【合同演習】五節御神楽
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■シリーズシナリオ担当：蘇芳防斗 対応レベル：11〜ｌｖ 難易度：やや難 成功報酬：10 G 22 C 参加人数：10人 サポート参加人数：-人 冒険期間：06月04日〜06月13日 リプレイ公開日：2007年06月13日 |
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●オープニング
●合同演習伊勢市街の某所にある伊勢藩主邸宅‥‥そこに今日、珍しい客人が来ていた。
「藩内では妖の暗躍に悪魔の来訪と慌しく、藩外においては元徳様の追放に神器を奪った長州勢の動向が気に掛かる所」
「‥‥大きな戦も、近いのでしょうか」
「さて、そればかりは何とも言えませんが」
つらつらと、淀みなく語るその宅の主こと伊勢藩主が藤堂守也の眼前にて嘆息を漏らした珍しい客人とは伊勢神宮が抱える斎宮の主が斎王の祥子内親王で、その彼女へ返した言葉の後、己の口から漏れた溜息に遅れて気付くと藩主は自嘲の笑みを湛えれば
「ともかくこの情勢‥‥何時いかなる事があるか分からない以上、これからの為にも私達は持ち得る力の底上げを図るべきです」
「そう、ですね」
改めて表情を引き締めて言葉を紡げば、本題の話‥‥伊勢藩と斎宮が合同で行おうと言う演習に付いて切り出すと、それには同意と斎王が頷く様を見届けて藩主は笑顔を浮かべるが
「『五節御神楽』は本来、あるべき目的に向けて新たな形を取るとか」
「えぇ、とは言えいきなり実戦にてそれを行うのは愚でありますからこちらとしては願ってもない提案です‥‥が、そう言った提案をすると言う事は伊勢藩でも何らかの問題を抱えているとお見受けしますが」
「‥‥否定は出来ませんな」
斎宮の状況に付いて尋ねれば彼女はやはり頷くも、事前に聞いていた本題だったからこそ何となしに察しが付いていた斎王が伊勢藩の状況に付いて尋ね返すと、それには暫しの間を置いた後に守也は肯定こそするが
「故に今回、合同演習のお誘いをした訳ですが如何でしょう？」
「先にも言った通り、願ってもない事に変わりはありません。ならば互いに足並みを揃え、伊勢の闇を払う為‥‥この話、協力させて頂きます」
今度は表情に一切の揺らぎを見せず、真剣な面持ちを携えたままで先の明確な答えを確定すべく改めて眼前の女性へ問い掛ければ、果たして斎王は応と答えた。
●斎宮の間にて
「漸く、私にとって初めての任務になるか」
今日も山の様に積まれている書類の山の奥にて筆を走らせては紙片をあちこちへ舞い散らせている斎王を前、その山を前にして立ち尽くすレイ・ヴォルクスは嘆息を漏らしながら言葉を紡ぐと
「そうねぇ、今まで色々とお疲れ様」
「気にする必要はない。脅威が徐々に姿を現し始めてきている以上はそれを止める為にも、斎宮内で『五節御神楽』の一人として多少でも権限が欲しい事を考えれば当然の事だ」
斎宮の他の幹部を信頼させるべく日々、東奔西走していた彼の姿を知るからこそ斎王は労うも、普段は掴み所のないレイは謙遜すれば一時走らせていた筆を止めて彼女。
「それで、勇の方はどう？」
「相変わらず、口数は少ないし鍛錬の際に見た太刀筋はどうにもな‥‥まぁ、そう簡単に拭える問題ではないのだろうが」
「そう‥‥これかばかりは他人が関与してどうこうなる訳でもないし、変に動かない様だけ気にして頂戴」
「分かった」
先日、伊勢の鍵が一つを握る矛村勇の様子に付いて尋ねればその身を預かる彼は包み隠さず報告すると、溜息を漏らす斎王だったがそれだけ判断すればレイへ告げると
