【新たな斎王】巫女不足に付き 〜天の巻〜
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■シリーズシナリオ
担当:蘇芳防斗
対応レベル:フリーlv
難易度:やや難
成功報酬:0 G 72 C
参加人数:8人
サポート参加人数:6人
冒険期間:05月19日〜05月28日
リプレイ公開日:2006年05月25日
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●オープニング
●清き滝の、その裾野
しとしとと直上より降り注ぐ膨大な量の水を浴び、水垢離を行うは一人の巫女さん。
あ、巫女装束は身に纏ったままだぞ!
それにちゃんと変えもあるから安心しろ‥‥とまぁそれはさて置き。
人里近く安全で、霊験あらかたなこの滝には神宮に勤める人々が昔から良く単身でちょくちょくと水垢離に来る‥‥のだが、最近はどうも様子がおかしい様で。
「いきゃーーー!」
絹を裂く様な声、と言うには少し微妙な気もするが水垢離をしていた巫女さんが何かを見止め叫び声を上げれば、慌て滝壺から飛び出し抱えて来た巫女装束やらを置いている場所へ駆けるもそれは何処にも見当たらず、止むを得ずに身一つだけで彼女は近くの村まで駆けるのだった。
「行っちゃった、やっぱり気付かれていない?」
「まさか、そんな事はない」
「でも都合はいいよね」
「静かに此処で暮らせるからね、此処も追い出されたら‥‥」
「でも寂しいなぁ、巫女さん巫女さん」
「いいよね、巫女さん。綺麗だよね」
「ぐへへへへ」
「‥‥こらこら、とにかくこの調子で。いいね」
『はーい』
そんな彼女を見送る視線‥‥と言うより木立の陰からどうしても見えている顔が複数、次いで次々に言葉を交わせばそれぞれ頭上の皿を輝かせて、森の中へと消えていった‥‥木立の上にいた、もう一人の闖入者が存在に気付かないまま。
「えーっと、そろそろいいかな。いい加減待たせているだろうし、珠さんへこの件を報告しに行かないと」
●求む、巫女 〜次は何処へ〜
「うーん、どうしよっかなぁ」
「次の試練か」
「そ、中々決め手に欠けてね。山に放った真珠のただ一粒を探して来いとか、皆の嫌いなものを調べて大きい屋敷にそれらを仕掛けるとか」
「‥‥‥」
暖かな日差しが降り注ぐ中、神野珠は自身の家が庭にて佇みぼやいている風景にレリア・ハイダルゼムが何時来たのか、背後から静かに声を掛けるも彼女は驚かずに前だけ見たまま頷き、思考していたその一端を隠さず話せば無言だけ返す巫女候補が一人。
「そう言う方向で考えていたし、やろうと思っていたんだけどどうやら大人しい方向に落ち着きそう」
「ならいいが、今度は一体何をするんだ?」
だがその沈黙を一切気にせず次いで珠が顔を顰めれば、紡がれた言葉から僅かに安堵したレリアが遠慮なく聞いたその時、一人の青年がその場へ駆け込んで来た。
「珠さーん! はぁ、はぁ。言われた通り、あの滝に張り付いていましたが‥‥どうやらやっぱり河童が住み着いているみたいです、しかも女性にばかり悪戯を‥‥」
少なからずレリアは初めて見た人物だったがその彼は一先ず彼女を気にせず息を荒げては、珠に頼まれていたのだろう何事かの調査についての報告を簡潔に行うと
「覗きとか覗きとかだろ? あ、お触りはなしだったかい?」
「‥‥珠」
「えぇと‥‥」
「でも何か訳ありみたいでその序で、悪戯をしていると言うか‥‥」
「ふーん‥‥なるほどね。じゃあ確認も取れたし、そう言う事で悪戯ばかりする河童を説得して貰うよ。あ、暴力はなしだからね。詳細は彼から話を聞いといて」
その報告を聞いて巫女は笑顔で臆面もなく青年へ問うも、レリアが鋭い眼光湛えて睨み据えればぎこちなく振り返る珠は銀髪の剣士を見やりつつ、青年の更なる報告を受けてその口から先の答えを紡ぐ。
「難儀な依頼だな‥‥それにそもそも、この試練も巫女と関係あるのか?」
「んー、まぁ微妙かも知れないけど巫女は何においても我慢強くないと。神事の際は長時間の拘束なんて当然だから説得が上手くいかずに暴れて貰っちゃあ、ねぇ」
