【妹よ】邂逅編 〜見よ、兄の力?〜
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■シリーズシナリオ
担当:蘇芳防斗
対応レベル:フリーlv
難易度:やや難
成功報酬:0 G 39 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:12月05日〜12月08日
リプレイ公開日:2005年12月14日
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●オープニング
●一枚の羊皮紙
十一月某日、FOR校門前に以下の様な張り紙が一枚、張り出されていた。
『アリア・レスクードなる生徒、ただジャパン語で話し掛けた者へ暴行すると言うその罪、重からず。下記に記す場所を調査の上で処罰の程、ご検討頂きたい』
FORでも優秀な部類に入るだろう彼女に突如、振って沸いた疑惑‥‥それが誰であろうともそうだが、我々は調査を開始した。
その結果はと言えば‥‥
被害者(ジャパン人・青年)の証言
「ほらこれ見てくれよ、まだこっちに来て間もなくて道に迷ってさ。イギリス語なんか使えず、分かってくれそうな人に声を掛けたら‥‥いきなり木刀で一撃だったよ」
目撃者A(イギリス人・子供)の証言
「こ、怖くなって逃げちゃったけど‥‥ぼ、僕、見たよ!」
目撃者B(イギリス人・老人)の証言
「わしゃあ見たんじゃよ‥‥その光景を、そりゃあ恐ろしかったわい‥‥」
と言う様に、張り紙に記されていた場所の近辺で得た簡単ではあるがそれらを含めた幾つかの証言を得る事となり、彼女が被害者へ対し暴行を働いた可能性があると言う事から一先ず謹慎処分にする事とした。
事実が確定し次第、追って最終的な処分を決めるものとするが‥‥そう言った話であれば今まで起きていてもおかしくはなく、彼女ほど優秀な生徒であるのなら怨恨の線もある為に慎重を重ねた上で調査を継続する事。
●奮起
「納得がいかなーい!」
アリアが謹慎処分を受けてから数日後‥‥FORの校門前で一人、抗議の声を上げているのはその話を謹慎処分中の本人から聞いた十河小次郎その人、どうやらあれからアタックの甲斐あってか普通に話は出来る様になったらしい‥‥尤も、ジャパン語が使えないのは相変わらずだが。
「謹慎処分の撤回をー!」
自分の受け持つ授業はどうした、と言う突っ込みが聞こえてきそうだが何やら身辺整理の為に休暇を貰っているとか。
大丈夫なのか、フリーウィル‥‥まぁ彼一人位なら大丈夫か、最近変な噂ばかり立っている事だし。
「うちの妹は無罪だー!」
とそれはさて置き、そんな事をかれこれ三十分程続けていれば無論FOR側の教諭達も黙っておらず、彼の対応の為に一人の先生が出張ってきた。
「‥‥まぁ少し落ち着いて、それについては今も調査していますので」
「‥‥何時になったら謹慎が解ける?」
「事実が確認出来次第、ですね」
「それじゃあ遅いんだー!」
「な、何でですか‥‥?」
差し障りのない、彼の答えに何故か小次郎が怒るとその様子に慌てるFORの教師へその理由に付いて耳打ちすると、それを聞いて彼は納得するが
「とは言え、もう決まった事ですし‥‥逆に『その話』に付いてはまだ決まっていないのでしょう?」
「う‥‥ま、まぁそう言われるとそうなんだが」
小次郎を宥め透かすと何も返す事出来ず、フリーウィルの先生は呻くだけ。
「‥‥ならば、そちらの邪魔はしないから調査の協力をさせてくれ! それなら構わないだろうっ!」
だがそれで引く小次郎ではなく、一つの案を彼に提示すると
「‥‥それなら構わないと思いますが、私の口からはっきりとしたお答えは‥‥」
「よし分かった、それじゃあ頼んだぞ!」
「あ、ちょ‥‥ちょっと!」
それに逡巡し曖昧な返事をする教師だったが、小次郎は気にせず押し切ると彼の次の句は耳に入らなかったのか、早々に踵を返してその場を後にするのだった。
その後日、許可が下りた旨の報告が小次郎の元へ来ると今度は急ぎクエストリガーへと駆け込むのだった。
「此処で俺がやらなければ‥‥」
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ミッション:アリアの無罪を証明する為、真犯人を探せ!
