【求めし力】鉄の巨神

■シリーズシナリオ


担当:蘇芳防斗

対応レベル:6〜10lv

難易度:やや難

成功報酬:6 G 20 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:10月04日〜10月19日

リプレイ公開日:2005年10月15日

●オープニング

 日は既に傾き、落ちれば辺りを包むのはただ黒だけの闇。
 そして雲が満ちれば月に星はその顔を隠し、代わりに稲光が辺りを一瞬だけ照らす。
 次いで、耳を劈く様な雷鳴が響くその中で。
「‥‥つ、遂に出来た。これこそが私の求めていた‥‥」
 アシュド・フォレクシーは一人、その光に照らされては己の言葉を掻き消さんとする雷鳴を意ともせず立ち尽くす一体のゴーレムを見て、此処に至るまでの道のりを思い出していた。
「子供の頃は散々馬鹿にされていたな、そう言えば」
 幼少の頃の思い出に浸るも‥‥あの頃味わった苦さが脳裏を過ぎり、すぐに思考を切り替える。
「ケンブリッジで勉学に励んでいた頃は‥‥余り変わらなかったか」
 学生の頃、人付き合いはそれなりだったが同級生にもそれだけは無理だと散々に言われていた事を思い出し、また自身の思い出の時を進める。
「‥‥最近までそんな感じだった気がする」
 そしてつい最近‥‥一年程前までは、やはり変わらなかった事を思い出すと
『そんな皆に正義の鉄槌を! アデュー、馬鹿にされていた日々!』
 ‥‥そう言うかな、と思った記録係だったがその予想は外れた。
 流石にそこまで陰険ではないアシュド君。
「今まで出会った冒険者の皆に感謝しなければならないな、色々とあったが‥‥それでも皆と会う事がなかったなら、此処まで来る事は出来なかっただろう」
 厚い雲に隠れ、今は見えぬ月を仰ぐかの様に顔を天上へ向けては彼の口から紡がれた本心と同時、その頬を伝う一条の光。
「‥‥さて、領主に打診されていた事を実行する為にもまずはテストか。戦わせる為に造った訳ではないのだが‥‥今は止むを得まいっ」
 そしてアシュドは首を振って光を払うと、今は立ち尽くすだけのゴーレムの体を軽く叩けば再び暗黒を切り裂く稲光が走る中で高笑いを響かせるも、ゴーレムは地へ向けて傾ぎ出すのだった。
「のぉーーーーーーー!」

 後日、キャメロットの冒険者ギルドに一通の手紙が届く。
「‥‥読み辛いわ、これ」
 その封を外し、手紙を読めば受付嬢はまず絶句。
 元から字が汚い、と言う記憶はないので
「多分ゴーレムが完成して、高くなったテンションが押さえ切れなくなったせいよね。これは‥‥」
 なんとなく、そう察しを付けるとまずはその手紙の内容を読み解く努力を開始する受付嬢であった。

――――――――――――――――――――
 ミッション:ゴーレムの稼動テスト(模擬戦闘)、頑張って来て!

 成功条件:特になし
 達成条件:特になし
 失敗条件:特になし
 必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は忘れずに。
 それ以外で必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
(販売されていないアイテムに関して用いる場合は、プレイングにて『何処で』『どの様にして』入手するか、根拠の明示を忘れずに)

 その他:ノッテンガムにある、アシュドさんの元研究所を舞台にその最深部にいるアシュドさんの元まで辿り着ければ皆さんの勝ち、辿り着けなければアシュドさんの勝ちと言うゲーム形式のルールで行なわれる今回の依頼。
 あくまでゴーレムの完成度を確認するのが主な目的の為、依頼の成否については特に定めていない様です。
 尚、その道中(元研究所の敷地内から最深部)ではアシュドさん作のゴーレム達が立ちはだかるそうです。
 ゴーレムには侵入者は迎撃せよ、との命令を下していると言う事なので皆さんも遠慮せずに戦ってあげて下さい。