「これ位‥‥」
するとその答えと青年の話を聞いて嘆息を漏らすレリアが何時もの疑問を投げ掛けると、もっともらしい微妙な理由を掲げれば彼女を絶句させれば
「後それだけだと詰まらないだろうから、優と一緒に水垢離もしておいで。まだ水は冷たいだろうけど、いい修行になるでしょう」
「それ以前に、河童達の説得に失敗したらそれ所では‥‥」
「何、あんたらなら出来るさ」
続きもう一つだけ、課題を与えるが珍しく弱気な発言をするレリアの肩を叩けば笑顔で断言するのだった。
「あ、それと悪いけど今回は二人で皆を連れて行っておくれ、滝までの道なら優が知っているし大丈夫でしょ」
「何かあるのか」
「まぁ別件で、ちょっと動くに動けないのさ。まだ噂だけど、どうもきな臭い話があってねぇ‥‥全く」
がその最後‥‥珠がそれだけ告げると珍しいと言う代わりにレリア、胡散臭い巫女へ今までの仕返しにか苦笑を返せばその彼女は剣士とは逆に浮かない表情でそれだけ呟き、意味深に肩を竦めた。
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依頼目的:珠の試練に挑め!(精神編)
必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は伊勢神宮から出ます。
それ以外で必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
NPC:楯上優、レリア・ハイダルゼム(同道)
日数内訳:京都から伊勢神宮〜目的の滝まで往復日数七日、実働日数一日、水垢離一日。
その他:女性限定(ご協力、お願いします)
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●リプレイ本文
●困惑
「優殿、任務大変だな。珠殿、結構無理難題が多く申されるのでは?」
「いえ、そんな事はありませんよ」
「‥‥そんな事はあると思うぞ」
先日の体力勝負な試練から暫くの時間が経って再び見える一行、今回の難儀な依頼にルミリア・ザナックス(ea5298)が労いの言葉を楯上優へと掛ければその彼女、微笑みながら巨人の騎士が言の葉をやんわり否定するもレリア・ハイダルゼムがそれを否定すれば、ルミリアの言葉に出てきた神野珠が銀髪の剣士へ視線だけで釘を刺すと場に笑いが起こるが
「もし女性の河童が居られた場合、巫女にならないかと打診してみて良いだろうか?」
「ま、そうねぇ。問題なさそうだけど、一応上に確認してみるわ」
「それもそうじゃが‥‥河童達が滝に居座る理由があり、それを取り除けば件の滝より去ると言う場合はどうすればいいじゃろうか?」
「あー、その場合は話を聞いて持ち帰って来て頂戴。近場なら対応しましょう。どの様な場合であれ、最終的には此方で対応する必要があるでしょうからね」
和んだ空気の中に響く、巨人が騎士の問いに珠は首を傾げるも無難な答えだけ返すが、何処かその表情は面白げだった事に一行は気付き、苦笑だけ浮かべるとルミリアの後を継いで、ファルネーゼ・フォーリア(eb1210)が同じく別の側面から質問を紡げばそれには珠、明朗な回答を与えると暫く考え込んでから目の前にいる巫女が言う通りだと納得すれば頷く彼女。
「でも、それにはまずは河童に出て来て貰わないと‥‥ですよね」
「そうだな、そこまでは簡単だろうと思うが」
「巫女装束‥‥さ、最近は、ジャパン以外の国でも冒険者の間で巫女装束が流行っていて、ファッション‥‥として着ると言うお話を聞きますからカ、カッパさん達も着てみたかったんでしょう、か‥‥?」
「可能性として、無くはないだろうが‥‥どうだろうな」
そして珠、他に質問がないかと辺りを見回すとファルネーゼの後に続く問いこそ無かったが相馬ちとせ(ea2448)が改めて確認を取ると、皆の作戦を聞いたレリアが一先ずそこまでの件に付いては問題ないだろうと太鼓判を押す代わり、頷くと何時の間にか、レリアの背後に潜んでいた水葉さくら(ea5480)が今回依頼に至ったまでの経緯を思い出し、キーワードであろう『巫女装束』について推論の一つを述べると彼女らの傍ら、静かに佇むガイエル・サンドゥーラ(ea8088)が何時もの真面目な面立ちで首を傾げるも