成功条件:???
達成条件:彼女が無罪である事を証明出来た時
失敗条件:彼女が無罪である事を証明出来なかった時
必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は忘れずに。
それ以外で必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
(販売されていないアイテムに関して、使う場合はプレイングにて根拠の明示を忘れずに)
概要:小次郎さんの実妹であるアリアさんが傷害の疑いがあると言う事で、FORより指示あるまで謹慎処分を受けたそうです。
ですがその話を最近、ちょっとだけ彼女と距離が近付いて来た小次郎さんが耳にし、それを良しとしなかった彼が無罪であると言う証拠を見付けて来ると断言した為、今回の依頼となりました。
傾向等:調査系、リプレイはプレイング次第で何とでも
NPC:十河小次郎
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●リプレイ本文
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冬の冷え込みも激しくなって来たとある日‥‥アリア・レスクードが住まう家にて一行は、謹慎処分を受けているその当人と介していた。
「御機嫌よう、アリアさん」
「元気してたぁ‥‥って、してないよねぇん?」
その一行の中、いつもの様にフードを被っては仰々しく挨拶を交わすカンタータ・ドレッドノート(ea9455)とその彼女とは逆、明るい声音で手を振るエリー・エル(ea5970)は言ったその後、自身で首を傾げるも
「いえ、そんな事はありませんよ」
彼女は至って落ち着き払い、皆へ心配させまいと微笑み返す‥‥こう言った所、兄と似なかった事を神に祈りたいものである。
「この間は嘘ついて、そのまま逃げてしまってごめんなさい」
「私の方こそお礼を言うべきでしょうから、そう気にしないで下さい‥‥ね」
それはさて置き次いで、頭を下げるもの一人。
先日の依頼でちょっとしたミスから嫌われていないだろうかとの不安からアリアへ詫びるシェアラ・クレイムス(ea4049)だったが、それは杞憂だった様で内心胸を撫で下ろす。
「今回の件に真犯人がいるとしても、傷害事件を起こしているのは間違いありません。その点に及んだら反論出来ますか?」
「バーゼリオ!」
だがその和んだ雰囲気の中に響くバーゼリオ・バレルスキー(eb0753)の、表情こそ微笑んだままだが厳しい声音での問い掛けに十河小次郎はいきり立ち、叫ぶも
「そもそも何故、ジャパン語を聞くと殴り掛かるのですか?」
彼の口元に手を掲げそれを遮れば気にせず言葉を連ねてゆくが、次に返って来る答えはアリアからではなく茉莉花緋雨(eb3226)の口から、見知った間柄故にいつもの口調で紡がれた。
「条件反射、だそうだ‥‥詳しく話して、構わないか?」
「‥‥ジャパン語に反応するのですから、ジャパン語が分かるのですか? それとも挨拶や話しかける言葉のみですか?」
「簡単ですが、一通りは分かりますよ」
アリアの了承を得てから緋雨が話す事暫く、その話を聞いてバーゼリオは幾度かのやり取りの後で答えてくれた彼女へ
「傷害事件の話を大きくした責任がありますから‥‥先の非礼、失礼しました」
非礼だけ詫びると途端、口を噤むと次いで広がる沈黙から話題の兄と妹を交互に見る大宗院透(ea0050)はやがて何事か気付き
「そう言えば、私にも異母の妹がいます‥‥固くならずに、私達に接している様に接してはどうですか‥‥」
「小次郎さんは知り合って間もないおいらから見ても、いい人だと思います」
