【求めし力】紐解かれる謎

■シリーズシナリオ


担当:蘇芳防斗

対応レベル:6〜10lv

難易度:やや難

成功報酬:3 G 9 C

参加人数:8人

サポート参加人数:5人

冒険期間:09月18日〜09月23日

リプレイ公開日:2005年09月27日

●オープニング

 昼下がりが過ぎたばかりの頃、少々閑散とする冒険者ギルドで頬杖をついて呆けている受付嬢だったが、扉が開くのをその目で捉えると即座に顔を上げ、いつものスマイルを一つ。
「‥‥アシュドさん、大分お疲れの様ですね」
「あぁ、あれからろくに寝ていないからな‥‥済まないが水だけ、貰えるか?」
 その視界に飛び込んで来たのは目元にくまをこさえ、頼りない足取りで近付いてくるアシュド・フォレクシー。
 その普段見ない様子にギョッと目を見開くも彼の申し出に応える為、受付嬢が背を向けると彼が腰掛けた椅子、僅かに悲鳴を上げる。
「大分頑張っているみたいですけど、進捗はどうですか?」
「‥‥百枚近い石版を一先ず記されている文字別で、大まかに分類だけが済んだばかり‥‥これからが本番だ」
 だがその抗議はすぐ止み、彼女も杯へ水を注ぎ終わればそれを差し出し尋ねるとその答えと同時にアシュド、一気に水を飲み干し視線を受付嬢へ向け、口を開く事すら億劫そうにゆっくりと、言の葉を紡ぎ出す。
「‥‥とにかく圧倒的に手が足りない。キャメロットに連れて来ている手伝いの者もそう‥‥多くなければ、僅かに不足している材料の確保をルルイエに頼んだので色々と‥‥困っている」
 語りながら僅かに舟を漕ぎながら、それだけ言うとやがて頬杖をつく彼は‥‥やがて暫く沈黙を奏でる。
「アシュドさん、アシュドさん」
 その様子から彼が寝ている事に気付いて受付嬢、本来ならそっとして置きたい所ではあるが話の途中で寝てしまっては依頼を出す事も出来ないので静かに揺り起こすと
「‥‥‥‥あぁ、済まない。で、だ‥‥人手が欲しい。先日の依頼に参加して勝手が分かっている者を優先的に‥‥石版の解読もそうだが、それ以外でもやる事は沢山あるからな。そう言う事で‥‥宜しく頼‥‥む」
 目を覚ますアシュドは慌て、頭を振って途切れ途切れながら今回の依頼を最後まで伝えるとそこで遂に気力も尽きたか、カウンターへ勢い良く突っ伏すと同時、座る椅子が突然の衝撃に先程より高い悲鳴を上げて砕け散れば乗り手を地面へ投げ飛ばすのだった。
「あちゃ‥‥」
 不意に展開された光景へ受付嬢は眼を覆い、指の隙間からその様子を見るもそれでも平然と眠る彼をそのまま、少しの間だけ『その場』で眠らせておく事にした‥‥丁度男手がいなかった為、それも止むを得なかったが
「筆より重い物、持った時ないし暫く人も来ないだろうから‥‥いっか」
 誰もいないのに見栄を張ってどうすると言う彼女への突っ込みはさて置き、このアシュドの様子からして今回の依頼は色々な意味で大変そうである。

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 ミッション:回収して来た石版の山からゴーレムの製造法を見出せ!

 達成条件:ゴーレムの製造出来るだろう範囲まで石版を解読出来た時。
 失敗条件:達成条件が満たせなかった場合。
 依頼期間中の食事は依頼人が提供しますので、保存食の準備は不要です。
 それ以外で必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
(販売されていないアイテムに関して、使う場合はプレイングにて根拠の明示を忘れずに)

 その他:先の依頼で皆さんが集め、回収して来た石版の解読が主となるこの依頼。
 その量の多さから、今使える人手では早々に解読出来ないので皆さんには共に石版を読み解いて貰うと同時、ルルイエさんがいない事からその他、身の回り等の補佐をして頂く事になります、例えば整理とか整理とか‥‥それでは宜しくお願い致します。
 因みに今回向かって貰う場所はキャメロットにある、アシュドさんの両親が住まう屋敷の一角に建てられている研究所になりますが、ノッテンガムのそれに比べ場所が広いだけで必要最低限の資料に人員(三人)しかありません。
 尤も、今は石版の山に埋まっている事が容易に想像出来ますが‥‥。
――――――――――――――――――――

