【レギオン】魔蟲爆走
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■シリーズシナリオ
担当:蘇芳防斗
対応レベル:7〜13lv
難易度:難しい
成功報酬:7 G 60 C
参加人数:10人
サポート参加人数:3人
冒険期間:09月05日〜09月20日
リプレイ公開日:2005年09月15日
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●オープニング
「で、状況はどうだ?」
「封印が一つ、壊された。これからまた‥‥レギオンの数は増えてくると思う」
ノッテンガム城、定期報告にシャーウッドの森からやって来たゼストへ簡潔に問う領主のオーウェンだったが、彼の報告を受けて頭を抱える。
「後‥‥残り、三つか。兵の配備は?」
「先より更に増強してある、迂闊には近寄れない筈だ‥‥人であるなら」
だがそれでも策は講じねばならず、現状を狩人へ尋ねると返って来た答えにまたも溜息。
「‥‥レギオンなら別だろうな、ちなみにその封印はレギオンによって壊されたのか」
「そうだな、だが先日の冒険者達との衝突や文献の解読が進んだおかげで行動パターンもある程度分かって来た、森を壊す事に‥‥自分達が薙ぎ払った領域に侵入する人への攻撃もそうだが、それ以上に封印を壊そうと躍起になっている」
先から変わらず顔を顰め呟く領主だったが、それでも続くゼストの報告へ一先ず頷いてから‥‥今一番、気になる事について確認を取る。
「これ以上、封印を壊される訳には行かない‥‥事前にレギオンの動きを察知する事は出来そうか?」
「‥‥やる他ないだろう、でなければシャーウッドの森は踏み壊され‥‥」
「済まないが、頼む。冒険者達にはこちらから至急集まって貰う様に手配を行っておく」
「分かった」
その答えの途中、オーウェンはそれを遮ると立ち上がり明るい陽光が降り注ぐ外を手近な窓から眺め‥‥ふと、ある事に気付く。
「所で‥‥レイはどうした? 近頃見ないが」
「知らん、大方何処かふらついているんだろう。会ったら冒険者達の先導をする様に伝えておく‥‥それとレギオンの再封印についてだが、長老達の話ではまだ準備などに大分時間が掛かると言う話だった」
見ない友人について問う領主へ、ゼストは相変わらずな師の事を冷たくそうだろうと結論付ければ最後に肝心な事を領主へ告げ‥‥暫く後に再び森へと戻って行った。
「‥‥どうも参ったな」
その頃のレイは森の中で一人レギオンの群れと戦っている真最中、衣服こそあちこちが裂かれていたがその動きは何時も以上に俊敏さを増していた。
「時期に奴も動きだす‥‥か、市街の警備も強化させた方がいいかも知れんな」
そして長い爪を掻い潜って拳を一つ振るえば、残った最後のレギオンの頭部を完全に粉砕する。
「どう止めたものか‥‥なぁ?」
転がる十にも近いレギオンの死骸へは目もくれず、背に抱える蒼き布が舞う槍を見やり彼は静かに問い掛けるも‥‥それは静かに陽光を浴びて煌くだけだった。
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ミッション:レギオンを封じている封印の一つを守り抜け!