「で、でも、だからと言って盗っちゃうのはダメ‥‥ですよね。えと‥‥じ、自分達で作る、とか」
「その時は巫女装束の作り方を教える、か?」
続く彼女の提案には流石に堪え切れず、何とか苦笑にだけ留めて返すガイエルへ珍しい一面を見たと皆は忍び笑い。
「うぅ〜ん、言葉しか使っちゃいけないんだ。私に出来るかなぁ?」
「頑張りましょう、巫女になる為に」
「うんっ、そうだねっ!」
しかしその中、ティズ・ティン(ea7694)が不安を隠しきれない声音を響かせ見回すも、優に宥められればやがて笑顔を取り戻した幼き巫女候補が頷き叫べば八人は珠らが見送る中で悪戯河童がいる滝へ向かい、歩を進めるのだった。
●情報
「‥‥じゃ、時間も無い事だし始めましょうか」
「そうですね、それでは早速」
「ん、あたしかい?」
「えぇ、それとそこの彼にもお話をもう少し詳しく聞かせて貰いたいと思って」
「いいけど、知っている事は少ないかもよ?」
と先行する八人を見送り、その背中が見えなくなってから後にロア・パープルストーム(ea4460)とフィーナ・ウィンスレット(ea5556)が視線を合わせれば、傍らで未だに佇む珠を見やるとその視線に気付き彼女は首を傾げると二人は頷き、次いでフィーナはこの場より去ろうとする青年も引き止める様に声を響かせ再び珠を見やれば、彼女は頭上を見上げるも
「話し合いだけで解決する以上、例え少なくとも情報が必要です」
「そりゃそうだ」
真面目な表情でフィーナに言われれば、巫女は苦笑して納得すると場に残った二人へ問われるまま、答えを返すのだった。
●
「あの場所は伊勢神宮の巫女達が昔から良く使っていた水垢離場、なんだけど実の所‥‥その所以とか詳しい事は分からないのよねぇ」
「そう、なんですか?」
そしてフィーナの口から初めに紡がれた問いは巫女達が修練に使う件の滝に付いての話だったが、珠から返って来た意外な答えに彼女は僅かに驚くも
「えぇ、伊勢には他にもそう言う所が結構あるわよ」
「興味深い話ね」
「でも、今は話が逸れています」
「そうだった。でも‥‥うーん、今の今まで神宮の近くに河童が住んでいるって話は聞いた事ないんだよねぇ。伊勢神宮に関わっている、って言う話も私は聞いた記憶ないし」
珠は続き頷けば、伊勢の意外な側面を話すとその傍らで青年と話を交わしていたロアが僅かに振り返り、楽しげな表情を浮かべたがフィーナが微笑みながらも一先ず一蹴すると、肩を竦めて珠は再び口を開き言葉を紡ぐが次には困った表情を湛え、次いで首を傾げた。
●
「それなら、河童は何処かから来たのよね? 何処なのかしら?」
さてその傍らへ視点を移すと彼女らの話を聞いた後にロア、疑問を覚えて河童達を見張っていた青年へその疑問をぶつけてみる。
「そうでしょうね。でもこの辺りだとすると‥‥あぁ、鳥羽の方とかにいる様な気はしますね。あの辺りは海産資源が豊富ですからね」
「海岸沿い、ね。ガイエルは川の名前を挙げていたけど、確かに考えられなくもないか」
すると逡巡の後、青年が返した答えにふむと頷けば彼女は珠と彼の話を一先ず纏めつつ、別に気になった事に付いても青年へ聞いて見た。
「‥‥所で貴方が見張っていたその状況、まさか覗き?」
「滅相も無い!」
「でも、ねぇ?」
「何ですか、その疑惑の視線はっ?!」
その問いへは青年、即座に答えるが尚もロアは彼を茶化せば手振り身振りを交えて叫び弁明する青年を暫し、微笑みながら弄り回すのだった。
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そして伊勢での話を纏めた二人、急いで問題の滝近くにある村へ至れば素性を明かし、河童に付いての話を聞いて回るも人々から聞く話のどれからも、件の話以上の悪事を聞く事は無かった。