多少話こそする様になったらしい兄妹の片方、アリアへ静かに耳打ちすれば彼に続きイシュメイル・レクベル(eb0990)も笑顔で断言すると、彼女に笑顔をもたらす事に成功する。
「‥‥さ、時間が余りない。俺も出来る限りの事をするから、皆も頼んだぞ!」
「後でジャパン語聞いてもいつも通りに振舞える様、練習しよなー!」
その笑顔に安堵してか小次郎は踵を返し、一時妹に別れを告げる代わり右の手だけを掲げれば次にシェアラが響かせた約束にもアリアは笑顔で頷くのだった。
「悪気があって言うんじゃありませんが‥‥」
「ん、何だ?」
そして彼女が住む家を後にする一行の中、閃いた透が小次郎を見つめると何に対してか断りを入れる事に疑問を覚えつつ、やがて頷く先生が次にその耳で聞いたのは透の駄洒落。
「『無才』の兄でも、妹の『無罪』を証明出来ます。だから、頑張りましょう‥‥」
「‥‥そう、だな‥‥」
冗談ではある、断りを入れていたからそれは分かる‥‥だが何となくやるせなくなって小次郎は肩を落とし、ボソリとだけ呟くと
「‥‥とにもかくにも頑張ろう。これだけ人が集まればきっと真実は見える筈だからね」
その様子に日側に嘆息を漏らしつつ、和久寺圭介(eb1793)が微笑み励ました。
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「アリア嬢が謹慎処分を受けた理由は何ですか?」
それから動き出した一行、小次郎と共にバーゼリオと緋雨はFORに向かいその教師達(とは言ってもその極一部ではあるが)へ今回の件に付いて、疑問をぶつけていた。
「傷害事件なら理由になりません。アリア嬢が過去にも同様な件を起こしている話を聞きますから、処分をするなら遅過ぎますよ」
小次郎の『協力者』と言いながらも、それを気にせずバーゼリオが微笑を湛えたまま厳しい言葉をぶつければ
「理由によってはFORの指導力と決断力が問われますね」
「君達にそこまで言われる筋合いは!」
「まぁ落ち着いて」
場にいる皆がそれに飲まれる中で再度、臆せず囁く彼へ流石に黙っておられず一人の教師が立ち上がり激昂するも、小次郎がその場を安直な言葉で何とか宥めると
「根も葉もない噂か何かは分かりませんが‥‥騎士道に拘りすぎているのではないですか」
やはりそれでも構う事無く毒を吐くバーゼリオに、だが次に返って来た反応は違った。
「‥‥ふむ、恐らく君の言う通りだろう、単に教師と言っても色々な者がおる。学校が大きくなればなる程に、それは把握出来なくなりやがて歪みを生む。今回の件、恐らく誰かが先走っての行動だろう。FORを思う余りであればいいが」
それはその部屋の隅にいた、大人しそうな老教師から紡がれ‥‥彼の意見を肯定すれば次いで部屋の雰囲気が変わる。
「‥‥それなら、教えて頂けるのだな」
「あぁ、そうする事にしよう。誰か、もし資料があるならそれを持って来てくれ」
それを察して、彼の雰囲気に飲まれていた緋雨が初めてその場で口を開けば、その老教師は彼女へ頷き誰にともなく呼び掛けるとその場にいたFORの教師が動き出した。
●
「思っていたより簡単に行って一安心、かと思ったけど女装にロリコンで最近名が通るあの先生の妹さんだったとはね。それじゃあ今回の件でシスコンもおまけに」
一人、ぶちぶちと呟く者が腕を組んでは道を歩いていた。
「面白いわね‥‥じゃなくて!」
言って直後、セルフで突っ込み‥‥何者だよあんた。
「ジャパン語を馬鹿にする者は、ジャパン語に泣くんだからっ!」
すれ違う人々はその様子を不審に思うも、その当人らは至って気にせず拳を握れば
「でも調べられたら真っ先に、気付かれません?」
「そこの辺は抜かりなくてよ、多分」
その隣を歩く者の突っ込みには言葉を濁すのだった。
「トール〜、今回は親子共々協力して犯人を捜そぉん!」
