【盗賊の息子】未練
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■シリーズシナリオ
担当:想夢公司
対応レベル:6〜10lv
難易度:難しい
成功報酬:3 G 71 C
参加人数:8人
サポート参加人数:3人
冒険期間:09月09日〜09月14日
リプレイ公開日:2006年09月18日
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●オープニング
その日、船宿の綾藤へと足を踏み入れた受付の青年は、その部屋の前でどことなくぴりぴりと肌にいたいほどの緊張感を感じ小さく息を飲みました。
「そんなところに突っ立っておらんで入ってこい」
襖が凶賊盗賊改方・長官代理の彦坂昭衛の手によって開かれ中へと迎え入れられると、上座にはゆったりと腰を下ろし煙管を燻らせている平蔵、そして津村武兵衛の姿が。
「長谷川様、もう、大丈夫なので‥‥?」
「暴れねぇかぎりはな」
低く笑う平蔵、武兵衛に勧められて受付の青年が腰を下ろすと、昭衛が側に腰を下ろし口を開きます。
「さて、色々と差し迫ってきたが、何はともあれ現状での内部に発生した不幸な誤解などについて、沈静化したことをまず伝えておこう」
「‥‥は、はぁ、その、恐縮です‥‥」
「そして、三日月堂と改方で保護している鶴吉に関して、そのどちらにも鬼形の松太郎の関与が認められた‥‥いや、そのどちらも鬼形の松太郎が引き起こしていると言っても過言ではない」
「どちらにも、ですか?」
「三日月堂は内部に問題を抱える金持ちに対し、少量ずつ街のある物を与え死に至らしめ‥‥そこに及ばずとも跡目を継げぬ身となるようにし向け、そこからとある目的のための伝手を広げていた‥‥あの店はそのために鬼形によって作り上げられた」
「‥‥」
ごくりと喉を鳴らし聞き入る受付の青年。
「そして、鶴吉の方は、親父である永見の鶴助が、預けていったであろうと思いこんでいた物を取りに来たってぇ訳よ」
ゆるりと煙管を燻らせて、まるで呟くかのように言う平蔵に目を向ければ、僅かに口の端を歪める平蔵。
「そこでだ、それぞれが鬼形の松太郎捕縛の為に動いて貰うこととなる」
平蔵の言葉に、頷いて受付の青年は依頼書へと目を落とすのでした。
「それで‥‥鶴吉君の父親が預けていったと思われる物とは‥‥?」
「鬼形は景気よく金を使って、桁違いの稼ぎを取る。そして、そのままそれを景気づけとばかりにあちこち手薄なところを狙い小金であろうと持ち去る‥‥」
「‥‥‥酷い事件が、そう言えば沢山ありましたね‥‥」
幾つか聞き及んでいるのでしょう、昭衛の言葉に受付の青年が目を落とせば、武兵衛が小さく溜息をつきます。
「小金や盗んだうちの幾つかを景気よく分けるのだが、全てを分けるというわけではない‥‥それを、どこへ隠すか‥‥」
「‥‥で、でも‥‥鶴吉君はなんにも持たずに家を‥‥」
「‥‥全部の場所を知っていたとは限らぬが‥‥あの女ぁ、うすうす鶴助を盗賊と知っていたのかも知れねぇなぁ」
追い出された、そうは言えずに言葉を途切れさせられば軽い口調ながらも、どこかぞっと底冷えするような声で呟く平蔵。
「‥‥つ、鶴吉君の母親、ですか‥‥?」
「‥‥鶴吉の母親に確認に行かせたところ、重そうな荷物を抱え姿を眩ましていたそうだ‥‥家を調べたらな、床下にぽっかりと空になった金箱が埋まっていたってぇ話だ」
何とも言えない沈黙が流れる中、ふと疑問を感じた様子の受付の青年は口を開きます。
「あの‥‥じゃあ、一体鶴吉は‥‥」
「それなんだが‥‥鬼形一味の者でも、一部しか分からぬようになっている、何か言葉なのではないかと思うのだ」
