【虎僧行脚7】白馬鬼を追え
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■シリーズシナリオ
担当:シーダ
対応レベル:6〜10lv
難易度:難しい
成功報酬:2 G 97 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:04月25日〜05月02日
リプレイ公開日:2005年05月03日
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●オープニング
「そういえば聞いたか? あの山に白馬の鬼が出るって話を‥‥」
お堂の拭き掃除をしていた虎太郎は、檀家さんが噂をしているのを耳に挟んだ。
どうやら馬頭の鬼が現れて山の一角に入れなくなってしまったという話らしい。
「お、虎太郎。今日も熱心にお勉めだね」
「うん♪ やっと回復の術を使えるようになって役に立てるようになってきたんだもん。もっともっと修行して頑張らないとね」
虎太郎はニコッと笑った。
「なら、鬼退治なんてどうだい? 和尚様には口を利いてあげるからさ」
「何か悪さしたの?」
近頃は鬼と聞けば退治、妖怪と聞けば退治という中々に物騒な話をよく聞く。
「オイラとしては、悪さもしないのに退治されちゃ可哀相だと思うんだ」
「だがなぁ。そいつのせいで山にも入れねぇ。今の時期、山菜はいっぱい採れるし、村のもんも困ってるんだ」
「他の場所に移ってもらうとか、大人しくしてもらうとか、色々方法はあると思うんだ。」
虎太郎が檀家たちと話をしていると和尚が通りかかった。
「これは和尚様。実は私の実家のある里の近くでですな‥‥」
斯く斯く然々(しかじか)と檀家が事情を話した。
「それで困っておるのですよ。この前の虎太郎の活躍は聞いておりますぞ。
この子なら安心して任せられます。冒険者を雇って鬼退治を任せたいと思うのだが、どうだろう?」
和尚は暫く考え込んだが、虎太郎を近くに呼び寄せて少しばかり問いかけた。
「お前はどうしたいのだね?」
「オイラ、皆の力になれるのなら頑張りたい」
「なら、行っておいで。これも修行のうち」
「ウン♪」
和尚は喜ぶ虎太郎の頭を撫でた。
※ ※ ※
ここは江戸の冒険者ギルド‥‥
虎太郎はギルドの親仁と話し込んでいる。
「1本角の白毛で馬の頭の鬼? 噂があやふやで特定はできないけど馬頭鬼のことなのかな?
それなら、それなりの面子を集めないとな」
「強いの?」
「あぁ、馬頭鬼なら、そんじょそこらの鬼なんて物の数にも入らない。山鬼くらいは一捻りって鬼だからな」
「そんなに強いんだ‥‥」
虎太郎は考え込んだ。
「牛頭(ごず)と馬頭(めず)は地獄で亡者を責めさいなむ獄卒鬼とかって言われてるくらいの大物だ。で、どうする?