「それで、今回の合同演習だが‥‥『五節御神楽』増強の件、他の面子には話を」
「勿論、通したわ。合同演習と言う事から試験運用と言う名目で先ずは一人に付き十人、それぞれの職業と同じ斎宮の兵を付けると言う話でね‥‥とは言え、軍備の増強にも繋がる事から渋る人が多からずともいたのはまぁ当然よね。私達は戦う為に存在する訳じゃあないのだから」
今度は彼が続け言葉を紡げば、前々より話であった『五節御神楽』の拡充案に付いて尋ねると書類の山の奥から一枚の紙片をレイへ投げて斎王は答えを返すと
「それでも、力がなければ何かを守る事すら叶わない‥‥だからこそ今回の合同演習、難しいとは思いますが目指すべき形を成す為にも良い報告を期待しています」
「あぁ、任せろ」
自身を戒めるべくか、静かな声音にて至って真面目な調子でレイへ告げれば彼は何の根拠を持ってか、間違いなく断言した。
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依頼目的：伊勢藩との合同演習に臨み、五節御神楽の部隊能力を向上させよ！
必須道具類：依頼期間中の保存食（日数分）は伊勢藩が準備する為、不要です。
それ以外で必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
対応NPC：祥子内親王（同道せず）、レイ・ヴォルクス、矛村勇（＋五節御神楽に配属された兵達）
日数内訳：目的地まで五日（往復）、依頼実働期間は四日。
その他：演習場所としては斎宮前の開けた平野にて実施。
□五節御神楽に付いて
斎宮が抱える防衛に重きを置いた部隊。
その対象は現在、斎宮に伊勢としているがゆくゆくはジャパンの守りをも担える様になって欲しいと現斎王は望んでいるとか。
部隊規模は冒険者が十人のみで構成されているが、そう言った目的があるからこそ部隊の拡充を検討しており今回はその試験運用を行なう。
故に連携等を取るのは今回が初めてであり、今後に際しても先ずはその点が課題となるだろう。
□連合軍に付いて
伊勢藩が抱える部隊の一つで、特に部隊名称はないが今後に備えて攻撃面を重視した面子が揃っている。
大まかには大半の伊勢藩士と一部を元女装盗賊団の華倶夜によって構成されており実力としては華倶夜の方が多少上を行くが、故に伊勢藩への編入の経緯も重なれば伊勢藩士は未だ抵抗が拭えず、その齟齬から運用効率の低下を招いている。
故に現状の課題としてはやはり連携の点が挙げられるが、五節御神楽のそれとは違う点に注意。
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●今回の参加者
ea0321 天城 月夜（32歳・♀・浪人・人間・ジャパン）ea0340 ルーティ・フィルファニア（20歳・♀・ウィザード・エルフ・ロシア王国）
ea0364 セリア・アストライア（25歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国）
ea0606 ハンナ・プラトー（30歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国）
ea3167 鋼 蒼牙（30歳・♂・侍・人間・ジャパン）
ea5001 ルクス・シュラウヴェル（31歳・♀・神聖騎士・エルフ・ノルマン王国）
ea6476 神田 雄司（24歳・♂・浪人・人間・ジャパン）
ea9150 神木 秋緒（28歳・♀・志士・人間・ジャパン）
