one armed hunter――煌びやかな盗賊
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■シリーズシナリオ
担当:切磋巧実
対応レベル:1〜5lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 62 C
参加人数:6人
サポート参加人数:1人
冒険期間:12月03日〜12月08日
リプレイ公開日:2007年12月11日
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●オープニング
●その日の少女は
防寒着に身を包み、褐色の頬を上気させながら何時ものようにギルドで佇んでいた。
――流石にこの季節になると、助かるわね♪
あまり積極的に依頼を請け負わないキャミアにとって、友達に戴いた衣はとても助かっていた。
刹那、不意に先の依頼で捕えた『巨乳切り裂き魔』との会話が脳裏を過ぎる――――。
「あいつはどこにいるの?」
「探して如何する気? まさか戻りたくなったのかしら?」
「アナタには関係ないじゃない‥‥キャメロットに連れて行かれたら処刑されるだけなんだから」
「ふふっ‥‥そうね。惜しかったわ‥‥心残りだとすれば、あの村娘の胸を切り取れなかった事ね。あ、あの獲物も私をゾクゾクさせてくれたわ☆」
瞳を閉じて微笑み、ネコルニャは恍惚とした色を浮かべた。苛立ちを露にキャミアが背中の剣を引き抜く。
「逃げそうになったから首を刎ねた事にしても構わないのよ。アナタたち、皆バラバラになってるみたいだけど、あの後に何があったの!?」
「まさか‥‥この大剣で●●●●●を? ド素人が言うわねぇ。どこで手に入れた剣か知らないけど、自分の実力を知った方が良いわよ?」
「う、煩いわねっ、これでも鍛えてるんだから‥‥毎日腕立て伏せを‥‥って本当に切るわよ!」
「知らなぁーい。私は嫌気がさしたからタイミング良く抜けたの。何かヘンタイっぽいじゃない?」
「‥‥ヘンタイに言われたくないと思うわ。無駄足だったみたいね。さよなら」
「ねぇキャミア? 仲間が増えたみたいだけど‥‥もう●●られたの?」
「死んでしまうアナタには関係ないわ」
冒険者が耳をそばだてていたか定かでないが、ネコルニャと交わした最後の会話だった――――。
「実力か‥‥ううん、努力はきっと‥‥」
『ここが冒険者ギルドか!?』
『助けて下さい! 息子が‥‥あなたは!?』
同時に入り口へ飛び込んで来た男は、互いに指差し驚愕の色を浮かべた。キャミアが眠そうな眼差しで追う中、受付に二人が駆け込む。
「私の宝石を守ってくれないか!?」
「俺達の町で年頃の少年が失踪しているんだ!」
必死の形相で救いを求める依頼人を受付係が落ち着かせ、事情の詳細を促した。
どうやら小さな町の裕福な民の屋敷が次々と盗賊に荒らされているらしい。不安になった男は冒険者に盗賊退治を依頼に来たという。勿論、次に依頼人が狙われる確証は無い。
「噂では‥月明かりにマントを棚引かせ、腰布を巻いただけの裸体に宝石を埋め込んでいると聞く」
「ああ、それですか。優麗な微笑みを浮かべ屋根伝いに逃走しながら行方を晦ますという噂ですな」
同じ町の民が会話を弾ませた。
刹那、またしても普通じゃない特徴にキャミアが鋭い瞳を研ぎ澄ます。
――裸体に宝石!? 年頃の少年!?
