 風が冷たくなってきたキエフの街道を進む一台の馬車と、冒険者たち。
 資材に荷物、食料から防寒具までどっさりと積んで馬車は進む。
 朝夕の冷え込みは骨身にしみこむ冷たさで、まだ雪が積もりはしないものの遠くの稜線は白くかすんでいる。
 冒険者たちは、寒空の下、冷たく晴れ渡る青空を眺め、歩みを進め。
 そして目的の洞窟へとやってくるのであった。

●氷の洞窟にて
 ざくざくと足の下で霜が鳴る。
 緩やかな傾斜を昇ると、目的の洞窟は目の前にぽっかりと口を開けているのであった。
 とりあえず一行は周囲の安全を確認してから洞窟の中へ行くのだが。
「うー、寒いっ! さすが北国、寒さも一段と違うものだなぁ〜」
 総兼は毛皮のマントをぐるりと巻きつけ、ふぅふぅ手を暖めていたり。
 テントの中には、毛皮の敷物に寝袋、くまのぬいぐるみまで用意されているのだが、今は我慢だ。
「これから本格的に冬ですからね。暖かくしませんと」
 ですから完全装備です、というのはフェノセリア。
 総兼に向かって、どうですか、といわんばかりにふわふわ帽子とふさふさ襟飾り、さらには毛糸の手袋をアピール。暖かそうである。
「アラン先生寒くないですか? あの、これを‥‥」
「ふむ、これしきの気温、たいしたことは‥‥‥む。まぁ、魔術師にとって喉は資本ではあるしな」
 キラは、ローブ姿のアラン先生を心配しているようで、そっとファーマフラーを差し出して。
 なにやらアラン先生、もごもご言いながら巻いていたり。

 そして準備が整った一行。
「とりあえず周囲にはなにもいないようだ。足元に気をつけてくれ」
 先導は2人、レンジャーのクルト・ベッケンバウアー(ec0886)。
 彼はスクロールのブレスセンサーで周囲を索敵してきたようで。
 そして残る1人は、イコロ(eb5685)だ。
 彼女はライトの魔法を唱えて、灯りを持って。
「灯りはばっちりだよ〜。なんだか楽しみだな〜♪」
 ということで、敬礼で一行を見送る騎士たちを入り口に残し、冒険者たちは洞窟へと降りていくのであった。
 騎士たちは、入り口の警護と、柵の準備をしているそうで。
 冒険者たちは、ひやりとさらに冷たい空気が漂う洞窟へと踏み込むのであった。

●氷の遺跡にて
 巨大な氷とその中にぼんやりと見える巨大な影。
 ライトの明かりが青銅色の肌をぼんやりと照らすのだが。
 今はそれ以外、氷の近くでは焚き火が焚かれ、氷がじわじわと溶けていた。
 はじめの想定では、氷から溶け出たところを攻撃する予定だったのだが。
「どうやら、氷は一律薄く溶けていくようですね、おそらく魔法の解除とともに効果が一切なくなるのでしょう」
「そのようですね。ああ、総兼様、大丈夫ですか?」
 キラは冷静に見守っているが、フェノセリアは隣でしびれたのか手をさすっている総兼を心配している。
 どうやら総兼は、溶けかけてきたところを武器で一撃してみたようだが。
「さ、さすが魔法の氷‥‥まだ痺れが取れないとは」
 ということで打つ手は無いかに見えたのだが。
「サンレーザーって効くのかな?」
「うーん、陽の光が無いとダメなんじゃないかな」
 イコロの疑問に総兼も首をひねったり。
「それでは、私もマグナブローをフィノセリアさんからお借りしましたので、アラン先生のスクロールはクルトさんがお使いください」
「うむ、了解した。先ほどブレスセンサーを再度使ってみたが、この寒さのせいか何もこの洞窟内はいないようだし、魔力は温存するとしよう」
 スクロール戦術をキラとクルトが相談したり。
「氷が溶けて動き出した瞬間、とりあえず高速詠唱でアグラベイションを使用してみますので」
「よろしくお願いします。こちらもコアギュレイトの準備は進めておきますので」
 魔法による行動阻害をメアリとフェノセリアは準備をして。
 完全準備の冒険者一行、しかし果たして、そう簡単にこの氷の中の魔物への対処が出来るのかどうか‥‥。
 びしり。
 氷が砕ける音が聞こえた次の瞬間、薄くなっていた魔法の氷は砕け散ると空気へと掻き消え。
 長い間閉じ込められていたそのトロルは開放の雄たけびを上げ‥‥。
「アグラベイション!」「コアギュレイト!」
 地の精霊力がトロルを縛り、呪縛がトロルの動きを止める。
 その隙を逃さず、イコロは松明をつかんでトロルの口へぽいと投げつけて。
 同時に突っ込むのは唯一の前衛、総兼。
 薙刀は魔法の炎を纏い、一気に距離を詰めるとまず袈裟懸けの一刀でずばっと。
 同時に、あらかじめ設置されたキラの魔法の罠、ファイヤートラップが火を噴いてトロルは炎に包まれる。
 さらに追い討ちは、キラとクルトがスクロールを紐解き、同時に唱えたのはマグナブロー。
 洞窟の天井まで届けと轟炎が地の底より吹き上げる呪縛されたトロルは声も出さずに炎に包まれる。
 そして魔法が消え。炎が何事も無かったかのように消えた後は、総兼は切り下ろした薙刀を構えなおし。
 腰にためた位置から、気合とともに一閃!
 トロルは、長い長い待ち時間ののち、たった一呼吸で倒されてしまったのである。

