one armed hunter――巨乳注意報?

■シリーズシナリオ


担当:切磋巧実

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 8 C

参加人数:8人

サポート参加人数:3人

冒険期間:10月01日〜10月06日

リプレイ公開日:2007年10月09日

●オープニング

●或る村にて
「ふ‥‥ふぅ、ん」
 艶かしい息が洩れる中、頬を紅潮させる一人の美女は、豊かな膨らみと丸い尻を左右に揺らしながら村に足を踏み入れた。村人はギョッと驚愕の色を来訪者に向ける。或る者は「町の衣装は刺激的だな」と生唾を呑み込んだ。
(「ああ‥‥見られてるわ。私の身体に好奇の眼差しが突き刺さるぅッ」)
 彼女は尻尾と思わせる鞭を左右に揺らして村を散策してゆく。
 それから数日後、村は凄惨な事件のステージと化したのである。

●この日の彼女は様子が違った
 一人の少女はギルドを訪れていた。しかし、何時ものようにギルドの壁に背を預けて佇んでいる訳ではない。チラチラと入り口から覗き込み、円らな瞳をジトリと細めながら、依頼の羊皮紙を読もうと努めているようだ。
「えーと‥‥これじゃないよね‥‥んあっ!?」
「た、助けて下さい!」
 そんな中、入り口に駆け込んで来た者に弾かれ、押されるようにギルド内へ飛び込むと豪快に突っ伏した。無様に尻を突き上げたような恰好は、パレオ状の腰布が捲れて大変な様相だ。
 ギルドでよく転ぶ少女に馴染みの受付係は、素っ頓狂な声をあげる。
「あれ? キャミアさん?」
 無様な少女は慌てて半身を起こすと、ぺタリと座り込んだまま、毛先を削ぎ切り,わざと不揃いに変化をもたせた髪型の頭を覆った。褐色の頬を淡い桜色に彩り、チラリと流す瞳が無言で訊ねる。
 ――変じゃ‥‥ない?
 受付係は満面の笑みを浮かべた。
「大丈夫☆ 騒ぎにならない転倒ですから怒りませんよ」
 ‥‥通じてねぇ。
 キャミアは頬を膨らましながら、スックと立ち上がる。先の依頼で冒険者に散髪され、左側を縦に裁断して着易いよう配慮された袖無しシャツに身を包む少女は、辺りに眼光を流す。
(「なーんだ。ドキドキしたあたしが損したわ」)
 それは自信過剰というものだ。
 少女は恥ずかしさを誤魔化すようバンバンと机を叩いて捲くし立てる。
「ちょっと、これ以外に依頼はないの? アブなそうな女が出たとか、宝石だらけの男が出たとか、頭が弱そうな小娘が出たとか」
「何を怒っているんですか? って、ネタばらしですか?」
『あの‥‥危険そうな女性なら‥‥』
 冷や汗を流す受付が苦笑する中、ぼそりと口を開いたのは、先ほどキャミアを弾き飛ばした女性だ。不安に彩られた風貌で、スとやたら果肉の実った胸元に手を当てる。どうやら少女はこの豊満な膨らみに弾かれたようだ。依頼人は震えながら先を続ける。
「最近、村で若い女性が殺されているんです」
「いきなりヘビーですね。それで、共通点とか心当たりは?」
 娘はグッと豊かな胸を両手で庇い歪ませた。
「む、胸を、せ、切除されているんです‥‥」
 どうやら村周辺で若い娘が胸を切除されて殺されているらしい。村人はモンスターに襲われたと推測しており、あまりに特異な事件故、人の仕業とは考えていないようだ。なかなか依頼に乗り出さない為、怖くなって単身依頼に来たのだろう。
「殺されたのは皆、胸が大きな娘ばかりなんですッ! いずれ私も‥‥と思うと‥‥」
 キャミアは顎に手を当て、神妙な顔色を浮かべる。
「それ、あたしが引き受けるわ。ねぇ、村に踊り子みたいな女性が来ていないかしら?」

