【船宿綾藤・新装開店】大暑に舟で涼を‥‥

■シリーズシナリオ


担当:想夢公司

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:8人

サポート参加人数:4人

冒険期間:07月30日〜08月04日

リプレイ公開日:2005年08月08日

●オープニング

「毎日毎日こう暑くては堪ったものではありませんよねぇ、ねぇ、そうは思いません?」
 そうぱたぱたと扇ぎながら言うのは船宿綾藤の女将・お藤。
 じっとりと汗ばんだ首や額を、時折手拭いで抑えつつギルドの受付相手にのんびり世間話をしているお藤に、汗だくで手拭いを手放せない受付の青年は軽く首を傾げます。
「しかし、良いんですか? 前回はなんだかんだ言ってサク‥‥ごほごほ、まぁ、宣伝みたいなものでしたが、今回はまるきり舟遊びのお誘い、ですよね?」
「依頼という形の方が宜しいのでしたら、そうですねぇ‥‥私が暫く舟で避暑の舟遊びをするのに、護衛、と言う名目出来ていただくのはどうでしょうねぇ?」
「そりゃ、いいですが‥‥でも、別口でそれは‥‥」
「ええ、ですから、あくまでそう言う名目で着て頂いて、のんびりと滞在して頂ければと、こう思うのですよぅ」
「‥‥なるほど、まぁ、女将さんがそれで良いのでしたら、こちらとしては依存ありませんが‥‥」
 そう言って前回の依頼の面々を確認する受付。
「この暑さ、お客様もどうしても外に出る気も起きないでしょうから、どうしても部屋も余裕がありますし、家に来て下すっている皆も、ただやることなくぶらぶらし、折角仕入れたものを無駄にするのもとなりましてねぇ」
「あぁ、それは分かりますね」
 ほうと溜息混じりに言うお藤の言葉に頷く受付。
 船宿綾藤は客足が戻ったと思ったときには、ちょうどお客がまばらになる大暑‥‥1年でもっとも暑い時期に差し掛かっており、仕事をする気があっても客が、と言う事態に陥っているよう。
「それに、暑い中でもそれを忘れて、賑やかに楽しめたらいいと思いません?」
 そうお藤がにっこり笑うのに、ちょっぴり羨ましそうに依頼内容を確認しつつ、受付の青年は頷くのでした。

●今回の参加者

 ea0392 小鳥遊 美琴(29歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea2445 鷲尾 天斗(36歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea2851 魅繰屋 虹子(39歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea3269 嵐山 虎彦(45歳・♂・僧兵・ジャイアント・ジャパン)
 ea5927 沖鷹 又三郎(36歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)
 ea6388 野乃宮 霞月(38歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)
 ea6450 東条 希紗良(34歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 eb2545 飛 麗華(29歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)