eb2064 ミラ・ダイモス（30歳・♀・ナイト・ジャイアント・ビザンチン帝国）
eb2099 ステラ・デュナミス（29歳・♀・志士・エルフ・イギリス王国）
●リプレイ本文
●久々の参集ここは伊勢‥‥天照大神を奉る伊勢神宮があれば、今は二見にその場所を移す斎王が住まいの斎宮がある歴史も由緒も正しき地。
その斎宮が前に広がる平野にて今、二つの部隊が展開していた‥‥一つは斎宮が誇る守りの要『五節御神楽』で、もう一つが伊勢藩とその隠し球に近き存在の元女装盗賊団が『華倶夜』連合軍。
「『五節御神楽』の拡充ですか。それは私達がより大きな力を持たねばならない事態が来るかも知れないと言う事ですね」
「そう言う事だな」
その一つが『五節御神楽』に所属する一人、神木秋緒（ea9150）がその証たる衣を纏いて久々に集った変わらない顔触れと、同僚達に付く部下達を見回しながら穏やかな表情を湛え呟くと、『五節御神楽』の長がレイ・ヴォルクスは頭を縦に振れば
「遂に部下を‥‥か」
「斎王の意思によるものだ。可能ならそれに報いる事が出来る様に各自、訓練とは言え善処して貰いたい」
その光景を感慨深く見つめながら鋼蒼牙（ea3167）がボソリ、囁くと斎王の意を改めてレイが一行へ告げれば
「五条の動向や江戸の情勢を考えるとこれから伊勢も京都も色々とあるだろう‥‥『五節御神楽』の精神をそのままに、より多くの事が出来る様にと思う」
「そうでござるな、拙者にどこまで力が備わっているのやら‥‥しかし任されたからには期待に応えられる様、頑張ると致そうかのぅ♪」
「どう考えても、柄じゃないよね。でも、これが祥子さんの選んだ道なら頑張る」
「ふむ、その意気や良し」
それを受けて尚、ルクス・シュラウヴェル（ea5001）と天城月夜（ea0321）にハンナ・プラトー（ea0606）の三人がそれぞれ、決意の程を示せば皮の帽子が唾を上げてレイは微笑むと
「そう言えば初見の者もいたな‥‥今後、『五節御神楽』を率いる事となったレイ・ヴォルクスだ。知っている者もそうでない者もこれから宜しく頼む。それとこっちで静かに佇んでいるのは矛村勇だが、まぁ紹介する必要は殆どないか」
皆とは初めて顔を合わせた事から改めて自身の口より挨拶を交わすと、矛村勇の存在も指し示すが黙するだけの彼に肩だけ竦めれば
「‥‥余り模擬戦まで時間はないが、折角だから皆の部下になる物達の前で挨拶位して貰おうか。出来る者がいればで構わん」
挨拶はあっさりと終え、その視線を皆から斎宮の兵達へも移しながら口を開くと暫しの間を置いた後。
「天照大神と斎王様の目の前で言うのはどうかと思いますが私達は国ではなく、神でもなく‥‥力なき人々を護る為、ここに集いました。その事だけ、先ずはお忘れなき様にお願い致します」
果たしてその眼前に踏み出したのはセリア・アストライア（ea0364）で、微笑を湛えながらも厳かに、しかし力強く言の葉を紡ぎ場にいる百余人へ確かに告げれば
「失わない事、そして失わせない事。一番難しい事かも知れません。ですが私達の振るう力はきっと、その為にあるのだと信じて下さい」
その後を継いでルーティ・フィルファニア（ea0340）がやはり皆の前へ躍り出て言うと、彼女らの話を前に『五節御神楽』の皆は頷き返した。
●一日目 〜模擬戦〜
と言う事で簡単な挨拶を終えて『五節御神楽』の皆は戦場となる平野を前、合同演習を行う伊勢藩と元女装盗賊団が『華倶夜』の連合軍と今は睨み合っていた。
「それにしても一気に大規模ね。分隊長、か‥‥雪花隊とでも名付ける？」