受付の青年に答えたのは昭衛。
「言葉、ですか?」
「恐らく‥‥もしかしたら頭ならばそれを聞けば隠し金の在処が分かるのではないか、そう思うのだが‥‥」
「鶴吉は特に覚え込まされた言葉はないが、本人が知らぬでも繰り返し繰り返し聞かされれば、何かの弾みでその言葉が出るのではないか、そう思うておってな」
武兵衛が言えば、なるほど、と頷く受付の青年。
「恐らくは、役宅が手薄になる夜、鶴吉を奪い取りに仕掛けてくると思われる」
「で、でも‥‥それって奴らの押し込みの日じゃ‥‥役宅が薄くなるのが分かると言うことは、ずっと見張っているって事ですよね? それに、捕り物があると気が付かれるのでは‥‥」
慌てる受付の青年ですが、昭衛は軽く首を振り。
「鬼形の一味は、実に多数の手下が居る。それが必ずしも腕が立つとは言い切れんが、凶暴な者達ばかりだ。それ故、完全に二手に分かれて目的を全うしようとしているのだ。どちらかが成功すれば大金が転がり込む」
「で、でも、そんなのって‥‥」
「手前ぇらがしくじることなんざ、微塵も考えちゃいねぇのよ‥‥」
ほろ苦く言って笑う平蔵は、煙管盆を引き寄せとん、と灰を捨てると袂に手を突っ込み小さく息を吐きます。
「なればこそ、頼む‥‥これを越えれば鶴吉は漸く、人並みの暮らしを手に入れることが出来る。何とか、護りきって欲しい」
平蔵の言葉に、ぐっと何かを堪えるように目を伏せると、受付の青年は小さく頷いて依頼書へ筆を走らせるのでした。
●リプレイ本文
●這い寄る闇夜
「正念場ね‥‥」
ゼラ・アンキセス(ea8922)の呟き、僅かに秋風が少し冷たい風に変わる宵闇の中に小さく響き、緩やかに息を吐くゼラ。
「昼はそうでもないが、この刻限になればすっかり秋だと感じるな‥‥」
緩く息を吐いて役宅の敷地内を愛犬・潮と共に見て回る逢莉笛舞(ea6780)は、縁側に愛犬・すわにふと庭を警戒していたレーラ・ガブリエーレ(ea6982)に目を向け互いに頷いて異変がないことを確認し合い。
「いよいよ最後の戦いじゃん。‥‥絶対に、絶対に守りきるのだ!」
レーラの決意を込めた呟きに、すわにふはぺろりとレーラの手を舐めて同意を顕してから塀の方へと再び目を戻し。
「そろそろ、あちらの方では捕縛の支度が調う頃合いだろうな」
念入りに閉鎖した出入り口付近も含めて見回りをしていたイェレミーアス・アーヴァイン(ea2850)がレーラに言えば、レーラもこっくりと頷いて襖の方へと振り返り。
「いよいよ大詰めでござるな‥‥ここで全ての因縁を終わらせるでござるよ」
襖の向こう側、磐山岩乃丈(eb3605)と鷹司龍嗣(eb3582)が凶賊盗賊改方長官・長谷川平蔵とその友人である壮年男性、そして鶴吉の側に控えて『その時』を待っていました。
「鶴吉、また恐ろしい思いをするやも知れぬ、そしてそれに耐えて貰わねば‥‥しかし‥‥」
鷹司はぎゅっと壮年男性に縋り付いている鶴吉へと口を開き、その頭をそっと撫で。
「しかし、これで最後にする‥‥必ず皆が守ってくれる、安心して長谷川殿と一緒にいてほしい」
「‥‥うん、ぼく、だいじょうぶ‥‥」
まだ怯えた表情のままではありますが、こっくりと頷いて答える鶴吉。
そして、役宅の屋根の上には息を潜めて手の中の弓をぎゅっと握りしめるサラ・ヴォルケイトス(eb0993)の姿。
「鶴吉君、美名ちゃん‥‥必ず、お姉ちゃんが守ってみせるからね」
決意を込めた一言、きりりと引き締めた表情を月が照らし、サラが付近を見渡せば微かに見える黒い影。
「貴由さん!」
微かにサラが声を上げ、その影を睨み付けるサラ。
「‥‥鶴吉君が望むささやかな幸せ‥‥それを遮る者は誰であろうと許さない」
