運命の剣 月と裏切りの章

■シリーズシナリオ


担当:塩田多弾砲

対応レベル:2〜6lv

難易度:難しい

成功報酬:2 G 3 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月17日〜11月22日

リプレイ公開日:2005年11月25日

●オープニング

「私が、熊二郎の兄。飛高虎太郎です」
 丁寧なしぐさで、その武士は挨拶をした。物腰は柔らかで、落ち着いた穏やかな人柄を感じさせる。が、その瞳は肉食獣がごとく鋭いそれで、油断ならない光を隠し持っているようであった。それに見つめられると、まるで藪からいきなり襲い掛かろうと企む虎に狙われているような、そんな錯覚を覚えてしまう。
「私の弟が、お世話になりました。で、ギルドの皆様。相談なのですが‥‥熊二郎の手から、千鶴様の助けていただきたいのです」

 あれより、星光丸を熊二郎は持ち帰った。弟・犬三郎が命を賭して持ち帰った剣。千鶴はそれを涙とともに受け取った。
「しかし、この刀にどんな秘密が隠されているというのでしょう?」
 千鶴が疑問を口にしたのももっともだ。鉈のような幅広の刀身には、刃が付けられていない。手で持ってみたが、非常に重く、不器用なつくり。柄の部分にも何かがあるようだが、判明しなかった。
 刀剣の専門家であるお抱え刀鍛冶も、『これを武器として使えるようにするくらいなら、新しく作り直したほうが早いです』と返答した。
 家臣一同、頭を抱えたが…千鶴が、その謎を解明した。
「この刀‥‥刃の部分に彫刻が刻まれていますね。これ‥‥何かの絵図面に見えませんか? こちら側は‥‥どこか、文字のようにも思えます」
「なるほど! さすがは千鶴殿だ!」
 熊二郎が膝を打った。

 彫刻を検分してみたところ、確かに両面の刀身に刻まれていたそれは、地図と文字であった。
文字は、隆山家の先祖が書き残し、刀身にそれを掘り込んだもの。その内容は、以下のようなもの。

『子孫へと残した財宝は、星光丸、月光丸、日光丸の三ふりの剣を手にした者にのみ手に入る。星光丸に掘り込んだ地図により、月光丸のありかが判別することだろう。
 月光丸へと続く道は、宝を狙う盗賊の目をごまかすため、様々な仕掛けを施してある。地図の場所に突き当たったら、そこの石段の、ある数字と同じ段数を開くがいい。
その数字を知るには、まず我が妻が所有していた長櫃の数を出さねばなるまい。我が妻は多くの櫃を持ち、それに布や服の生地を納めていた。そこから服を縫うと、恵まれない人々、とくに子供に与えたものだ。
 妻の大きな櫃の中には、中くらいの櫃が六つ入っており、その六つの櫃の中にはそれぞれ三つづつ、小さな櫃が入っている。
 我が妻が持つ櫃を合計した場合、二桁の数字が導き出されるだろう。それと同じ数字に十をかけた数字と同じ段数の石段を探ることで、月光丸に辿り着くことが叶うだろう。
 我が財宝を欲する子孫たちよ、三振りの剣が在ってこそ、真の意味で財宝が手に入る。欲に溺れし者は、罰を食らうことであろう。ゆめゆめ、忘れるなかれ

                                隆山家初代当主 隆山賢一郎 』

 財宝を手に入れるためには、この数字を解かねばならない。というのも、地図が示した場所に言ってみたが、そこは一千段続く石段がある廃れた神社があった。
 全てを調べるには、どんなに時間があっても足りないのは明白である。

