【華の乱】留守の勤め・守 其の二
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■シリーズシナリオ
担当:想夢公司
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:9 G 4 C
参加人数:8人
サポート参加人数:2人
冒険期間:07月03日〜07月08日
リプレイ公開日:2007年07月14日
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●オープニング
その日、受付の青年が凶賊盗賊改方の役所へと呼ばれ急ぎ駆けつけたのは、けぶる様な雨の降る、梅雨のとある日のことでした。
客間で待つのは凶賊盗賊改方長官・長谷川平蔵が妻、久栄で、その傍らに控えるのは筆頭与力の津村武兵衛。
見れば、下座には15、6程の純朴そうな町人身形の少年が緊張した面持ちで座っており、受付の青年に頭を下げます。
「お待たせいたしました。それで、今回は‥‥」
「ご苦労様にございます。本題に入る前に、まずこちらから‥‥一太、ご挨拶なさい」
「は、はいっ!」
久栄に優しく促され、未だ緊張した面持ちのまま深々と頭を下げた少年は口を開いて。
「父・文吉の跡を継ぎたいと奥方様にお願いして門番見習いとしておいていただくこととなりました、一太と申します。不慣れでご迷惑おかけすると思いますが、よろしく、お願いします」
何とかそこまで言ってから、少しほっとしたのか大きく息をつくと、一太はもう一度頭を下げてから客間を出て行き、それを見送ってから受付の青年へと顔を戻す久栄。
「文吉さんの息子さん‥‥ですよね?」
「ええ。文吉の家には一太、二郎、三津代という3人の子がおり、一太は16ですが、二郎と三津代は10と6つ。とある商家へと一太は奉公に出ていたのですが‥‥」
久栄より出された見舞金はあれど、これからの暮らしを奉公に出ていた一太だけで母と弟妹の分を賄えるわけはなく。
久栄が文吉亡き後の面倒を見ると言っても、文吉の妻は恩有る長谷川家に働き手が居ないわけではないのに只世話になるわけにはいかないと、一太を門番として置いて欲しいと言い出したそう。
「文吉と違い多少の心得があるとのこと、また只世話になるのは心苦しいという気持ちも分かるので、悩んだ末津村殿と相談いたしまして」
「本人の気持ちも確認したが、強く望んでいる様子。また性分というものもあるため門番見習いとして暫く役宅で働いて貰うことになった。勿論、危ないことがないよう出来うる限り気を付けるという方向で、な」
武兵衛の言葉になるほど、と頷く受付の青年。
「えぇと、それで‥‥今回の仕事は‥‥?」
「それなのですが、2つありましする。1つは一太が門番の仕事が慣れるまで少し気を付けていて貰いたいこと。そしてもう1つ‥‥少々気になることがあるのです」
「気になること?」
「はい。ここ暫く、妙に役宅を窺っている者がおります。それも複数‥‥伊勢殿が見かけたのは女性で、役宅の中を窺い見ようとしていたそう‥‥今1人、木下殿も近隣の村から来たと言う男性が色々と聞いていたようで‥‥」
どうやら忠次は妙な人もいると笑い話のように話したそうで、それを聞いた他の同心にこっぴどく叱られてちょっとすね気味とか。
他にも様子を窺っている者がいるようではあるのですが、現状から言って盗賊達の悪意か謀反の意があるのか伊達に窺われているのか、それとも他の理由があるのか、当たりを付けるのも難しい状態。
「色々と聞いていたというのが気になるところですね」