サラが名を呼ぶのを聞き取って呟くのは時永貴由(ea2702)。
塀の上、木の陰に身を潜めた貴由がよく見れば、見える人影にきらりと光る物が目に付きぎゅっと拳を握り直す貴由。
「絶対に、護り切る‥‥!」
聞こえてくるほんの僅かな足音を聞きながら、決意を込めた貴由の言葉は小さく響くのでした。
●忍ぶ者
「余程自信があるのか、己の力を過信し過ぎてか‥‥」
イェレミーアスの呆れを通り越したような呟き。
既に初日に天馬巧哉とアクテ・シュラウヴェルのブレスセンサーやムーンアロー、それで3人もの男達が捕縛されているにも係わらず、暫くすればいつの間にか代わりの人間が立っています。
簡単に使い捨て切り捨てながらの役宅への見張りに信じられないような、それでいてそのやり口が妙にしっくり来るような鬼形という凶賊に吐き気すら催し、イェレミーアスは中庭で作業を続ける貴由や舞を見てから門番に声をかけ見張りへと加わり。
「隠し部屋みたいな小さな部屋はあるだろうか‥‥?」
「おお、俺が部屋に一つ、な。と言っても、必要に応じて同心が2人ほど、話を聞くことが出来るようにという程度のもので部屋というにはちと狭いがな」
「では、いざというときには鶴吉くんにそこへ入って隠れて貰う手筈にして置けば良いかな」
改方の役宅内部は万一の事があってはいけないため、詳しい内情を知るものは少なく、絵図面も立てた棟梁が信頼置ける人間であるため写しを控えておくということはしておらず、唯一ある絵図面を平蔵は取り出して舞と貴由に見せます。
「しかし、己が腹を痛めた子を捨て金を選ぶとは‥‥妄執とは‥‥」
「あぁ、恐ろしいものだ‥‥が、人間って言うのぁ弱ぇもんだ‥‥思えば腹立たしくも許せぬとも思うが、飢えに耐えかね、また飢えさせるのを見かね、子を売り己を売る者‥‥金に目が眩み大切なものを失った事にすら気付けぬ者‥‥」
緩く吐き出す煙、煙管盆を引き寄せ灰を落とすと小さく頷いて苦く笑う平蔵。
「だが、それでもそうせずに道を探す、越えちゃいけねぇ線を護り折れぬ‥‥そういう御主等なればこそ、安心して命を預けられるってぇもんだ。俺も、彼奴も鶴吉も、な‥‥」
それがその人間の積み重ねてきたものの重さよ、と笑って隣の間でレーラやサラと共に鶴吉と子供のように笑い遊ぶ壮年男性へと目を向けて言う平蔵。
絵図面を手に立ち上がる舞に続いて出て行こうとする貴由ですが、ふと笑う平蔵に気が付き立ち止まり軽く首を傾げれば、煙管に葉を詰めながら平蔵は目を細めると火を入れながら穏やかな笑みを浮かべた顔を上げます。
「全く、柳みたいな女だなぁ、お前ぇはよ」
「‥‥柳、ですか?」
「あぁ、見れば細く簡単に折れちまいそうな危うさがあるが、芯が通り決して折れず。しなやかな柳みてぇな、いい女だ」
「‥‥」
言われた言葉に頬を染めて驚いたような顔を向ける貴由ですが、張り詰めた表情を浮かべていた顔に花が綻ぶような微笑を浮かべてその場を辞すのでした。
「あー来た来た遅いじゃんー!」
「ああ、済みません、色々と用を片してから来たもので」
「母上には上手く誤魔化して来たか?」
鶴吉と遊んでいたレーラが、同心に案内されて入ってきた彦坂兵庫を見れば、兵庫の兄、昭衛はいくつかの手続きの支度をしていた手を止め目を上げます。
「はい、兄上がここの所泊り込んでいる先も、わたくしのところの道場ということとなっていますので、母上様が調べに来る事はありませんし」
「ん? おかーさんお泊りに厳しい人なの?」
「いやいや、率先して捕り物に出て行くなどと知られればちとうるさいからな」
サラが聞けば肩を竦めて答えると立ち上がる昭衛。
「こちらは大丈夫だな。では、天風、先方を訪ねる事としよう」