って言ってもそれじゃ大した数の冒険者は集められないけどな」
虎太郎の握り締めたお金の袋を見て、ギルドの親仁は頭を掻いた。
「あ、丁度良かった。なぁ、オイラに手を貸してくれない?」
虎太郎は冒険者たちに声をかけた。詳しい話を聞いた彼らは報酬は少なくても構わないという‥‥
「依頼としては成立するけど本当にいいのか?」
報酬が多い方がいいが‥‥とは口に出てくるが、虎太郎のためだと締めくくる冒険者たちに親仁も折れた。
「それじゃ、依頼として成立させるぞ。
目的は1本角の白毛で馬の頭の鬼を探し出して、倒すこと。
馬頭鬼なら強力な鬼だから、手に負えそうになければ無理はしないこと」
報酬が少ないからか、危険を冒せとは言えないらしい。
「よろしくね」
虎太郎は冒険者たちに頭を下げた。
●リプレイ本文
●戦いの覚悟
「少年、鬼だからと即退治と考えないのは何故なんだ?」
「だってさ、鬼とか妖怪だって凶暴な奴らばっかりじゃないよ。そんな妖怪たちも沢山いるはずだって」
鷹見仁(ea0204)は、虎太郎の考えに、いや彼の人柄に好感を抱いていた。
その様子を見て朱鷺宮朱緋(ea4530)やクリス・ウェルロッド(ea5708)は、虎太郎と付き合いの古い者たちは苦笑いを浮かべていた。
彼の秘めた事情について、確信に近いものを胸に抱いていたからである。
話しさえ通じないような敵に対しても倒さずに住む方法を模索しようとする虎太郎に対して朱鷺宮たちの思いは深い。
「鬼は御仏の御心に反した存在と言えど、その存在という由のみで悪戯に退治しようとするのは哀れ。
ですが、人々に乞われ任として受けたからには、冒険者として、衆生をお救いする務めを持つ僧として、力を尽くしましょう。
それでも戦うことなく済めばと願えどその術は見つからないのが問題で御座いますね‥‥」
朱鷺宮は寂しそうに言った。
「知り合いのフィーという娘も明るくて優しい子だが‥‥ 虎太郎もなかなか良い少年のようだな」
那須に現れて行方をくらましてしまった狐たちがエルフの隠れ里に魔手を伸ばさないことを祈りながら、鷹見は目の前の少年を見つめていた。鷹見を見つめ返す虎太郎の瞳は真っ直ぐだ。
ともすれば失くしてしまいがちな心を彼は持っている。だからこそ大切にしたかった。
保護者の気持ちにも目覚めてきた鷹見は、虎太郎の頭をクシャクシャに撫でると満面の笑みを浮かべた。
「俺自身は鬼を退治するつもりで依頼に参加したが、もし本当に退治するべきか、確かめたいというのなら協力する」
「ありがと」
虎太郎も満面の笑みを返してきた。
「最近少し、檀家の虎太郎さんに対する態度が、まるで便利屋にでも頼むかのような雰囲気が‥‥
ま、単にお人好しが災いしているから‥‥ かもしれないがな‥‥ 俺と似ていて‥‥」
住職とも話をして、確かに釘を刺さなければ互いのためにならないかも知れないと言質を得ていた緋室叡璽(ea1289)は、苦笑いの混じったため息をついた。
「何もしていないから‥‥ ねぇ‥‥ まっ、実際に見てどう思うか、だね」
口ではこう言うが、馬籠瑰琿(ea4352)も危なっかしい虎太郎を見て、放ってはおけない1人。
「今回は討伐依頼のようですが、まだ殺傷事件という訳ではない。
無論、そうなる前にどうにかしておきたいという気持ちも分かりますよ。相手が鬼とはいえ‥‥ね」
クリスは穏やかに笑った。これが本気かどうかわかりかねるから、彼はよく誤解されしまうのだ。
「以前に牛頭鬼と戦ったことがあるが、あそこまで何もできなかったのは初めてだ‥‥
噂が本当なら馬頭鬼は想像以上の強敵。話し合いが通じるとも思えないが、そういう方針でいくなら引き際は気をつけなければな」
馬頭鬼が牛頭鬼と同等の戦闘力を持つのなら相当な手練を揃えて最初から殺す気でいかなければ勝負にならない。
緋室は、そう考えていた。京にいる彼女に会うまでは命を落とす訳にはいかないのだ。
「馬頭鬼‥‥ 聞いた事ないわね。
外見からするとそう凶暴な印象はないのだけれど、牛頭鬼みたいな性癖の可能性もあるから別な意味でも危険かもしれないわね。
ともかく、倒すか追い払うかの判断は虎太郎君に任せるわ」
弓騎士アイーダ・ノースフィールド(ea6264)は、そう言うと島津影虎(ea3210)と探索の方法や敵に会ったときの連携などを話しあい始めた。彼らは何度か同じ依頼を受けている。ことに激しい戦いを伝え聞く魔物ハンターたちとあってこういう仕事にはうってつけの人材と言えた。
「痕跡を追って所在を突き止め、話の中身を確認。場合によっては戦闘に突入‥‥といった感じでしょうか?