●今回の参加者

 ea8311 水琴亭 花音(29歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea9436 山岡 忠信(32歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 eb0207 エンデール・ハディハディ(15歳・♀・ジプシー・シフール・エジプト)
 eb7705 レイディア・ノートルン(31歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 eb8317 サクラ・フリューゲル(27歳・♀・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 ec0279 周瑜 公瑾(21歳・♂・武道家・シフール・華仙教大国)
 ec1858 ジャンヌ・シェール(22歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ec2497 杜 狐冬(29歳・♀・僧侶・人間・華仙教大国)

●サポート参加者

フローラ・タナー(ea1060)/ 小 丹(eb2235)/ レア・クラウス(eb8226

●リプレイ本文

●いきなりね
「その髪型、可愛いでござるよ」
 山岡忠信(ea9436)が言ったの。あたしは頬に熱を感じながら照れを隠したわ。
「か、可愛いって程じゃないと思うけど」
「キャミアさん、すごい素敵になりました♪」
 レイディア・ノートルン(eb7705)が満面の笑みを咲かす。だめッ素っ気ない態度を貫くのよ!
「キャミアさん、お久しぶりですわ♪」
 サクラ・フリューゲル(eb8317)が微笑むと、エンデール・ハディハディ(eb0207)が、あたしの頭に乗り、笑顔を覗かせる。
「キャミアちゃんの頭の上がエンデの特等席デスぅ☆ 猟奇殺人事件を解決デスぅ!」
 見渡せば何時ものメンバー。あたしのなか‥友達、なの?
「その事件解決の前にでござるが‥‥」
 忠信の提案は行商に扮する事。水琴亭花音(ea8311)の別案もあったけど、冒険者である事は伏せた方が良いと決まったの。武器は纏めて服装も着替える事になったわ。
「キャミアさん、着替えをするなら私が‥‥」
「あ、私も手伝いますッ」
 既に着替えた杜狐冬(ec2497)が零れそうな胸を揺らし傍に寄る。‥‥なんて恰好してるのよ。レイディアも慌てて駆け出し、あたしの髪や服を触りながら背中の剣を下ろしに掛かったの。
「やはり武器が重過ぎるのでしょうか? ボムトス?」
「あたしの勝手でしょ? そこッ、顔を赤らめて目を潤ませないで! 変な吐息を洩らさない!」
 無駄に柔らかそうな身体の癖に、筋肉質を素敵って喧嘩うってる訳?
「村娘の衣装もとてもよく似合ってるでござる」
「‥‥早く村に行きましょッ」
 もうっ、褒めないで! 困るじゃない‥‥。
「皆様に主の御加護のあらんことを。無事をお祈りします」
 フローラや冒険者達に見送られながら、あたし達は依頼人と共に先を急いだ――――。

「‥‥胸の大きさに拘り、切り取るようなモンスターは聞いた事が無いのう。わざわざ一手間‥二手間踏み込んでおる辺り、人間の変質者と見た方が無難じゃろう」
「えっと‥さすがにそれだけが共通点とも思えませんね‥あんまり動機の理由がわかりませんし‥‥キャミアさんはどう思われますか?」
 道中花音が珍しく口を開くと、眉を顰めて考え込んだサクラが小首を傾げる。次いで周瑜公瑾(ec0279)が目の前に滞空したの。
「どんな感じの人なんでしょうね、どう思われます?」
「キャミアちゃん、今度の人はどうゆう人デスぅ?」
 ちょっとエンデっ、あたしが知っているような‥‥。うっ、忠信の眼差しも痛いわ。
「‥‥イカレた女じゃない? 自分より大きな胸が許せないのよ。とくにホルスタンナみたいに顔が良いと尚更じゃない? 多分ね」
 花音の愛馬ハチに乗った依頼人は怯えたけど、あたしは棒読みで答えたわ。そんな中、爪噛み娘が呟く。
「昔の仲間が関わっている事件ですよね。キャミアさん、今すごく辛いのではないでしょうか」
 辛い? あたしはレイディアの声が聞こえない風を装った――――。

「え? 本当に貰って良いの?」
 野営のテントで、ジャンヌ・シェール(ec1858)が防寒服と毛布を差し出して、はにかんだの。
「そろそろ寒くなりますから良かったら使って下さい。私のセンス暗いけれど許してくれるかな?」
「あ、ありがと‥センス悪くないんじゃない?」
 彼女は冒険の事を色々と話してくれたわ。冒険者‥か、こんな人達ばかりなのかな?