「まぁ、好きにしろ。しかしそれを考えるよりも先にそろそろ始まるぞ、各自不安だとは思うがそれぞれの部隊を率いて遠慮する事無く任務の達成に当たってくれ」
「任務って‥‥」
「あながち、間違ってはいない筈」
そんな中、一つの分隊を率いるステラ・デュナミス（eb2099）が改めて配された部下達を見回しては呑気に分隊名を考えるが、皆の様子を見回っていたレイに呼び掛けられると果たして呻く彼女ではあったが、それは別段気にせず言い切るとステラの隊より前に配していた神田雄司（ea6476）の隊が隊長へ声を掛ける彼。
「神田、大丈夫か？」
「‥‥まぁ、なる様になりますよ」
「それもあながち、今の状況では正しい思考だな‥‥では、行って来い。因みに今日、私達は観戦だ。余り情けない姿を晒さない様に」
「‥‥俺も、行く」
「今日は黙って見ていろ、最終日は混ぜてやる」
その隊の雰囲気が厳かにて寡黙だったからこそ、レイは初めて此処で彼に声を掛ければ様々な事に考えを巡らせていたのだろう雄司は穏やかに笑んで僅かな間を置き答えると、頷いてレイは今度こそ大声を張り上げ全ての部隊へ告げれば、その傍らにいた勇が不服そうに告げるもそれは無視すれば不満を露わにする彼だったが
「まだ戦場には立てなくても、私達の戦いを見て考える事は出来る筈。何か感じた事が有ればその時は指摘して欲しい。私達もまだまだ未熟だから‥‥一緒に強くなりましょう」
「‥‥‥」
その彼を宥めるべく、本心から秋緒が一つだけ願い出れば‥‥変わらずに沈黙だけ返す彼だったが、そっぽを向いたその反応に彼女は顔を綻ばせると
「伊勢の為、お互いの力を高めましょう‥‥それでは、宜しくお願い致します」
同時、誰が代表と言う訳ではないが今日はミラ・ダイモス（eb2064）が『五節御神楽』の代表として連合軍と向き合い、剣を掲げては騎士らしい宣言を交わせば‥‥それより程無くして模擬戦は始まった。
●二日目
初日の模擬戦を終え、二日目は自部隊立案による訓練を行う日‥‥昨日、足取りこそ覚束なかったものの、事前に調整していただけあって模擬戦に勝利を収めた『五節御神楽』だったが‥‥だからこそ先ずは今、挨拶だけですぐに模擬戦へと移行した先日を考慮し各部隊での意識合わせを行っていた。
「何を思ったかオーラを極めると言う修羅の道に入ったお前達！ 辛いかも知れない、周りから蔑まされ弄られるかも知れない‥‥だがっ！」
その十ある内の一つが部隊を率いる蒼牙の部隊にて轟と隊長の雄叫びが轟けば、桃色の光を無駄に纏うなり
「この道を往くのなら、ただ突き進むのみよ！」
『‥‥ぇー』
「貴様らー、それでも軍人かぁ！」
果たして次には断言すると、しかし返って来た反応にいきり立っては叱咤して己の得物を掲げ振り回す蒼牙の姿が見受けられれば
「私の隊だよ、楽器位は弾けるよね？ 歌位は歌えるよね？」
「は‥‥はぁ、まぁ一応、それなりには」
「それじゃあとりあえず、簡単に音合わせだけしてみてから訓練にはいろー。あ、音合わせの後に訓練はちゃんとするから、それは安心してね」
リュートを抱え、爪弾きながら己が部隊の面子へ笑顔で尋ねるハンナの姿もまた見受けられれば、様々に繰り広げられている各部隊の雰囲気を見止めてレイ。
「‥‥良くも悪くも、『五節御神楽』と言った所か」
「温いんじゃないか？」
「お前が刺々し過ぎるんだ、あいつ等の爪の垢でも煎じて飲め」
相変わらずの皮尽くめな衣装を身に纏い、頭に被る皮の帽子が唾を持ち上げては微笑むと‥‥その傍らにいる勇は辛辣な態度で辺りを見回しては厳しい視線を飛ばすが、その背をど突いてレイは鼻を鳴らすと彼の頭を掌で掴み、ある方へ向ければ