 傾向:ドタバタ戦闘系?
――――――――――――――――――――

●今回の参加者

 ea0606 ハンナ・プラトー(30歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea1542 ディーネ・ノート(29歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea1757 アルメリア・バルディア(27歳・♀・ウィザード・エルフ・イスパニア王国)
 ea3173 ティルコット・ジーベンランセ(30歳・♂・レンジャー・パラ・フランク王国)
 ea5603 ユーウィン・アグライア(36歳・♀・ナイト・ジャイアント・モンゴル王国)
 ea5981 アルラウネ・ハルバード(34歳・♀・ジプシー・人間・ビザンチン帝国)
 ea6065 逢莉笛 鈴那(32歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea7263 シェリル・シンクレア(21歳・♀・ウィザード・エルフ・フランク王国)

●サポート参加者

カルナ・バレル(ea8675)/ ソムグル・レイツェーン(eb1035

●リプレイ本文

●Shout(気合)
 ノッテンガムの片隅、アシュド君の元研究所前。
「何をやっているんだか‥‥」
 入り口の上部に飾られている、仰々しく飾り立てられた看板に『Welcome!』と躍る文字を見て嘆息を漏らしたのは古くから、彼の親友であるアルラウネ・ハルバード(ea5981)。
「歓迎しているんじゃないかっ!」
 そこへ突っ込むのはそれを作った本人である、アシュド・フォレクシーで元研究所の二階の窓から顔を出し、両手を振り回しては一人叫んでいたが
「遂に完成したのですね。おめでとうございます」
「どんなゴーレムなのか、わくわくしちゃうな」
「や、ありがとう。楽しみにしていてくれ」
 アシュドの顔を見止めるや、先の依頼に参加出来なかったエルフの魔術師であるアルメリア・バルディア(ea1757)の丁寧な祝辞に忍の逢莉笛鈴那(ea6065)も満面の笑顔を浮かべ言えば、興奮し切りだったアシュドはいつの間にかすっかり落ち着き払い、礼を言う。
「しかし、実際アシュド君が作ったゴーレムってどんなモンだろうね。友達が色々集めてたけど‥‥」
「まぁ『アシュドさんが作った』ゴーレムさんですし〜、色々と用心ですよ〜」
 そんなアシュドの様子を何処となく、詰まらなそうな表情で眺めるアルラウネの傍らでユーウィン・アグライア(ea5603)とシェリル・シンクレア(ea7263)の身長差五十センチコンビ、彼らの様子を気にしつつも小声でボソボソ。
「ふむ、まさか自分達が関ってきたゴーレムと戦う事になるとは思わなかったわ」
「えっと、ゴーレムを粉砕してアシュド君の所まで行けば良いのよね‥‥え、違う?」
「‥‥まぁ、間違いではないがそうはっきり言われると‥‥」
 彼女らの少し物騒なやり取りを耳にしつつ、だが今まで携わって来た一行を代表してアシュドと同じく水の魔術を操るディーネ・ノート(ea1542)が感慨深く頬を掻いて呟くと、今回の依頼内容に付いて改めて確認する巨人の騎士へ、今度は肩を落として返すが
「よーう、アシュド。どこまでぶっ壊していいんだ?」
「安心したまえ、君達には壊せないからなっ!」
 可愛らしいパラながら、柄悪く振舞うレンジャーのティルコット・ジーベンランセ(ea3173)の問い掛けには仰け反り断言するアシュド‥‥このコロコロと変わる調子、見ているだけで疲れる。
「でももし、何か大事な物を破壊したら‥‥ごめん♪」
「構わん、大事な資材は大分前に引き上げている。遠慮なくぶつかって来るがいいっ!」
「へー、遠慮はいらないんだ? なら、ぶっ壊しちゃうよー。全力で、叩き込めー!」
 だがそれなりに彼の事を知っている一行は然程気に留めず、舌を出しては予め詫びるディーネへ再度、アシュドが断言すると赤毛の騎士、ハンナ・プラトー(ea0606)はいつぞや彼を小突いた槌を振り回し、彼に対抗する。
「戦闘時のデータを、ねぇ‥‥アシュド君、貴方は平和主義者だと思ってたけど。まさかとは思うけど、本当に『アレ』なら許さないわよ?」
 そんな他の者達とのやり取りを見つつ、静かだったアルラウネ。
 久々に口を開けば最初と同じく嘆息を漏らし、彼へ問うと
(「『アレ』って何だ?」)
 と首を傾げる一行を見つめつつ、いつにも増して真剣な表情を浮かべるアシュドは一言だけ言の葉を紡ぐのだった。
「‥‥まぁ、始めようか。時間は余り、ない」
 本人も『アレ』に付いて分かっているのかは不明だが、それでも真面目なアシュドの様子からそれが嵐の前触れであった事を未だ一行は知る由もなかった‥‥。

