【華の乱】留守の勤め・追 其の五
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■シリーズシナリオ担当：想夢公司 対応レベル：11〜ｌｖ 難易度：難しい 成功報酬：10 G 86 C 参加人数：8人 サポート参加人数：2人 冒険期間：12月06日〜12月13日 リプレイ公開日：2007年12月20日 |
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●オープニング
その日、綾藤へとギルド受付の青年の代わりに呼ばれてやって来た正助少年は、凶賊盗賊改方長官・長谷川平蔵を前にして緊張をしてか、かちこちになりながら小さくなって座っていました。「おお、よう来た‥‥受付が青年のことは、申し訳なんだ‥‥」
事情の報告は受けた後のようで僅かに目を伏せて言う平蔵に固まったままぶんぶんと首を振る正助は、ぎこちない様子で依頼書を取り出します。
「そ‥‥それで、本日は、い、いかなる‥‥」
「まぁ、そう堅くなるな。茶と菓子でも食って、少しは肩の力を抜け」
正助のぎこちない様にお茶とお饅頭を盆に載せてやって来たお藤は、くすりと小さく笑みを零して去っていき。
「も、申し訳ないです‥‥その、それで本日は今までのお仕事の続き、ですよね？」
「おお、まぁ俺も江戸に帰ってくる以前は、報告を受けた範囲までしか知らねぇが、留守中に皆よぅやっていてくれたようだな。‥‥‥文吉には可哀相なことをしてしまったが、な‥‥」
戻ってきた江戸の、風景だけではない様変わりに緩く息を付く平蔵の顔には、一瞬深い疲労の色が見て取れて。
「なればこそ、今見えている輩の尾っぽをひっ捕まえて、引きずり出してやらねぇとな」
口元に緩やかな笑みを浮かべて言う平蔵の言葉と、その目つきに、正助は思わず竦んだようにぴたりと動きを止めるのでした。
「さて、現状について確認だが‥‥役宅警護を主として貰っていた者達は、役宅の牢内にいる女と、その女に関わりを持つ末薪の新伍の塒を突き止めたところまでの話を聞いておる」
平蔵の言葉に頷きながら筆を走らせる正助は、軽く首を傾げて口を開きます。
「えっと、でもその‥‥時間が経っていますけど、動きはないんですか？」
「塒を引き払った様子は無い、としか言えぬな‥‥。現状密偵達は動けぬ。今動ける可能性があるのは、孫次一人に、俺ぐらいと言ったところか」
「‥‥え、えっと、ソレハ密偵トハ言ワナイ気ガシマス‥‥」
消え入りそうな程小さな声で言う正助に、長谷川平蔵は江戸に戻っていないはずであるからな、何と名乗ろうか、そう言って微笑を浮かべる平蔵。
「庄五郎は動く気であったようだが、荻田を向かわせて大人しく飯屋の親仁として暫く守勢にはいるようにと命じておいた。事情は、関わりのある者のみが知っていれば良いことであろうが‥‥な」
平蔵の言葉に小さく唇を噛んで俯く正助。
「さて‥‥牢内にいた女と繋がっていたと思われる牽蓑の留八をおびき出せるであろうと石榴殿の労した策でおびき出されたのが末薪の新伍‥‥」
「‥‥でも、末薪の新伍は、剛蔵が身を寄せているお梶の、連絡をしていた祠に来ていたわけですよね？」
「あぁ、元々牢内の女の取り調べで、牽蓑の留八の盗めを助けるようにと持ちかけられた末薪の新伍が、上手く利用して仕事をし、その後は‥‥」
平蔵の言葉に眉を寄せて困った表情を浮かべて口を開く正助。
「‥‥‥‥なんだか、気分が悪くなりそうですね、そんな考えの人間ばっかり‥‥」
「‥‥」
正助の言葉に平蔵は煙管を燻らせ、深く息を付きます。
「だからこそ、俺のような奴にも出来ることがあるのよ‥‥」
微苦笑の平蔵の言葉に、正助は俯きながら依頼書へと筆を走らせて。