●謎は‥‥
 意外とあっけない守護者を倒し、一行は足を進めた。
 水もすぐに凍るだろうひえびえとした空気、アラン先生もマフラーに顎をうずめて寒さに眉をしかめている。
 一同も足場に気をつけながらひんやりとした洞窟を降りていくのだが。
「ん、なんかあるよ? 扉‥‥かな?」
 先頭を進んでいたイコロが見つけたのは、洞窟の中に設けられた扉のようだった。
 いつの間にか周囲の足場は人工的に削られたなだらかなものへと変わり、その先には小さな扉があったのだ。
「ここは、地下水脈の源流とは違う途中に設けられているんですね。トラップとかは大丈夫でしょうか?」
 遠くに聞こえる水の音は、別の道を進むとおそらくたどり着けるのだろう。
 だが、今は眼前の扉が問題である。
 トラップを調べるクルト、魔法の有無を調べるキラ。
 とりあえず安全と見越して、先に進み、総兼がゆっくりと扉を開けると‥‥。
 そこには、前回見つけたのと同じような小部屋があった。
 祭壇と数多くの粘土板。
 そしてやはり同じように、魔力を帯びた小剣があるのだが。
「刃の部分が砕けてる?」
 触らないように近づく一同、その眼前には刃の部分の水晶が濁り、無残に砕けた剣があった。
「誰かが入ってこのようなことをしたのでしょうか?」
 フェノセリアが心配げに眉根を寄せて言うが。
「でも、おかしいですよね。先ほどのトロルを倒さずにここに来るのは無理なはずですし」
「ああ、確かにな。でも、水脈の方から来るはずもないし‥‥」
 キラの言葉に一同は頷き、クルトも先ほどの入り口の様子で何十年も人が近づいていないはずと思っていたので首をかしげ。
「‥‥この封印は楔、それならばその楔が封印を抑えきれなくなった、とか?」
「ありえるかもしれませんね。破片にはほとんど霜が付いていませんし、最近砕けたのではないでしょうか」
 総兼の言葉に、メアリがこっくりと頷いて。 
 そしてアラン先生は静かに言った。
「まだ手遅れじゃないと良いのだが‥‥封印がすでに効果をなしていないとも考えられる。なんらかの対処を考えねばな」
 冒険者たちはいつものようにそれぞれ遺跡の探索と資料作成を始めたのであった。
「この時期に、ぎりぎりで見つかったのは僥倖と見るべきだろうな‥‥‥必然、か」
 ぽつりとアラン先生は呟くのであった。