「他に何か‥‥直接、河童から話を聞いたりは?」
「あぁ、子供達は良く話をするって言っていたな。大人達があの滝に行くと石を投げられて追い出されるんだが子供同士なのか気が合うんだろう、なぁ?」
「そうなんですか?」
「詳しく聞いてないけど確か、元いた場所を追い出されたとか何とかって」
今までに聞いた話をフィーナが首を傾げて纏める中、ロアの問いへ壮年の男性は傍らにいた子供を見つめて話を振れば、頷く少年の前に屈み視線の高さを合わせてフィーナが尋ねるとはっきりとした声で同じ高さにある彼女の瞳を見据えて言った。
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「一先ず、河童の皆さんがこの地に来たのは最近の様ですね。それと滝に訪れる巫女さん以外、他に目立った悪さはしていない、と。そして何らかの原因で彼らは住んでいた場所を追い出され、安住の地を求めて此処までやって来た。とりあえずは話だけで事を収められる、と言う事で安心でしょうか」
「えぇ、そうね。直接話を聞いてみないと細部は分からないけど、大丈夫でしょう」
そして巫女装束を纏った二人、一通りの話をフィーナが纏めればロアもそれに同意して頷くと
「それでは、急ぎましょう」
村の外に待たせていたフロドに駆け寄り二人が跨れば、フィーナは他の皆が待つ滝へと向かうべく拙い手綱捌きながら愛馬を駆けさせた。
●対話
「白衣で水垢離をするのかえ? 半襦袢も無駄にして居る様な。とは言え、これのみでは透けるしの」
フィーナとロアが滝へと向かっている頃、一方の八人は滝まで無事に辿り着けば今は悪さを働く河童を誘き出すべく滝へ入り水垢離を行なう振りをしようとするも、降り注ぐ数多な水飛沫を浴びながらファルネーゼ、纏う装束を見て戸惑いの表情を湛えたその時。
「ヘイッ、河童さん! 出て来てくれたら、私の巫女装束あげちゃうっ! 今、直に脱いじゃうホカホカのヤツっ! きゃー、恥ずかしいぃ〜♪」
彼女の傍らでちとせが身を捩らせながらも臆面なく、高らかに叫んだのは。
『ちとせ‥‥』
「そんな目で見ないで下さい‥‥冗談ですよ、冗談‥‥」
勿論その場にいた皆は何とも言えぬ視線を彼女へ送ると、ちとせは身を縮こまらせて反省する他になく頭を垂れるのだが、次の瞬間だった。
「マジかー!」
『‥‥‥』
「は、いかん! やってしまった!」
皆の正面、やや向こうにある梢が揺れると同時に緑の塊が一つ飛び出せば、それが河童だと言う事に気付いて一行は揃い、絶句しては呆れるとその冷ややかな反応に飛び出して来た河童は今更な事に気付き、同時に踵を返す。
「す、少し、お話をしませんか? お話しないと分からない事‥‥た、沢山ありますし何も‥‥し、しませんから」
「ティズ達の言う事も聞いてぇ〜」
「‥‥勘弁願うぜっ!」
だがその背へ、声は相変わらず震えながらも躊躇わずにレリアの背後から顔を覗かせさくらが真面目な声音で呼び掛ければ次いでティズも真摯な眼差しを送る‥‥も。
「消えてしまった、か。さて、どうする」
脱兎の如く駆け抜けた河童は止められず、消えた方を見やって吐息と共に言葉を漏らすルミリアは次にどうしようかと、額に手を当て再び滝に向き直ると皆もそれに倣う。
「‥‥本当に、何もしませんか?」
だがその次、不意に場へ響いた声にまたしても皆は周囲を見回すと‥‥五匹の河童達が恐る恐る、木々の影から姿を現していた。
●
「さて、最近の騒ぎはお主らの仕業だな」
「ま、まぁガイエル様‥‥怯えていますよ。み、皆仲良く‥‥です」
一行の中、最初に言葉を発したのはガイエルだったが‥‥冷たき光宿した瞳で威圧する様に河童達を見下し確認する彼女は彼らからしてみれば鬼の如く見えたのだろう、河童達が一様に震える様子に堪りかね、さくらがガイエルを宥めれば
「ねぇ、何で悪戯するのか教えてぇ〜。人間とかエルフとかでも分かり合えない事があるんだから、河童とも分かり合えない事はやっぱりあると思うんだ。でも、私達はそう言う時は話し合って私達に最も良い方法を考えるんだ。だから、皆で一緒に皆が幸せになる方法を考えようよ」