先ずは相手の所在を確認せねば‥‥という事で、足跡等の痕跡を探し追跡する御手伝いを致します。
不慣れな場所ですから、お役に立てるかどうかは分かりませんが‥‥、首尾よく居場所を突き止められれば幸いですな。
私としては、実際そのような強力な鬼が突然現れるものなのか、少々懐疑的ではありますが‥‥」
「噂には聞いてたけど魔物はんたぁの人たちって頼りになるなぁ」
島津の言葉に虎太郎はしきりに感心している。
ギルドの親父の話では牛頭・馬頭に関しての情報は確認された個体数が少ないためにしっかりしたことを教えることはできないと言われていた。本当ならもっと多くの情報を得てから動きたい。魔物ハンターの仕事で度々痛感させられることだけに彼にしてみればどうにかしておきたかったが、なければ現地で情報を集める。こうするしかない場合の方が多い。これもまた、度々痛感させられることであった。
「意思の疎通が出来るようなら、お互いの言い分を話し合う余地もありそうですがどうなのでしょうね。
平和的な解決が出来れば、それに越した事はないのですが‥‥」
説教くさくなりつつあるのに気づいて島津は押し黙った。
「言っておくけど、殺さず追い出すつもりなら、圧勝じゃなきゃダメよ。
住みついているって事は、餌場があるって事だから、勝てない、二度と戦いたくないと思わせない限り、お腹が減ったらまた戻ってくる可能性は十分高いわ。私達は誰も鬼と会話する手段を持ってないのだから」
アイーダは念を押した。戦うなら中途半端な状態で戦うのはまずい。彼女も戦いの中で度々実感していた。
あの時も‥‥ まぁ、今はそのことは置いとくとして‥‥
「馬頭鬼なのかは兎も角、一本角を持つ白馬の鬼とは初めて耳に致しました。
里の方々にその辺りから確かめるのが先決で御座いましょう」
そう言う朱鷺宮の言葉に、アイーダはやはり現地で調べるしかないのね‥‥と苦笑いした。
「自分もそうだ。1本角の白毛で馬の頭の鬼? そんなの初めて聞いたぞ。
今迄に戦ったり、手を組んだりと色々な鬼達と出会ってきたが、まだまだ会ったことがない鬼がいるもんだな」
三菱扶桑(ea3874)は、回想して苦笑いを浮かべている。今までギルドで受けてきた依頼の半数以上は鬼がらみだったと今更ながらに気がついたのがどうも可笑しい。
「馬頭鬼とはまだ戦った事が無いからな、どれだけ強いのか楽しみだ‥‥」
「まずは話し合いだからね」
「わかってるって」
虎太郎の言葉に三菱はどこか上の空だ。既にどう戦うのか思いを巡らせているらしい。
●山中
虎太郎たち一行は依頼のあった里に到着すると住人たちに聞き込みを済ませ、目撃されたという山に来ていた。
アイーダや島津が足跡を探しながら先頭を進んでいる。
「困りましたね。里の方々からも殆ど役に立つことが聞けませんでした」
鳥の囀り、動物たちの騒ぐ様子‥‥
周囲の様々な変化に気をつけながら進むが、朱鷺宮たちには事象以外に何かを感じ取ることはできなかった。
隊の中心では鷹見がガシャガシャと音を立てながら歩いている。
大鎧に野太刀と手盾、武者兜と天狗の面は背中に吊るしているが、武士の戦装束としての猛々しい雰囲気は十分に伝わってきた。
「凄いね」
「白馬鬼と戦うには、これでも不安だよ。虎太郎や朱緋が癒しの術を施してくれると思うからこんな戦い方ができるのさ」
じっと見る虎太郎と仲間たちに照れるように鷹見は、天狗の面で顔を隠した。
(「真っ先に逃がすならこの男からか‥‥」)
負けるつもりはないが緋室は退却できそうな道筋の確認を怠らない。
その時だった。
木々を軽やかにかわしながら勢いを殺さずに白馬は斜面を落ちるように近づいてくる。
カカッ、カカッ!!