●サポート参加者

御神村 茉織(ea4653)/ イツキ・ロードナイト(ea9679)/ 八幡 玖珠華(eb1608)/ 斎部 皓牙(eb3051

●リプレイ本文

●涼を楽しむ
「お藤姉さんも毎回、贅沢な依頼を出すねぇ‥‥ま、だからこそ来てしまうのだけど」
 そんなことを言いながら藍色地に白の流水の浴衣を身につけのんびりと屋形船に乗り込んで言うのは魅繰屋虹子(ea2851)。
 女将であるお藤が料理を店の者に運ばせて乗り込んでくると、舟はゆっくりと動き出します。
「こんにちは、お藤さん。また楽しませていただきますね」
「ええ、ゆっくり、楽しんでいってくださいねぇ」
 小鳥遊美琴(ea0392)が深々と頭を下げて言う言葉に小津時もにっこり笑って応えます。
「お、お燕ちゃ〜‥‥んぐっ!?」
 鷲尾天斗(ea2445)がお酒のお代わりを運んでいたお燕に飛びつきかけたのですが、次の瞬間ぴんと張った縄が首にかかり引っ張られ悶絶。
「な‥‥何で俺は縄に繋がれてるんだ?」
「太助君のほうがよっぽど行儀がいいぞ?」
 縄の端を手に引っ張っていた虹子のがそう言いそれを見て呵々と笑うのは嵐山虎彦(ea3269)。
「それにしても何だな、川からの涼風が通るとこう、涼しくてのんびり‥‥ぐーぐー」
 早速この時期にはあまりない涼しい風にしっかり居眠りしかける嵐山。
「いい風ですね」
 虹子から藤紫の紫陽花の浴衣を借りて舟遊びに参加した飛麗華(eb2545)は、料理を口にして居たのですが、ふと水面を走る涼やかな風に微笑みつつ顔を上げます。
「‥‥ぉ、おぅ! 寝てばっかりじゃ腐っちまうな」
 はっとうたた寝をしていた嵐山がそこの言葉にはっと目を覚ますと、ぐしぐし目元を擦ってから笑って以後を取り出し、早速風流に漢詩などを諳んじつつ酒を飲んでいた鷲尾を捕まえたよう。
「おう天斗、囲碁の相手でもしねぇかい? 互いに腕前は恥ずかしいもんだろうがな」
「酒に對して當に歌うべし‥‥っと、囲碁か?」
 煙管を置いて囲碁盤を前に向き直る友人同士、すっかりと寛いだ様子です。
「お前から船宿の話は聞いていたが、いやはや。遊んで金を貰うってのは何だか申し訳ないな」
 野乃宮霞月(ea6388)が、涼やかな浴衣に着替えてゆったりと腰を下ろしつつ既に賑やかになり始めた舟の上を見回して言うと、御神村茉織はにと笑いながら杯を傾けてイツキ・ロードナイトが手品に興じているのを眺めます。
 目の前のお膳には、季節を感じさせる物が良いという野々宮の言葉通り、鱧や鰻に、鷲尾が持ち込んだ夏野菜がふんだんに使われた物と、鮎飯に盛り蕎麦などが選り分けられています。
「暑いねぇ。どうだ、一緒に涼まないか?」
 そう野々宮が河原で暑さを凌いでいた様子の男に声をかけたりと、のんびりと料理を良質の酒に舌鼓しつつの舟の移動です。
「いいな、ちょっと見せて貰えないか?」
 虹子が野々宮達の所へとやってくるとそう言う視線の先には野々宮の鷹の姿が。
「俺も欲しいのだけどな…鳥というのは不思議な生き物だな。今度描かせて貰ってもいいか?」
「ああ、構わない。‥‥呑むか?」
 ひょいと徳利を手にして虹子に聞く野々宮に、虹子もにっと笑ってそこに腰を下ろすのでした。
「この酒ならば、何をあわせるでござるか?」
「む‥‥私ならば、今の時期は‥‥これに醤油で薄く味を付け、御飯と和えて‥‥」
 綾藤の料理人とああでも無いこうでも無いと意見を交わしている沖鷹又三郎(ea5927)は、先程から釣り糸をたれて小魚を釣り上げてはそれをちょいちょいと料理人が捌いて七輪で焼いたりと、なかなか充実した時間を持っているよう。
「お久しぶりです。又お会いできましたね、希紗良さん」
「久方ぶり‥‥とまではいかないか、息災のようで何よりだ」
 美琴が笑顔で東条希紗良(ea6450)の隣へと腰を下ろしながら言うと、東条も笑みを浮かべて頷きます。
「でも、本当に暑い時期に船なんて、いいですねぇ。ひゃあ、水がつめた〜い♪」
 身を乗り出して手で水に触れて歓声を上げる美琴に、酒の肴を手に近付くお藤。
「女将は酒はいけるのかえ?」
 そう言って徳利を手に促すように揺らす東条に、微笑を浮かべて杯を手にしていただくお藤。美琴は一通り水の冷たさを楽しむと三味線を手にゆっくりと演奏を始め、舟の上に嵌ったりとした長閑か雰囲気が漂います。
「それでは、お二人とも、のんびりなすってくださいねぇ」
 そう言いながらお藤は席を立つと、他の者の方へと歩を進めるのでした。

●お茶を楽しむ
 暑い日差しの中で着々と中庭を望める一室に船宿の者達の手によって準備されるのはお茶席の準備。
 宿の池にある蓮は今花盛りで、お茶席の準備をされると、東条は先程から庭を散策していた足をお茶席へと向けます。
「茶道って興味あるのですけど、教えていただく機会って無いですものね」
「まー茶なんてのは楽しめればいいとお茶の先生とかは言ってたがねぃ」
 にやりと笑いつつ座敷で寛いでいた嵐山がそう言うと、美琴はしげしげと嵐山を眺めて感心したように口を開きます。
「大きな方ですね‥‥力士さんなのですかぁ。お強いんでしょうね」
「まぁ、それほどでもないがな」
 謙遜なのか本心なのかは分かりませんが、言われた言葉に照れたようにがりがりと頭を掻く嵐山。
「多少なら教えられるしな」
「風情は楽しみたいと思うが、細かい作法はそれ程気にしなくてよろしかろうよ。分からないことがあったら聞くと良い」
「よろしくお願いします、鷲尾さん。と、希紗良さん」
 鷲尾が声をかけるのにそう言ってぺこりと頭を下げると、聞くと、と言う東条ににこりと笑いかける美琴。
 お茶会の準備が済むと、一同集まってののんびりしたお茶会が始まります。
『‥‥や、やばっ 脚しびれてきちゃった きんちょうしてるから〜』
 口の中でもごもごと小さく呟く美琴の様子に気が付いたのか微苦笑を浮かべる東条。
「最初にくずしても構わないと言って置けばよかったね。大丈夫かえ?」
「す、すみません、ちょっと、脚、しびれちゃって」
 真っ赤になりながらそう言う美琴に手を貸して足を崩させてやる東条。
 お茶席にはたまに見られる光景ですね。
「どうですか? お気に召すと宜しいのですけれど‥‥」
 そう言ってお藤が運んでくる茶菓子の皿は深緑に白い水面と魚が片隅に入っている、夏を思わせる器で、その上には白玉とがちょこんと乗せられています。
 野々宮はそれを受け取ると、暫しお藤と談笑していたとか。
 お茶席の後はそれそれが酒に夕涼みに、と思い思いの時を過ごしたよう。
 嵐山の作った木彫りの看板を受け取ったお藤は、それはたいそう喜んだそうです。