●Vanguard Game(前哨戦)
「‥‥ゴーレムに付いて、私が知っている事は以上でしょうか?」
 ダンジョン‥‥ではなく、元研究所へと足を踏み入れた一行はアルメリアのゴーレムに関する知識の教授を受けながら進んでいた。
「なるほどねー、勉強になったよ。うんうん」
「とりあえず此処に罠を仕掛けてゴーレムの完成度を見ようぜ、熊レベルでよろしく頼むじゃん。尤も、外装からして挟み系はあんまり利きそうにないから、本棚もある様だしそれをロープとかで繋いで行動阻害系で行くのがベターと思うけど、どうよ? 足を止めれば魔法で潰せるし」
 先頭を臆せず進むハンナの視界に一つの扉が飛び込んでくれば、内部をエックスレイビジョンのスクロールを用い安全を確認したティルコットの掲げた一つの提案に皆は頷くと、まずはそれを拵える為に部屋の中へと足を踏み入れた。

「まずは第一テスト! 見た目が格好良いかどうか!」
 通路に響く音から鈴那、それをアシュド謹製のゴーレムと察し通路の奥を指差し叫べば、やがて一行の前に姿を現れたのはそれぞれ三体ずつのウッドゴーレムに素焼きの人形(ビスキットゴーレム)にだったが
「‥‥何か、奇抜な形状ですねぇ〜」
 シェリルの目に映るそれは言葉で表すには何とも形容し難い、いびつな形状だったので一瞬だけ我が目を疑うも、どうにも見間違いではない事に暫くしてから理解する。
 特にビスキットゴーレムの形状は恐ろしく、逆の意味で捉えれば芸術と言える域に到達していた。
「アシュド君、センスないのかしら‥‥」
「それか、設計図なりを描いた人の絵心が今一つだったのかも知れませんね」
 今日は溜息を付きっぱなしのアルラウネがもう何度目か分からない程の溜息を漏らせば、シェリルの横に佇むアルメリアが一応、フォローを試みる。
 実際の所、アシュドのセンスがない上にビスキットゴーレムを作る際、元とした絵が非常に前衛的だった事が起因しているが、一行はそれを知る由もなく罠を設置した部屋へ六体を誘い込めば戦闘へと雪崩れ込むのだった。

