【五節御神楽】闇動先駆

■シリーズシナリオ


担当:蘇芳防斗

対応レベル:11〜lv

難易度:普通

成功報酬:7 G 77 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月02日〜08月11日

リプレイ公開日:2007年08月09日

●オープニング

●見えない不安 〜斎宮〜
「一先ず、一息ねぇ‥‥」
 斎宮の主、祥子内親王は斎王の間にて大きく背筋を伸ばしていた‥‥それもその筈、漸く一通りに構想していた部隊の構築に情報の収集、そして天照大御神の所在まで突き止めたのだから。
「とは言え、問題は残ったままか」
「‥‥斎王様」
「‥‥なーにー?」
 しかし、それはあくまで最低限の段階‥‥未だ残っている問題は山の様にあり彼女は傍らに避けてある和紙の山を見て嘆息を漏らすも直後、側近の光に呼ばれると返事をしては振り返って彼女。
「先程参られた伊勢藩主より、今後の伊勢の為に話し合いをしたいとお話を受けたのですが‥‥どうされますか?」
「‥‥あら丁度良い、待たせてもあれだからすぐに呼んで頂戴」
 側近が携えて来た話を聞けば微笑むと答え、唐突に斎宮を訪れた伊勢藩主を迎えるべく立ち上がるのだった。

●会談
 斎王が側近へ伊勢藩主を迎える様に告げてから暫く。
「仰る通りに伊勢が抱えている問題は未だ、その殆どが解決に至っていません。ならばこそ、いずれ何らかの動きがある筈」
 斎王の間にて伊勢より足を運んだ伊勢藩主と向き合って祥子内親王は果たして、彼同様に厳しい面持ちを浮かべては彼の意に頷き応じれば
「先んじて、手を打つ事が出来れば楽ではありますが」
「そうですね‥‥国司様の意見は?」
「一任する、との事です」
「‥‥随分、信頼されているのですね」
 次に響いた彼の意に彼女は考え込むも、すぐにこの場にはいない伊勢国司の意に付いても尋ねれば、藩主より返って来た答えを聞くや穏やかな微笑を湛えるも
「そう言う訳ではありませんよ」
「ですが、それならそれで‥‥またお願いする事にしましょうか?」
「お願い‥‥と言うと?」
 それには苦笑を持って守也は答えを返せば、彼女は首を傾げた後‥‥先とは違う質の笑みを湛え問うと、しかし藩主はその意を汲み切れずに問い返した。

●五節御神楽、起動
 その日の夜、斎王の間にて『五節御神楽』の長を務めるレイ・ヴォルクスを呼び付けた彼女は早速、一月振りの任を与える。
「‥‥と言う事で、すぐに取り掛かって頂戴」
「分かった。しかし当てのない話ばかりだな、最近は」
「それは言わないでよね、こっちだってどうしたものか頭を抱えているんだから‥‥」
 するとそれを受けて相変わらず皮だらけの衣装を纏う彼、珍しく彼女を前にぼやいて見せるも‥‥それには渋面を浮かべて言葉を返せば
「とにかく、今の内に動いておく必要があるわ。これからの動きに対して、予め楔を打ち込んでおく必要がね」
「そうだな、奴らとてこれで終わりではない筈。ならば恐らく次に奴らが動き出す時‥‥その時が」
 彼を宥めるべく、続き言葉を響かせれば苦笑を湛えながらもレイが頷くとその最後は遮って斎王。
「‥‥何事も戦いなくして解決は出来ないのかしらね」
「無理だ‥‥とは言わんが詰まる所、それは理想論に過ぎない。現実としては厳しいと言わざるを得ん」
「嫌な世の中ね‥‥」
「全くだ」
 ボソリ、呟くと屋内にも拘らず被る帽子の唾を目深に下げては現実を突き付けると嘆息を漏らした彼女へ同意するレイだったが
「‥‥拗ねていてもしょうがないわ。とにかく、大事に至る前に動いて頂戴。こちらも協力は惜しまないから」
「了解した。『五節御神楽』、今後伊勢に降りかかるだろう懸念を可能な限り払うべく与えられた任を全うする」
「宜しくね」
 深く、一度だけ嘆息を漏らした後に斎王は漸く顔を上げると果たして告げれば始めて斎王の間で帽子を取ったレイは頭を垂れると、斎王は一度だけ頷くのだった。

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 依頼目的:伊勢の為、今後の為に成す事を成せ!