●はぁ?
 依頼人宅で護衛を頼まれたキャミアが眉を跳ね上げると、花音は溜息を洩らして訳を伝える。
「目立って犯人側に勘付かれるのも困るじゃろう」
 上目遣いで見渡すものの異議は無いようだ。そんな中、スカーレットドレスに着替えたサクラが姿を見せる。
「‥‥あまりこういう服は着慣れないのですが‥‥変じゃないですか?」
 深紅に染められた露出過度なドレス姿に忠信や公瑾が生唾を呑む。手を前で組み、豊満な谷間が一層強調される事に気付かず恥らう表情が愛らしい。さすが天然だ。
「無駄にセクシーね」
「む、無駄、ですか? その、なんと受け止めれば‥‥」
 キャミアの感想に複雑な色を浮かべるサクラ。
「あまり着ないんでしょ? 綺麗なのに無駄じゃない。いつもこの恰好でいれば?」
「‥‥そういう意味でしたか。それでは囮を務めて参ります♪」
 苦笑気味に微笑み、結った赤毛に尾を引かせ少女は出て行った‥‥。

 ――その頃、酒場では。
「ネコルニャさんもいいんですけど、サクラさんや狐冬さんって憧れます」
 レイディアが美女の艶かしい踊りを眺めながら呟くと、村の男達は乗って来た。金髪の娘が指差す。
「狐冬さんなら、そこに。サクラさんは深紅のドレスを着ていますから、直ぐに分かりますよ。食み出さないのが不思議ですよねぇ」
 瞳に映る狐冬は男共に媚びていた。淫猥な手が胸や尻に触れても控えめに苦笑して為すがままだ。
「んぁッ、困ります‥‥あッ、あの、ネコルニャさんてどんな‥んんッ、方なんですか?」
 時を同じくして、ジャンヌも酒場の主人に訊ねていたが、依頼人と大差ない情報だ。円らな碧の瞳が美女の殆ど曝け出されている尻から生えている尻尾を観察する。腰の挙動に合わせ、鞭が舞う様が刺激的だ。
(「これって、えぇッ!?」)
 その先は14歳の乙女に察する事は出来なかった。
 歓声と拍手の中、舞台を下りた美女に男が駆け寄る。鋭い眼差しは黒髪の娘を捉えていた‥‥。