「ええ。大変申し訳ないのですけれど、一太の件も合わせ、その辺りの調査と役宅の警護をお願いしたいと思いまして‥‥宜しくお願いしますね」
久栄が言うのに受付の青年は頷いて依頼書へと筆を走らせるのでした。
●リプレイ本文
●残された者たち
凶賊盗賊改方役宅、奥の間では外出の支度をする久栄と言葉を交わす数人の姿がありました。
「私のように外国から来ている者も改方には何人もおられますし、初めは戸惑うと思いますが徐々に慣れていただければと思います」
「は、はいっ! 宜しくお願いします!」
レヴィン・グリーン(eb0939)の言葉にぺこりと頭を下げる一太、レヴィンの妻である所所楽石榴(eb1098)もにっこり笑い一太へと声をかけて。
「改方でお仕事したいって言ってくれるのは、僕にとっても嬉しい事だから‥‥これから宜しく、だねっ!」
石榴の言葉に一太も少し表情を軟らかくしこっくり頷き。
「‥‥久栄殿、俺もその文吉の墓に参らせて貰えるだろうか?」
手にはヘルムを持ち部屋へとやってくるのはラスティ・セイバー(ec1132)。
自身の意思を行動で示そうとするラスティに久栄は微笑んで招き入れて。
「文吉も喜ぶことでしょう、わたくしからもお礼を申し上げまする」
ラスティを加えた一行は墓参りまでの一時、言葉を交わしながら過ごすのでした。
「まぁそう拗ねるな、饅頭でも食べながら詳しい話を聞かせてくれんか」
にかっと笑って手荷物包みを見せるジェームス・モンド(ea3731)、その視線の先にいる男は背中を丸めて縁側に座りながら子供っぽく頬を膨らませていました。
「そうは申しても、私はちゃぁんと男のことを覚えていたんです、それをみんなが、ぶつぶつ‥‥」
がつん。
その音とともに頭を抱えるその男は木下忠次、一応は凶賊盗賊改方の同心でのんき者。
そしてその頭をぽかっとやったのは同じく同心の伊勢、こちらは少々目つきの厳しい張りつめた物を持っており、今は忠次の物言いに言いたいことをすべて行動で語ったよう。
「まぁまぁ、気持ちはわかるが、伊勢も落ち着くと良い。ところで忠次、役宅のことを聞いていたという男のことを、もう少し具体的に聞かせて欲しい」
霧島小夜(ea8703)が口を開けば、ちょっと涙目で頭をさすっていた忠次は小さく首を傾げてから口を開きます。
「そうだなぁ‥‥役宅がどんな仕事をしている場所かを良く分かっておらなんだようで、その事と、後は御頭のことを聞いておったなと」
「鬼平の旦那のことってぇのは?」
それまで紙に向かって難しい顔をして筆を走らせていた嵐山虎彦(ea3269)がちらり目を向けて聞けば、はて、とばかりに考え込む忠次。
「えぇと、御頭が今役宅にいるのかとか、乱に参加したのかとか、いや、いろいろと世間話をしていた気がするが、要約すればその辺りを特に重点的に聞いておったな」
「ほぅ? 役宅の内部のことなどではなく、御頭のことばかりとは‥‥」
「少々気になるな‥‥。それで、伊勢の方は言葉を交わしたわけではなく、様子を窺っていた女を見たということだったな?」
忠次の言葉に考え込むモンド、小夜も小さく首を傾げると伊勢へと尋ねかけて。
「ああ。あれは役宅の様子を覚えこもうとでもいうかのようで、口元に浮かべていた笑みも陰湿な感じを受けた、いやな目つきをする女だったな」
嵐山の描き上げた人相書きの女性は人目を引きそうな様相の女性ではありましたが、伊勢は眉を顰めて答え。
「‥‥‥‥しかし、私が見たのはあんまり悪い者には見えなかったのですけどねぇ」
伊勢にそういう忠次、ふむと頷き筆をとって走らせるモンド。
やがて忠次に確認を取りながら出来上がったのは中肉中背の、言ってしまえば印象に残りにくそうな男の顔。