(「これは見抜けるかしら、ね」)
 その部屋の中で静かに息を潜め、アルラウネは内心で呟くも足音を響かせて近付いて来たゴーレム達は悉く彼女の脇を素通りしていく。
(「ま、そこまで高性能じゃないのね」)
 その結果にそう判断すれば、彼女は一先ず此処ではゴーレム達を観察する事に決めると、彫像と化したままのアルラウネがその背後を見送る中、彼らは進軍を続ける。
「このまま沈めぇっ!! ‥‥って、あれ?」
 そしてその直後、アースダイブのスクロールを用いて地中に潜んでいたティルコットが苦労の末に石の床面よりウッドゴーレムが一体の足を掴み、地中へと引き摺り込もうとするが‥‥力を込めてもゴーレムを土中に埋める事は叶わず、間の抜けた声を上げる。
 とそれもその筈、スクロールによって発動したアースダイブの効果が及ぶのは『本人のみ』と言う事で、ゴーレムを地中へ引き摺り込めないのは道理。
「みぎゃーーー!!!」
 次の瞬間、響くのはパラの絶叫で近くにいたゴーレムの数体が見事に彼を捕捉すれば、地中に逃げるより早く足蹴にした結果である。
「今です〜」
「数多、水の礫‥‥穿て、かの者を!」
 だがティルコットの体を張った行動が功を奏し、後方より矢と魔法の攻撃が飛び交えば鈴那が囮として大ガマを召喚する暇すらなくゴーレム達が後方にいる射手達目掛け突っ込み‥‥次いで、それなりに隠蔽されているも単純な罠によって動きを阻害されれば更なる攻撃によってその身を削がれていく中、戦闘は継続される。
「ポチ、タマ、ミケは初撃で半壊、っと。サブは‥‥」
 いやに可愛い名前をゴーレムに与えては、それへ容赦なく矢を放つユーウィンの声が響く中で。

●Iron Giant(鉄の巨神)
「正面に五‥‥一体だけでかいのがいるな。そんな事で準備よろしくー」
『おー!』
 最初の戦闘から暫く、時折襲い来る前衛的なデザインのゴーレム達を苦労しながらも打ち据え、打ち据え、打ち据えて元研究所を奥へ上へと進む一行はやがてアシュドがいるだろう部屋の扉の前に到達する。
「じゃ、開けるね」
 アルメリアが唱えたブレスセンサーからそれが明らかになれば、再度部屋の内部を伺うティルコットの号令に皆は揃って掛け声を上げると、ユーウィンが堂々とその大きな扉を開け放つ。
「ようこそ皆、だが此処からが本番だっ!」
 すると次の瞬間、広い広い部屋に響き渡る声の主はアシュド君。
 随分とハイテンションらしく、声高々に皆へ呼び掛ければ五体の鎧のその奥に佇む鉄の巨人にへばりついていた。
「‥‥ごめん、締まらないと思うのは私だけ?」
「ううん、私もそう思う」
「私もー」
 その光景を見て、まず呟いたのがディーネで嘆息漏らし皆へ尋ねれば鈴那にハンナも同意を示し、目の下にくまを浮かべているアシュドは無言でアイアンゴーレムよりその身を離すと
「‥‥まぁ、いい。それなりに疲れているだろうが、最後は新型含む六体のゴーレムが相手だっ! その勇姿‥‥とくとその目に刻み込めー!」
 とりあえず一行の発言は聞かなかった事にして、相変わらず高いテンションを保持してそれだけ言えば、指を弾くと同時にゴーレム達が一斉に動き出し、一行もまたそれに素早く反応すれば最後のテストが開始された。
「さぁって、俺の動きに着いて来れるかな、ゴーレムちゃんよっ! 鬼さんこっちらーっと」
 いの一番に駆け出したのはやはり彼、ティルコットで顔に青痣を拵えながらその復讐とばかり、自身が持てる最高の速度を持って鎧のゴーレム達の只中へと飛び込み、撹乱すれば
「何があっても、文句は受け付けないからねー!」
 巨大な槌と闘気で構築した盾を掲げ、彼に遅れ駆けるハンナが新型と称される動く全身鎧のゴーレム目掛け、得物を振り下ろし直上から振り下ろせばその頭部は思い切りひしゃげた。
「どうも動きに切れがないわね、時間が足りなかったのかそれとも‥‥」
 赤毛の騎士に続いて、一体のアーマーゴーレムが振るう鉄拳を舞う様に寸での所で避けて、自身でも攻撃が避けられる事から完成度に対し懸念を持つアルラウネの考えは他の面子も同じ様子で
「先のゴーレムと同じく動き自体に固さはなく、材質が材質なので頑丈ですけど‥‥」
「何か、戦闘における動作には淀みがありますね〜」
「攻撃力はそれなりにあるみたいだけど、改善の余地ありって所かな?」
 雷撃の束に数多放たれる水の礫を同時に一体へ集中して撃っては、雷撃が胴体に風穴を開けつつも動く鎧のゴーレムに付いて感想を漏らす魔術師達。
「‥‥造る時間が足りなかったのと、必要な要素がまだ一部解読出来ていないからなっ!」
『自慢して言うなー!』
 そんな彼女らへ、堂々と胸を張って答えるアシュドに皆は戦闘の途中にも拘らず全力で、一斉に突っ込めば途端に戦闘は激化の一途を辿る。
「負っけないぞぉー!」
 目の前の鎧を容赦なく殴打すれば、ティルコットの撹乱に見切りを付けてか肉薄して来た鉄の巨神が振るう拳へハンナはそれにも怯まず自身の得物を気合一閃、振るえば次いで武器と拳がぶつかっては散る火花の中で一体と一人は顔を付き合わせると、騎士が愉しげな笑みを浮かべてからその距離を一時離し‥‥そして再度、ぶつかり合った。