●夜釣りを楽しむ
「女将、船借りるぞ」
 そう言って舟を借りて釣り道具を肩に引っかけ出かけるのは鷲尾と、それについていくのが虹子・嵐山、そして沖鷹です。
 暫く談笑しつつ釣りに興じたり、それを沖鷹がさっくりその場で捌いて楽しんだりとしていたのですが、そろそろ戻るか、と言う段になって、鷲尾が何やら対岸の一点をじとっとした様子で眺めています。
「何かムカつくなぁ」
 そう言う視線の先には何やら2つの影が。
 ぼうっと薄紫に輝く鷲尾に気が付いた他の面々。
「わ、鷲尾殿〜穏便に〜」
「あー‥‥天斗、変なことすると問答無用でかっ飛ばすぞ? って、なに、岸辺で恋人がいちゃついてるだぁ?」
「え、あ、あ?」
 暴れそうな予感、慌てて止める沖鷹と対照的にさっくりと虹子が鷲尾を簀巻きにすると、ぎっと舵を握る嵐山。
 虹子が魔法を唱えると炎に包まれる鷲尾。
「さーて、どこまで飛ぶかねぇ‥‥」
「ってちょっとまて! 何故簀巻きにされますか、俺。そして虎彦! 何ですか。その殺る気満々な素振りは!」
 そう言って素振りをしていた嵐山、クリエイトファイアーがかかったのを確認すると共に、大振り一撃。
「‥‥名物男から空飛ぶ伝説男になって来いっ!! っと、おぅあ!?」
「たまやーって、きゃっ」
「わわ、鷲尾殿〜って、うわっ」
「空を飛ぶ 町が飛ぶ 雲を突き抜け星になるぅ〜!」
 思い切り鷲尾を打ち出した嵐山ですが、踏み出した瞬間、舟の縁を踏み抜いてそのまま勢いよく頭から川へと飛び込み、鷲尾を慌てて止めようとした沖鷹も体勢を崩してそれにお付き合い。
 虹子は舟がひっくり返るのを止めようとして反対側によったのが運の尽き、反動でやはり川へと投げ出されます。
「‥‥あー、飛んでいって‥‥」
 川面に顔を出した3人、空を光って飛んでいく物体が、やがて大きな水柱を立てると、先程の2人の影はその騒ぎに驚いたか逃げ出していた模様。
 川下へとぱしゃぱしゃ泳ぎ飼い主を拾いに行く太助君の健気な様子を見つつ舟に上がると、照れたように笑って嵐山の手を借りて舟へと戻る沖鷹。
「まー天斗はあれぐらいじゃ死なないしね。太助君が拾いにいったし」
 そんなことを言って船宿へと戻る3人。
 鷲尾が犬の太助に拾われて船宿へと戻ってきたのは、次の日の早朝でした。

●そしてやはりお約束
「至れり尽くせりのもてなし‥‥申し分ない」
 野々宮がそう頷いてお藤に礼を言うと、お藤もそれに嬉しそうに礼を言って返しています。
 そんな中で毎度の事ながら、舟の修理代として報酬を引かれている人間が今回はもう一人加えているようで。
「まぁ、ちとやんちゃが過ぎたかな」
 そう言いつつ大きな体を強請って掃除をしているのは嵐山。
「女将、なんだこの前掛けは」
 そう言うのは言わずもがな、報酬代わりに前掛けを笑顔のまま渡された鷲尾。
「ま、まぁ、拙者も手伝うゆえ‥‥」
「そうそう、潔く手伝おうじゃねぇか」
「ちょっと待てーっ!」
 そう言って自主的に前掛けを受け取りながら言う沖鷹に宥められ、嵐山にがっしりと襟首を掴まれて引っ張って行かれる鷲尾を見送った残った面々に、ほほほと誤魔化し笑いをするお藤。
「またいずれ、皆様に声をかけさせていただきます。本当に今回も有難うございました」
 気を取り直したか、お藤はそう微笑んで言うと、頭を下げて一同を送り出すのでした。