「ねぇ、その盗賊って男じゃなかった?」
「髪が長くて整った顔って目撃者の噂だが‥‥裸を晒すなら男かもしれん」
「そう‥‥。じゃあ、年頃の少年って美少年じゃない?」
「自慢する訳ではありませんが、母親に良く似た顔立ちの息子です」
受付係が不安げな顔色を覗かせる中、褐色の少女は駆け出した途端に見えなくなった。防寒着のお蔭で床に突っ伏しても痴態を曝け出す事はなく、ゆっくりと何事も無かったように立ち上がる。
「この依頼、あたしが引き受けるわ! ‥‥分かってるわよ、集まらなければ成立しないんでしょ」
「違います。二つの依頼を同時に行う訳には‥‥」
ふふん♪ と微笑むキャミアに受付係は生暖かい眼差しを向けた。しかし、少女の微笑みは揺るがない。
「あたしの予想が当たっていれば同一犯の仕業よ。二つの依頼は一つに纏めて頂戴」
自信あり気な言葉に依頼人達が羨望の眼差しを流す。
「流石は冒険者。これほど少ない情報で同一犯と見抜くとは!」
「この確信的な自信! 町の事件は一気に解決です!」
「‥‥そ、それ程でもないわ」
キャミアが照れたように頬を掻く中、受付係は軽く溜息を吐く。
また何か心当たりがあるのですね? と――――。
ここで二つの依頼が一つに纏まった事で、結果的に報酬も多めとなった。
――問題は情報の少なさだ。
先ず、盗賊だが殆ど外見以外の情報は無い。恐らく忍び込む前に下見位はしているだろうが、不審な人物も見掛けた試しはないそうだ。荒らされた民に共通する点は、自慢話が好きな事。但し、荒らしたのみで何一つ盗まれなかった場合もある事から、腕利きの確率は低い。
次に美少年の失踪だが、巧妙らしく目撃者はいない。否、いたとしても身寄りの無い子供ばかりだった為、民の関心にならなかったのだろう。また、遠くの村から遊びに来た少年も失踪しているが、依頼人の息子のような町の民であるケースは初めてとの事だ。幸い依頼人は町で事を大きくしたくなかった為、冒険者を頼りに赴いたらしい。
●リプレイ本文
●あれ?
「キャミアさん、皆さんお久しぶりですわね」
サクラ・フリューゲル(eb8317)が集まった者達に挨拶したの。‥やっぱり足りないわ。ま、まあ、事情もあるわよね。
「もうあのドレスは着ないの?」
サクラの困惑で気分転換する中、私の頭の上にまるごとクマさんに身を包んだエンデール・ハディハディ(eb0207)が何時ものように乗る。寒くなると心地よい重さと温かさね♪
「キャミアちゃん、すっごい剣いるデスか? エンデ35人以上の重さデスぅ!」
すっごい剣? 視界に捉えたのは小丹のヒュージクレイモアって大剣。
「さすがにこれは無理じゃろ、わしが持つのも精一杯じゃ」
「まあ、重すぎデスよね。小丹さん、もってってデスぅ」
あ‥っ! 思わず指を咥えて見ちゃったけど、直ぐに馬へ戻しちゃったわ。
「キャミアちゃん、手袋と靴下がほしいデスぅ? 小丹さんから貰ってるデスぅ」
なに? 私そんなにモノ欲しそう?
「い、いらないわッ」
「‥今回は宝石と美少年? 一見関係ないようにも思えますが」
「どちらにせよ、街の平和の為に捕まえねばならんでござる」
「裸の泥棒‥私もそんな格好を‥な、何でもありませんっ」
周瑜公瑾(ec0279)と山岡忠信(ea9436)が依頼の件を切り出したの。杜狐冬(ec2497)の言葉は聞かなかった事にするわ。そこ、顔を紅潮させないっ。
「あ、あの‥キャミアさんが請ける依頼って、変わった事件が多くないですか?」
「キャミアちゃんは一寸ツンツンしてるから、無理に聞いても無理デスぅ」
ジャンヌ・シェール(ec1858)の言葉に頭の上からエンデが応えたの。
「ツ‥っ。犯人に特徴あった方がいいじゃないっ」
私の目的を知れば、きっと呆れられる‥だから――――。
●囮
「わたし‥じゃなくて、僕に任せて。犯人をきっと捕まえてみせるよ☆」