「レーラもサラも、無理はせぬようにな」
昭衛に続き声をかけて出て行く天風を見送り、サラとレーラもこっくり頷きあい。
「これで絶対絶対決着つけるじゃん!」
「うんっ! 鶴吉君、後ちょっとの我慢だよ! 絶対お姉ちゃんたちが守ってあげるからね!」
レーラとサラ、それぞれも強い思いを抱いて鶴吉の側で決意も新たに言葉を発し。
こっくりと頷いて力強く答える鶴吉を見て、鷹司は目を細めてその小さな頭を撫で。
改方で始めてあったときの怯えきった小さな少年の面影はそこにはなく、まだ幼くひ弱ではありますが、まっすぐに顔を上げて言う鶴吉の姿にレーラもサラも、そして壮年男性も思わず笑みを零します。
「しかし言葉とは‥‥何であろうな‥‥」
「どうしたの?」
「あぁ、いや‥‥鬼形たちが知りたがる、その言葉とは一体何なのだろうか、と思ってな」
鷹司が首を傾げ、母の名等はと呟くと、そこに通りかかる貴由と舞。
「覚える言葉、と言ってもな‥‥」
持っていた板を抱え直しながら首をかしげる舞。
「そうだな‥‥鶴吉君。親御から歌を教わらなかったか?」
「えっと‥‥かぞえうた、とかいってたのなら‥‥」
たどたどしく鶴吉が思い出しつつ歌う数え歌にはいくつかの地名が入っており、続いて上げられる数値は、恐らく距離か歩幅、目印などではないか。
書き留めたものを見合って一同は色々と憶測をしてみるのでした。
「さて、こんなところかしら」
「先ほど確認した辺りには全て、衝立を配置済みでござるよ」
ゼラがぱんぱんと手を軽く払えば、役宅中を歩き回り荷を運んだ磐山が頷いて答え。
ジョシュア・アンキセスが進入経路などを調べ、考えるのに手を貸してくれたおかげでか、準備は順調に進み、予定していたよりも時間の余裕を持ったまま終えることが出来たよう。
「向こうのみんなも頑張っているし、私たちも頑張らなくてはね‥‥」
「こちらの支度は全て整った‥‥後は向こうが仕掛けてくるのを待つのみでござるな」
「‥‥‥‥頑張りましょうね」
「もちろん、今回で終わらせるでござるよ」
表情を引き締めて呟くように言うゼラに、磐山は笑みを浮かべ、力強く頷くのでした。
●襲撃
「ちぃっ! 手向かいやがるぜ、兄ぃっ!」
「鶴助の餓鬼さえ引きずりだしゃ良いんだ、構うこたねぇ、火ぃ付けろっ!」
潮の吼える声で始まる大立ち回り、庭に入り込んだ賊達から次々と上がる悲鳴と怒声。
一歩足を踏み入れれば彼方此方で張り巡らされた三味線の弦に足を取られ、屋敷への視界は衝立が阻み、苛々が頂点へと達した様子の賊達から、そんな声が上がります。
「ちっ、何で広がらねぇんだっ!?」
火を付け息を吹いて火を大きくしようとする賊が、半ば悲鳴のように声をあげ。
「っ、な、なんだてめぇっ!」
そこにゼラが現れ突き進んでくるのに悲鳴を上げて切りかかれば、さっと砕け灰となり床へと落ちるその向こう側に、緩く息を吐き立つゼラの姿が。
「絶対に手出しはさせないわ」
怒りに身を任せないよう、理性で心を制し男へと手を差し伸べれば、男がたった今衝立の一つへと付けた火が勢い良く燃え上がり男へと襲い掛かります。
「己が罪を、身をもって受け止めるが良い」
庭を進む男達へと降り注ぐ鷹司の声、そして白い光の刃が指揮を取っている男へと降り注ぎ。
「賊どもめ、この鬼面を恐れぬのならばかかってくるが良い!」
「ちぃっ! 皆殺しだっ! 全ての血を流せっ! 殺しにかけちゃ俺らの方が上だっ! 舐められんなっ!」
磐山に行く手を遮られた男が上げる声に呼応するかのように、塀に上がり矢を番える影、その男が小さく呻いて落ちれば、そこには貴由の姿が。
「ち‥‥女かっ!?」