 必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は必要なので確実に準備しておく事、但し場所によっては現金があれば調達可とする。
 それ以外で必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。

 対応NPC:祥子内親王、レイ・ヴォルクス、矛村勇、ルルイエ・セルファード、楯上優他
 日数内訳:目的地まで四日(往復)、依頼実働期間は五日。
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●今回の参加者

 ea0321 天城 月夜(32歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea0340 ルーティ・フィルファニア(20歳・♀・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 ea0364 セリア・アストライア(25歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea0606 ハンナ・プラトー(30歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea3167 鋼 蒼牙(30歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea5001 ルクス・シュラウヴェル(31歳・♀・神聖騎士・エルフ・ノルマン王国)
 ea6476 神田 雄司(24歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea9150 神木 秋緒(28歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb2064 ミラ・ダイモス(30歳・♀・ナイト・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 eb2099 ステラ・デュナミス(29歳・♀・志士・エルフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

 五節御神楽、それは斎宮の盾にして遠く未来にはジャパンの盾ともならん為に結成された部隊。
 その御名、密かにこそ知れ渡ってはいるが未だ各地へ轟くには遠く‥‥しかし、伊勢の大事へ至るだろう事態を鑑みて今、斎王の命によりそれへ至るよりも先ずは伊勢の平和を保つ為、動き出すのだった。

●答志島へ 〜天照大御神〜
 斎宮が抱えている問題もやはり伊勢藩同様に多くあり、その一つが天照大御神の存在。
 伊勢に蔓延る闇を払うべく神なる存在を迎え入れる為、五節御神楽に属する三人は近く開かれる会談に備えて答志島のその中央にある古墳へと至り、その存在と出会っていた。
「お久し振りです。天照大神様」
「ふむ、主か。ようもまた顔を出せたものじゃのぅ」
 そして古墳の前、見てくれこそ少女である天照大御神は鋼蒼牙(ea3167)の礼に対し先日の一件から慇懃な態度にて三人を出迎える。
「うー、あー、うー」
「‥‥何をしているんだ?」
 その中、きっと可愛らしい天照の姿に母性本能をくすぐられてだろう天城月夜(ea0321)が彼女を抱き締めたい衝動に駆られながらもそれを堪え、一人悶え呻いている姿に蒼牙が首こそ傾げて尋ねるも
「天照大御神様、初めまして。斎宮が盾を司る隊、五節御神楽に所属しておりますセリア・アストライアと申します」
「礼を弁えている者もおるか、まぁ斎宮の使いともなれば当然か」
「その斎宮が長である現斎王、祥子内親王より文を預かって参りましたので記されている件に付いてご検討頂きたく思います」
「ふん、近う寄れ」
 この調子を変えるべくセリア・アストライア(ea0364)が一歩踏み出し自身の身分を明かした後に頭を垂れれば、彼女の振る舞いには感心する少女へセリアは膝を折り早速用件を告げると、それには鼻を鳴らす天照へ彼女は膝を折ったままに近付き斎王から賜った書状を託す。
「‥‥分かっておる者もいる様じゃの」
 そして少女がそれに読み耽ると途端、沈黙が舞い降りるがそれは程無くして天照の呟きに寄って打ち消されるとやがて三人を見つめ、口を開く。
「この日取りで構わん、それだけ伝えておけ」
「それでは」
「じゃが、茶菓子等は忘れるなよ」
「それならば今日、持ち寄っております!」
 果たして直後、響いた答えにセリアは顔を上げると釘だけ刺す天照だったがそれは予見して‥‥と言うよりは何時ものノリで、漸く平静を取り戻した月夜が少女の眼前へ勢い良く赤福が入っている桐の箱を差し出すと、漸く笑顔を湛える神様ではあったが
「その代わり、と言うのもおこがましいでござるが‥‥天岩戸、あれには一体何が封じられているのでござろう?」
 傍らにて何時の間にかお茶の準備を行うセリアを見つめたまま、真剣な表情を湛える月夜の口から紡がれた疑問を聞けば彼女は渋面を湛え、呟くのだった。
「ジャパンの悪魔王、その力が‥‥欠片」