●今回の参加者

 ea0606 ハンナ・プラトー(30歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea1542 ディーネ・ノート(29歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea3173 ティルコット・ジーベンランセ(30歳・♂・レンジャー・パラ・フランク王国)
 ea5603 ユーウィン・アグライア(36歳・♀・ナイト・ジャイアント・モンゴル王国)
 ea5981 アルラウネ・ハルバード(34歳・♀・ジプシー・人間・ビザンチン帝国)
 ea6065 逢莉笛 鈴那(32歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea7263 シェリル・シンクレア(21歳・♀・ウィザード・エルフ・フランク王国)
 eb0050 滋藤 御門(31歳・♂・志士・人間・ジャパン)

●サポート参加者

御神村 天舞(ea3763)/ アルフォンス・シェーンダーク(ea7044)/ ヴァルフェル・カーネリアン(ea7141)/ 轟天王 剛一(ea8220)/ カルナ・バレル(ea8675

●リプレイ本文

●Destroy Room
「えーと、何だか部屋の中が凄い事になっている様な?」
「なっているわねぇ、どう見ても」
 アシュドがいる屋敷に来てみれば、執事だろう者に導かれるまま着いた部屋の扉を開け放ち滋藤御門(eb0050)はその、お世辞にも広いとは言えない部屋の光景に思わず眼を疑い擦ってみるも、ディーネ・ノート(ea1542)が真実だと告げれば止むを得ず、未知なる領域へ足を踏み入れる一行。
「うわぁ、獣道かよ‥‥うぉい、アシュドは何処にいるんだー!」
「‥‥此処だ、済まんな」
 それらを崩さない様に注意しつつ所々にある通れる道を見付けては、依頼主へ呼び掛けるティルコット・ジーベンランセ(ea3173)に応え、何処からか依頼人であるアシュド・フォレクシーの声が何処からか聞こえたが‥‥その姿は見えない。
「んー、多い。これだけ石版で家が埋もれているなら、もう石版で家が作れちゃいそうだね‥‥よっし、早速家造り開始!」
「‥‥それはやめてくれ」
 そんな彼を探しつつハンナ・プラトー(ea0606)が至って真面目な声音に面持ちで拳を握り宣言したが、非難めいた声だけ上げるアシュドへ
「いや、冗談です、ごめんなさい」
 未だ姿は見えないながらも即座に詫びる彼女。
「ルルイエさん、早く帰って来て下さ〜い」
 その騎士の傍らで周囲の光景に、と言うより見知ったエルフ達の姿が見えない事による寂しさから視界の片隅に映る窓の外に広がる空へ向かって小さなエルフの魔術師、シェリル・シンクレア(ea7263)が叫べば
「私、ルルイエさんの分まで頑張りますから〜!」
 次いで拳を固め、青空にルルイエの顔を思い浮かべては誓いを立てる。
「ううう‥‥人よりちょっと頭が悪い、普通のジャイアントのナイトに古文書読解なんて酷な話は無いでしょう‥‥って、見っけ」
 その、賑やかな一行の最後尾を元気なく歩くユーウィン・アグライア(ea5603)だけ、沈痛な面持ちを浮かべ肩を落としていたが視界の隅で動く一本の腕を見付けるとさっきまでの泣き言は何処へやら、何時もの笑顔を浮かべるとそれを石版の山から思い切り引き抜くのだった。