成功条件:封印の一つを現地滞在中、守り切る事。
失敗条件:成功条件が満たせなかった場合。
必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は忘れずに。
それ以外で必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
(販売されていないアイテムに関して、使う場合はプレイングにて根拠の明示を忘れずに)
その他:皆さんには今回、特にレギオンが集中だろう封印の元へレイさんと共に向かって頂き、それを守って貰います。
上空からの偵察によれば、皆さんが現地へ到着する頃と同時にレギオンの群れがその封印へ殺到する見込みなので、大掛かりな罠などは準備する時間はないと思っていて下さい。
また現地は非常に慌しいので今回、皆さんの分の保存食は準備出来なかったそうなので、今回は日数分のそれを持って行く事を忘れずに。
以前の戦闘での経験を踏まえた上で‥‥それでも非常に厳しい依頼になると思いますが、宜しくお願いします。
備考1:レギオンについて(解読された文献及び先の戦闘より)
丸みを帯びたレギオン:『盾』と文献上で記述されているレギオン。攻撃は単調な体当たりのみだがその皮膚は頑丈で打たれ強く、武器耐性がある。
長い爪を持つレギオン:『剣』と文献上で記述されているレギオン。『盾』と違い武器耐性はなく比較的脆いが、複数匹から同時に爪で攻撃されると非常に危険である。
浮遊するレギオン:文献解読中、『盾』と『剣』の指揮をしている個体と思われる。武器耐性はあるが好戦的ではない模様。
備考2:封印について
シャーウッドの森に生えている木々同様の『木』である、但しその根から枝までは何故か黒い。
詳細に関してはシャーウッドの森に住むエルフ達の、しかも長老だけの秘匿とされており不明である。
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●リプレイ本文
●Spear of Oath(誓いの槍)
冒険者ギルドにて受付嬢らの見送りを受け、ノッテンガムの大よそ六割ほどを占めるシャーウッドの森が南端へと辿り着いた一行は早速レイ・ヴォルクスと合流を果たす。
「一人で先行するなど無茶だぞ‥‥だが、無事で何よりだ」
「敵情視察だけのつもりだったんだが、ついな」
いつもと変わらない風体の彼へルクス・シュラウヴェル(ea5001)が、笑い出迎える彼が負っている傷を見て、嗜めては僅かではあったがそれを魔法で癒す中
「この木が封印か‥‥」
「確かに黒いな‥‥と、余り悠長に眺めている余裕はないか」
他の皆は今回、守り通さなければならない黒々とした一本の木を見付け、まだ頬に残る違和感を掌で拭いつつアンドリュー・カールセン(ea5936)の確認へレイが一つ頷けば、武器の手入れを行ないながら率直な感想を述べるノース・ウィル(ea2269)の言葉に皆は頷く。
「しかし一体、何を封じているのだろうな」
「あのレギオンの群れじゃないのか?」
「でも一つの封印が壊れて、まだこれだけでしたら」
その中でアンドリュー、何か納得行かないと言う代わりに珍しく顔を歪め呟けば、アレクサンドル・リュース(eb1600)は彼へそう返すも、まだ朽ちずに残る木々の多さからそれでは何かが噛み合わない事に気付いたクラリッサ・シュフィール(ea1180)の呟きに、アレクサンドルはアンドリュー同様、憮然とした表情を浮かべる。
「いい所に気付いたな。まだ調査中ではあるが実はもう一種類、レギオンの存在が判明した。それがこの封印によって、シャーウッドの森に眠っている」
そこへその答えを紡ぐのはレイ、その内容が内容なだけに途端辺りは水を打ったが如く静まり返る。
「今回の騒動は封印が一端の解放によってその力が漏れ出した結果だと言う話だ」
「これだけの封印を施して眠るレギオン‥‥どんなものか、想像はしたくないな」