●更なる力、求め 〜五節御神楽〜
 さて、その一方では斎宮に留まる者もいた‥‥目的は部隊の増強。
「皆、久し振りだが調子はどうだ?」
「は、問題はありません。何時でも動く事が出来ます」
「ふむ、それは良かった」
 その内の一人であるルクス・シュラウヴェル(ea5001)は早速、自身の部下等の元を訪れれば彼らの頼もしい返事を前に頷いて彼女、部下の一人へ尋ねるのだった。
「所で今、レイ殿はどちらか?」
「あ、はい。それでしたら」

「‥‥で、ルクスはどうした?」
 先まで部屋にいたミラ・ダイモス(eb2064)と入れ替わり、次なる客へレイが問い掛けると
「私の部隊が後方での支援を行うに際し、薬草の事に付いて相談をしに来た次第なのだが」
 やはり率直に、レイの元を訪れた理由に付いて明示する彼女だったが頬杖をつく彼を見止めれば半眼湛え、付き合いが長いからこそ彼の内心を察して口を開く。
「‥‥面倒だな、と内心で思っているだろう?」
「まさか、暇を持て余している位だ」
「それなら、私の隊に少し付き合って貰うとしようか。薬草園を作って貰いたいのだが‥‥それはすぐに出来る筈もないし、だが予めある程度の薬草を確保しておきたいので近くの山で薬草を摘みにな」
 確かにルクスの発言は的を射ており、だがそれはおくびにも出さず彼は肩だけ竦めれば端的に答えると彼女の相談にも快く応じるべく皮の帽子の唾を持ち上げ、唇の端だけ吊り上げればその反応を前にルクスも顔を綻ばせては一つの提案をすると、瞳を細める五節御神楽が隊長だったが
「何、炊き出しの訓練も行う故に着いて来て貰えるのならばそれ位は馳走しよう」
「‥‥なら薬草園に付いて前向きに検討する代わり、相伴に預かるとするか」
 彼が何か言うよりも早くルクスが先んじて口を開けばレイは答えを返すと立ち上がり手近に掛けてあった皮のコートを掴み纏えば一度だけ溜息を漏らした後、先を歩くルクスの後を追うべく遅れて歩き出した。

●賑やかなる町にて 〜伊勢市街〜
 正式な形の五節御神楽として揃い訓練に励む者がいれば一方、実際に部下を率いて動く者もいたのは当然か。
「あれ、思ったより賑やかだね」
「はい、どうやら冒険者の案から藩主様が何事か催していると言う話です」
「ギャラリーは沢山いる訳だ、うんうん」
 その一人、ハンナ・プラトー(ea0606)は伊勢市街へ部下達と共に至れば思っていたよりも賑やかな光景を前に首を傾げるが、次いで響いた部下の話を聞くと納得して頷く彼女。
「皆、楽器は持って来たよね」
「はい‥‥ですが一体、何を?」
 そしてすぐに皆を見回し尋ねれば、頷く部下達ではあったが‥‥それぞれ、頭上に疑問符を浮かべればハンナ。
「ではこれより全力で活動するに際し、私の部隊名を決定したいと思いまーす」
『おぉー』
「その名も『楽し隊』」
『‥‥‥』
「因みに、私がジャパン語不自由だから間違ってる訳じゃナイデスヨー。これは『音楽がし隊』の略なので、問題ないのです」
 それには先ず答えず、己が部隊名を掲げる旨だけ先ず言えばそれにはどよめく部下達だった‥‥が次に響いたその部隊名には皆、沈黙のみ返すも隊長だけは動じない所かむしろ胸を張って高らかにその名を付けた理由を説明すると、それには納得半分疑問半分の部下達ではあったが
「そう言う訳で早速、全力で行ってみよー!」
 とにかく行動すれば全て分かる、とでも言わんばかりにハンナは踵を返しては皆へ告げると颯爽とリュートベイルを構えては部下達を伴い、伊勢市街を練り歩くのだった。

 と更に伊勢市街が賑やかになる中、一人の浪人は酒場にて燻っていた。
「はぁ、今回は今までとは違う意味で難題ですねぇ」
 その浪人、五節御神楽に属する神田雄司(ea6476)は今回の依頼に対し未だどう臨むべきか悩んでおり、一先ず市街にまで来たものの何を成すべきかは未だ見定めておらず。
「失うのは小夜だけで十分だ‥‥あの人を必ず、守って見せる」
 そしてもう何本目の冷酒を空けてか、静かな酒場内でボソリと呟くと穏やかだった表情が見る内に固く、厳しくする彼は漸く傍らに立て掛けていた太刀の柄を掴むと決意と共に立ち上がれば
「‥‥ならばこそ、こんな所で何時までも一人だけ酒を飲んでいる訳には参りませんか。いい加減、動くとしましょう。先ずは‥‥情報収集からですかね」
 酒代を卓の上に置いた後に踵を返し、普段の穏やかな表情を取り戻しては雑踏の中へ消えていった。