 ‥‥それから一行は眠たげな様子の彼を半ば引き摺る形でアルラウネ・ハルバード(ea5981)を筆頭に、アシュドの両親へと挨拶に伺う。
 長い間ではないとは言え、暫く世話になる者としての礼儀であるとの彼女の弁。
 それは確かにその通り、だが生憎と父親は不在で母親だけの対応と相成るがそれでもアルラウネは普段の装いながら礼儀を欠かない様、自分なりの精一杯で恭しく挨拶を交わす。
「何時もアシュド君にルルイエさんにはお世話になっています」
「いえいえ、こちらこそ。ルルイエはともかく‥‥この馬鹿息子がご迷惑を掛けているでしょう?」
「そんな事、ありませんよ」
「正直に話して貰って構いませんから」
 一行へのいきなり的を射たサリア・フォレクシーからの質問に逢莉笛鈴那(ea6065)が至って自然に答えるも、重ねての問い掛けには
『‥‥‥‥』
 皆が皆、沈黙で返してみたり。
「静かになるなっ!」
「あ、やっぱり」
 それに納得する母親はさて置いて、さっきまで眠たげだったアシュドが叫んだが
「それはこの前の件に付いて、しっかり答えてくれたら考えるわ」
「‥‥む、むぅ」
 凄惨な笑みを浮かべるアルラウネにアシュドは押し黙るも
「後で答えるから‥‥一先ず、部屋に戻ろう」
「そうですね〜、掃除をしなければなりませんし〜」
 辛うじてそれだけ言うと、刺々しかったアルラウネの雰囲気が変わった事にシェリルは残念そうな表情を浮かべたがそれ故、彼に賛同して呼び掛ければ一行はその部屋を辞した。
「最初はどうなる事かと思ったけど‥‥案外いい方向に進んでいるじゃない」
 そして閉まる扉の軋む音が部屋に響く中でもう一年は経つだろう、その頃のアシュドを思い出して彼女は一人残された部屋の中で、静かに微笑むのだった。

●Lithography
「とりあえずは、だ。解読より何よりまずは片付けようぜ!」
『おー‥‥』
 再び場所は戻って研究室と思しき部屋、扉を開け皆はまた呆れるもティルコットの檄に拳を掲げるも
「改めて見ても凄い惨状‥‥本とか石版がぐちゃぐちゃで埃とかも積もっているし‥‥うん、でもこーゆーのって燃えるよね!」
「‥‥そうなんですか?」
 それは容易でない事をぱっと見だけでも部屋の外から見だけでも察する事が出来、やはり戸惑う一行だったがその中で闘魂を燃やす鈴那へ同じジャパン出身である志士の御門‥‥未だ部屋の惨状に躊躇い、品の良い顔立ちに微苦笑を浮かべ尋ねれば
「そうなのよー。と言う事で頑張りましょう、御門さん。ほらっ!」
「わ、わわっ!」
 通路と部屋の境界線で未だ片足を彷徨わせる彼を鈴那は答えと同時、その手を握れば部屋へと引き込む。
「アシュド君、ちょっとお庭を借りるわね。もう木材とか置かせて貰っているんだけど」
「うん? 構わないが‥‥何をするんだ?」
 そんな二人の様子を笑っては見つめるアシュドへ、ユーウィンが投げ掛ける問い掛けに彼は小首を傾げると
「収納するものが少ないからこんな惨状になっているんでしょ、その収納する物を作って来るの」
 その様子に嘆息を漏らし、日頃のルルイエの苦労を察しつつ言うも
「あぁ、なるほど。そう言われてみれば確かに」
『‥‥‥』
 彼女の提案にアシュドは至って真面目な顔で感心しきり、その様子へ一行は絶句すれば
「ん、どうした?」
「ちょーっと邪魔な気がするから、部屋の隅で頑張ってね!」
「‥‥ま、そだね」
 そんな皆の反応に眼を丸くしては問い掛けるアシュドへ、鈴那が言い放てば僅かに逡巡しながらもハンナが彼の襟首を掴み、遠慮なく部屋の隅へと転がす!
「‥‥ぁ?」
 一瞬、何が起きたか分からず‥‥だが不意に掛かった力に身を任せ、彼は部屋の隅へと追いやられる。
「まぁあの母親からして、甘やかしているって事はないだろうけどなぁ」
「掃除とか整理がとにかく苦手なんだろうね」
 その光景を見てはぼやくティルコットに、ハンナが紡ぐ推論へ皆は周囲を見回し賛同するも
「何はともあれ、掃除掃除! 効率的な仕事はまず環境から整えなきゃねっ!」
 恐るべき風景を前に襷を締め直して気合を入れ、皆へ呼び掛ける鈴那が明るく声を響かせれば、皆はゴーレムを作る為に動き出した。