「別に今更‥‥」
さて一行、時間がない事もあって分散して動くその中の一組の親子のやり取り‥‥相変わらずの母に対しその息子はつっけんどんにそう言うも、説得力はなく
「もぅ〜、相変わらず冷たいんだからぁ〜!」
そんな透の態度を先行くエリーも気にはせず、微笑み踵を返すと
「で、さっきの話から何か分かったぁ〜?」
「‥‥犯人だろう人は、アリアさんとは殆ど面識のない人ですね‥‥」
笑顔はそのまま、早速疑問を息子へ丸投げし‥‥彼は呆れ、嘆息を漏らすが自身の推測を一先ず述べる。
「近くにいるのか、遠くにいるのか‥‥ですが綻びはきっと、ある筈です‥‥」
次いで紡がれた句の後に暫しの間、広がる沈黙にエリーはそれが何を意味するものか察して彼の肩を叩くのだった。
「無理して駄洒落なんか言わなくていいわよぉ〜、って言うか誰がこんな事教えたのかしらねぇ〜?」
それは誰も知らないが十七歳と公言する母が首を傾げている間、透は彼女を追い越し駆け出した。
「‥‥しかし以前にましてややこしいねぇ、彼女はいい子なのにね」
「アリアさん、いい人だもん。ジャパン語聞くとぽかっと殴っちゃうけど‥‥でも小次郎先生が話し掛けた時は、『知らない』って言って逃げてったって話だし‥‥むぅ?」
そのもう一方、圭介とイシュメイルは以前にも着た制服に身を包んでFOR校内の聞き込みに勤しみながら、アリアの事を想い嘆息を漏らしていた。
「全部否定出来ないから、難しいんだよね」
「だからこそ、私達はアリアの為にも頑張らなければね」
そしてややこしく考え出したイシュメイルが首を捻り呻くと、それを宥め圭介が微笑めばその視界に映る、女生徒の姿。
「そこの貴方、アリアの謹慎に付いて話を聞きたいのだけど‥‥些細な事でいいんだ、何か知らないかい?」
襟元のきつい制服を気にしつつ尋ねるも、首を振るその女生徒へ負けじと今度はその手を握り、目と目を合わせ真剣に訴える彼に彼女は困惑の表情を浮かべる。
と言う様に実は始まってからこの方、圭介がこんな調子だったりする訳で中々に捗っていなかったりする。
「あぁ、いきなりで失礼だったね。それにこんな場所で、もし良かったら場所を移して‥‥」
これではどちらが本題なのか分からないがそれでもマイペースな圭介は自身らしさを全開に、根気良く女生徒と会話を続ければ
「参ったなぁ」
まだ年若いイシュメイルは彼を見てナンパの何処が面白いのか分からず、隠す事無く溜息をつけば次いでどうした物かと悩むのだった。
二日目。
「僕が聞いた所も全部回りましたし‥‥」
「おいらはここら辺が最後やなぁ」
実はこの日、非常についていた事をカンタータはその時はまだ気付いてはいなかった。
「巡り流れる時‥‥その過去を一時垣間見せよ」
シェアラと共に皆の情報と緋雨がFORから入手した、証言者達から直接聞いた話に加え、アリアの話を元に様々な場所を駆け回ってはパーストを用い、手掛かりはないかと必死になって探すその最後、比較的人通りが多い道の真中でもう何度唱えたかパーストの効果からようやく当たりを引き当てた事に微笑むと、次にシェアラへ犯人と思しき者の特徴を告げれば
「それならこの話、皆に伝えてくるさかいにカンタータさんは引き続き調査、宜しゅうなっ!」
満面の笑みを浮かべ彼の背中を見送り、カンタータ。
「話を統合すれば同じ時間にアリアさんが二人いた事になりますが、やっと裏が取れました‥‥後は物的証拠があれば確実なんですけど〜」
この場で過去を垣間見た際、とある忍者が人遁の術を解いた現場を見て全ての話を統合させ、一人納得すると今度はその犯人が歩き去った方へ向けて再び歩き出した。
と、そんなこんなを経て二日はあっと言う間に調査に費やされ過ぎ去る。
「ねぇ〜ん、そこの貴方達‥‥ちょっとお話いいかしらぁ〜?」
ぎっくぅ!