だがそれでも続きを紡ぐレイが一通り、現在分かっているだけの見解を伝えるとガイエル・サンドゥーラ(ea8088)は考えを巡らせ、それでも落ち着いた様子はそのままに嘆息を漏らす。
彼女の紡いだ言霊は程なくして場へ暗く、重々しい雰囲気を与えるが
「それよりまず封印の一つが解けている以上、何か根本的に状況を変えなくては。再封印は‥‥出来ないのですか?」
「今、シャーウッドの森の長老達を中心に必要な物を集めて貰っている最中だ。しかし再度の封印を施すにはまだ時間が掛かると言う報告があった」
「‥‥最悪、この下に眠っているレギオンも倒さなくてはならないと」
セリア・アストライア(ea0364)がそれを払う様に、足掻く様にレイへ尋ね‥‥だが首を振る彼の様子からロゼッタ・デ・ヴェルザーヌ(ea7209)は皆へ向け、最悪の事態も想定しようと呟く。
「そう言う事になる、がそれを避ける為に皆を呼んだのだ。今回は先の戦いより厳しいものになる、頼むぞ」
その整った顔立ちに浮かぶ眉根を引き締め言う彼女へ、だからこそとレイが決然とした表情で改めて皆へ呼び掛ければ、それぞれ決意を浮かべるもその中で意気消沈気味な者もまたいた。
「ノッテンガムの危機だと言うのに、戦闘に必要な戦士ではなく力仕事の苦手な私が、私的な感情で依頼を受けて‥‥冒険者失格かしら」
他の皆がそれに振り返ればロア・パープルストーム(ea4460)はうな垂れ、自身の両肩を抱くも
「理由は何であれロア、お前は今、此処にいる。何か理由の為もあるだろうが、出来る事もあるから此処まで来たのだろう? なら迷うな」
「そうね‥‥引き受けた後にこんな事を考えていちゃ駄目ね。先の経験がきっと役に立つと信じて、やれる事を一生懸命考えるわ」
「あぁ、期待している」
その肩を叩きレイ、落ち込む魔術師を諭すと彼女は深呼吸をして己の考えを改めれば皆より遅れ、決意を紡げば彼は口元を綻ばせて微笑む。
そして落ち着く場にレイは無言で踵を返し、動き出そうとしたその時だった。
「そう言えばレイ殿、その背にある槍は?」
その背にある二本の槍に気付いたアンドリューの問いは彼の歩を止め‥‥暫くの沈黙の後、レイは振り返らずにその答えを返す。
「これか、一本は私のだがもう一本は友の忘れ物だ」
「友人のか、しかし何故それを今?」
見覚えのある槍にノースは納得し、だが湧き出る疑問を即座に彼へぶつけると
「これを渡さねばならないのだ、今は姿を眩ましているが‥‥すぐ近くにいる気がしてな」
「‥‥渡すだけか?」
「さぁ、な。それはその時が来なければ分かるまい」
それにもレイは答えたが、その雰囲気から何かを察したリィ・フェイラン(ea9093)が質問に、彼は溜息を漏らしその回答が最後と言う代わり、自身の右足を踏み出せば
「さて‥‥周囲の散策をして来る、皆はいつ戦闘になってもいい様に準備をしておいてくれ。それとこれがこの辺りの簡単な地図だ」
皆へ森の地図を放ると同時に跳んで彼は森の中へその姿を消した。
「言った矢先から」
地図に気を取られ、それを掴んだはいいがレイの行動にルクスは頭を抱えるも止むを得ずその地図を広げるのだった。
●Fierce Battle(激戦)
それから僅かな時間を経てレイは意外に早く帰って来た、十匹近いレギオンの群れを連れて。
「まだ準備が整っていませんのに」
「かなりの群れに出食わして戻って来ざるを得なかったんだ!」
その様子に呆れ、澄んだ碧眼を曇らせ溜息をつくロゼッタだったが彼の言い訳が終わるよりも早く指を絡め、印を組むと氷の棺で一体のレギオンを包み込めばそれを合図に皆は駆け出す。
「追い駆けて来ただけか」
「それだけならいいのですけど、ね」
その先陣を駆るアレクサンドルの疑問に、艶やかな黒髪を舞わせセリアは厳しい答えを返すとアンドリューが投げた銀の槍に穿たれ地へ縫い止められた『盾』へ二人、魔法の剣とギリギリのタイミングでロアの魔法によって付与された炎の盾剣を振るい捻じ伏せれば次の目標を探した。