●落ちたまま、影一つ 〜天岩戸、要石〜
「『五節御神楽』の皆さんの様じゃが‥‥一体どうされたのじゃろうか?」
「以前より襲撃があった要石の、経過確認と言った所です」
「成程のぅ。また近々、何事か起こるのかと思ったわい」
 鳥羽にある要石近くでは神木秋緒(ea9150)の隊が現状の確認と言った名目で訪れれば、大した数ではないとは言え気になってか近付いて来た一人の老人と話を交わす彼女。
「それに付いては現状では正直、何とも言えませんが‥‥最近、要石に何か変わった事等なかったでしょうか?」
 老人の不安に際し、穏やかな声音で可能な限りそれを払拭せしめると眼前にある要石を仰ぎ見て秋緒は老人へ問うと、首を左右に振る彼の様子から内心で考え込む。
(「要石に干渉等している兆候はないのね、とは言えまだ此処は一つ目‥‥か」)
「ありがとうございました、もし何か変わった事があったら斎宮の方へ連絡をして下さいね」
「あぁ、ありがとうよ。お主らも体に気を付けて頑張っておくれ」
「それでは失礼しますね」
 しかしまだ、この情報だけで判断するには早いと思い秋緒は取り敢えず得た情報を心の内に留めておけば丁寧に頭を垂れ、老人へ礼を告げると彼からの激励には笑顔で頷けば部下達を見回し声を掛けるのだった。
「余り時間はないから、急いで次へ行きましょう」

「矛村さん‥‥本当は此処にいるのだって不本意ですよね、きっと」
 さて、要石の封印にて『何か』を封じていると言われている天岩戸を前にルーティ・フィルファニア(ea0340)はそれを管理する伊雑宮が宮司の息子で五節御神楽の一員でもある、矛村勇との対話に臨んでいた‥‥因みに今、彼はレイが忙しい事から個人での鍛錬に勤しんでいるとかいないとか。
「焔摩天を倒したいならお譲りしますよ? 一人で出来るなら、ですけどね」
「‥‥出来るさ」
 相変わらず無愛想な彼を前、しかしルーティも普段と変わらない表情でお昼にと買って来た弁当を突きながら言えば、直後に返って来た答えを聞くと彼女。
「差し違えてでも、って言ったら怒りますよ?」
 その答えに対し言葉を返せば、それは図星だったか再び口を噤んだ彼に微苦笑だけ返せば
「力が足りなければただ、借りればいいんです。失敗を恐れるから私達は集うんです‥‥一人、一振り、一撃では及びもつかない力を求める為に。それに本当に叶えたい事って、見えているつもりでもずっと遠くにあるんです。私も、ジャパンに来てから‥‥」
 果たして何を考えてだろう、そっぽを向いたままの彼を見つめたままに言葉を紡ぐルーティは‥‥しかしその最後、肩こそ落とせば漸く彼が弁当を置いて視線を向けてくると
「うん、ともかくそんな訳で一蓮托生と洒落込みません?」
 それを感じたからこそルーティは顔を上げて笑顔で言えば、直後に草が鳴る音が響くと同時。
「一人で焦ってはいけないわ。何れ天魔は動き出すでしょうし‥‥その時に遅れを取る事の無い様、今の内に私達と揃って腕を磨いておきましょう」
 二人が振り返ったその先には何時来たか秋緒も勇へと助言すれば微笑むと‥‥その二人を前に頭を掻く彼だったが
「それじゃ、丁度神木さんも来た事ですし‥‥やって見る事にしましょう」
「何を、するの?」
「妖孤を、捕まえるそうだ‥‥」
 掌を叩いてはルーティ、一つの提案をするとそれに対して首を傾げる秋緒へ勇はやはり素っ気無く答えを返せば二人に聞こえない程、懐に下げている黒不知火の柄を掴んでは小さな声音にて囁くのだった。
「‥‥焔摩天、奴は、奴こそは、奴だけは‥‥」
 因みにそれから後、妖孤は現れなかった事を付け加えておく。