「そう、ですね。暴力は‥‥嫌いです」
「‥‥ならば何故にこの様な所業を致す? 理由があるなら正直に申してみよ」
「巫女さんが大好きだから、ですか」
「おう!」
「君は黙って下さい。えぇと‥‥」
押し黙った彼女の間隙を縫い、ティズが幼い面立ちの割にしっかりした考えを言って改めて話し合いの旨を笑顔で申し出ると、河童達のリーダーなのだろう他の河童より僅かに背の高い河童が前へ出て首肯すればさくらに宥められて少し落ち着いたガイエル、何とか落ち着いた声音を捻り出し河童達へ悪戯を行う理由を問い質すとフィーナのまず無いだろうという予想の問いに対し、先程飛び出して来た河童が胸張り言うもリーダー格の河童にど突かれれば‥‥それから僅かな間を置いて彼らの口から語られる話はフィーナにロアが集めて来た情報の通りで、鳥羽の海岸沿いに集落を築いていた彼らは何者かの襲撃を受け、集落を焼き払われ散り散りに離散すればその後此処まで辿り着いたと言う。
「私達は、ここを水垢離に使いたいだけなんです‥‥だから貴方達が言う事を聞いてくれれば危害は加えませんし、抱える問題も解決します。伊勢神宮の方との相談次第になりますが」
「その通りだ。解決するまでの間だけ水垢離の邪魔をしたり、人を驚かせぬ事がお主らを追い出さぬ条件になるが、どうする?」
「それなら、僕達が折れる他に無いですね‥‥でも、皆さんの好意に甘えていいのですか?」
その話を聞いて続くのはちとせ、自身らの意思をはっきり指し示すと付け加えるガイエルの言葉を聞いて河童達、僅かな相談を経て頷くが一行の好意に改めて尋ねれば皆は一も二もなく頷いた。
●宿る心は
さりとて、とりあえずお互いの妥協点を決めては河童達が抱える問題の打診を誓った一行は今、滝の前に勢揃い。
無論、五匹の河童達にはご退席願っている。
「それにしてもミズゴリ、ね。気は引き締まるでしょうけど、冷たそうな水‥‥ってさくら、何をしているの?」
「え‥‥? 折角の巫女装束が濡れるので」
「脱ぐ必要があるのか?」
「あっ、ありません!」
改めて降り注ぐ水飛沫を前に怯むロアが一歩後ずさった時、視界に入って来たさくらが何を思ってか巫女装束を脱ごうとしている様に驚けば、首を傾げる彼女に優を見て問うルミリアだったが、唯一の巫女が否定して慌ててさくらを止めると少し不満げな表情を浮かべる彼女。
「寒いのは‥‥慣れていますから。えぇ、郷里の寒さに比べれば。それに心頭滅却すれば何とやら‥‥です、はいーーーっ!」
「‥‥魔法で耐性を得るのは、反則ですよね?」
「はい、勿論です」
「ですよね‥‥しっかりと水垢離致します」
だがその中、ちとせが果敢に滝へ飛び込み絶叫する光景を見て、ぎこちなくさくらを宥める巫女へ振り返りフィーナは尋ねるも‥‥何処か薄ら寒い笑顔を湛える彼女に断言されれば覚悟を決めて、未だに冷たい滝の中へと身を投じ‥‥絶叫を木霊させた。
「滝に打たれるのも久し振りだな。身が引き締まるこの感覚が良いのだ、うむ」
しかし皆が騒ぎ立てる中でも一人、髪を結わえ束ねたガイエルだけは滝の中で普段と変わらず至って落ち着き、佇んでいる姿には皆舌を巻く。
「‥‥私、巫女になれるかな?」
「えぇ、二つの試練を突破したのですから自信を持って大丈夫ですよ。でも今までの試練はその資質を見ているだけの筈ですから、なってからが大事だと思います。神道等、学ばなければならない事は沢山ありますし」
その彼女の堂々たる姿を見てか、ティズの口から思う不安が吐いて出るも‥‥優は笑顔で現実的な面を言いながら、それでも優しく諭すと皆は様々な反応を見せれば巫女は次いで苦笑だけ静かに浮かべると、皆も釣られて乾いた笑みを貼り付ける。
だが何はともあれ、二つの試練を突破した一行は程無く伊勢神宮の巫女と認められるだろう‥‥がそれは最後の難関、斎王の歓迎次第かも知れない。
「よっし、頑張るぞー!」
だが優の言葉を受けて、ティズが無邪気な笑顔を浮かべ決意すれば皆は一様に頷いて斎王の来訪を心待ちにするのだった。
〜続く〜