【凶賊盗賊改方・昔の因縁】三倉の勘べぇ

■シリーズシナリオ


担当:想夢公司

対応レベル:5〜9lv

難易度:やや難

成功報酬:3 G 29 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月03日〜12月08日

リプレイ公開日:2005年12月13日

●オープニング

「‥‥燧切の伝五郎の捕縛はわかりました‥‥で、その、もう一組は‥‥」
 青い顔をしたギルドの受付の青年がかすれた声でそう聞くと、凶賊盗賊改方の長官、長谷川平蔵は頷いて口を開きました。
「もう一組には、ここにいる津村の元で三倉の勘べぇ捕縛を頼みたい」
 ここは船宿・綾藤の奥の座敷で、部屋には平蔵と筆頭与力の津村武兵衛、それにつづらから次々と『凶盗』とかかれた提灯と同心達の身につける羽織を引き出している早田祐一郎と荻田一郎太の2人の同心がいます。
「こちらも、比良屋にいる杜父魚の稲吉繋ぎに感づかれてはならぬゆえ、比良屋で盗賊達を待ち構えるわけには行かぬ」
 そう言うと、武兵衛が頷いて言葉の後を継ぎます。
「そして、比良屋の襲撃は今月の半ばの予定であるそうだが、何より燧切の伝五郎が捕らえられればさすがに数日中には勘べぇの耳へと入ろう。となれば、姿をくらまし捕らえることかなわぬ可能性がある」
 そう言うと、神妙に聞く受付の青年へと平蔵は苦い笑みを浮かべ。
「面倒だが、宜しく頼む」
 そう言うと、受付の青年は急いだ様子でその場を辞し、ギルドへと駆け戻っていくのでした。

●今回の参加者

 ea2702 時永 貴由(33歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea6450 東条 希紗良(34歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea6982 レーラ・ガブリエーレ(25歳・♂・神聖騎士・エルフ・ロシア王国)
 ea8922 ゼラ・アンキセス(23歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 eb0993 サラ・ヴォルケイトス(31歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 eb2719 南天 陣(63歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 eb3582 鷹司 龍嗣(39歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb3605 磐山 岩乃丈(41歳・♂・忍者・ジャイアント・ジャパン)

●リプレイ本文

●繋ぎ
「一之丞君を誘拐するなんて、根性悪っ!」
「む〜っ、なんとしてでもいちのじょー君を助けるじゃ〜ん!」
 本気で盗賊達のやり口に怒りを込め加熱してゆくのはゼラ・アンキセス(ea8922)にレーラ・ガブリエーレ(ea6982)。
「それにしても、矢筒付で纏め売りしてくれないかなぁ、越後屋さん」
 その横で、捕縛は夜になるだろうと言うことで、今のうちにと矢を黒く塗り闇の中で見え辛くしているのはサラ・ヴォルケイトス(eb0993)。
 それぞれが怒りを持って動いているので宥める人はいませんが、いざ作戦を練るときには自分で冷静になろうと深呼吸をするだけ、ゼラの方が大人なのかもしれません。
「あれから、繋ぎはどうなっているのだ?」
「本日、これより後に市中見回りを装い出かけるところです。東条殿と磐山殿が後をつけていかれるとのことで離れていらっしゃるようですが」
「そうであったな‥‥ふむ」
 そう言うと切り絵図を前に南天陣(eb2719)は、しばし黙考。
「場所は変わっておらんな?」
「ええ、同じ場所です」
 それを確認すると、陣は立ち上がって部屋を出て行くのでした。
 その酒屋で、じっと俯いたまま荻田は、がっしりした50男、狢の九太郎と向かい合っていました。
「‥‥そいじゃ、明後日の見回りは予定通り外れるんだな?」
「あぁ‥‥約束だ、息子を帰してくれ」
「いつ帰すと言った? これからいくつかお盗めがある‥‥当然、それまで協力して貰ってからだ」
「‥‥っ!」
 睨め付ける荻田ににやりと笑い立ち上がると、九太郎はその店を出てひょいひょいと歩
いていき、それを磐山岩乃丈(eb3605)が尾けていきます。
「さて‥‥頼んだよ、磐山殿」
 東条希紗良(ea6450)はそう呟くと、磐山の後を追って歩き出しました。
「‥‥あの男、か‥‥?」
 荻田から聞いた限りでは他に見覚えのある男はいなかったそうですが、念のため陣は荻田と九太郎が落ち合っていた酒場で様子を窺っていると、やがて荻田が席を立つのに合わせて立ち上がる男が。
 他に怪しい様子を見せる者もいない為、後をつけ始める陣ですが、どうやら荻田がよけいな動きをしていないかを確認している様子。
 やがて役宅へと戻った荻田を確認して、男はその場を離れると目に付いたらしき酒場へと入って行き、陣も頃合いを見て店に入りますが、その男は既に店の裏口を通ってどこかへと消えていたのでした。