体を殆ど上下動させずに、脚で器用に衝撃を吸収しながら白馬は見る間に迫ってきた。
「美しい‥‥」
駆け下りる白馬に見惚れていたクリスは、愛馬の鼻を鳴らすような声で現実に引き戻された。
「行こう、テレサ」
クリスが手綱を引くが、愛馬はそれに応えてはくれない。機嫌を損ねた訳ではなさそうだが‥‥
羨望の眼差し‥‥とでも言おうか、テレサはジッと白馬を見つめてうっとりしているようだった。
カッ、カカッ‥‥
その白馬がクリスとテレサの前で足を止め、仲間たちは成り行きを見守った‥‥
やがて白馬は淡い光に包まれる。
『凝りもせずに、また追ってきたのか! 疾くと去ね』
鷹見は聞き覚えのない声に驚いた。
「おい、白馬鬼は人の言葉を喋るのか?」
「その前に馬にしか見えないが?」
三菱たちが不思議そうに一角の白馬を見ている。
「角に万病を癒す力を持つと噂される白馬の話は、どこかで聞きましたな」
島津は油断なく目を更に細めると言った。
「虎太郎君! どうするの? 私には鬼には見えないけど、向こうは戦う気みたいよ」
指の間に2本の矢を挟みながら梓弓を構えるアイーダが、木の影から指示を促した。
「待って、話せば‥‥」
虎太郎の言葉が最後まで出る前に、凄い速さで一角の白馬が間合いをつめた。
「どぅわ‥‥」
鷹見は白馬の衝角をまともにくらう。
勢いに乗った馬体の突進を受けては只事ではすまない。鎧兜で来なければどうなっていたことか‥‥
しかも、角が鷹見の胸に食い込もうとした瞬間、急所を外していなければ、もっと酷い目に合っていたことだろう。
「大丈夫でございますか」
朱鷺宮が駆け寄ってきた。
それを支援するように島津は忍者刀に手をかけながら一角の白馬の前に立ちふさがった。
馬の怒気に押される‥‥ そんな莫迦なと思いながらも島津は思わず唾を飲んだ。
「一旦下がって治療を受けろ」
三菱は両手を広げて立ちはだかる。
「おっと‥‥」
緋室は思わず得物を構えようとして苦笑いした。
相手が只ならぬ実力を持っているのは、今の突撃でわかっている。
しかし、気持ちに余裕はある。仲間を見やることはできたし、作戦の目的も見失っていない。
おそらく牛頭鬼よりは弱そうに思う。
だからこそ緋室は油断しないように自らを戒めながら肩の力を抜いた。
「酷いよ! オイラたち‥‥」
「虎太郎、下がってるんだね。あんたの腕じゃ、まともな相手はできない」
飛び出そうとした虎太郎の着物を馬籠は掴んだ。
達人級の剣の腕前を持つ馬籠は、あの白馬の鬼の身のこなし‥‥ この一角の白馬が只者でないことを感じ取っていたからだ。
「話ができるなら‥‥ どうして戦いになったりするのさ‥‥」
虎太郎の瞳には涙が滲んでいる。
「虎太郎に免じて、こいつは抜かないでおいてやるけど。どうにかするって言うなら容赦はしないよ!」
ドスの聞いた声で馬籠は虎太郎の前に出た。
一角の白馬に対して誰も得物を向けようとはしなかった。それが何を意味しているのか一角の白馬にもわかったようだ。
『ふむ‥‥ どうやら済まないことをしてしまったようだ。非礼は謝ろう』
一角の白馬は済まなさそうにうっすら目を閉じた。
『そなた‥‥ 男だな』
クリスは触れようと手を伸ばそうとしたが、一角の白馬は身を引いて避けた。
「そうですけど、何か? 触るくらい良いでしょう?」