男装に彩られたジャンヌが微笑む。ロイヤルキルトと羽帽子を着こなす少女はショートの金髪に割とスレンダーな容姿も相俟って美少年に見えた。サクラのナンパ技術を活かした化粧も誘惑の可能性を向上させる。
「キャミアさんも女の子なのですから‥できるだけきれいな方が良いですよね?」
次いで知り合いが見てもキャミアと悟られぬよう、できるだけ女らしく綺麗になるよう化粧を施した。身を委ねたものの照れ臭く、頬を染めながら話題を囮へ振る。
「ジャンヌが乗り気で良かったわ」
「う‥うん、乗り気っていうか、わた‥僕のやれる事をやるだけだよ。護衛お願いしますね?」
碧の瞳に映る忠信が太い両腕を組んで頷く。
「忍び歩きは心得ている故、安心するでござるよ」
聞き込みで情報は或る程度入手した。後は町の少年達より目を惹く美貌があればいい。
男装の少女が去ってゆく中、町では聞き込みを兼ねた餌撒きが行われていた。
「あそこの旦那様の下で働く事になって‥すると見たことも無い大きな宝石があったのです☆」
胸元を大胆に覗かせた村娘の衣装で狐冬は殊更緩そうな使用人を演じる。育ちのよさそうな風貌と大きな胸に誘われ一郭は大賑わいだ。激しい悪路を進む馬車の様相を呈する中、肉感的な身体に伸びる手も構わず美貌を染めて周囲を窺う。
(「話を聞きつけて寄って来ても、女の私には目もくれない人が怪しいですね」)
だが、身長158cmで揉みくちゃにされては人物特定も困難というものだ――――。
――キミ、この町で見掛けないね☆
チリン♪ とアンクレット・ベルの音を鳴らし、声を掛けられたジャンヌが振り向く。視界に映ったのは端整な風貌の青年だ。掻き揚げた前髪の額に小さな宝石が煌く。少女は円らな瞳を見開きつつ演技に塗り替える。
「わあ☆ 綺麗な宝石♪ 僕、2日かけて町に出て来たんだ。お兄さん、この町のひと?」
「小さな町で見掛けなかった訳だ。一緒に来るかい?」
甘いマスクが微笑んだ。ジャンヌにとっては願ってもない好機。しかし‥‥。
「この鈴、大切なものかい? 私は‥その、耳が良いだけに苦手でね」
「(山岡さんならきっと大丈夫ですよね!)うん、じゃあ外すよ☆ 一緒に遊ぼう♪」
少女は青年と談笑を交えながら散歩に時を刻んだ。宝石を褒めると恍惚にも似た色を浮かべたという。暫くすると人通りの少ない路地へ場所を移し、辿り着いたのは割と大きな小屋のような建物だ。
「宝石を見るといい」
「(未だです‥攫われた少年達がいるとは限りません)うん☆」
流した視線に映る青年は周囲を警戒しながら扉の鍵を開けた。様子から忠信が見つかった感じはしない。隠れる場所が壁際程度しかなく離れた位置から侍が顔を覗かせる。
「ジャンヌ殿‥入ってしまわれたでござるな。シークレットダガーは持っているでござるが‥」
侍の青年は悩まずに一気に接近して刀の峰で打ち据える算段だった。
しかし、周囲を警戒されては疾走の術でも無ければ接近は敵わない――――。
「えっ?」
ジャンヌの瞳に映ったのは彼女に群がる半裸の少年達だ。室内は温かく、凄惨な色は少ない。青年は「キミに宝石を用意しよう」と微笑み、留守にする事を伝えて別の扉から出て行った。
「これって軟禁? どうして逃げないのですか?」
世話を頼まれた少年達の表情は様々だ。鍵が掛けられている。魔法の宝石を飲まされたから言う事を聞かなければ死んでしまう。貧民の少年は生活に不自由しないとも答えた。
「魔法の宝石? そんな話は聞いた事がありません。あ、山岡さんに知らせ‥か、鍵開け!?」
●宝石警備
一方屋敷では冒険者が警備の目を光らせていた。
「おかしなのはいないデスかね〜」
昼間はベヌウに乗ったエンデが偵察を行い、夜間は予め宝石を隠れる場所のある部屋に置いて貰うよう頼み、サクラとキャミアが可能な限り近くに潜んでいる。
「‥‥来るでしょうか‥?」
「狐冬の話だと玄関の扉を開けた時に殺気を感じたとは言ってたけどね」
「兎に角、十分部屋の奥に引き付けましょう」