「そうそう、こんな感じの顔していました。‥‥? ‥‥‥‥あっ」
出来上がった人相書きを見て何やら思い出したようで、うっすらと消えかかった傷跡が顎のあたりにあったことを伝え、それを書き足すモンド。
「似顔絵描きも随分板についてきたかな‥‥冒険者を辞めた後はこれで食うのも悪くは無いかも知れんな」
にかっと笑って、モンドは満足げに頷くのでした。
「おう、遅くなってすまねぇな、一応こいつが忠次と伊勢の話を元に作った人相書きだ」
そう言って紙の束を戻ってきて配る嵐山、めいめいがそれを眺めてから懐へと収め、やがて久栄を中心に、守るようにして一太に先導され出向いた先はお寺。
『文吉』と記された墓を前に、一行はそれぞれの思いを抱えつつ、その墓に静かに祈りをささげているのでした。
●耳に入る事柄
「うーん‥‥やっぱり、どっちかが関わっているのかなっ?」
「そのようだね‥‥少なくともどっちか、もしくはどちらも、悪意を持って役宅を窺っているってことになるな」
クーリア・デルファが情報収集をしていると襲撃を受けたと聞いて眉を寄せて呟く石榴、一太に武芸の手ほどきをするために支度をしていた空間明衣(eb4994)はその手を止めて眉を寄せ。
「なんにしても大事無くて良かった」
リーゼ・ヴォルケイトス(ea2175)が微かに笑みを浮かべて言うのに同意を込めて頷く石榴。
「でも、同じように役宅を窺っている分には危険はなかったようだけどねっ?」
「自分たちのことを調べる相手には容赦はないってことか」
キドナス・マーガッヅが前もって話を通しておき、役宅を窺っていれば、遠巻きに様子を窺う男達がいたそうで、どうも忠次の見た男達のよう。
「悪い方ばかり考えがちだけど‥‥前向きに希望を見てはいけないかなっ?」
「というと?」
リーゼが聞き返せば、石榴は軽く首を傾げたまま続けて。
「片方はどうも危ない人達のようだけど‥‥もう一方の人達は、例えば‥‥‥安定した組織に身を置きたい、何らかの能力に秀でた人とか?」
「確かに、窺っていた男と女の思惑が一緒とは限らないわけだしな」
明衣が言えば、どこかそうあって欲しいと願っているような表情を浮かべ続ける石榴。
「あとは‥‥改方の関係者‥‥乱で出て行ってる同心さんとかが怪我とかで行動できなくて、その代理で改方の様子を知ろうとしている、とか‥‥」
「武兵衛さん達が戻ってきたの時のことを考えれば、あながち無い話とも思えないしね」
荻田同心1人が一般人を装って戻ってきて手引きを頼んだことを思い出してかリーゼが石榴の言葉に頷けば、明衣も頷き。
「どちらにしろ、少しでも情報を集めないとな。もしそうなのだとすれば、尚のこと情報が必要だ」
明衣の言葉に頷いて、リーゼも立ち上がるのでした。
「おーし、んじゃちょいと一太は休憩なー。っと、忠次は待ちな」
2日ほど後、役宅の中庭では嵐山相手に稽古を付けて貰っていた一太と、へろへろばてばてになって木刀を支えにして立っていた忠次です。
一太よりはましな動きをしていたはずの忠次ですが、当然忠次をしごく分は一太よりもずっと激しいわけで。
「お疲れ様です、こちらでお茶でも如何ですか?」
「はい、頂きます!」
笑いかけるレヴィンに嬉しそうに笑って答える一太、明衣が差し出す手拭いを受け取って汗を拭うと縁側に腰を下ろします。
各人に冒険者について、そして門番としての武芸の手解きや改方について等色々な話を聞くことが一太にとっては良い刺激となって居るようで、稽古にも仕事にも身が入っている様子に笑みを浮かべる一同。
「張り切るのは良いが、無理は行けないぞ? 腕っ節も強いに越したことは無いが、まず大事なのは異常にいち早く気づく感覚だ」