「地味だが防衛を主とする『五節御神楽』で私達が部隊は戦線を支える重要な役目になる。やる事は多岐に渡るからこそ、一番キツい部隊になる筈だが守るべきものを守る為‥‥共に頑張ろう」
「前衛に出張る私達は出来得る限り戦線を維持する事が第一。私達の後ろには守らなければならないものがあるから、それは必ず覚えておいてね。そしてそれは他の部隊もそう‥‥何時でも、どんな状況でも互いに助け合える様に注意は常に払っておく事も忘れないで」
「‥‥ふん」
その視界の先にてルクスと秋緒がそれぞれ、自身の隊員へ心構えを説いている様を見せ付けるとそれでも鼻を鳴らす勇にレイは彼の頭から手を離し、帽子の唾を今度は下げると
「昼過ぎから全体の訓練に入るから、それまでにウォーミングアップは済ませて置けよー！」
全体へ響き渡る程の大声を発し、呼び掛ければ今度は彼へ向き直って声を掛けた。
「それじゃあお前は‥‥特別に身の程でも知って貰う事とするか」
●三日目
三日目、今日もまた訓練ではあるがその案に付いては連合軍に携わる冒険者達より持ち寄られたもので、その内容は昨日の延長線上になるだろう各部隊での連携訓練。
「目標、視認！」
「‥‥来る者だけを迎え撃て！」
「それでは援護を開始します。目標を狙い過ぎず‥‥とりあえずは適当に牽制だけ」
先ずは選ばれた、雄司と月夜にルーティの隊がその訓練へ挑めば、月夜の隊員が報告に彼女が的確な指示を下すと、ルーティもそれに続き迫る敵を模擬したルクスの隊へ様々な魔法にて牽制を仕掛ける‥‥が。
「ぷぎゃー！」
「‥‥ルーティ殿、また一般人に被害が」
「あれ？」
仮想敵のルクス隊が周囲に突き刺さる筈だった魔法の一部が民間人を模擬してその後方にて動く蒼牙を打ち据え、絶叫を轟かせるとルクスの声を持って動きが止まる場にルーティが首を傾げれば手を打ち鳴らす音が次いで響くと
「ならもう一度、同じパターンで武装して迫って来る敵兵だけ倒す事。神田と月夜の動きは悪くないが、ルーティが足を引っ張っているので気を付ける様に」
「‥‥はい」
「それでは、再開だ」
レイの声が厳かに響けば、再び最初の位置に戻る四つの隊へ指示を出すとうな垂れるルーティだったが、落ち込む暇を与えさせない様にか、早くレイが掌を打ち鳴らせば
「まぁ、悪くない提案だな。尤もこの提案が出来なければ向こうとしては厳しい限りだろうし‥‥当然か」
再び動き出した各部隊を見つめ、この訓練が立案者を褒めれば振り返ると
「で、そっちはちゃんとやっているか？」
「案外、面白いわね。ほら右、武器構え！」
「何で俺まで‥‥」
「お前も『五節御神楽』で動くんだから当然だろう。尤もそれ以前に昨日の勝負、負けたら言う事を聞く約束だったしな」
本来、連合軍から提案されていた集団統率の訓練に臨む、今は仮想の訓練を行っていない全ての隊へ指示を出しているステラへ問えば、返って来た彼女からの答えに頷くと次いで響いた勇の愚痴はあっさり切り捨ててレイ。
「しかしこの分なら、連携は出来る所まで引き上げられるな」
「あーれー！」
「‥‥ま、流石に実戦での指揮はすぐにとは行かんみたいだが」
その訓練を前に己の顎を撫でながら果たして呟くが‥‥再びに響いた蒼牙が絶叫を耳にすると肩を竦めながら帽子の唾を持ち上げた。
●四日目 〜模擬戦、再び〜
「それじゃ、訓練の成果を見せ付けましょうか」
「だが、油断は禁物だろう」
「そうだな」
とそう言う事で二日間に渡った訓練を終え最終日‥‥それぞれが経験を積んだ上で再び臨む模擬戦の実施を前、自信を持って告げるステラに奢りは持たずルクスが皆を見回して言えば、その二人に頷き返す『五節御神楽』の面々を見てレイは皮のコートを翻し皆に向き直ると