「じゃあ、本日の依頼は‥‥」
「何処まで手を出すかは判断を任そう。両組とも末薪の新伍及び牽蓑の留八を追って貰いたい」
平蔵の言葉に、正助は俯いたまま小さく頷いて筆を走らせるのでした。
●今回の参加者
ea2702 時永 貴由（33歳・♀・忍者・人間・ジャパン）ea2988 氷川 玲（35歳・♂・浪人・人間・ジャパン）
ea3220 九十九 嵐童（33歳・♂・忍者・パラ・ジャパン）
ea6780 逢莉笛 舞（37歳・♀・忍者・ジャイアント・ジャパン）
ea6982 レーラ・ガブリエーレ（25歳・♂・神聖騎士・エルフ・ロシア王国）
ea7755 音無 藤丸（50歳・♂・忍者・ジャイアント・ジャパン）
ea8191 天風 誠志郎（33歳・♂・侍・人間・ジャパン）
eb2413 聰 暁竜（40歳・♂・武道家・人間・華仙教大国）
●サポート参加者
壬生 天矢（ea0841）／ アルディス・エルレイル（ea2913）●リプレイ本文
●覚悟「で、出来る筈ぁねぇさ、今まで他所に預けられてたとぁいえ、俺に手ぇ出さねぇでいたのぁ、俺が死にゃぁ、聞き出せねぇことが‥‥」
「お前如き名も知られておらぬ流れ盗め、気にも留めていなかっただけだ」
「ということで、壬生、こいつら任せたぞ」
「‥‥男をいじめても面白味に欠けるが‥‥やれというなら遠慮なく」
改方の役宅ではある意味珍しいわけでもないその光景、牢と隣接する一室で木に括られ、同心たちの手によって吊上げられる男が強がりとでもいうか、僅かに上ずった声で言いかける言葉をぴしゃりと切ったのは天風誠志郎（ea8191）。
続いて氷川玲（ea2988）が軽く肩を回しつつ出かける前に補助に駆けつけた壬生天矢へと言えば、壬生もぱきぱきと軽く指を鳴らして男を見据えます。
氷川は出掛けていき、男への拷問が始まれば守組に手伝いに来ていたエレオノール・ブラキリアのチャームなども相まって、程無く二軒の店の名前を挙げる男。
「では、二手に分かれて確認をしに行くぞ。引き続きその男の取り調べを頼む」
言って他の同心たちと共に出ていく誠志郎、取り調べの間では今暫く、男の絶叫が響き渡るのでした。
「長谷川様、お帰りなさいませ。帰還される日をずっとお待ちしておりました」
僅かに目元を潤ませた時永貴由（ea2702）が言えば、平蔵も頷いてみせ。
そこは綾藤の一室、現状の報告と確認の意味も込めて集まった一行は久方振りに顔を合わせる凶賊盗賊改方長官・長谷川平蔵と対面していました。
「本当に‥‥御頭、ご無事で何よりで御座います」
誠志郎もそう言うと、表情を引き締めて流れ盗めの男から聞き出した牽蓑の留八配下の宿についての報告を続けて。
「残念ながら留八の片腕がいるという宿の方は既にもぬけの殻でしたが、もう一方は今、荻田たちが近くに見張り所を設けて詰めております」
「うむ、御苦労。‥‥それにしても、少し江戸を留守にしただけで厄介な状況になりおったな。そのような中に、よぅ働いてくれたな、皆。今暫く、宜しく頼むぞ」
平蔵の言葉に逢莉笛舞（ea6780）も頷いて。
「しかし、剛蔵と役宅を狙った男が繋がっているとは‥‥尚のこと相談を密にし手抜かりがないようにしなければ‥‥」
「まだ年内に事が起こる可能性が残っている。留八と新伍、それに剛蔵とお梶、牢内にいるお佐和という女‥‥場所だけで考えれば更に警戒する先が増えるな」
今までは盗賊上がりなどの密偵達に回していた所までも自分たちと同心でまかなわなければと九十九嵐童（ea3220）が眉を寄せ。
「それについてだが、剛蔵とお佐和だが、少々気にかかる」
聰暁竜（eb2413）が言えば音無藤丸（ea7755）も頷いて。
「実際の所、彼等がいまどの程度の重要性があると見なされているか、それが分からないですからね」