どこか一太の様子を微笑ましげに見るモンドは、息子がいたらこんな風なのだろうか、そんなことを考えているようで。
「発見が早ければ中から助けも呼べるしな」
「はいっ」
モンドの言葉に表情を引き締めて応える一太、明衣もモンドの言葉に同意を示し。
「門番に必要なのは相手を倒す事よりも、門を突破されないようにする事だ」
経緯が口を開くのに目を向ける一太、明衣は続けます。
「そこで一番気を付けないといかんのは不意打ちだ。不意さえ付かなければ人を呼んだり、時間を稼いだりと動く事が出来る。そうなると襲撃者は力押ししか出来んからな」
不意を打たれれば役宅の門を守るどころではなく、最悪命をその一瞬で奪われることもある、明衣の言葉を真剣に一言も聞き漏らさないように集中する一太に、明衣も直ぐにではなくとも、徐々に対処できる術を身に付けると良いと微笑を浮かべて。
「休憩が終わったら、見えない動きに対応していくための訓練もやっていこう」
「宜しくお願いします」
こっくりと頷く一太に、お茶を差し出しながら口を開いたのはレヴィン。
「あとは、お侍の方が使われる闘気魔法、お坊様の使われる神聖魔法と違いジャパンではあまり遭遇する頻度は少ないと思いますが‥‥」
そう言って精霊魔法の大まかなを説明するレヴィン。
一太は初めて触れる色々な知識に驚きを隠しきれないようで、やがて嵐山に扱かれた忠次がべそをかきつつ謝る声を上げるまでの間、休憩をしつつそれぞれの知識を一太へと伝えるのでした。
「隠す事自体が誠意に欠けると判断した。‥‥背中を預ける以上、全て知らせる」
そう門番と牢番へと告げるのはラスティ。
ラスティは自身の耳を見せ、ハーフエルフとはどういう物か、感情の高まりや緊迫感によってどのような状態になるか、それを伝え。
「正直、なってみねぇとなんとも言えねぇが‥‥それを先に伝えてくれてんだったら、何かあっても対処は出来らぁな」
「うちは御頭様が御頭様だ、信用してくれるってんだったら、俺等も信用しねぇ理由はねぇ」
始めは硬い表情をしていた門番も牢番も、同じ力はなくとも信用して背中を預けるというラスティに何度も頷いて。
「何かあった?」
そこへ足早に戻ってきたリーゼは、詰め所で会話しているラスティ達の様子を目にすると目を瞬かせるのでした。
●男と女
「では、役宅は任せた」
「はいっ、大丈夫です、安心してお仕事をしてきて下さい」
明衣にこっくりと頷く一太は、ここ数日で見違えるように逞しくなったように見えて。
「じゃあ、頑張ってねっ!」
「はい、石榴さんも気を付けてくださいね」
石榴が改方の羽織を上に着つつ言えば、レヴィンは石榴を気遣うようにそう声をかけて。
リーゼが酒場で聞き込んできた内容は、何やら女が浪人に金を握らせて物騒な話をしていたのを偶然聞いてしまった職人がいて、どうやら牢にいる男を手薄になっている今助けだそうと企んでいたというもの。
「郊外で同じ空き家を使っていた男達についても口にしていたようで、『あと1日早ければあの男達の分で更に稼げたのにねぇ』って言っていたそうだから、恐らく男達の方は宿を変えたみたいね」
リーゼの言葉に頷くモンド。
「もしくは市内へと移ってきて窺っているのやもしれんが‥‥そちらは任せよう」
「おうよ」
答える嵐山、リーゼと石榴、それに嵐山を除いた一行は、女達が潜伏しているという空き家へと急ぎ向かうのでした。
空き家に一行が着いたのはそろそろ日が翳り始める頃、見張りを引き受けていた密偵から3人は中に居ると報告を受けると、一行は各自目配せをしてから持ち場へと散っていき。
モンドが姿を大蛇へと変え柱を伝い室内へと潜り込んでみれば、女は煙管を蒸かし男達は酒を呷りながら、夜になるのを待っているよう。