「では、再びの模擬戦だ。今回は私達も加わるが大事がない限りは指示を出す事はしない。それぞれの判断で動いてくれ」
「しかしそれではレイさんの職務怠慢では‥‥」
「安心しろ、実戦ではちゃんとやるさ」
戦場となる平野の緊張感が高まる中、それでも普段と変わらない口調にて告げると‥‥直後に飛んで来たセリアの突っ込みには珍しく笑んで答えれば同時、高らかになる法螺の笛が音。
「さて、始まったわね‥‥じゃあ雪花隊、相手の出鼻を挫くわよ！」
その音を聞けば早く『五節御神楽』が皆は眼前を見つめると‥‥やがて濛々と上がる土煙の中に連合軍が影を捉えるとステラ、早く指示を下せば他の魔法部隊がルーティに蒼牙と共に牽制すべく弾幕を張るが、それは早く散開した連合軍によって徒労に終われば
「‥‥二日だけとは言え、先の模擬戦とは明らかに動きが違いますね。それでは防壁を成します」
「続きますよ」
「無駄な戦闘はしない、避けられる戦いは避ける‥‥敵を倒すのではなく、守るべき者を守る事。それを念頭に置いて布陣を！」
それを前にしてミラが連合軍の今の実力を確かに実感するとすぐに己の部隊へ指示を下せば、足早く駆け出す雄司に固き装甲を誇るセリアも続き部隊を広く展開しては防壁を成せばその途中。
「‥‥最初のどさくさに紛れて別に動いている隊がいる、もう少し引いてそちらにも対応出来る様にしておけ」
「えぇ、分かっているわ」
その中で何時の間にか秋緒に近付いていた勇が初めてだろう忠告を囁くと、それを受けて彼女は微笑めば連合軍を見据え、尚も高らかに声を発した。
「手加減はなし、遠慮もなし‥‥でも全てを守る為、皆で共に戦いましょう！」
●
やがて戦いは終わる‥‥ミラが最初に判断した通り、先日とは全く違う動きを見せた連合軍の執拗な攻撃を、しかし『五節御神楽』が最後まで凌ぎ切れば再びの模擬戦も『五節御神楽』の勝利で終わる。
「あ、斎王様」
「お疲れ様、ちょろっとだけ見させて貰ったわ」
とは言え反省点はまだまだこれから詰める必要があり、戦い終わってより後に開かれる事となった酒宴の中、部下達は解放させながらも皆がそれに頭を寄せ相談していればその場にひょっこりと現れた斎王の姿をセリアが見止めると掌を掲げては彼女と、次いで皆に応じて斎王は皆の前にて今回の評価の程を下す。
「まぁこの短期間でこれだけ動けるなら、多分問題はないわよね？」
「はい、まだ課題はありますがそれも時間を掛ければクリア出来ますし現状では十分かと」
「よろしい。と言う事で皆、改めてお疲れ様‥‥ん？」
とは言えそれは側近である光に対しての確認から始まると、果たして断言した側近に頷けば改めて皆の方を見て労いの言葉を掛けると直後、蒼牙が彼女へ花で編まれた指輪を懐から取り出せば
「これ、ちょっと遅れたけど約束の誕生日プレゼント」
「‥‥しょうがない、貰ってあげるわ。で、他の皆は？」
素っ気無い物言いながら、それを差し出すと‥‥果たして複雑な表情を湛えた彼女は取りあえずそれを受け取り、次いで皆を見回しては彼が察している位だからと思ってだろう、尋ねるが
『あ‥‥』
「光、あれ貸して」
「‥‥‥」
しかし揃って間抜けな声を発すれば瞳を細めた斎王は側近がいる方へ腕を突き出すと、その掌に一本の長く鋭い槍を託せば彼女はそれを掲げ駆け出すのだった。
「上司の誕生日は覚えておくもんだー！」
「力って怖いよね。だからこそ心を強く持って、振り下ろす先をしっかり見据えないと‥‥」
何時もの様にハンナが呑気にリュートを奏で、勝手に締め括るその中で。
〜一時、終幕〜