「優良視力で宝石を見張るデスぅ」
シフールの少年少女は入り口の真上に設置して貰った棚で見張ったり、調度品の陰に隠れていた。因みに狐冬は使用人として待機中である。
「おかしいですね‥確かに何か壁にぶつかったりする音も聞いたのですが‥‥」
――夜の帳も下りた頃、静寂の中に用心の音色を含む足音が近付いて来た。
身を隠す冒険者達が警戒の色を強める中、静かに扉が開き、ゆっくりと締まる。暫く続く静寂に人影は見えない。刹那、盗賊は瞬間移動したかの如く姿を現した。
(「エンデと同じインビジブルの魔法デスぅ」)
「流石に探し物をする時は見え難いから困る‥あれか?」
忠信が警告したが窓の無い部屋は叶わなかった。盗賊は外へ通じる窓を開け、部屋の奥へ進んだ。透明化したエンデが宙を舞い、公瑾が両手のダーツを盗賊の背後で煌かせる。懐に忍ばせてある得物は13本。全て刺す構えだが取り敢えずシフールの少女を待つ。下手に投げて見えない仲間に突き刺さっては拙い。
「お尻をブスッと刺すデスぅ!」
「ひあぁッ‥うぐぅッ、ぬおぉッ、くあぁッ、はひぃッ、いがぁッ」
言葉通りの洗礼を刺された賊が悲鳴を洩らすと、次いで面白いように青年シフールのダーツが鉄槌を叩き込んだ。声を殺して悶える中、サクラが宝石の前に立ち塞がりホーリーフィールドを紡ぐ。
「先ずは宝石の防衛を優先させて頂きますわ」
「ちぃッ! 冒険者だとッ、やってくれ‥るおぉッ」
ダメージは少なくとも痛い。サクラは攻撃に転じるべく得物の刀を抜き‥‥頬に手を当てた。
「あらら? どうして私、少彦名神の杖を持っているのでしょう?」
「なにやってるのよ! むっちり天然!」
共に隠れていたキャミアが背中の剣を抜く。しかし、ブンブンと振り回すものの、床が傷つくばかりだ。駆けつけた狐冬は狼狽するばかりで戦力にならない。盗賊は裸体の宝石を煌かせて窓に寄る。
「甘い! その程度で私を‥なにぃ!?」
視界にピグウィギンの槍を構えたサクラが飛び込んだ――――。
――傷つきながらも盗賊は屋根に転がりつつ踊り、何とかねぐらに逃げ帰った。
ジャンヌを視界に捉え「遅くなったね」と薄く微笑む。
「ん‥他の子達は寝てしまったのか? すまない、背中のを抜いて欲しい」
突き刺さるは6本のダーツ。身を委ねる青年に少女が切っ先を研ぎ澄ます。
「もう、誘拐も泥棒もお終いです」
盗賊は扉が壊されている事を察すると、鮮血と共にジャンヌを払い逃げに転じた。小屋から出た刹那、視界を過ぎる侍が一刀を叩き込む。
「峰打ちでござる‥‥」
後ろ手に縛られた青年が目覚めたのは、愛を説く狐冬のたわわな谷間だったらしい‥‥。
●なに?
「‥聖夜祭の贈り物も兼ねて、キャミア殿に‥‥でござる」
忠信はスターサンドボトルを差し出した。反応から察するに星の形をした砂の入った小壺のおまじないをキャミアは知らないようだ。女性と話すのが苦手らしい青年は緊張気味であり、対する少女は訝しげな色を見せる。
「これなに? 役に立つの? くれるって言うなら貰うけど‥」
大きな掌の小壺を摘むような仕草で指を伸ばすキャミア。汚物に落ちた代物を拾うような様は流石にムードがない。忠信は回収に意識を集中させる少女の手を掴み「きゃっ」と短い悲鳴が洩れるのも構わず、返した掌に小壺を乗せた。
「ひ、ひんッ‥ふえぇぇっ」
俯いたキャミアが嗚咽を洩らすと、青年は戸惑いながら腰を曲げて顔を覗き込む。刹那、眼差しをあげた少女に侍は驚愕の色を見せた。
「さわらないでっていったでしょぉ‥ばかあ、どうしてさわっちゃったのぉ?」
顔を真っ赤にして泣きじゃくるキャミアはまるで子供のようなあどけない印象を放っている。勝ち気な瞳は面影もなく、か弱き色を浮かべていた。
「お、落とさないようにしただけでござるよっ」
「おとさないようにぃ? ‥わあ☆」
小首を傾げた少女は改めて手中の星砂を見つめると、満面の笑みを浮かべたという――――。