「んー‥‥それって、危ないってこと？」
首を傾げてレーラ・ガブリエーレ（ea6982）が言う言葉に、確証は持てないですけどと返す藤丸。
「今密偵は孫次さんぐらいしか動けないじゃん？ 俺様護衛に付こうと思うけど、そうすると目立っちゃうかな？」
むむと眉を寄せるレーラ、貴由は平蔵へ改めて目を向けて。
「長谷川様、密偵と言えば庄五郎さんの所へ窺ったのですが‥‥万一足を引っ張ることになってはと堪えているようです」
危険も死も覚悟の上である庄五郎は、警戒する者は居るも他の者に対しては今まで通り信頼を寄せていることを理解し、平蔵へ宜しく伝えて欲しいとの言伝を受けて。
様子を見に行った貴由はまだ平蔵に会っていなかった庄五郎に代わり、改めて帰還を喜ぶのでした。
●追跡
「前回は肝を冷やしたからな‥‥八房、伏姫、頼んだぞ？」
「くぅんっ」
嵐童の言葉に鼻を鳴らす愛犬たち。
「それにしても奴ら、妙な動きしていやがるじゃねぇか」
前と同じところで張り込みを続けていた氷川が言えば、嵐童も目を向けて、祠の前にあるお饅頭へと目をやり。
「それにしても饅頭を持って行かせているにも拘らず、何故剛蔵はそこまで焦れる？」
「そりゃぁ‥‥何かを知らせているにしろお梶に確認までさせている風じゃねぇところを見ると、直接連絡が来るのを待っているとかか？」
「‥‥まぁ、それならばこの一月以上連絡が無ければ焦れるのもわからないではないな」
「どちらにしろ、こちらはもう暫く我慢比べが続きそうだな」
そこまで言うと、二人は祠やその周辺へと再び意識を向けるのでした。
「新伍の塒に大きな動きは無い、か‥‥」
舞が呟くように言えば、貴由も頷いて。
「しかし、なんだな‥‥新伍が確実にいると分かっているにも拘らず、姿が確認できず、顔を見定めることが出来ぬというのは、いささか‥‥」
「非常に遣り辛い」
モンドが言う言葉に貴由は微苦笑と共に言い、平蔵がいればこその気持ちの余裕に自身も気がついているようで。
「塒は分かっていても、まだ捕縛までは進まぬで良かったか？」
「念の為各人に確認をとり、そちらの方ではなしは纏まったからな。‥‥ん？」
舞に答えていたモンドがふと見れば、奥のほうに舟をこいで出かける中年男が見え、入り口のほうからは２０代半ばの男がふらりと外へと出かけて。
「役宅を張っていた者たちとも双方とも一致しないようだが‥‥手分けして後を追おう」
「では、我々はあちらの舟を‥‥おぬしはあの男を頼む」
３人が後をそこへやってきた伊勢に任せると、それぞれは二手に分かれて船と蜜を行く二人の男を尾け始めます。
「あの男があそこに入ってきたところは見なかったということは、あの塒にいた、ということか？」
「恐らくは‥‥では、どこに向かうか、誰と会うかが重要‥‥もしくは、余程の実力者か‥‥」
貴由とモンドは小声で言葉を交わしながら進めば、やがて舟が入るのはとある家で、表は茶店にしているよう。
貴由は表通りから様子を窺い、モンドは裏に回って確認することに。
どうやら男は奥でなにやら話しているようで、貴由も客を装いながら注意深く店の様子を窺えば、表はそこそこ客もいる普通の茶屋ですが少々狭く、奥や二階はそこそこ広いようで。
暫く様子を窺い怪しまれてはと店を跡にしようとしたき由、置くからけたたましい悲鳴が上がるのに振り返れば、なにやら大蛇がとひどく取り乱した店の女が奥で水をぶちまけているのが見えて。
「‥‥あ、あの、大丈夫ですか？」
戻ってきた女に声をかけてみれば、人さえ丸呑みにするのではないかという大きな大蛇がいたとか川へと大蛇が入っていったからこのあたりの主なのではなどと、ひどく取り乱した様子で。
「‥‥だから言ったろう、変なことばかり起きると。縁起が悪いとうちの頭は今神経質になっている。次の仕事は年明け手からということになりそうだ」