それから程無くして、最後の『剣』が一際甲高い音を漏らせば崩れ落ちるレギオンを見届け、その群れを全滅させた事に安堵した一行だったが‥‥終わった後に皆が皆、レイへ捲くし立てればうな垂れる彼を庇うアンドリューは、ロゼッタが倒れている大き目の樹を氷漬けにしている様子が映り
「封印にはアイスコフィンを施したので、今は氷の壁を作る為の下準備です。これでレギオンを多少でも塞き止められれば‥‥」
「なるほど、それなら自分も手伝おう。他にも誰か‥‥」
一先ず場が落ち着いた事から聡明そうなエルフへ尋ねると、その答えに納得し彼女の手伝いを始めればその時、頭上から甲高い鳥の鳴き声が聞こえた。
「鷹、か?」
「あぁ、私のだ。因みに名前は秘密だ」
「‥‥誰もそれは聞いていませんけど、どうしたんでしょう?」
空を見上げその姿を確認しながらのノースの問いへレイは頷き冗談を交え言うも、クラリッサは自慢の髪を梳かしつつ嫌な予感を覚え、だが冗談だけ流し首を傾げる。
「‥‥レギオンが迫って来ていると言う合図だろう、きっと」
その反応へうな垂れるレイだったが、すぐに顔を上げると背の槍を一本抜き去り振るう。
「所でレイ、槍で大丈夫なの?」
「この前持ったのがいつだったか忘れたが、まぁ何とかなるだろう」
『‥‥‥』
その姿にロアの疑問は尤も、此処にいる誰もがレイの槍を扱う姿を見た時はない‥‥だが至って気楽なその返事に皆は絶句しつつも笑うと
「レイ殿、貴殿も無茶をなさらぬ様にな」
「頑張って防衛しましょう!」
ガイエルの心配そうな声音に重なって腹の底から息を吐き、飛ばすクラリッサの檄へ皆は拳を掲げると
「何とかなる‥‥何とかする」
その中で一人、静かに幾度も反芻し呟くノースの声は震えていたが、それでも深呼吸で自身を落ち着かせ木剣を振るえば、腹を括った。
それから直後、押し寄せて来るレギオンの数は大よそ二十‥‥だがその数はまだ増えるだろう。
「見極めて‥‥みるか」
その考えを持って封印の周辺にそそり立つ氷壁の隙間から這い出てくるレギオンの力を見定める為、ガイエルはホーリーフィールドを完成させるとまずは以前と同じ強さで張り巡らせたが、それは即座に『盾』が一体に叩き割られる。
「‥‥なら、これでは」
その結果を冷静に受け止めてから、封印の樹へ迫るレギオンを見掛けその場で急ぎ身を翻すと先のよりも強固な結界を展開、今度は『剣』が振るう鋭利な爪を弾く事となれば、満足気に微笑を浮かべ、ガイエルはそれを思考に刻み込む。
「これなら守り切る事は出来るか」
だが守るだけでは負ける事はなくとも、勝つ事は出来ない‥‥故に彼女は次いで懐より巻物を取り出し、結界の外にてレギオンを迎え撃つ騎士達を援護すべくその封を解く。
「後ろ盾はあります、危険を察したら後方へ!」
「‥‥Gパニッシャーを借りてきたけど、レギオンって虫なのかなぁ」
印を結び完成させたアイスコフィンにて一体のレギオンの時を止めればロゼッタの叫びに結界の外へ打って出る一人のクラリッサが頷けば、抱く疑問は彼女の氷檻とは逆にそれが『盾』へ命中した瞬間、氷解し内心でうな垂れるもその隙を狙い突っ込んでくる『盾』。
「ぬぁぁあっ!」
だが彼女の背後より迫る『盾』の勢いに負けじと吶喊し、強烈な一撃を見舞わせたノースはその反動で舞う様に彼女の元に降り立ち
「それより連携を密に、数が多いだけにそれを念頭に置かねば危険だ」
「そうですね‥‥はぁっ!」
続け彼女へ忠言すると、頷いてクラリッサは闘気を己が体から噴き上がらせ銀髪を舞わせて、鎧を削られながらも美しくレギオンの群れにノース共々挑む。
「呆れたな、それだけの力を隠していたのか」
その最中、また一体のレギオンを魔法で拘束したルクスが視線の先では普段の力押し一辺倒な打突とは違い、流麗な槍捌きでレギオンを翻弄するレイが戦っている光景に舌を巻くと彼は口元だけ緩め、その直後に結界の外へ出てセリアを癒す彼女へ迫る『剣』を貫く。
「ふむ、まぁこれだけ出来れば十分だな」
「なら‥‥頼りにさせて貰いましょう」