●救出
「貴様ら、いったいどういうつもりだっ!?」
 場所は役宅の一室、既に日も落ちこの部屋にいるのは東条と磐山、そして武兵衛の3人です。
 諸肌脱がされ吊した棒へと縛り付けられた九太郎は武兵衛が縄を引き上げさらにきつくつり上げられるのに小さく呻き。
「さて、と‥‥」
 東条はさも楽しいといった表情を浮かべると九太郎へと向き直りました。
「知人に拷問の仕方を色々教わったんだが試す機会がなかなかなくてね‥‥どこまで遣ったら死ぬんだろうねぇ?」
「やれやれ、あまり気軽に言わないで欲しいでござるよ。実際にやるのは我が輩なのでござるからして」
「畜生めっ! 殺すなら殺しやがれいっ!」
 磐山の言葉に怒鳴る九太郎ですが、その九太郎をすっぱり無視して東条と磐山は話し、武兵衛は素知らぬふりで身体を吊り下げています。
「針が肉に刺さるだの、骨の折れるだのの感触は、あまり好きではないでござるよ。我が輩温厚でござるからして」
「お、おいっ、聞いてやがるのかっ!?」
「男が喚くのも見苦しいから口に詰め物でもしておいたほうがいいな。あぁ、そこの手ぬぐいでいいか」
「ちょっ、ちょっと待てっ!? それじゃあそもそも拷問じゃ‥‥」
「別にお前さんがしゃべってもしゃべらなくてもいいのさ」
「へ‥‥?」
 唖然としてもう一方の磐山へ目を向ける九太郎ですが、木刀を手に軽く手でいじり回した後にいとも容易く折ってしまうのを見てあんぐりと口を開きます。
「まぁこの木端よりは、簡単に折れそうでござるなぁ」
「ひっ‥‥」
 怯えたように東条へと目を戻して口を開く九太郎。
「ま、待て待て待て、い、幾ら役人とはいえ、勝手に殺すこたぁできねぇ‥‥」
「残念だったね、改方は普通と違ってね。なに、抗したので切り殺したとしておけばいいだけのこと、問題あるまい」
 そう言うと、東条はにっこりと笑い手拭いを手に九太郎へと歩み寄ります。
「私はただどこまで耐えられるものなのか見てみたいだけだからねぇ」
 そして、一刻後、一行は以前孫次と別れた後に伊予太が入っていった宿の前の蕎麦屋へと場所を移しています。
「調べてみたところ、ここにいるのは4人ほど‥‥店の者を入れると8人だ」
 それまで百姓家を調べ、こちらか茶屋をと思い様子を調べていた時永貴由(ea2702)が、武兵衛へと伝えると、武兵衛はすぐに決断を下したよう。
「幸いと言ってはなんだが、この宿付近へ人の出入りはない。そして、時永殿に調べて貰ったところ、現在の客四人も少しずつ集まってきた様子とのこと、そして九太郎の言葉通りならば比良屋襲撃寺にはこの宿に集まることになっているという‥‥ならば」
「ならば、今のうちに子供を救い出し、あそこで集まってくるのを捕らえれば良いのだね?」
 東条が続けるのに武兵衛も頷き。
 東条、磐山、人でそれぞれの出入口から押し入り、2階の押し入れに押し込まれて衰弱した子供を助け出す迄そう時間はかからなかったのでした。