とそんな擬音が聞こえて来そうな位、エリーが声を掛けた二人組は突如として直立不動の姿勢を取り、恐る恐る振り返ればその視界には一行の姿と次いで彼女が手に持つ木刀が目に映り‥‥何事かを瞬時に察した二人は脱兎の如く駆け出した。
●
「これで一件落着ですね」
それから暫く‥‥アリア宅にて、カンタータの終結宣言に少しだけ複雑な面持ちではあったが最初よりは大分明るい表情を浮かべるアリアを見て、皆は釣られ微笑む。
今回の一件についてだがその後、二人を捕まえた一行は一先ず彼女らを問い質す。
「ねぇ、何でアリアを恨んでいるのぉん」
「ジャパン語を見下すかの様なあの振る舞い‥‥許せなかったんです」
まぁある意味、的を射ている気もするがよくよくお互いに面を合わせて話をしてみれば、面識が然程ない事からアリアに付いて最近流れていたちょっとした噂に尾ひれが付いた挙句、それに対して犯人の一人である女生徒が過剰に反応した為、友人を巻き込んで今回の一件に及んだ様である。
「なるほどのぅ、とりあえず話は分かった。後はこちらで処置の程を決める故、暫し此処で待つがいいじゃろう」
そしてFORへ報告の後、老教師の労いの言葉を受けてから待つ事暫く。
計画的ではあったがその過程において、FOR側がどう動くかも分からない博打的要素が強い今回の犯行と、それに対するFOR側の対応に付いてもあってアリアは無罪放免、犯人の二人組へは反省文の提出と被害者の怪我が治るまで毎日欠かさず見舞いに行く事でFOR側の方針が決まると、それにアリアも納得して今回は丸く収まった。
尤も、FOR内部では状況次第だろうがその限りではない事を補足するが‥‥それをこの場にいる皆が知る機会はないだろう。
「さて‥‥兄君に対する評価は如何なものかな」
「何も此処までしなくても、でも」
話は戻り、アリア宅‥‥一応役に立てた事から圭介が二人を伺う中でアリアは兄に対し、満更でもなかったのか、兄に対してお礼を紡ごうとするも
「シェアラ君も先に言った様にぃ、今後こんな事がない様にアリア君はジャパン語を克服しないとねぇん。ほらぁ、あそこにいる私の息子もぉ、ハーフでぇ親は何もしてないけどぉ〜、別に私が生まれた神聖ローマを嫌ってないよぉん」
「ジャパンはもっと差別が酷かったんですけどね‥‥」
「まぁ透よ、そんな湿った話するなよー。これからが楽しければいいじゃないかっ!」
それに気付かず、エリーが息子へ声を掛ければ不服そうに透は反論すればそれを宥める小次郎に対し、アリアはうな垂れるが
「そう言えば、聖夜の夜ももう少しなんやねぇ」
「聖夜の日は家族で過ごす物だから、一緒にホームパーティーをするときっと楽しいよ〜」
その言葉にふと、シェアラは外に降り積もる雪を見て呟くとイシュメイルも笑顔を持って言葉を重ねる。
「‥‥考えてみると聖夜の夜って、大勢の人と騒いだりとかした時が余りありません」
「よし、なら!」
それにアリア、ふとその事に思い至って考え込めば声高らかに小次郎が遠巻きに妹へ促すも
「皆さん、ご一緒にどうですか?」
次にアリアはさっきの仕返しか、小次郎に一瞥すらせず皆を見回すと視線を合わせてくれない妹に小次郎は地に膝を突き、うな垂れる。
「ふふっ‥‥それはいいね、お呼び頂けるのならその時は喜んで」
「勿論だ」
その光景に微笑んで圭介と次いで緋雨が頷けば、アリアはその時になってやっと心の底からの笑顔を浮かべ
「それと‥‥」
「‥‥あぁ!」
その最後、ちらりと恥ずかしげにアリアが小次郎を見つめ語尾を濁せば彼はそれを察して大袈裟なまでに頷くのだった。