小塚を構え塀の上へと顔を上げた男の背に突き立つ矢、見れば月の光を浴び、矢筒から素早く次の矢を引き抜くサラがにっと笑ったような気がして、貴由も口元に笑みを浮かべ。
「役宅の奥へ決して行かせはしない‥‥長谷川様や鶴吉君の指‥‥いや、髪の一筋すら触れさせるものかっ!」
数の不利を理解しつつも強い意思と口元に笑みを顕し男達の背後に回りこむ貴由。
「我が弐丁十手が唸りを上げているでござるよ、悪党どもを一匹たりとも逃がさぬと!」
大音声で放たれる言葉と受け止めることの出来ない力強く繰り出される十手に薙ぎ払われ、じりと退がる男達。
「死ねっ!」
「哀れな‥‥」
背後へと回り込み既に取ったつもりで踏みこんだ浪人に小さく呟き剣を振り抜くイェレミーアス、同時に小太刀で切りつけられ身体に刀を受けつつも、イェレミーアスの剣は背後に回った浪人の刀を砕きそのまま浪人の身体を捉え。
素早く駆け寄ったレーラがすぐ側の男の身動きをコアギュレイトで封じ、その傷を癒せば、兵庫や役宅に僅かに残った同心たちも裏を必死で押さえているようで。
「ここは‥‥ここは絶対通さないじゃん!!」
「我々が倒れん限り、ここは破れない」
立ちはだかるイェレミーアスとその補助に徹するレーラに苛立ちをこめた男達の顔に、焦りが浮かび。
そして、その中で縦横無尽に男達を薙ぎ倒し切り払う舞。
「切れ味の増した西洋の名剣、このガラントの錆になりたい奴はかかって来るが良い」
「ちいっ、なんて‥‥なんて素早く‥‥ぐっ!」
まるで轟き渡る雷のような、一瞬にして問答無用に叩き込まれ、斬り捨てられるそれに、ついに一人、一人と逃れるために塀へと群がり。
「っ、思った以上に根性無いなぁっ!」
次々と矢の雨を降らせつつも僅かに焦りを見せるサラ。
塀の上で踏み留まる貴由が、一瞬体制を崩しかけたそのときでした。
「っと、間に合ったようだな」
ひょいと貴由を支える御神村に貴由に迫った賊を短刀で押し返す羽澄。
「良かった、貴由‥‥」
間に合った事に小さく笑みを零して言う羽澄。
直ぐに逃げ出しにかかった賊達へと追いつき打ち倒し、捕らえる一行。
やがてゼラが出す改方の提灯に気がついて笑いながら降りてくるサラが合流すれば、終わったと聞いてほっとした笑みを浮かべる鶴吉と共に、捕縛に向かっている仲間たちが戻るのを待つのでした。
●全てを終えたら‥‥
「結局、数え歌のはどうなってるのかな?」
「今、それぞれの宿場役人達の協力を経て確認して貰っている。まぁ、直ぐに連絡も来よう」
サラが首を傾げれば答える昭衛。
多少の傷を負うも直ぐに治せるからか大した傷を負った様子もなしに無事に戻った一行を迎え入れると、辺りを片付けて漸く人心地ついた一行はゆっくりと休み改めて起き出してから、罠を外して片付けたりと役宅を元通りに片付けながら色々と話をしています。
「これで、鶴吉君ももう狙われる事はないんだな‥‥」
漸く遣り遂げた、そんな安堵感が一行の心に心地良く感じられ、疲れはあるものの自然と笑いの零れる役宅内。
「そーだ! 一区切りついたんだし、宴会とかどう?」
「今回の件に関わった同心や密偵の方々、もう一組の冒険者の方々と一緒にゆっくりと呑みたいものだ」
片づけをしながら楽しげにいたサラが声を上げれば、舞も微笑を浮かべて頷き。
「そうね、みんなで宴会、出来ないかしら?」
「おお、上手い酒が飲めそうだ、少し雑務が立て込んじゃいるが、終わり次第一席用意させて貰おうか」
笑って言う平蔵。
「宴会宴会、楽しみじゃん♪」
「宴会か‥‥楽しみにしていよう」
レーラがはしゃいだ声を上げれば鷹司も片づけを手伝いながら笑みを浮かべ。
活気に満ちた役宅内、楽しげな様子の鶴吉を見て、平蔵も目を細めて低く笑い声を漏らすのでした。