●潜む、影 〜妖の動向〜
 一方、ステラ・デュナミス(eb2099)も己の部隊に属する者達を率いては事前に京都の冒険者ギルドでギルド員の青年に調べて貰った伊勢絡みの依頼が報告書に記されている内容を思い出しながら斎宮やその依頼に絡んだ土地を巡っていた。
「‥‥最近は伊勢でも妖怪はおろか悪魔が動いている話は殆どないし、雪華さんを襲った賊に付いてはまだ何か隠している様な気もするけれど伊勢の管轄じゃないから余り深くも関われない」
 街道を歩きながら彼女、今までに確認だけした事柄を改めて振り返り‥‥いま一つ振るわなかった成果にうな垂れこそするが
「一先ず、アゼルさんに付いては気にする必要があるかも。ジャパンへ来たばかりの時に加えて国司様の元へ向かう途中にも悪魔に襲われている以上、何かあるのかも?」
 伊勢に絡むのだろう悪魔の共通点であるジーザス会に属し、今は伊勢国司の元にいると言う青年の名を上げれば暫し考え込み‥‥だがやがて、これ以上は仕入れた情報からでは如何とも判断し難く嘆息を漏らせば一人、ステラと同道する部下を見やり尋ねる。
「所で他の組から何か連絡はあったかしら?」
「いえ、今の所は特に何も」
「そう‥‥それじゃあ一先ず、私達は此処で休みましょう」
 昨日の合同演習にて自部隊内で構築した連絡手段に付いての再確認、と言う事で隊を三つに分けては情報収集を広く行っていたが、返って来た答えと定時連絡には未だ先である事に気付くと彼女は目と鼻の先にある村にて休む旨を部下へ告げたその時。
「ん、あれは‥‥」
 視界の片隅にて多く、人々が動いている事に気付くと何事だろうと思い彼女は駆け出した。

 そのステラの視界の中、動いていた人々とはミラとルルイエに楯上優の三人に村人達で一同は以前にあった依頼にて何処ぞへ飛び去った死霊を慰めるべく、慰霊碑を建てていた。
「こんな感じで良いでしょうか?」
「そうですね」
 やがて出来上がったそれを前、騎士は尋ねると頷いて優は碑に刻まれた言霊を撫でては静かに祝詞を織れば、やがて塩を撒き御神酒も撒けば頭も垂れて‥‥場に居合わす一同も続き黙祷を捧げると
「あら、もう終わっちゃった?」
「はい。簡単ですが一先ずこれで終わりです。また後日、正式に執り行いますが」
「宜しくお願いします‥‥すれ違いより生まれる悲劇の悲しさを、次の代にまで持ち越す訳には行きませんので」
 その場に遅れて駆け付けたステラが三人へ声を掛けると僅か、刻を置いた後に猿田彦の巫女が言葉響かせればそれに頷き応じるミラだったが
「どうかしましたか、ルルイエさん?」
「昔の事を少し、思い出しただけです‥‥」
 顔を蒼白に染めるルルイエの異変を見止めれば尋ねると、果たして彼女から返って来た答えには思い当たらず首を傾げるも‥‥それでも一言だけ、呟くのだった。
「過去を後悔しても始まりません。見るべきは、今です」

●その纏め 〜五節御神楽〜
「で、どうだったかな?」
 そして最終日が夕刻、日が紅に染まっては沈み往く中で集う五節御神楽が面々に成果の程を聞くは斎王。
「一先ず盾はもう暫く待たないと行けませんが、手応えはあったと実感しています」
「それに他の皆は‥‥まぁ、報告通りね。一先ずお疲れ様でした」
 問い質した主に対しミラを筆頭にして皆が簡潔な成果の報告をすれば、斎王は満面の笑みを湛え頷くが‥‥その最後には表情を引き締めて皆へ一言だけ告げ、解散を命じた。
「取り敢えずこれから、まだまだ厳しくなる筈だから皆の力‥‥貸して頂戴ね」

 さりとて、現状でこの依頼に対しての成否の程は分からない‥‥だがいずれ、それが分かる日が近付いている事を皆は薄々、肌で感じていた。
 果たしてその時、伊勢は‥‥。

 〜一時、終幕〜