「‥‥良いだろう。だが、次また伸びるようなことがあれば、うちのお頭も黙ってはいねぇよ」
かすかに貴由の耳に入るのはそう男の言う声で、ちょうど二階から声が漏れ出ていたようで。
店の女が落ち着いてからそこを出た貴由は、再び中年男の舟を追って、見張り所へと戻るのでした。
「こっちはとりあえず、相変わらず新伍のとこの手下が饅頭を除きに来る以外は何もねぇな」
すでに何度も行き来をしているためか方をすくめて言う氷川、少なくとも新伍の塒だけで１０人ほどは確実に戦力としているためか、それが全員か配下はさらに別にいるのかが掴めないことに少々苛立ちにも似たものも感じており。
「その新伍のところから出て行った若い男なのだが、どうも役宅を張っているものたちのところに直接加わって、なにやら話した後またすぐに塒に戻ったんだが‥‥」
今一つ新伍の一味の実態が掴めないことに眉を寄せる舞は、張り込みをしているものを除けば、年若いその男は繋ぎでもしているのだろうかと考えるも、どこか引っかかりを覚えていて。
「‥‥っと、お梶が来たようだな。前と同じ、様子を見に来た新伍一味の者と‥‥‥‥あれは？」
話に耳は傾けていたものの、ずっと祠の様子を見ていた嵐童が言えば、氷川と舞も祠へ目を向けて、その異様な雰囲気の男を目にします。
「あの男、お梶を追っている‥‥？」
「後を追おう」
嵐童と氷川は舞へ連絡を頼むとその後を追うのでした。
その男は、背を丸め薄汚れた様子の男でしたが、何より異様だったのは、妙に陰気なその目の色でした。
「‥‥お梶の長屋に着いちまったな」
男はお梶の長屋を道から遠巻きに眺めていますが、やがて身を翻して走り出し、それを追う氷川と嵐童。
「‥‥あそこは、どうやら百姓家のようだが‥‥」
やがて男は少し離れた林までたどり着くと、あたりを窺う様子もなしにするりと小道へ入り、一軒の家に吸い込まれるように入っていって。
「それにしては、家の傍にある畑は荒れ放題だがな」
火の気はあるので人は住んでいる、それを確認すると、氷川は連絡のためにその場を立ち去り、嵐童はその百姓家を愛犬たちと共に張るのでした。
●思惑
「じゃあ、最近お梶さんと話してないんじゃん？」
「まぁ、あれだ、あっしゃあくまで夜鷹の客として行っているんでお梶の長屋に行くってぇのも妙な話になっちまう」
それでなくても自分から行けば剛蔵殺しをせっつかれてやりにくくなる、レーラを船に乗せてえっちらと漕ぎながら、船頭姿の孫次はお梶の客になっている間に何度か窺われている気配を感じていたことなどを話し。
「まぁ、夜鷹は本来勝手に色を売るってぇんで、いろいろと厄介なんでそれの絡みかとも思ったんですがね、どうもそれにしちゃぁ穏やかじゃねえ様子で」
そんなことを言いながら、レーラと孫次が舟に揺られていたのと同じころ、その問題の岡路が住む長屋には、とある異変が起きていました。
「‥‥このまま剛蔵とお梶は閉じこもったまま、何事も無く済むのでしょうか？」
「まだ何らかの意味があるならば接触もあるだろうが、何も無ければ今しばらく放置されるか、それとも‥‥」
藤丸が長屋の隣の部屋、つまりお梶の部屋に意識を向けつつ呟くように聞けば、暁竜は口を開いて答え。
「だが、剛蔵にしてみればもう既に限界を越えているやも知れんな」
「なにか、動きがあるかもしれないと？」
「少なくとも、あの荒れようにここ暫くの様子から鑑みてもお世辞にも落ち着いた男とはいえまい」
その言葉に頷く藤丸。
と、ここ数日藤丸と暁竜には聞きなれた、鈍い音と剛蔵の喚き声が響き、戸を開けて飛び出すお梶。
「逃げんなっ、ぶち殺すぞこの女ぁっ！！」
あまり呂律の回らない怒鳴り声と道に投げ捨てられ派手な音を立てて割れる徳利。