それに回復が済んだセリアが炎の盾剣を振るって微笑み言えば、二人は再びレギオンを押し止め駆逐すべく駆け出すが予期せぬ事はそれだけではなかった。
「退けぇぇぇえーーーーーっ!」
「なっ‥‥」
それは狂化したアレクサンドル、以前より装備を固め臨むも圧倒的な数の暴力を前に本来の自身を忘れた彼が咆えれば、留まる事を知らない竜巻が如く血風を撒き散らしながら誰彼構わず魔法の剣を振るい、その一刃がアンドリューに迫るが慌てながらも奇跡的にその攻撃を避ける。
「これだけの数ともなれば‥‥止むを得なし、か」
彼の攻撃力は一行の中で群を抜いている事を理解しているからこそ、今はアレクサンドルを信じる他なくその攻撃に見舞われない様、飛び退りながら別の群れと対峙しアンドリューはその出鼻を挫く為、一条の閃光を放った。
「‥‥しかし、分からぬな。流石に一朝一夕では無理か」
その猛り狂う戦士の姿に己を強く持つのは彼と同じハーフエルフのリィ、矢を放つ速度は普段と変わらず、狙いは過たずに迫るレギオンを貫き射倒しながら視界の隅に映る『指揮』が放つ音に耳を澄まし、次いで全体の動きを見やるも発する音と動きの繋がりは見えず、嘆息を一つ漏らせば一先ず『指揮』は暫く捨て置く事に決め、再び魔法の短弓に矢を番える。
「色々な要因こそあれ流石、一筋縄じゃ行かないわね‥‥これから先も苦労しそう」
その混乱極まる戦場を上空より眺めてロアは、少しでもそれを収めようと安定しない状態ながら投網を放るがまだ当分の間、レギオンとの集団戦は続くのであった。
それから数日を経て、何とか戦い通した一行は無事に封印の樹を守り切る。
まだ気は抜けないものの、少なくともあの近辺からレギオンを一時的に追い払えば今は帰路に着いていた。
「防衛策は確立されたが、あの数はとにかく脅威だ。果たして再封印が終わるまで守り通せるか‥‥いや、やらねばならないか」
心配しながらキャメロットへと至る道の途中、まだ背後に見えるシャーウッドの森を見つめリィは端正な顔立ちを歪め、呟く。
「まぁ‥‥帰ったらゆっくり休もう、それが次に繋がる」
「私は早く髪を洗いたいですね〜」
それに皆は僅か、不安を過ぎらせるも今は平静を取り戻したアレクサンドルが諭せばそれもそうだと、クラリッサを端に何時もの調子に戻り好き好きに話を始めたが
「聞き損ねたが、どうも臭うな。調べる必要はあるか」
そのきっかけを与えた当人は一人、未だ疼く傷ではない何かに引っ掛かりを覚え難しい表情を浮かべると、休息と同時に戻ってからやるべき事を見出すのだった。
●Truth(真実が一端)
「‥‥あの時、臆した者共が今更何を」
闇色に塗り潰された部屋の中、それと同化する様な漆黒の鎧に身を覆う男がレギオンについての途中報告を蒼き騎士へ行なうと、彼は失望で塗り固めた言の葉を一つ、吐き出した。
「で、そのレギオンはどうするよ。ナシュト」
「‥‥‥‥『再生の道』を切り開く為、解放に助力せよ」
だがそれは我関せずと、再び漆黒の男が蒼き騎士の名を呼び次の行動について尋ねれば彼は名前を呼ばれた事からか、何時もより長い沈黙を経て指示を下すと黒衣は邪な笑みを浮かべ
「手を出して良い、ってこったな。待ち草臥れたぜ」
「‥‥レギオンに関してはロイガー、お前に一任する。故にくれぐれも抜かるな」
「へっ、あいつら如きに遅れは取らないさ」
身を翻して蒼の警告には聞く耳を持たず、彼らへ背を向けるとその部屋を後にする。
「‥‥マリゥ、お前は『あれ』の監視を。何かあれば独自の判断で動いて構わん」
「あの木偶人形をねぇ、まぁ万が一にも動くって言うなら暇潰しにはいいかも。けれど早々に終わらせてあんたが楽しみにしている『魔本』の解放、見届けさせて貰うつもりだからね」
「‥‥好きにしろ」
それを見届け暫くの沈黙、やがて立ち上がりマリゥと呼ぶ紅の戦士へロイガーとは別の指示を下せば部屋を辞する中、彼女は追い縋りナシュトへ笑い言えば彼は言葉少なにそれだけ返すと槍を手に、紅を背に部屋を出た。