 だが、この謎を解いたとしても、もう一つ問題があった。
「我が弟、熊二郎は‥‥どうやら、耕一朗様の叔父、柳川雄之助殿と組んでいるらしいのです。雄之助殿は、千鶴様が家督を継ぐ事に反対している者たちの中心的人物で、千鶴様の事を快く思っていないようです。
 そして‥‥どうやら雄之助殿は、熊二郎と密約を交わし、千鶴様に宝を探させて、最後に熊二郎に月光丸を奪わせて不意打ちしようと企んでいるようなのです。これは、私の密偵が調べた情報です。
 ここまで言えばおわかりでしょう。わが弟、雄之助殿と我が愚弟・熊二郎の手から、刀を守っていただきたいのです。つまり、雄之助殿は千鶴様を殺し、刀を手に入れてしまえば、家督を継がせることもなく、財宝も手に入れられると考えているようなのです。なにしろ、雄之助殿は千鶴様が出てくるまで、耕一朗様の跡継ぎ候補でしたからね」
 虎太郎は、地図を取り出した。
「この地図の、ここに神社があります。このどこかに、二本目の刀、月光丸が隠されているはず。じきに、千鶴様は熊二郎とともに刀を探しに行く予定です。皆さんに依頼したいのは、その時に同行し、熊二郎の手から刀を守っていただく事。礼金はこの通り、前金でお支払いいたします。あの神社には、最近武装した山鬼の群れが住み着いたという噂。熊二郎から守る以外にも、腕の立つ護衛が必要なのです」
 そう言って、彼は報酬を目の前に出した。
 だが、それがわかっているのなら、なぜ千鶴に熊二郎を同行させるのか?
「それが‥‥、千鶴様は熊二郎を信用しており、言っても聞かないのです。熊二郎もまた、千鶴様から離れようとせず‥‥まあ、千鶴様の不意をついて切り殺し、刀を奪おうと考えているのですから、当然でしょうが。ともかく」
 彼は頭を下げた。
「どうかひとつ、よろしくお願いします。月光丸を守るためなら、熊二郎を殺しても構いません」
 その言葉にはどこか、冷たいものが感じられた。残酷な獣以上に、鋭い刃にも似た冷たいものが。

●今回の参加者

 ea1551 セレネス・アリシア(27歳・♀・クレリック・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea3225 七神 斗織(26歳・♀・僧兵・人間・ジャパン)
 eb0833 黒崎 流(38歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 eb1148 シャーリー・ザイオン(28歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 eb1568 不破 斬(38歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb3241 火射 半十郎(36歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 eb3273 雷秦公 迦陵(42歳・♂・忍者・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

 その神社は「千段神社」と俗に呼ばれていた。
 かつては千段の石段を上り下りして、参拝者が往復した事だろう。しかし今は、ほとんどの者がここに近付きもしない。火事が起こり、全ての人間が焼死したのだ。以来、石段のみが残り、現在に至る。
 これからそこに向かう事になり、宿屋にてセレネス・アリシア(ea1551)は仲間達と言葉を交わしていた。
「衣類を入れる箱‥‥ヒツ、でしたね? 数は、全部で25だと思います」
 覚えたてのジャパン語で、セレネスは説明した。
「そうなんですか? 私はこの手の謎かけ、さっぱりわからなくて」
シャーリー・ザイオン(eb1148)が苦笑しつつ相槌を打つ。
「大きなヒツ1つ、中くらいのヒツ6つ、小さいヒツが6×3で18つなので、25。つまり250段目を探せばいいことになりましょう。‥‥普通に考えるならばの話ですけどね」
「石段の謎は、セレネス殿の言うとおりかもしれないな。だが今回の件、謎は他にもある。それらを解かない事には、解決はしないだろうね」
黒崎流(eb0833)が、両手の十手を点検しながらつぶやいた。
「虎太郎殿の言う通り、熊二郎殿が裏切り者なのか。それとも逆に虎太郎殿が裏切り者で、熊二郎殿を邪魔に思っているのか。実は誤解しているだけで、2人とも忠臣なのか、あるいは二人ともぐるで、混乱させるためにこういう情報を流しているのか‥‥現時点では、どの可能性も考えられます」
爪をかみつつ、火射半十郎(eb3241)もまたつぶやく。
「でも‥‥わたしが見たところ、熊二郎さんはそんな事をするようには見えませんでしたけど」
 納得がいかないといった口調で、シャーリーは言った。
やがて、七神斗織(ea3225)、不破斬(eb1568)、雷秦公迦陵(eb3273)の三人。残りの面子も戻ってきた。
「刀鍛冶に、星光丸の事を聞いてみたが‥‥刀に関しては怪しい点は無さそうだった。鍛冶も、陰謀に加担するような人間ではなかったし」と不破。
「七神さん、どうでした?」
「ええ、千鶴さんとは同じ武家に生まれた娘同士、お友達になりたいと思っていましたけど、その願いが叶いましたわ」
 セレネスの言葉に、七神は微笑みながら答えた。
「あの方は、自分に対して余分なお金を使わないですね。毎日、孤児たちに読み書きを教えたり、遊んであげたり、お世話をしてあげたり。屋敷の女中さんに頼めば良いものを『この子達は私の妹や弟たち。だから、姉である私がお世話します。皆様の手は煩わせませんわ』と、ほとんどの家事をご自分でこなしていました」
「ああ、俺も見た。武家の娘というより、淑やかな町娘といった感じだった。中々気がきく、殊勝な働き者のようだ」七神の言葉を、不破が補足する。
「そうですよね! きっと誰かの元に嫁いだら、いいお嫁さんになれると思います!」
「ま、千鶴殿はともかくとして。あの兄弟の方は、いささか怪しいと思わざるを得ないな」
 虎太郎と会ってきた雷秦公は、自分が彼にたずねた事の返答について話し始めた。