クリスは初対面で自分を男だと認識した一角の白馬の勘の良さに驚きつつも、触らせてくれないのには理不尽なものを感じていた。
『我は乙女以外に触れられるのを好まぬ』
憮然と鼻を鳴らす一角の白馬に理不尽を感じながらも、クリスは手を引いた。
「それはそうと、どういうことなのか互いの理解を深めませんか? 私がふられてしまった理由も聞かなくてはいけませんしね」
肩をすくめて笑うと、クリスは一角の白馬と仲間たちの間で視線を泳がした。
折角苦労して頭に詰め込んだ地形のことが無駄になってしまったと溜め息をつきつつも、別に戦いたくて戦いに来た訳ではないことを一角の白馬に演出するのには、こういう軽口が一番だとほとんど本能的に口について出ていた。
『良かろう。我も進んで戦いは好まぬ』
一角の白馬は、その場に膝をついて伏せることで戦う意思がないことを表現した。
●一角馬
事情を聞いて虎太郎たちは白毛の一角馬に同情した。
「人間たちに一角の白毛馬面の鬼を退治してくれと頼まれて来たんだ。腕試しに来る奴もいるかもしれない。
あんたがここにいるって話は、じきに広まるだろう。そうなったら‥‥」
馬籠は虎太郎の顔を思わず見つめた。
その時、虎太郎はどうするだろう‥‥
やはり無鉄砲なこの少年は放っておかないだろう。その彼を放っておけない自分がいるであろうことも容易に想像がつく。
「村人たちの話は出鱈目じゃなかったが、こんな結末とはね‥‥」
馬籠は目の前の現実に笑った。
どうやら、聞き込んだ村人たちから聞き込んだ話は、現実と噂話がごちゃ混ぜになってしまっているからだ。
『白毛の馬を見た』、『馬の頭には角が1本あった』、実際の情報は、おそらくこんなもの。
馬籠には笑うしかなかった。
他人からの情報を鵜呑みにする者、自分が理解できるように都合よく話を捻じ曲げて理解してしまう者‥‥
噂と伝言の末にあたかも真実となってしまった『1本角の白毛で馬の頭の鬼』‥‥
地獄の率鬼・馬頭と戦わずに済んだのは幸か不幸かわからないが、兎も角、放っておけないことは確かだ。
武士ならば、これほどの馬を放っておかないだろうし、一攫千金を求めて狩りに来る者もいるかもしれない。
馬頭の噂に人々がこの地に近寄らないのは好都合だったが、放置したままにできない以上、何かしらの対策が必要である。
まだ、少し刻があるのが救いだが‥‥
「あんたには里に近づかないでいてほしい。それに、あんたなら見つからないようにするくらい訳ないだろ?」
『確かに武者を見て、我を忘れてしまったが、普段は人間たちをやり過ごしていた。言われなくともそうする』
誇り高いのか、高慢ちきなのかわからないが、馬籠にとってそんなことはどうでも良かった。
この馬も人から見れば魔物。妖怪の類だ。それでも話は通じるし、戦いを望んでいないこともわかった。
なにより‥‥
「それじゃ‥‥ オイラたち、どうにかできないかやってみるよ。それまで待っててくれるかい?」
『虎太郎とやら。お前の涙を信じて待つ。人の世のことは、我にはわからないからな。良い方法を探してくれ』
一角馬は、やおら立ち上がると馬首を巡らせて、その場を離れていく。
『お前たちのような者ばかりなら、住み慣れた土地を追い出されずにすんだものを‥‥』
ブルルと鼻を鳴らすと、一角の白馬は去っていった。
「ただ生きる‥‥ それすらもこの世は難しいことで御座いますね‥‥」
朱鷺宮の言葉が皆の胸に重くのしかかった。