「アシュドくん、いよいよ本格的に石版解読だよっ!」
「頑張りましょう〜、アシュドさんに皆さん〜」
「あぁ、それじゃあ一先ずディーネとシェリルはこっちへ。他の皆は石版の分類と運搬を頼む」
 それから日が落ちた頃、相変わらず掃除は続いていたが整理整頓に一区切りついて鈴那が呼び掛ければ、シェリルの張り切った掛け声も次いで響くと手際良く皆へ指示を出すアシュド。
「しかし言語別に分けてもこれかよ。おもしれぇ、やってやろうじゃん」
 彼の指示を受けた後、何を考えてか大量の石版を前にしてもやる気を燃やすティルコットだったが
「‥‥石版おもてぇ!!」
 自身に読めない文字で刻まれている石版を手近に見付け、運ぼうとするも一つ呻けば中腰の体勢に、しかし石版はそれでも容赦なく彼を潰そうとする。
「大丈夫?」
 が、近くにいた巨人族で騎士のユーウィンが彼の持つ石版を片手で容易く持ち上げる。
「‥‥ポイント稼がにゃならんのに」
「ん、何か言った?」
「い、いや。無理は良くないな、って言っただけさ‥‥無理せずまだ辺りに散っている紙切れでも集めっか」
 小柄な体格が特徴なパラだとは言え、女性の前で男性としての面目が立たない事に内心で泣き崩れるティルコットだったが、彼女の前ではそれは見せず何時もの軽い表情で髪を掻き揚げるとまず、無理はしない事に決めた。

「アシュドさん‥‥原材料や高さ、質量の他でゴーレムに関連する単語はありますか?」
 友人に一日を費やして書いて貰った古代魔法語の簡単な単語表と石版とを交互に見つめながら、気になる単語でも見付けてか問う御門へ
「そうだな、例えば‥‥」
「話すと長くなりそうだから一先ずそれだけ抑えておけば十分よ、きっと」
「‥‥まぁ、そうだな」
 アシュドがその口を開くも付き合いの長いアルラウネがそれを遮れば、ゴーレムに付いて熱く語ろうとした彼は僅かに肩を落としつつも御門へそう伝えれば、頷いて作業を再開する彼の様子を見てから自身の作業に戻ろうとした矢先。
「難しくて読めねぇ」
「ちょっと難しい記述のイギリス語だな」
 一通り紙片を集め終わったティルコットの呻きにその身を屈ませ覗けば、そう判断すると
「ゲルマン語は?」
「少なくとも私は見た記憶がないぞ、刻まれている文字はイギリス語か古代魔法語だけだった筈だ‥‥それで依頼書にもその旨を書いていたんだが」
 その判断に自身が自信を持って読み解ける石版がないか尋ねるも、アシュドが紡いだ答えは残酷なもので
「あっと、そう‥‥だっけ?」
「しょうがない、少し教えるか」
 その答えに目を丸くしては乾いた笑みを浮かべるティルコットに次いで御門を見やれば、静かながらも苦悶の表情を浮かべている様子からその場に留まろうとするアシュド。
「あー、アシュド君は自分の作業に戻って頂戴。あっちも大変だろうから、こっちは私が見るから」
「分かった、それじゃあ頼んだぞ」
「ま、それなりにね。さって、何処が分からないの?」
 ‥‥だったが面倒見のいいアルラウネの提案にその場は任せる事にすると、彼女が教師宜しく問い掛ける中で複雑で難しい記述の石版を解読している者達の元へと戻る。
「こっちはどうだ?」
「んー、順調と言えば順調です〜」
 彼の問い掛けにシェリルが年不相応な幼い表情に笑顔を一杯に湛え言うも
「でもでも! 古代魔法語の解読が追い付かなくて、溜まって来ていますー」
「これもよろしくね〜」
「あぅ」
 次にはその表情を崩し、そう付け加えれば確かにまだ手の付けられていない古代魔法語で記された石版は多く、またハンナが持って来た石版によってその数は更に増える。
「戻って来て正解だったな、とそう言えばディーネは‥‥っ?!」
 そんな光景でも、既に見慣れているのか平然とアシュドは椅子を傾がせ腰を掛け、もう一人の魔術師がいない事を尋ねればその直後、首筋に突然走る冷気によって前へ思い切り突っ伏す。
「こっちよ。少し皆も疲れているし一度休憩にしましょう、ね」
「頭を使う作業には甘い物が必須!」
 その背後、冷えたジュースで満たされた器を彼の首筋へ押し当てた犯人であるディーネが言えば、鈴那と共に作ったそれを笑顔で差し出すのだった。