三男の件について。
「犬三郎は残念だった。だが、あやつは未熟で短絡的だが、決して悪い奴ではない。生きていたら、熊二郎を止めるために力を貸してくれただろうに」
調査する事というのはこの事か。
「この事もそうだが、他にも調べる事がある。三本目の剣、日光丸のありか。雄之助殿が本当に陰謀を企んでいるか否か。そして、犬三郎は本当に、小鬼の襲撃を受けて『三怨の村』に追われたのか。小鬼の襲撃は狂言で、犬三郎は誰かに殺されたのかもしれないのだ」
どういうつもりだ? 何故そこまで分かっていながらあんた自らがなぜ動かない。
「色々と調べたため、私自身も狙われている。それに、雄之助殿が全ての黒幕なら‥‥私はそう睨んでいるのだが‥‥その動かぬ証拠をつかみたい。私の密偵も死体で見つかったし、『三怨の村』から唯一生き残った犬三郎の部下、狼助も行方不明。おそらく、口封じに殺されたのだろう。水面下で何かが動いているのは確実。それらを調べねばならない故に、千鶴殿と月光丸に関してはそなたたちに託したいのだ」

「‥‥どうも、どこかひっかかる」
 話を聞いた黒崎が、その感想を述べた。
「兄弟なのに、自分の弟に対して愛情を感じてないようですね。なんだか‥‥冷たすぎる感じです」シャーリーもまた、感想を述べる。
「今回の仕事、誰かを安易に信じる事は厳禁だな。その事をよく肝に命じておこう」
 不破の言葉に、皆は気を引き締めた。