●勘べぇ捕縛
「‥‥さて‥‥ひとりも逃さない‥‥!」
 決意を込めてそう言うと、サラは向かいの蕎麦屋の屋根裏からその宿を見下ろして呟きました。
 そして、闇に紛れてわらわらと集まってきた数人、既に中で捕らえられてぎちぎちに縛ると押し入れに全員詰め込んで長持でそこを閉鎖したりしているうちに時は大分経ち。
 日付も変わろうという頃、5人の男達に守られるようにやってくるのは中肉中背の男。
「‥‥来た‥‥」
 きっと鋭く男達を睨み付けて呟くと、サラは自身の手番が来るのをじっと息を潜めて待つのでした。
 当たり前のように言葉合わせで宿内へと迎え入れられた男達は、突然後ろで閉じられた戸にぎょっとして振り返ると、男達が入りきるまで潜んでいた磐山が戸を潜り後ろ手で閉め立ちはだかっていました。
「鬼畜共に天罰下すべく鬼が参った‥‥覚悟せい!」
 鬼面頬を付け大音声で言い放つ磐山に匕首を抜く男が突進しますが軽くいなされ、両の手に持つ十手で連撃を繰り出す打撃を交わす事も叶わず崩れ落ちます。
「秘技・磐雪崩‥‥身をもってとくと思い知るが良い」
 そう言うと磐山に気圧されて店内へと入っていく男達。
「あなた達は絶対に許さないわっ!」
 そう言うゼラの手によって3体のゼラの姿をした人形が立ちはだかり、男達は気勢を上げてその人形を切り倒しますが、崩れ落ち灰へとなるのに驚愕した顔をする男達。
「おぬしが勘べぇか? 自分と真剣勝負といかないかね。抵抗できない者を切るだけの能力ではあるまい」
 男達を盾にじりっと戸へと移動した中心の男へと声をかける陣。
「くっ‥‥」
 手に小太刀を握り陣へと向けながらひたすら距離を取り回り込もうとしているようですが、距離を詰められ思うように動けない様子の勘べぇ。
「神妙にしやがりなさい〜! 改め方に手向かうと痛い目みるじゃん!!」
 武兵衛の後ろからびしっと指を差して言うレーラに、階段の所へ退いてコンフュージョンを男のひとりへと打ち込み、血気にはやっていた様子のその男を外へと混乱させつつ逃げ出させたのは鷹司龍嗣(eb3582)。
 そして、表からひゅと言う短い音と共に上がる男の絶叫。
「うわあぁぁぁっ!!」
 窓の障子を突き破り飛び出した男へは、蝋燭の火が燃え上がりその男の足を捕らえ肉の焼ける匂いが立ち上り。
「絶対に逃がさない!」
 その炎がゼラが放った者であると気が付いた勘べぇは血の気を引かせて表戸を突き破り飛び出し。
「っ!!」
 サラの矢が勘べぇの太ももに突き刺さり、転げる勘べぇですが、身体を起こし足を引きずりながら逃げようと動き。
「次っ!」
 再びひゅと言う音と共にぱたりと倒れる勘べぇ。
 中で暴れた男達も既に縛り上げられており、レーラがおっかな吃驚に『凶盗』と書かれた提灯を表へと出すと、サラは息をついて弓を降ろすのでした。

●残された問題
「ご苦労であった」
 そう言って一同を労うのは長谷川平蔵。
 地鶏の鍋を始め、お燕に膳を運ばせ、酒や茶を用意して迎え入れた平蔵は、武兵衛から前もって受けていた報告通り、鷹司が稲吉と接触するために制にいないのを確認して頷き。
 笑いながら一同へ箸を進めるように言うと、穏やかな顔で口を開きます。
「荻田の息子・一之丞も落ち着き、少しずつ食事を口にし始めたそうな。あの様子ではすぐに元気を取り戻すそうだ」
 そう言うと、一同へと頭を下げる平蔵。
「礼を言う」
「そんな、お礼だなんて‥‥」
 そう言うのを首を振って顔を上げると、平蔵は箸が止まっておるぞ、と微笑を浮かべます。
「それにしても、勘べぇ一味、あれだけのことをやっておいて、随分と根性がなかったねぇ」
 どうって事無いように言いながら杯を手にして言う東条に、九太郎の様があまりに見苦しく惨めなものであったのを思い出したか磐山も苦笑します。
「たかだか矢で射られたぐらいで泣き出すとも思わなかったけど」
 そう鍋を取り分けつつ言うサラに、レーラもこくこく頷きます。
「もっと怖いヤツかと思ったら、全然情けないじゃん」
「何にせよ、彼奴らはこの事が片次第、品川の刑場へ引き出されることとなる」
 平蔵が言うと、『その時も泣きわめくのかな』と呟きながら箸を進めるサラ。
「さて‥‥あとは杜父魚の稲吉だけね」
 ゼラはそう言うと、決意を込めた様子で頷くのでした。