 やがて時は過ぎ、最終日の夜と相成る。
 こまめな掃除にディーネとの協力で作られる食事で皆を助ける縁の下の力持ち、鈴那の全力全開な支援を受けながら頑張る一行だったが、中々に苦戦を強いられていた。
「まだあの時の答え、聞いていないんだけど‥‥ね」
 アルラウネがボソリと呟くその視線の先、誰よりも奮闘していたアシュドが既に限界へ達したのだろう、静かに眠る姿を捉えていた。
 その彼をやはり静かに頬杖を付き見つめながら、返って来る筈のない問い掛けだったが
「‥‥腕輪、すまな‥‥かった。君の‥‥あり‥‥」
「もう‥‥気にしていないわよ。でも、良かった」
 予期せず紡がれる答え、確かにそれは寝言だったがアルラウネは彼の気持ちが僅かではあったが聞けた事に満足してか微笑むと彼の頭を軽く叩いて、その身に毛布を掛けてから作業に戻ろうとして立ち上がるが
「んー、そんな事は〜‥‥行けませんよぉ。アルラウネさぁん、むにゃ」
「‥‥どんな夢を見ているのかしら」
 彼女の耳へ次いで飛び込んで来たのはシェリルの寝言に、今度は苦笑を浮かべながらそれでも手近にあった毛布を彼女へ掛けると
「アシュドくーん‥‥って、寝ているのね‥‥」
 その元へユーウィンが一枚の、皆で探し当てた非常に有用だと思われる内容が記された石版を携えてやって来たがその光景にうな垂れるも、何か閃いて悪戯めいた笑みを浮かべると抱える石版を目立つ場所に置けばアルラウネが佇むその傍ら、彼を両手で抱き上げた。
「あ」
「‥‥なぁ、あれってどうなんだ?」
「逆なら分かるけどねー」
「なんか、ぷっ」
 そしてアシュドを抱え、歩き出す巨人の騎士を見つめ羨ましげな視線を送りつつ尋ねるティルコットにハンナが首を傾げ言えば、ディーネが吹き出すのだった。

●Destroy Riddle
「疲れた体に結構いいぞ、一息入れよーぜ‥‥ってもうお終いだな」
 昇る太陽を眩しげに、目を細めては見つめながら皆へ牛乳と卵を混ぜ合わせた甘い飲み物を配るティルコットが最終日の終わりを告げる。
「‥‥それでアシュドさん、どうですか?」
「そう、だな」
 それを飲んでは皆が安堵の溜息を漏らす中で引っ込み思案な性格故におずおずと、まだそう付き合いの長くないアシュドへ問う御門に、一行が分類し助手達と共に解読しては纏め上げた資料の束へ目を通しながら彼はやがて器から口を離せば
「まぁ、必要最低限の情報は集まったと見て問題ないだろう。とりあえず‥‥ゴーレムを造る事は出来ると思う」
 僅かに厳しい表情を浮かべるが、それは一瞬ですぐに表情を和ませると
「まだ一部足りないが、この程度ならノッテンガムへ向かう道すがらで探せるさ」
「力及ばず、だった気もするけどアシュドさんがそう言うならいいわよね」
「あぁ、四人だけでやっていたらこれだけの量を此処まで調べ終わるのに後何日掛かった事か。それを考えれば十分な働きだったと思う、助かったよ」
 続き、感謝の気持ちを皆へ伝えれば前向きなディーネへアシュドは笑い、頷くと
「さって、ゴーレム君はどうなるのっかな? 暴れられたら困っちゃうけど、それでも楽しみだな」
「‥‥まぁ、楽しみにしていてくれ。ふふふ‥‥」
(『何か嫌な予感がするのは、気のせい?』)
 赤い髪を靡かせ、御門が鳴らすリュートに合わせて微笑む騎士も自身の楽器を爪弾きながら言えばアシュドは静かに笑うと一行は非常に嫌な予感を覚えたが、それが明らかにされるのはまだ少しだけ先である。

 ‥‥続くっ!