●重なる魔の手
「村で暮らして欲しい‥ですか? どうしましょう?」
 質素な食堂のテーブルで村の若者に囲まれるサクラは頬に手を当て困惑気味に微笑む。遠くから忠信が見守る中、確かに少女は男の心を掴んでいた。
「それにしても、何も起こらぬでござるな」
 侍が顎に手を運び、やはり依頼人が狙われるかと察した頃、ホルスタンナ宅の上空で護衛を担うシフールの少年が碧の瞳を研ぎ澄ます。捉えたのは群がる男共の姿だ。花音の細工に戸惑う中、スと背後に人の気配。
「‥‥若い娘の家に無言で入り込もうとは物騒な話じゃな」
 童顔と裏腹に落ち着いた響き。花音を捉えると男共は得物を構えた。忍者の娘が眼差しを流す。
「ほう‥‥行商を甘く見ておるのう」
「現われたわね! って、いないじゃない!? あ?」
 思わず姿を見せたキャミアが背中の得物を掴もうして硬直。男共は二手に分かれて動き出す。花音といえど複数を相手して褐色の少女を庇う余裕はない。木刀『降雪』によるスタンアタックの洗礼が次々と敵を沈黙させる中、丸腰のキャミアへ魔の手が迫る。
「ち、ちょっとッ‥」
 少女が戦慄する中、男の手に突き刺さるは一本のダーツだ。公瑾が上空から急降下しながら、再びダーツの洗礼を放つ。
「私の蛇毒手、食らって頂きますよ!」
 降下しながら手を開放すると拳を叩き込んだ。しかし毒の洗礼に至らない。反撃を躱す中、花音が加勢に入る。
「迂闊じゃぞ」
「ご、ごめん‥」
「しかし、ネコルニャ殿がいませんでしたね。調べましたが、モンスターに襲われた疑いから察する通り、付近の森が犯行現場らしいです。男達が狩りで発見したとか‥‥」
「‥‥私達は情報を当てに過ぎたかもしれぬのう」
 聞き込みという行動は間違いではなかったのか? 殆ど共犯者だとしたら――――。
「サクラ殿には山岡殿、杜殿にはジャンヌ殿が付いている筈です」
「レイディアの流布に掛かったとしたら‥狙っているのは‥‥」
 ――狐冬か!?
「う、ぅん‥」
 黒髪の娘は男達に囲まれていた。酒場で狐冬は誘いに乗り、森へ訪れたのである。因みに隠密行動に優れないジャンヌは見つかり、武器を持たぬ少女は奮闘中だ。褐色のシフールがインビジブルで姿を消し、ネコルニャを尾行していなかったら最悪の展開を迎えていたかもしれない。
「キャミアちゃんの敵なら、あたしにも敵デスぅ‥‥あ、ジャンヌちゃん‥が、頑張るデス!」
 上空で無事を祈りながら美女の追跡を続行した。辿り着いたのはあられもない狐冬の許だ。男共が見張りに散らばる中、ネコルニャに気付くと、涙を浮かべながら足に縋りつき、恥も外聞も無い命乞いを始める。
「許して下さいお姉様! この鞭で打たれたらと思うと、段々気持ちが‥‥」
「苛められたいの? 不思議ね、私の鞭が悦びに震えて‥‥あんッ、ビンビン伝わるわッ!」
 美女が腰を激しく振る度に尻尾が唸り、狐冬の黒髪と二つの膨らみが舞い踊る。
「はあッ‥気が済むまで打ってくださいッ‥女王様ッ‥」
(「狐冬ちゃん‥とても演技に見えないデスっ‥」)
 白い肌が幾条もの赤い腫れに彩られると、ネコルニャは恍惚と腰の刃を取り出す。
「はぁはぁ、お遊びはここまでよ。痛いのがお望みなら、このまま切り取ってあげるわ」
「んあぁッ(え? 私の冒険はここで終わり!?)」
 掴まれた膨らみに苦悶の呻きをあげる中、肌に触れる切っ先が戦慄を走らせた。刹那、間一髪でエンデの声が飛び込む。
「やめるデスぅ!」
「そこまででござる!」
「‥‥女性の胸を切除とはあまりに残忍、見逃すわけには参りませんね」
「武器さえ持てば私だって!」
「村で仲間と合流‥‥いなくなった者をダイに探させれば追跡は容易ぢゃ」
 武器を手にネコルニャを囲む冒険者達。狐冬は直ちにホーリーフィールドを紡ぐ。見張りは既に鎮圧済みだ。
「嗅ぎ回る行商ってのが怪しかったけど、役に立たない男達だねっ」
 猟奇殺人鬼は両手のダガーを薙ぎ振るい、尻の鞭を放つものの多勢に無勢。連携の末、ネコルニャは捕えられた。村娘を装ったキャミアが近付く。
「あいつがいないと抑えが利かなかったようね。首を刎ねられる前に色々と聞かせて貰うわ」

 ――帰路の野営でジャンヌがシードルを皆に振る舞う。
 キャミアは酒を拒むと、凄く残念そうに瞳を潤ます。仕方なく戴く中、サクラが口を開く。
「どうして私は囮にならなかったのでしょうか? あんな恰好までしたのに恥ずかしいですわ」
「全体的にむっちりしているついでに胸があるだけだからじゃない?」
 サクラの表情は複雑だ‥‥。