お梶が長屋を駆け出していくのに藤丸は後を追うと、暁竜は追う様子も無くさらに酒を呷る剛蔵へと意識を向けようとして、その男が長屋お前を通り抜けたのを目にし、そっと部屋を出ると剛蔵の部屋へと足を踏み入れます。
「んだ、てめぇ‥‥」
剛蔵の殺気立った声は、暁竜に向けられたものではなく。
「‥‥」
その小柄な男は饐えた臭いを撒き散らし、何も言わぬままに懐から匕首を出すとすらっと抜き放ち。
「その男を殺されては困る。‥‥少なくとも、今は」
暁竜の声に小柄な男が振り返れば、陰鬱としたその表情に澱んだ眼がぎょろりと向けられて。
「‥‥‥‥」
男は一瞬迷ったようですが、次の瞬間声も立てずに暁竜へと躍りかかり。
「――っ」
咄嗟にその刃を手で挟み込み受け止めれば、がっちりと掴まれたそれを必死で引き戻そうとする男に、男の腕を捻るようにして匕首を奪い取り、身体を引こうとする男を叩き伏せる暁竜。
「‥‥さてと、事態は動いてしまったが、やむを得んだろう」
暁竜は、酔いどれて事態を良く理解していない剛蔵と、叩き伏せられ床で悶絶している男を見下ろすのでした。
「いやぁあぁぁっ！！」
長屋を走り出ていたお梶は、突如躍りかかった男の手に刃の燦めきを見てあらん限りの声を上げて絶叫していました。
「待ちなさいっ！」
駆けつけた藤丸がお梶に躍りかかった男の腕を取れば、凄い力で振り解こうと藻掻く男。
男はがっちりした体格のずんぐりと丸い大柄な男で、藤丸を見ると血走った眼を剥いて睨み付けて。
「この女ぁっ！！ 狗かっ！？ それとも‥‥」
言いかけるも、裏道とはいえまだ日は高く、通りから立ち止まってみる人間の姿を確認すれば身を翻し背中を向けて逃げ出そうとする男。
その首筋に刀の峯での一撃を入れて昏倒させれば、藤丸は付近を警戒するように見渡し逃げ去る者も盗賊の一味が様子を窺っているらしき気配もないのを確認すると、男の身体を引き立てながらお梶に向かい口を開いて。
「お梶、見捨てられたようですね。‥‥どうだろう、知っている情報を私達に流し保護を求めないか？ 悪いようにはしないよう拙者からお願いする」
「‥‥あんたは‥‥？」
「ここでは人目がある。場所を変え説明しよう」
藤丸の言葉に警戒した様子ながらも、お梶は人目を気にしてか、藤丸についてその場を立ち去るのでした。
●逡巡
その日、役宅では誠志郎とレヴィン、リーゼが顔を合わせて役宅内にある過去の奉行所の調書きなどを確認していました。
「参ったね、ずーっと籠もりきりで調べても、なかなかこれというものが見つからない」
「‥‥街道筋にまでなってしまうとどうしても、他の盗賊や山賊、追い剥ぎまで含まれてきてしまいますからね。それにしても、捕らえられた者を見捨てて姿を眩ませてしまうと言う留八ですが、滅多に姿を見られていないんですよね」
「お佐和が非協力的だから余計に、な」
リーゼがのびをすれば、レヴィンが分類した調書きへと目を落とし、誠志郎は小さくぼやいて。
「ですが、少なくとも今回の狙いは予測可能ではないかと思います」
レヴィンの言葉に目を向けるリーゼと誠志郎。
「先日の磯城弥さんの追った方が言った辺りは、郊外の民家が建ち並ぶ辺りでしたよね？」
「ああ、そうだな」
「街道筋でも、百姓家などを乗っ取っていたならず者が、街道の決まって大きな旅籠が襲われた後に姿を消しているらしい、と有ります」
レヴィンが言えば、指し示す調書きを掴み掛からんばかりの勢いで取ると目を通す誠志郎。
「あの辺りには、数件続きで、立派な宿がありますよね？」
リーゼが石榴から受け取った地図を引っ張り出せば、誠志郎は厳しい視線を向けて。
留八と思しき男が潜伏して居るであろう塒を一同が見つけるのは、それから程なくしてのことなのでした。