 ‥‥戦い終えて、一行。
「ごめんね、また会えたら‥‥今度は遊びましょう、ね」
 先程まで一緒に舞っていたが今はもう、微動だにせず崩れ落ちるゴーレム達をそっと撫で、優しく静かに語り掛けるアルラウネ。
「研究所まで運ぶの手伝うから、ね。頑張って修復しようか」
「また手伝うよ」
 その傍らで試作とは言え動かなくなったゴーレム達を見つつ、地に膝を突き蒼褪めた表情でうな垂れるアシュドを宥める、破壊の限りを尽くしたユーウィンと一行の支援に尽力していた鈴那が肩を叩けば
「直せますよね?」
「まぁ、な‥‥」
 信頼しているからこそだろう、アシュドへ声を掛けないアルラウネの様子に内心で不満を叫びながらも彼女らに続いてシェリルの問い掛けに、頷いてはようやく立ち上がるアシュド。
「そう言えば何故、ゴーレムを作ろうとお思いになったのです?」
「そうだな。子供の頃に初めてゴーレムと言うのを目の当たりにしたのだが、格好いいと思ったのと‥‥それが過去の遺物でも、人の手によって造られた事に感動を覚えたからかな」
「‥‥それだけ?」
 そして何時もの表情へと戻った彼へ、アルメリアの問い掛けは彼に暫く逡巡させる時間を与えるも、大した時間は掛からずその答えを紡ぐのだったが続くディーネの質問にはたっぷり時間を掛けてから、こう答えるのだった。
「何かを、誰かを、守れる力が欲しかった」
 その最中、ハンナが奏でる楽曲はゴーレム完成おめでとう記念の曲らしいがそれは勝利の凱歌とも聞こえなくもなく響き渡っていたが、その中でも彼の言葉だけは静かに部屋の中に木霊した。

●Sickle of Crimson(紅き鎌)
「‥‥さて、マシア。お前はあれをどう見る?」
 その光景を遠目より確認し、紅の皮鎧を身に纏う女戦士‥‥名はマリゥだったか。
 隣に佇む参謀の、同じ格好の自身より一回り小さい女性へ尋ねる。
「遺跡で今も稼動するゴーレムに比べ、確かに能力は低いでしょうが‥‥」
 目を細め、先程まで一行の戦闘を眺めての判断から紡がれる言葉は途中で区切られる。
 このまま放って置けば、後々厄介になるだろうと考えて性格が大人しい参謀はそれを最後まで言う事が出来なかった。
「十分、危険に値するか」
「研究が進めば、いずれは‥‥」
 だが、長い付き合いからかマリゥは一つ笑って端的に言うと参謀は内心、肩を落としつつも表情だけは変えずに頷けば
「じゃあ仕事だな、茶々が入る前に今度は完全に‥‥叩き潰すっ!」
 参謀の肯定を見るや彼女は愉しげな笑みを浮かべ、次いで手に持つ鎌を闇夜へ一閃するのだった。
「‥‥この頃退屈だったからねぇ、力加減は出来ないよ」

 ‥‥続くっ!