 じきに、千段神社に辿り着く。
 馬を用意してあったが、千鶴はそれを辞退し、自分の足で歩くと言い放った。そして、熊二郎と合流し、一同は出発した。
 この時点までは、熊二郎は全く怪しい動きは見せなかった。ただ一つ、冒険者達、特に雷秦公に対し激しい敵意の眼差しを向けた以外には。
「兄者と千鶴殿の命令で、貴様らとの同行を許可しているに過ぎん。仕事はするが、貴様らとは余計な言葉を交わすつもりは無い。そこをよく覚えておけ」
 慇懃に言い放った熊二郎だが、それ以外は怪しい動きも、言動もなかった。
 千鶴を取り囲むようにして、冒険者は旅立った。そして七神は、千鶴の近くで、彼女と喋りながら道中を過ごしていた。
 千鶴と七神は、良く似ていた。柔らかい物腰に、育ちの良さそうな顔付き。年齢も近く、聞くところによると武道も多少たしなんでいるとの事だ。
「まあ、斗織様も武家にお生まれになったのですか?」
「ええ。わたくし一度、あなたと話して見たかったんですよ。同じ武家の娘として、お友達になりたいと思いましてね」
「‥‥ですが、私は武家に生まれたくはありませんでした。‥‥私にとって大切なのは私の弟や妹たち。家督や財産などより、そちらの方がずっと大切です」
「でも、この試練を乗り切れば、全て解決じゃないですか。千鶴様は隆山家の当主となり、その財産で子供達と一緒に暮らしていけるんですよ? 大丈夫、わたくしたちが千鶴様を守ります!」
「!」
 次の瞬間、熊二郎は千鶴の足元に手裏剣を投げつけた。あと一歩踏み出していたら、彼女の足が地面に縫い付けられていたところだ。
 冒険者達に、緊張が走った。
「貴様、何を!?」
 不破の言葉に、熊二郎は顎をやった。
「‥‥これは、毒蛇?」
 熊二郎の手裏剣は、千鶴の足元に這い寄ってきた毒蛇の頭に命中していた。もしもこのまま見過ごしていたら、彼女は咬まれていたに違いない。
「‥‥あ、ありがとうございます。熊二郎様」
「‥‥そ、それより千鶴殿、今後は足元もお気をつけあそばされよ」
 若干動揺し、頬を赤くすると、熊二郎は顔を背けた。

 千段神社に辿り着いたが、そこは既に山鬼がうろついていた。見ると、武装した武家の人間‥‥だったものを、大根でも齧るかのようにかぶりついている。明らかにそれは、人間の手足だ。
 山鬼は五体。うち二体は大柄で、所有している武器もかなり威力のありそうな大斧に戦棍だ。頭の部分にこびりついた血はまだ新しく、ほんの数刻前に凄惨な状況が起こった事は間違いないだろう。他の山鬼は、どうやらその二体の手下か何かのようだ。持っている武器も、ただの棍棒である。
 まだ遠くなので、彼らがこちらに気づく可能性は低いだろう。しかし、彼らは動く気配を見せない。
「どうする?」
「決まっている、奴らを倒すだけだ!」
 熊二郎は携えた日本刀を抜き、隠れていた藪から出た。
「誰か、千鶴殿を頼む。わしはやつらを倒す! 貴様らはどうする? ここで隠れているだけか?」
「冗談、仕事はするとも。だろ?」雷奉公も立ち上がった。
「もちろんだ。よし、シャーリー殿とセレネス殿は千鶴殿の護衛。自分と熊二郎殿、七神殿は正面から。来奉公殿と火射殿は、不破殿とやつらの後方から。それぞれ攻めることにしよう。皆、異存は?」
「黒崎さん、一つだけ」
 呪文を唱えていたセレネスが、顔を上げた。
「今、デティクトライフフォースを唱えたんですが‥‥オーガーの他に、近くに何人か隠れているようです」

 吼える山鬼の前に、熊二郎は突撃をかけた。その凄まじいまでの雄たけびは、熊どころか熊鬼ですら怯む事だろう。
 それに続き、七神と黒崎が山鬼に襲いかかる。
 二体の山鬼戦士、ないしはその片方が大斧を振り回す。が、そんなものに怯むことなく、熊二郎は携えた野太刀で斧の一撃を受け止めた。
「秘技・胡蝶の舞!」斧を封じられ、躊躇した山鬼戦士。その隙に七神の両手に携えた小太刀と短刀が、巨大な怪物の肌を深く切り裂いた。
 斧を取り落とした山鬼戦士を、凶暴な熊二郎の剣が止めをさす。野太刀が一閃し、山鬼戦士は首を切断されて果てた。
 戦棍を手にした山鬼戦士は、黒崎を餌食にせんと得物を振り回した。が、その動きを見切ると、黒崎は自分の得物、両手の十手で一撃を加えた。
 頭蓋骨を砕かれ、怪物は痛みにうめいた。
 後方に控えていた三体の山鬼が、棍棒を手にして加勢しようとする。が、すでに彼らの後ろからは、別の冒険者が回りこみ、攻撃を仕掛けていた。
 山鬼の一体が振り返った時には、不破が懐にもぐりこんでいた。
「食らうが良い!」山鬼の皮膚の薄い部分に、不破の鋭い刃が突き刺さる。苦悶の表情と叫びとともに山鬼は沈黙した。他の二体の山鬼にも、雷奉公の拳が腹に食い込み、火射の手裏剣が急所に突き刺さる。
 山鬼の咆哮に、苦悶のそれが混じり始めた。