「手強いのが出て来る前に門番を叩っ斬って、牢番をぶち殺し、手早くこの槌で鍵を壊してお前の言う男を逃がしゃ良いんだな?」
「あぁ、そしたらおぜぜを弾んでやるよ。わざわざ選んで逃がすこたぁないよ、鍵を壊して中の奴をそのまんま逃がせば、的が分散してうちのを逃がすのが楽になるからねぇ」
女の言葉に茶碗へと酒をなみなみ注いで煽ると、男はぽんと己の刀を叩いて見せて。
「まぁ、あんまり張り合いねぇ仕事だが、割は良いからな。是で暫く酒を飲んで暮らせる」
低く男が笑った、その時。
戸を蹴破って飛び込んだ小夜とラスティは、まるでそこに男達が居ることを知っていたかのように飛び込み様に打ち込んでいって。
「なっ!?」
敵か味方はっきりしないうちは当て身で捕らえる方向で居た小夜は、男達が雇われただけの浪人崩れであること、そしてかなりの手練れであることを理解し一閃。
それは一行の中では見える者も居たかも知れませんが、空き家にいた3人には何がおきたかも見極めることは出来ず、一瞬の後、ずるりと落ちる右の腕に刀を左手に持ちひっと短い声を発して転げるように退がる男。
「ちぃっ!!」
小太刀を抜いて斬り付ける女には、軍配で受け流したかと思えばその反動を利用し右手に握る太刀の峯で叩き伏せる明衣。
そして、視界に映った相方の腕を見て半ば恐怖心からか刀を抜いて振りまわして突っ切ろうとする男には、ラスティが盾で受け止め、その盾に付いた直刀で斬り伏せるラスティ。
モンドが他に潜んでいた者がいないことを確認すれば女達の息遣いから位置を確認して伝え成り行きを見守っていたレヴィンは緩く息を付いて。
女達を縛り上げ止めた籠に押し込んで役宅へと指示を出し、一行は役宅へと急ぎ戻るのでした。
「もし‥‥お前さん、そこのお武家さん所の御身内かい?」
道を行く石榴に声をかけたのはどこか穏やかにも聞こえる男の声で、石榴が注意深く意識を向けていなければ歩み寄ったのにも気付けなかったであろうその様子に努めて友好的に笑いかけつつも警戒を強める石榴。
「うん、そうだけど‥‥何か用かなっ?」
首を傾げて聞けば、忠次の見た人相書きの男は石榴を女と見て忠次と同じように侮ったか、江戸は数年振りで初めて聞くお役所のような名前に興味を持ったことなどを伝えて、どのような所なのかと尋ねます。
そして妙に役宅の主の行方と今手薄であることを確認しようとするのに、ますます警戒心が募る石榴ですが、忠次の言った悪い男とも思えないと言うのにもどこか共感するところもあり戸惑いつつ。
その頃、リーゼと嵐山は石榴と話す男の様子を窺う2人の人影に気が付き、それぞれ歩み寄っていました。
「ちょっと話を聞かせて貰えない?」
「おっと、逃げるのはなしだぜっと」
リーゼは峯で叩き伏せ、嵐山は腕を捻り上げて捕らえれば、それを察知し身を翻そうとする男に、石榴はごめんねっと小さく呟き鉄扇で、男の意識を刈り取るのでした。
●転がり出た物は‥‥
「女は牢内に身内が居たらしいな」
小夜がどこか怪しげな笑みを浮かべて言うのに、どんな聞き方をしたのだろうかと微妙に気になる様子の忠次が首を傾げて見つつ。
女は浪人崩れを雇って牢破りをするつもりだったよう、空き家を使っていた男達は浪人崩れに警戒して宿を変えていたようで。
「男達の方はその事以外何も話そうとしないが、気になることがある」
そう言って明衣が取り出したのは布の小さな包み。
「これを取り上げたとき偉く取り乱していたな」
その様子を思い出しラスティが言うと頷いて包みを開ける明衣。
包みの中身に顔色を変える改方の者達。
その中には、丁寧な細工が施された見覚えのある銀煙管が鈍く光っているのでした。