「! あれは?」
 山鬼との戦いを見守っていたシャーリーだが、石段に目を転じると、そこに人影が見えた。まるで山鬼と冒険者たちから隠れるように、何かを探っている様子だ。
 戦いに手一杯で、冒険者達は気づいていない様子。が、千鶴はそれを見て、指摘した。
「おそらく、この混乱に乗じて、月光丸を奪うのでは? シャーリー様、セレネス様!」
「ええ、行きましょう!」セレネスはうなずき、千鶴とともに向かっていった。
 
 山鬼の両目に火射の手裏剣が突き刺さる。視力を奪われて混乱した怪物に、不破の双刃が振り下ろされ、止めをさした。
 山鬼は倒したが、熊二郎の怒号が響き、冒険者は一息つくひまも無かった。
「あれを! 石段に何者かが!」
「千鶴さんも向かってる! 急ぎましょう!」
 後で判明したが、石段はセレネスが指摘したとおり、250段目だった。その石段を、謎の人影が暴き、中から何かを取り出していた。
「!」
 三日月そのものの形をしている、一振りの刀。日本刀と言うより、むしろ西洋や遠い外国での刀のように見えるそれが、求めていた刀、月光丸に違いないだろう。
「待ちなさいっ!」威嚇のため、シャーリーが弓で矢を放った。
 が、彼はその矢を弾き、刀を手にしたままさらに逃走する。
 何か術を心得ているのか。不破と黒崎が600段近くを登りきった時、既にかの者は階段を登りきってしまった。山鬼との戦いで疲労した身体に鞭打ち、冒険者たちも遅れて登りきる。
 が、一足遅かった。怪人物は見つかったが、彼は刀を持っていなかった。‥‥何者かに切り捨てられ、地面に伏せっていたのだ。
はるか遠くを、早駆けの馬が過ぎ去っていく。おそらく、その馬に乗っている者が奪ったのだろう‥‥月光丸を。
「はあっ、はあっ、はあっ‥‥畜生、間に合わない‥‥」
 悔しげに、火射はつぶやいた。どんな術や魔法を使ったところで、追いついたとしても、戦えるかどうかは分からなかった。
「くそっ、こいつは何者だ!」
 憎々しげに、熊二郎が怪人物の覆面を取り去る。が、それを見て彼は驚愕した。
「これは‥‥兄者!」
「?なんだって?」
「どういう事です? どうして、虎太郎様がこんな事を!」
 覆面の下は、虎太郎。今回の依頼人その人だったのだ。
「自分で、刀を手に入れるつもりだったのか? しかし、だったらなんで熊二郎を裏切り者扱いしたり、俺たちを雇ったりしたんだろう?」
 全員が、雷奉公が口にした謎を解かんと頭を働かせる。が、混迷するだけで、解決の糸口さえ見えなかった。

 月光丸が隠されていた、石段の隠し場所。熊二郎が腹立ち紛れにそこを探ったところ、石版が収められていた。刻まれた文字を解読すれば、最後の剣、日光丸について、何かが分かるかもしれない。
「‥‥皆様、戻りましょう。一度戻って、状況を整理する必要があると存じますわ」
 千鶴の提案を、彼らは受け入れる事にした。
 状況が見えない。一体、真相は? 
 この謎が解けるのか。冒険者達は慄然たる気持ちに囚われていた。